家族に歴史アリ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0092】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】喪の仕事/ルシア・ベルリン ◎
人が亡くなり、残された家族と家、片づけをする掃除掃の物語。語り手である掃除場の「わたし」という現在の視点と、残された子供たちのこれまでの経緯が交錯する感じが、リアリティーを醸し出す。家族には、小さくでも歴史があるのだなあと改めて思い出され、切ない気持ちになった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】夕方の三十分/黒田三郎 ◎
恐らく父子家庭の夕方の一コマ。詩は夕食の用意から始まるが、段々と混乱をきたしてくる。そして、父と娘は小競り合いを起こし、食事をとることで平穏になっていく。我が家だともう少し登場人物が多くなるものの、どの家庭にも見られる風景ではないだろうか。視点が自分たらと同じ高さなのがヨイ。

【論考】意見/池田晶子 ◎
「君は、意見なんてものをもつべきではない」と筆者はいう。私たちがすべきは、誰にとっても正しい、本当の考えを自分で考えて知ることだけだとも語る。改めて言われてみると、その通りだと納得するのではあるが、日々の生活ではほとんどそうできていないことを反省する。私たちが持つべきは意見ではなく、(正しい)考えなのだ。


菊池寛【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#066】


【3月6日】菊池寛:1888.12.26~1948.3.6

芸術のみにかくれて、人生に呼びかけない作家は、象牙の塔にかくれて、銀の笛を吹いているようなものだ。それは十九世紀ころの芸術家の風俗だが、まだそんな風なポーズを欣んでいる人が多い。
文芸は経国の大事、私はそんな風に考えたい。生活第一、芸術第二。(「文芸作品の内容的価値」)

『新潮』大正11年(1922)7月

【アタクシ的メモ】
人が生きて死んでいく中で、経済活動も重要だが、文芸など文化的な活動も不可欠だと思う。また、生活第一、芸術第二にも同意である。作家は、人生に呼びかけることが大事だという考えにも共感する。


あなたとしずかにむかいあいたい【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0091】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】マカダム/ルシア・ベルリン ○
題名のマカダムは、フランス語で砕石という意味のようだ。ただ、小説を読むだけでは、全く想像もできず、検索してやっと分かった。小説自体もわずか1ぺージちょっとなので、詩に近い印象。ストーリーというよりも、砕石のイメージやそれにまつわる風景が書かれていた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ふゆのさくら/新川和江 ○
全編、ひらがなだけで構成されているため、まずとても読みづらく、理解しづらかった。「わたくしもあなたもえいえんのわらべで」という部分を意識してのことなのだろうか。「あなたとしずかにむかいあいたい」の箇所が、個人的には好印象であった。

【論考】性別/池田晶子 ◎
男性と女性の違いは、肉体の違いにすぎないと言い切り、人間として本質的な問いの前に男か女かは全く関待ないと指摘する。そうした意味でフェニミズム的な文脈も、相対的なこととしている。「人間はみな自由だ。不自由なのは、必ず自分のせいなんだ」という文が、心に残った。


杜甫【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#065】


【3月5日】杜甫:712~770

国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす(「春望」)

都は打ち壊されても山河は存する。城内は春になって草木が生い茂る。
時節に心は痛み、花を見ても涙がこぼれ、別離を悲しみ、鳥の囀りにも心はおののく

『新編 中国名詩選』(中)、川合康三編訳、岩波文庫、2015年

【アタクシ的メモ】
「国破れて山河在り」というフレーズは、不思議なほど、自分の中にずっと残っていて忘れない。杜甫がこの詩を詠んだときの気持ちと、全くシンクロするのかどうかは定かではないが、自分なりに新たな気持ちを呼び起こすのではないか。


「自分」という存在が、自ずと個性を生む【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0090】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】バラ色の人生/ルシア・ベルリン ○
二人の少女の若さゆえの破天荒さ、甘さを描いたストーリー。大人から厳しく接しられていても、それをかいくぐる様子も書かれているから、少女たちの道徳的ではない青春時代を肯定しているのだろうか。ただ、スノッブな感じもあって、私自身は共感しづらかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】葉月/阪田寛夫 △
タイトルは葉月(8月)だが、季節感の描写がないので、タイトルの意図は分からないまま。詩の内容は(恐らく)恋人が来なくて、死んでしまいたいと嘆いている。なぜか舞台は関西で、言葉も関西弁である。これも、作者の意図は理解できなかった。

【論考】個性/池田晶子 ◎
自分が存在し、自ずからそういうふうになることを、個性だと筆者は説明する。自分探しとして、自分らしさを求めることで、かえって個性を失っていくという。これは、「本当の自分」というワナのように思う。あるがままを、自分がまず受け入れることが大切なのだろう。


孔子【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#064】


【3月4日】孔子:前551~前479

暮春には、春服既に成る。冠する者五、六人、童子六、七人、沂に浴し、舞雩に風し、詠じて帰らん。夫子、喟然として歎じて曰く、吾れは点に与せん。(『論語』先進)

春四月ともなれば、春の装いに着かえ、若者五、六人、子供六、七人をひきつれて遊山に出、沂水の川で浴し、舞雩の広場で風に吹かれ、歌を口ずさみながら帰ってきましょう。それを聞いた孔子が深い歎息をもらして、曰く、私は点に賛成だ。

『現代語訳 論語』宮崎市定、岩波現代文庫、2000年

【アタクシ的メモ】
「春になれば、その時の装いを着て、周りの若者や子供たちと山へ出かけ、歌をうたいながら家路につく、そうした平凡な日常を送るりたい」と語った弟子に対して、孔子もそれに同調したいと語ったようだ。


言われてみるとその通りだと思う【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0089】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ステップ/ルシア・ベルリン ◎
最後の一文、「お願い神さま、どうかあたしを助けて」をいうための短編小説に感じた。舞台は、またもやアルコール依存症のための施設のようだ。皆で、ボクシングのタイトルマッチを観覧しているのだが、誰かを応援しているようで、結局、最終的には自分へ戻ってくる。あたしを助けてという願いが切ない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】僕はまるでちがって/黒田三郎 ○
「僕はまるでちがってしまったのだ」という。昨日と同じようだけれど、違ってしまったのだという。この詩だけを読んでも、どう違ってしまったのか、なぜ違ってしまったのかはわからない。僕が変化していることだけが示されている。白い美しい蝶がいるということは、きって良い変化となのではないだるうか。

【論考】友愛/池田晶子 ◎
友情と愛情は異なること、愛は好き嫌いを超えていて、それがそこに存在することを認めることだと、あっという間に理解してしった。存在を受け入れることで、嫌いという感情を持ちながら、愛することができるのだ。言われてみるとその通りだと思うことも、実際に言ってもらわないといけないのは、どういうことなのだろう。


欠如を抱き他者から満たしてもらう【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0088】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ティーンエイジ・パンク/ルシア・ベルリン ○
一枚のスナップ写真を撮ったような短編小説に感じた。ある意味、飛び石のような描写で、緻密さとは対極にあるが、それが読んだ時の心地良さを生んでいる。ただ、状況を理解するのが難しいという欠点もあり、今回も2回読んだが、事実関係を把握しづらかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】生命は/吉野弘 ◎
表現しづらい世界の真実を、丁寧な筆致で描いた詩だと感じた。「生命は/その中に欠如を抱き/それを他者から満たしてもらうのだ」が、個人的なハイライト。私たちが「欠如」を自覚し、他者から頂戴することに感謝することの大切さ。これは、生命の再発見と言えるのではないか。

【論考】ことばの果てについて/森本哲郎 ○
ことばの果てについては、とても興味がある。この論考では、言いおおすか言いおおせていないかの違いを細かく検証した感じであろうか。言いおおすことで、ことばを越えた世界を表現すると筆者は語るが、人間はことばを越えられるのかという点も検討してもらいたいと思った。


D.H.ロレンス【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#062】


【3月2日】D.H.ロレンス:1885.9.11~1930.3.2

翌日彼女は森へ出かけた。曇った、静かな午後で、暗緑色の山藍が榛の矮林の下に拡がっていた。すべての樹木は音も立てずに芽を開こうとつとめていた。巨大な槲の木の樹液の、ものすごい昂まり。上へ上へと騰がって芽の先まで届き、そこで血のような赤銅色の、小さな焔かとも思われる若葉となって開こうとする力を、彼女は今日は自分のからだの中に感じた。それは上へ上へと脹れあがり、空に拡がる潮のようなものだった。

『完訳 チャタレイ夫人の恋人』伊藤整・伊藤礼訳、新潮文庫、1996年

【アタクシ的メモ】
森の情景描写かと思わせていたら、昂まりを「彼女のからだの中」に移行(スライド)させ、空に拡がる潮に例えるのだった。巧みな展開に感じる。


骨の手応えや血のぬめり【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0087】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】セックス・アピール/ルシア・ベルリン ○
「わたし」の従姉は、西テキサス一番の美人。ベラ・リンは、ただただきれいで、周囲の男性の視線を一身に集めてしまう。また、有名人と付き合おうと、まだ少女である「わたし」を、なぜか巻き込んでしまうのだ。そして、そのために性的な扱いをされるのだが、そこがドライに書かれていて不思議な印象が残った。

【詩・俳句・短歌・歌詞】儀式/石垣りん ○
母親は成長した娘に、魚を捌くときの骨の手応えや血のぬめりを伝えなければならないと説く。それはそうだろうと思うと同時に、それが母親と成長した娘でなくてはならないのはなぜなのかとも思う。全く男子が登場しないことに、違和感も感じる。

【論考】常識について/森本哲郎 ○
日本の社会が、常識の名において、問題を解決変できる状態になく、イギリスのコモン・センス(常識)やフランスのボン・サンス(良識)とは異質だという指摘は重要だと思った。日本における常識とは、同調圧力に近いように感じる。また最近では、人々に共通認識と言えることが乏しく、社会全体が断絶しているのではないか。