時間によって前へ押し出される【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0097】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】さあ土曜日だ/ルシア・ベルリン △
主語が「わたし」ではなく「おれ」になった。読み手としては、それだけで大きな転換である。ただ、もちろん文体は変わらない。淡々としているので、なかなか頭に入ってこないのである。結末は悲劇のようである、色々と読み取れてはいないのであるが。

【詩・俳句・短歌・歌詞】前へ/大木実 ◎
時間は無限だから、私たちに終わりはない。次から次へと、今がやって来るのだ。作者は「――前へ」という言が好きだという。好き嫌いとは別に、私たちは前へ進まなければならない。私たちは押し出されるのだ。時間によって、前へと押し出されるのである。

【論考】戦争/池田晶子 ◎
例えば今、ウクライナで戦争はあるが、遠く離れた私たちは、単純に戦争は悪だと思っている。逆に平和であれば、多少のことは大目に見ても、仕方のないことだと感じていた。しかし、これを読んで、それは全くのサボりだと気づかされた。絶対的な悪だと思えても、考えることをやめてはいけないのだ。


マルコ・ポーロ【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#071】


【3月11日】マルコ・ポーロ:1254~1324

サパング(日本国)は東方の島で、大洋の中にある。大陸から一五〇〇マイル離れた大きな島で、住民は肌の色が白く礼儀正しい。また、偶像崇拝者である。島では金が見つかるので、彼らは限りなく金を所有している。しかし大陸からあまりに離れているので、この島に向かう商人はほとんどおらず、そのため法外の量の金で溢れている。
この島の君主の宮殿について、一つ驚くべきことを語っておこう。その宮殿は、ちょうど私たちキリスト教国の教会が鉛で屋根をふくように、屋根がすべて純金で覆われているので、その価値はほとんど計り知れないほどである。

『全訳 マルコ・ポーロ 東方見聞録』月村辰雄・久保田勝一訳、岩波書店、2002年

【アタクシ的メモ】
「屋根がすべて純金で覆われている」と書かれているが、それは特定の建物のことなのだろうか。これは、英知のことばというよりも、当時の状況を伝える重要な記録なのだと思う。


言葉が瞬間を永遠に変える【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0096】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】沈黙/ルシア・ベルリン △
淡々と語る文体は相変わらずである。またも、モイニハン家の物語であり、アルコール中毒である。ただ、淡々というか、パッチワーク的な記述で、あまりストーリーが頭に入ってこなかった。そこそこ長いし、もう一度読心気にも、時間もなくてならなかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】雁/千家元麿 ○
雁が空を飛人でいる様子を詠った詩。集団とはいえ、1分も経たない瞬間の出平事であろう。それでも、こうして詩や言葉で書きとめられることで、その瞬間は、永達の時間を得ているようにて感じられるから不思議である。

【論考】道徳/池田晶子 ◎
「社会が決めた法律に善悪はない」。自分の外にあるものは変化する。変わらない善悪は、常に自分の中にあると筆者はいう。本当によいこと、本当に悪いことを知ろうとするなら、私たちは自分の頭で考えなければならない。それが人間の自由につながっているのだ。


李白【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#070】


【3月10日】李白:701~762

両人対酌して山花開く
一杯 一杯 復た一杯
我は酔いて眠らんと欲す 卿且く去れ
明朝 意有らば琴を抱いて来れ
(「山中にて幽人と対酌す」)

二人酌み交わすところに山の花が開く。一杯、一杯、また一杯。
おれは酔っぱらって眠くなった、君はひとまず帰れ。明日になってその気があれば、琴をかかえてやってこい。

『新編 中国名詩選』(中)、川合康三編訳、岩波文庫、2015年

【アタクシ的メモ】
李白は、詩聖杜甫に対して詩仙とも称される詩人。お酒を好み、酔って水中の月を捕まえようとして溺死したと伝えられるようだ。引用された詩を読んでも、詩仙らしさは感じなかった。


私も「愛こそすべて」が苦手【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0095】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ママ/ルシア・ベルリン ○
姉妹二人が、母親について回想する。その母親は、愛という言葉が嫌いだったり、一筋縄ではいかない性格だったようだ。ロ々に思い出が語られていくなかで、その存在が蘇るのだろう。妹は最後に「愛してるって伝えたい」となるが、姉はそうならない。姉妹でも母親のとらえ方はまちまちなのである。

【詩・俳句・短歌・歌詞】人間に与える詩/山村暮島 △
太い根のある樹木、大木を、人は見習えということか。ただ、そうだとしても、人間にとっての「根」とは何を指しているのだろうか。特に言及がないので、分からない。人間に与える詩と言っているので、人に対して語りかけているのだろう。しかし、その主旨が不明というのが正直な感想である。

【論考】社会/池田晶子 ◎
「社会」という確固たるものが存在するわけではない。複数の人間の集まりにつけられた呼び名にすぎない、と筆者は説明する。いやその通りだと思う。その前提から、自分はどうやって生きるのか、人間の集まり(=社会)にどう働きかけるのか。そうした自分の意志が問われている。


永井荷風【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#069】


【3月9日】永井荷風:1879.12.3~1959.4.30

余は五、六歩横町に進入りしが洋人の家の樫の木と余が庭の椎の大木炎〻として燃上り黒烟風に渦巻き吹きつけ来るに辟易し、近づきて家屋の焼け倒るるを見定ること能はず。唯火焔の更に一段烈しく空に上るを見たるのみ。これ偏奇館楼上少からぬ蔵書の一時に燃るがためと知られたり。(1945年3月9日)

『摘録 断腸亭日乗』(下)、磯田光一編、岩波文庫、1987年

【アタクシ的メモ】
断腸亭とは荷風の別号で、日乗とは日記のこと。これは戦時中で、どうやら空襲にあったようだ。


歴史に真偽を求めず、想像する【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0094】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ソー・ロング/ルシア・ベルリン ○
タイトルの「ソー・ロング」は、人生は長すぎるという意味だろうか。「わたし」が、自分の半生を回顧している。その時々の自身の心情はそれほど書かれておらず、起きたことが淡々と述べられる。多少ドラマチックな内容もあるが、人々が粛々と生き、死へ近づく姿を、冷静に起伏なく表現しようとしたのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ほほえみ/川崎洋 ○
「ビールには技豆」のように、セットになるような、対になるようなものを、いくつも並べている詩。日本的な、日本ならではのセットが多いだろうか。ただ、最後の組み合わせは、「ほほえみ には ほほえみ」と対ではなく、同じものを重ねていた。これについては、万国共通の感覚になるだろう。

【論考】歴史/池田晶子 ◎
言葉の端々で、理解できていない部分もあると思うが、「君は今の君ではなく、他の誰かでもあり得た」「だからこそ、君は、他の誰かであることができる」といった箇所がとても気になった。また、「歴史とは、真偽を求めるものではなく、想像するものだ」という文も重要だと思う。可馬遼太郎にも、つながるかもしれない。


詩経【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#068】


【3月8日】詩経

桃の夭夭たる
灼灼たり 其の華
之の子 干き帰がば
其の室家に宜しからん

桃は若やぐ。
輝くその花。
この子がお嫁に行ったなら、
そのお家にもふさわしい。

『新編 中国名詩選』(上)、川合康三編訳、岩波文庫、2015年

【アタクシ的メモ】
『詩経』とは、全305篇からなる中国最古の詩篇とのこと。ここに引用されたものも、とてもシンプルな詩だと感じた。


子が生まれたときの喜び【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0093】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】苦しみの殿堂/ルシア・ベルリン △
一回しか読まなかったせいか、固有名詞や北米文化に関する言葉が多かったせいか、状況を端的に表現する文体のせいか、内容があまり入ってこなかった。読み手である自分の状態もよくなかったのだろうけど。なので、短編小説の中身に関するコメントはあまりできない。これが彼女の文体だと理解しつつも、もう少し分かりやすく書いてくれるとうれしいのだが。

【詩・俳句・短歌・歌詞】森の若葉/金子光晴 ○
孫むすめが生まれた喜びを詠んだ詩。作者に喜びがあるから、読むだけで自然と明るい気持ちになる。自分の子供たちが生まれた時のことを思い出した。成長とともに、良いことばかりでなく悩みも出てくるが、誕生したばかりの時は、明るい未来を信じられていたと思う。

【論考】勉学/池田晶子 ◎
「考えるということは、必ず、自分のこととして考えるということだ」という文が印象に残った。勉強も、無理やり学ばされていると思うのではなく、自分に関係していることとして学べば、ヨイのだろう。そうした意味で哲学は、人間の根本、本質、普遍性について問い、思考するからこそ、自分は楽しく感じるのだと思った。


バフーチン【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#067】


【3月7日】バフーチン:1895.11.17~1975.3.7

笑いは深い世界観的な意味を持つ。笑いは統一体としての世界、歴史、人間に関する真理の本質的形式である。それは世界に対する特殊な普遍的観点である。この観点は世界を別な面から見るが、厳粛な観点よりも本質をつく度が少ないわけではない(多くはないとしても)。

『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネサンスの民衆文化』川端香男里訳、せりか書房、1973年

【アタクシ的メモ】
「深い世界観的な意味」があまりイメージできず、「誤訳?」と思ってしまった。「特殊な普遍的な観点」も、やや謎な表現ではないか。ここで言いたいことは、笑いが人間の真理、本質をつくことがあるということか。