山も空も青く見える【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0117】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】20光年先の神様/木皿泉 ○
学生時代の不合理で、微妙な人間関係の描き方は、とても上手くいっていたと思う。そこから、友人に死んでほしいと真剣に願う様子も、説得力があった。ただ、最後にほとんど言葉を交わさず和解できるのは、ちょっとご都合主義な印象がある。時を経て変化があったからといって、そんなに簡単に許せないと思うからだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】遠景/木山捷平 ○
たとえば、ここから見える景色は、一通りであろうが、人によって見え方は異なるのだろう。遠くの山と空を見ていても、青ばかりが目に入ってくる人があるかもしれない。受容体としての人間の違いを表現した詩なのだろうか。いずれにせよ、「正しい認知」が存在しないことを理解しなければならない。

【論考】カード・ノート/外山滋比古 △
知的創造性のために、カードやノートをいかに使うべきかを述べている。冒頭に百科辞典なども出てくるので、流石に古い手法だとは思う。現在だと、スマホやデジタル活用の話も加わると思うが、あまりにプラットフォームやツールが増えすぎて、無秩序になっているのが実情ではないだろうか。


ニュートン【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#091】


【3月30日】ニュートン:1642.12.25~1727.3.31

世間の人びとの目に私という人間がどう映るかはわからない。しかし、私自身には、目の前に真理の大海が未知のまま広がっているというのに、私ときたらただ浜辺で遊び戯れ、時おり普通のものよりも滑らかな小石やきれいな貝殻を見つけては喜ぶ子供のようなものだった、としか思えない。

ブルースター『ニュートン伝』1855年(『バートレット引用句辞典』所収、編者訳出

【アタクシ的メモ】
無垢なる知的欲求が、ニュートンの原動力になっていたのだろうか。万有引力の発見は偉大な業績と思うものの、すごすぎて天才の嫌味に聞こえなくもない。


自分とは違う感性に触れる【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0116】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】20/川上弘美 ◎
小学3~4年生くらいの主人公で、視点や思考が年齢に合っているのが、地味な点ではあるものの好印象だった。未成年なのに考えがやけに大人びている小説もよくあり、それは書き手都合だし、リアリティーがなく、作為を感じてしまう。内容自体も、幼いながらも、自分とは違う感性に触れられて、新鮮だったし、心地よかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】単純な朝餐/山村暮鳥 ○
パッと読むと、ちょっとアジテーションぱい感じもするが、家族との朝食に感謝したり、喜びを感じたりする、清らかな詩である。もしかすると、ここに、親の優しさや自然に対して感じる有り難さを盛り込めたら、もう少し立体的な感触が増したのではないか。

【論考】スクラップ/外山滋比古 ○
新聞などの切り抜きを、どのように扱えばヨイのかという話。紙が前提になっているので、単純に考えると、今だとやや古い内容になるが、メディアの特性を考慮しながら、管理の方法を検討するという点では、普通的だとも言える。ただ現在は、情報やプラットフォームが多すぎて、管理していな人が大半かもしれない。


ヴェルレーヌ【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#090】


【3月30日】ヴェルレーヌ:1844.3.30~1896.1.8

秋の日の
ヸヴィオロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。

鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。

げにわれは
うらぶれて
ここかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな。(「落葉」)

上田敏『海潮音』(『上田敏全訳詩集』山内義雄他編、岩波文庫、1962年より

【アタクシ的メモ】
ネットで調べてみると、訳者が音数を意識しながら翻訳していると評価しているものがあった。確かに、とても悲しい詩であるが、リズミカルである。


一神教が抱きがちな誤謬なのだろうか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0015】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】悪い春/恩田陸 ○
今回は不条理系ではなかった。その点では読みやすいと言えるだろう。会話がとても多くなっている。登場人物にりアリティーがあるのに好感はもてるが、ややチープな文体な印象もあった。今どきの言葉使いを多用すると、どうしても軽く感じてしまうだろう。また、この小説のメッセージも理解できぬまま終わってしまった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】誰か/宗左近 △
ここで言う「誰か」は、神や創造主を指しているのだろうか。歴史や文化の不思議を詩にしていると解釈しているが、一元的な主体を想定している点で、個人的にはどうしも偏りがあると感じる。作者は、何らか一神教の信者なのかもしれない。今これを読むと、私には違和感が大きいというのが正直なところである。

【論考】情報の“メタ”化/外山滋比古 △
この論考でのメタ化を一言で言うと、抽象度を上げるということのようだ。それが全くの間違いだとは思わないものの、私は視点や位相を変える高めることだと考えているので、何だか芯を食っていない感じがする。要約や目次もメタ化の一つになっているようなので、ちょっとお手軽すぎる部のではないか。


ディドロ【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#089】


【3月29日】ディドロ:1713.10.5~1784.7.31

ラブレーの修道士の知恵は、自分の安泰のためにも、ほかの人々の安泰のためにも、本当の知恵ですよ。曲がりなりにも自分の義務を果たし、いつも僧院長さんのことをよく言い、世界を勝手気儘に運行させておくという奴です。それで大部分の者が満足するんだから、世界は丸く納まるわけでさ。わしがもし歴史を知っていたら、悪はいつでも誰か天才の手をへてこの地上にやって来たということを、あんたに証明して見せるだがなあ。

『ラモーの甥』本田喜代治・平岡昇訳、岩波文庫、1964年

【アタクシ的メモ】
何度も読んだが、真意は理解できなかった。賢く優秀な人ほど悪さを起こし、無為な人の方が安泰や満足をもたらすといことか。


言葉によって月から地球を見る【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0114】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】十二面体関係/円城塔 △
20人の登場人物が、名前と番号とともに、10行程度で説明されるという独特な文章。小説というよりは、調書のよう。なので感情移入もできないし、一人の人物を三名がそれぞれ殺したと証言するなど、合理性も整合性もない内容である。今回も読むのが苦痛だった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】月から見た地球/北原白秋 ○
自分なりに、言葉を丁寧に追っても、あまり像が結ばなかった。私にとっては、言葉がよそよそしい感じである。月から見た地球というくらいなので、壮大な視点ではあるが、何か空想的な表現が続いているからだろうか。地球創生を語っているようだが、一点にフォーカスした方が伝わってくるように思う。

【論考】セレンディピティ/外山滋比古 ○
今回は、偶然の出会い、思わぬ獲得について。あくまで自分の感覚であるが、現在のように情報爆発の時代は、かえってセレンディピティは起こりづらいように思う。一つひとつの情報が軽んじられがちだし、情報消費に精一杯で出会いと感じづらいからだ。「寝させる」など、時間的な猶予も大切ではないか。


ゴーリキー【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#088】


【3月28日】ゴーリキー:1868.3.28~1936.6.18

幼年のころ、わたしはみずから自分を蜂の巣のように想像した。さまざまのなんでもない、ごく平凡な人びとが、生活についての自分の知識や思考の蜜を蜜蜂のようにそこへ運んできては、だれでもできるものでわたしの精神を惜しげもなく富ましてくれるのだ。しばしばこの蜜はきたなく、またにがいことがあったけれども、あらゆる知識は――やっぱり蜜であった。

『幼年時代』湯浅芳子訳、岩波文庫、1968年

【アタクシ的メモ】
ゴーリキー自身の知的好奇心について、書かれているのであろうか。現在のように情報過多の時代ではないと思うので、きたなく、にがい知識もきっと喜んで受け取っていたのではないか。


未知を解く類推のカ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0113】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】蒸籠を買った日/江國香織 △
今回も(?)不条理小説で、ちょっとうんざりしてしまった。理にかなっていない物語を読むのは、何かの魅力など、読む理由がないと成り立たないと思う。その点でいえば、ただただ不可思議な状況が続き、解釈できぬまま終わってしまった。主人公の私は、何に共鳴したのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】朝を愛す/室生犀星 △
朝活をすすめる啓発本のような詩である。言葉便いが、やや古いこともあってか、文字がなかなか頭に入ってこなかった。読み終っても、余額のようなものもなく、何だかまくし立てられた気分になってしまう。タイトル通り朝を愛しているのなら、もっと別の表現があったのではないか。

【論考】アナロジー/外山滋比古 ○
『思考の整理学』を読んでいるわけだが、毎回、同じようなことを少しずつずらして言っているように感じてきた。もちろん、悪い意味ではない。今回は、似ている形式、構造から類推することを紹介している。単純と言えば、単純ではあるが、暗記に頼る知性の人にはできない方法ではある。


大伴家持【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#087】


【3月27日】大伴家持:717頃~785.8.28

春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女

春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鶯鳴くも

うらうらに照れる春日にひばりあがり情悲しも独りしおもへば

『万葉集』(4)(『日本古典文学大系』7、高木市之助ほか校注、岩波書店、1962年

【アタクシ的メモ】
短歌は苦手だし、古文も苦手。なので、現代語訳なども参照したが、どれも一瞬の情景や心情を描いていて、とても美しいと感じた。特に「春の野に霞たなびき」は、語感も含め美しく、じんわりとした気持ちになる。