ふと思うことありて蟻ひき返す【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0190】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】どこであれそれが見つかりそな場所で/村上春樹 ○
唐突に高層マンションの階段で姿を消した「夫」。その男性を探すために階段に通い、様々な人と話をする「私」。夫はなぜか仙台で見つかる。私の捜査は何の意味があったのか、私には理解できなかった。文章も村上さんらしい感じで、奇譚というよりも、いつものヤツという感じ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ふと思うことありて/橋間石 大岡信  ◎
「ふと思うことありて/蟻ひき返す」。これも、蟻の動ぎを端的に描写しただけであるが、不思議なほどグッとくる。解説する大岡さんは、「思っているのは確かだろう」と述べている。私は蟻が「思う」ことの発見が、強い印象を与えるのではないかと感じた。

【論考】科学技術と私たち/池田晶子 ○
デジタル化が進み、私たちは科学技術が所与のものように考え、一方で科学以外のものは見えなく、無価値のように扱ってはいないだろうか。筆者が「花の美しさは、人間が作ったものではない」と言うように、数値化や計測できない価値や意味を認め、そこにも着目する必要があると感じた。


地虫が鳴き始めていた【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0189】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ハナレイ・ベイ/村上春樹 ○
若くしてサメに命を奪われたサーファーの母親の物語。事故があった場所に10年以上通うものの、母親には息子の姿は見えず、サーフインをしに来た別の若者たちには見えたという。なぜ息子は、母の前に立とうとしないのか。その謎は解かれぬままで終わる。この小説は、映画にもなっているようだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】地虫出て/上野章子 大岡信 ○
「地虫」というと、中上健次の『岬』を思い出してしまう。かの小説は「地虫が鳴き始めていた」で始まる。この五七五の地虫は、目の前に出てきて、土につまずいただけのようだ。大岡信さんは、語り口を天真関漫と評している。正直、大した描写ではないが、素直に語ることで趣きが感じられるから不思議である。

【論考】「コンビニエントな人生」を哲学する/池田晶子 ○
「足るを知る」。一言で言えば、そういうことだ。便利を求めすぎると、自己の功利ばかりが目的になってゆき、なぜ人は生きるのか、人生とは何かを考えなくなってしまうだろう。生活の利便性が、生きる目的になってしまいかねないからだ。足るを知り、あるがままを受け入れることが肝要なのだ。


人生とは何であるか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0188】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】偶然の旅人/村上春樹 ○
物語が始まる前に、作者が登場する異例の小説。まえがきで、よかったのではないか。ストーリー自体は、いくつかの偶然や珍しい事象によって、調律師が過去に断絶していた姉と関係を変化させる。そんなこと起きるのかなと思いつつ、納得感があり、ちゃんと読み終った感もあった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】いのち けやきだいさく/工藤直子 ○
生きるのに、ヨイもワルイもないと感じている。よく生きようとするか、しないかの違いではないだろうか。今回の主役は、どうやらけやきの木のようだ。ことりたちが、きっと数多く集い、生きる助けになっているようだ。そのことりたちのために、けやきは生きているののだったら、よく生きているに違いない。

【論考】問いの構造/池田晶子
「人が何かを考えるということをするのは、それが何であるのかを知りたい、どうなっているのかを知りたい『ただ』知りたい」のだと、筆者は述べる。そして、「人生とは何であるか」という問いに帰着するという。この構造は、自分が哲学に興味を持ったことと似ていると思う。ただ逆から言えば、人生とは何であるかの答えに近づくには、自らの頭で考えるしかないのである。


私たらは啓示を待つべきなのか?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0187】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】情緒不定定の五つの徴候/リディア・デイヴィス ○
車の料金所で、どの硬貨を出すべきか迷い、どうしても決められないくらい、生きるのに戸惑っている主人公。その戸惑いを解消するためにも、彼女は啓示を待っている。自分が意志するだけで、世界が変わっていくほど単純ではないだろうが、誰かに指し示されるのを期待していても、それはかなわないんじゃないかと思う。ある意味、自意識が暴走していると感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】「し」をかくひ かぜみつる/工藤直子 ○
タイトルの「し」は「詩」でよいのだろうか。また、言葉の中に出てくる「おれ」は「かぜみつる」なのだろうか。状況や設定がややあいまいに見えるので、かっちり理解するのは難しいが、書かれている言葉の内容は、泣いているミノムシを、そよ風で揺すって、笑顔で眠らせるという暖かなものである。

【論考】魂を味わう/池田晶子 ○
例えば、私がここにいること、存在することは有り難く、奇跡的なことだと筆者はいう。また、人と人との出会いも、奇跡であると語る。確かにそうだ。親を選ぶことは出来ないが、たった一つのこの男女の子として生まれ、別の男女ではなかった。だから、それは非常に有ることが難く、感謝の気持ち、ありがとうにつながるのだ。


魂の世話をする【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0186】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】靴下/リディア・デイヴィス ○
靴下を通して、元夫のことを思い出す。今や距離がある人との、そうした象徴的なものが誰しもあるかもしれない。ただ、そんな自身の思い入れとは別に、やはリコミュニケーションが生まれ、何か行き違いのようなものを感じるかもしれない。そのズレに疲れながら生きるしかないのだろろか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】船出/辻征夫 △
そこそこ長い詩であるが、描かれている状況が良く分からず、視点がはっきりしないため、メッセージ含めて、色々と理解できなかった。自分のに読む力がないのを疑いつつ、何度か読んだが、詩で描かれたことの像が頭の中に浮かんでこない。こんな時もあるさと思うのものの、ストレスも感じる。

【論考】魂を味わう/池田晶子 ○
「人間は肉体であると同時に精神です」と言い切るところが気持ちよい。ただ、世の中では精神の成熟よりも、内体的欲求や快楽にばかり傾倒しているように感じる。ソクララスも「人生の目的は魂の世話をすることである」と言ったようで、自分としては、精神を成熟させるように生きたいと思う。


人生は短く、思索は果てない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0185】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】年寄り女の着るもの/リディア・デイヴィス ○
「年寄りになっておかしな服を着るのを、彼女は今から心待ちにしている」という。筆者の登場人物は、いつも共感しづらい志向や性格である。今回は、老いることがテーマにあるようだが、どうしても共感していない人物の考えや行動だから、自分の中に入ってこない。これがもしがすると大衆であり、リアルなのかもしれないが、中々飲み込めないのが現実である。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ほらふき男爵/辻征夫 ○
考えようによってはユーモラスな詩なのかもしれないが、私自身は、ほらふきをするのもされるのも苦手だから、何だか笑えない感じである。これはお笑いなどにも、通じるのかもしれない。偽悪的に振るまったりする方が、多くの注目を集めるものの、評価は人それぞれになるだろう。

【論考】ほとんど何もできない/池田晶子 ○
「人生は短い。思率は果てない」のであるから、もっと考える時間を増やさなければならないと思った。日々の情報量も加速度的に増え、年々情報消費ばかりになり、自己の中で思考し、出力することが少なくなっていると感じる。一言で言えば、享楽的になってしまったのだ。楽しむことが悪いのではないが、楽しさを求めるだけでは、思考の機会は増えない。


この人生が存在している驚き【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0184】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】問題/リディア・デイヴィス △
XやYと名づけられた多くの存在が示され、それぞれの関係が語られる。論理式験のような文であるが、普通に読んでいては、その間係性はほとんと理解できないだろう。Zなどの記号であるし、ここで物語は展開されないから、読む気も失ってしまうのだった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ちちんぷいぷい/川崎洋 ○
「ちちんぷいぷい」は、自分が子どものころ、また育てている子どもが小さかったころによく聞き、使った。完全に口頭伝承で覚え、使ってきたので、こうして詩として文字にされると、不思議な感覚になる。例えば、人が制服を着るようになって、大人びたり、別人に見えるのに似ているかもしれない。

【論考】当たり前の日々/池田晶子 ○
池田さんは四十歳にして、一番驚いたことは、この人生が存在しているということ、それ自体だという。改めて、池田さんの言葉を読んで、素直に世界を眺めてみると、自分自身が何かを眺められる不思議、また眺めた対象がそうとしか存在しないことに驚く。そうでない可能性もあったのに、そうでしがないのだから。


にじはきれいだが、はかない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0183】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】安全な恋/リディア・デイヴィス
書籍では、わずか5行の超短編小説。息子のかかりつけ医に恋をするという女性。とても情熱的なたぐいの恋だったというが、二人を隔てる障害によって、安全でもあったという。つまりこれは、気持ちはあっても、具体的に発展しないと言いたいのだろうか。人の心の真実と、とっている行動は、また別であるというのはわかる。

【詩・俳句・短歌・歌詞】にじ/川崎洋 ○
全体的にポジティブな内容ではあるが、主語がそれぞれ示されないから、謎めいている。誰が草の中にたたずんでいるのか。質問したり、にじをかけたのは誰(何?)なのか。一方で、にじはとてもはかないものなのも気になってきた。結婚とにじを対比させると、あまりマッチしないのではないか。

【論考】彼の匂い/池田晶子 ○
今回も池田さんがかつて飼っていたコリー犬の話し。内容も思い出など、エッセー的である。なので直接書かれているわけではないが、生命は永遠ではないものの、匂いや毛などは、命を失われた後でも残るのだと思った。そして、言葉であれは、物質ではないから、ある意味、永遠の命を持ち得るのだと気づいた。


走ったり、歩いたり【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0182】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】コテージ/リディア・デイヴィス ○
「1 いっぽう、そのいっぽう」と「2 リリアン」で構成されているが、1で描かれている人物が、リリアンであるかどうかははっきりしない。違う人物であるとすれば、なぜ2つが並べて示されているのだろうか。そして、1も2も、どちらも幸福じゃなさそうに見える。もちろんドラマもない。ただ、そうした人生がもしかしたらリアルなのかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】動物たちの恐ろしい夢のなかに/川崎洋 ○
動物も夢をみるらしく、「動たちの/恐い夢のなかに/人間がいませんように」と終わる詩。動物たちにとって人間が、嫌な存在にならないようにという願いなのかもしれない。ただ、実際に夢を見ると、現実の関係性とは別になることも多いので、何か筋違いな印象がある。

【論考】楽しいお散歩/池田晶子 ○
池田さんが若いころは、体力もあったので、ランニングをしていて、頭も同時に動いていたが、今は散歩のスピードが思考に適切だという話し。自分も走るし、長く歩くのも好きなので、考えるために走ったり、歩いたりが有効だというのとても頷ける。


現象に断絶はない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0181】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】メイド/リディア・デイヴィス ○
ホラー小説のような奇怪な設定。主人公の見た目が悪く、肌はヒキガエルの腹の色だという。母親もやや奇妙で、折り合いも良くない(筆者の描く母と娘は、大体仲が良くないのだ)。また、メイドとして仕えるマーティン様はマスクをかぶっていて、顔が見えなかったり。そして、あちこちのディスコミュンケーションだけが書かれていた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】くるあさごとに/岸田衿子 ○
わずか4行の詩。すべての行が「くる」から始まる。言葉数がそれほど多くないこともあり、メッセージはそれほど明確に理解できていないが、日々、似た行為をくり返して生きていること、そして、そのく返しを尊重しながらも、時に破綻してしまうことを容認しているのだろうか。

【論考】こんなふうに考えている/池田晶子 ◎
「科学が扱えるのは、客観的な他人の死だけだからである。しかし、自分の死を他人の死のように納得できていない証拠には、誰もが死を前にして生の意味を求める。意味などという観察も計測も不可能なものは、科学では扱えない。人は、意味への問いを、科学に求めるわけにはゆかないのである」。「現象には断絶はなく、移行があるだけなのである」。