言葉だけが持つ豊潤さ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0078】


【短編小説】星と聖人/ルシア・ベルリン ◎
前作「ドクターH.A.モイニハン」と、登場人物が同じようだ。「シスター・セシリアを殴って退学になった」とあったが、本作では退学になるまでが書かれている。「わたし」は、同級生から好かれておらず、シスターからも誤解されていた。周囲に馴染めていない、ちょっとイタイ少女ではるが、あっけらかんとして、変な湿っぽさがなく、コメディー的に読めるのがヨイところだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ひとり林に……/立原道造 ○
どんどんと地域が都市化され、ネット空間が膨大になってきている現在に読むと、自然を謳う詩は、それだけで貴重に感じる。そして、たとえば動画のようなもので自然を見せられるよりも、臨場感が感じられるから不思議だ。言葉は、目には見えないものも表現できるからだろう。

【論考】喜劇と悲劇について/森本哲郎 △
題名を見てかなり期待して読んだが、あてが外れてしまった。『ドン・キホーテ』の解説的な話がずっと続き、『白鯨』のときよりはわかりやすかったものの、結局、喜劇と悲劇という命題にはつなげられていないと思う。助走ばかり長く、一瞬で結論に行こうとしすぎではないか。