30年間変わらないこと【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0122】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ブリオッシュのある静物/原田マハ ○
原田さんらしい作品なのかもしれない。芸術品を通じて祖母と娘、祖母の友人とのやり取りを描いている。ただ、割と簡単に医者になったりするのが、何とも安易な感じがしてしまう。自由自在に生きている人のストーリーに見えて、ちょっと共感しづらいのだ。作品も名前を出すだけの感じで、感情移入できない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】妻/大木実 ◎
30年間暮らしてきた妻に対する愛情を伝える詩。同性としては、やや気恥ずかしさも感じるが、自分の本音をそのまま語っているようで、とても清々しい。ただ、配偶者だけでなく、家族に対して、同じ気持ちを持ち続けるのは、実際は至業の業。20年に満たぬ自分は、どうやって暮らしてきたのだろうとも思ってしまった。

【論考】忘却のさまざま/外山滋比古 ○
「ひとつことに、こだわっていると、かえってできるものまで、できなくなってしまう」ということで、様々な忘れ方や頭の切り替え方を解説している。実践的な内容ばかりであるが、忘れることは十分条件でしかなく、必要条件とは言えないのではないか。手法に乗っ取っても、上手くいかないこともあるだろう。


ホッブス【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#096】


【4月5日】ホッブス:1588.4.5~1679.12.4

第一に、私は、全人類の一般的性向として、つぎからつぎへと力をもとめ、死においてのみ消滅する、永久の、やすむことのない意欲を挙げる。そして、このことの原因は、かならずしもつねに、人が、すでに取得したよりも強度のよろこびを希望するとか、ほどよい力に満足できないとかいうことではなくて、かれが現在もっている、よく生きるための力と手段を確保しうるためには、それ以上を獲得しなければならないからなのである。

『リヴァイアサン』(1)、水田洋訳、岩波文庫、1992年

【アタクシ的メモ】
人間の成長欲求というか、場合によっては、人間における資本主義的な意欲の際限のなさを表現しているのだろうか。


目に見えないことの憂鬱【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0121】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ウエノモノ/羽田圭介 ○
結論だけ言ってしまうと、リアルなつき合いは、相性があってもあわなくても、相手の感じ方に変化を与えるということか。正直、途中のエピソードの多くに、必然性を感じなかったが、最後の結末だけは、とても納得できた。一方で、実生活で私は下の階の方から直接、騒音を指摘されているのだが、顔を見ていてもほとんど納得していないし、仲違いのまま。小説のようにはならないのだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】男について/滝口雅子 △
自分は自身の性である男性を誇る気持ちはないけれど、「男は」という大きな主語で表現、規定されるのは、正直とても気分が悪かった。「女が自分のものだと/なっとくしたいために」という一節もあるが、こんなことを私は考えたこともなく、濡れ衣を着せられているようにしか思えないのである。

【論考】整理/外山滋比古 ○
自分が年齢を重ねて、忘れることが恐くなった。生活が上手くいかなくなりそうだし、人に対して不義理を働きそうだからだ。しかし、筆者は「頭をよく働かせるには、この“忘れる”ことがきわめて大切である」という。忘れることで、頭が爆発せず、整理できるのだそうだ。


モーツァルト【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#095】


【4月4日】モーツァルト:1756.1.27~1791.12.5

死は(厳密に考えて)われわれの一生の真の最終目的なのですから、私は数年この方、人間のこの真の最善の友としてとても親しくなって、その姿が私にとってもう何の恐ろしいものでもなくなり、むしろ多くの安らぎと慰めを与えるものとなっています! そして、神さまが私に、死がわれわれの真の幸福の鍵だと知る機会を(私の申すことがお分かりになりますね)幸いにも恵んで下さったことを、ありがたいと思っています。私は、(まだこんなに若いのですが)もしかしたら明日はもうこの世にいないのではないかと、考えずに床につくことは一度もありません。(1787年4月4日付、父宛書簡)

『モーツァルトの手紙』(下)、柴田治三郎編訳、岩波文庫、1980年

【アタクシ的メモ】
人が生きて死ぬことは必然である。とは言え、モーツァルトが若いころから、それを強く意識していたことに少し驚いた。死を身近に考えていたことが、音楽の創作活動にどのような影響があったのが、気になるところである。


僕は妻と娘をかわいいと思う【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0120】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ペチュニアフォールを知る二十の名所/津村記久子 △
旅行代理店の担当者が、おすすめの旅先として語るペチュニアフォール。実在する土地なのか、しないのかは定かではないが、場所ごとにエピソードが語られるので、何ともストーリーが有機的に立ち上がってこない。これは先の「十二面体関係」と同様。あちらよりは読みやすかったが、読み進める気持ちが出づらかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】君はかわいいと/安水稔和 △
二度ほど読んだ。何となくは理解できるが、作者の意図はストンと腹に落ちない。なぜ「かわいい」という言葉が、君とぼくの間をゆききしたがらないのだろうか。ぼくが、君のことをかわいいと思っているのなら、素直にその言葉で表現すれがヨイのではないか。

【論考】メタ・ノート/外山滋比古 ○
前回の通り、自分の頭に浮かんだことを、手帖やノートに書き留める。そうして寝さしたものを、また別ノートに移すのをメタ・ノートと呼ぶそうだ。ただ、個人的にはメタというより、選抜と言った方が正しく感じる。最近の膨大なデジタルデー夕を考えると、きちんと選別して、紙に集約した方が扱いやすいかもしれない。


李賀【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#094】


【4月3日】李賀:791~817

長安に男児有り
二十にして 心已に朽ちたり
楞伽 案前に堆く
楚辞 肘後に繋かる
人生 窮拙有り
日暮 聊か酒を飲む
祇だ今 道已に塞がる
何ぞ必ずしも白首を須たん

長安の一人の男。
二十にして心はすでに朽ちた。
楞伽経を机の前に積み上げ、
楚辞を手元に置く。
人生、行き詰まることがあり、
日暮れてまずは酒でもあおる。
今この時、道はもう先がない。
白髪になる時を待つこともないのだ。(「陳商に贈る」)

『新編 中国名詩選』(下)川合康三訳、岩波文庫、2015年

【アタクシ的メモ】
20歳で心が朽ちるというのが、なかなか想像できなかったが、李賀本人のことを詠ったようだ。若くして天才と呼ばれ、能力も高かったが、科挙の受験を拒まれ出世の道を断たれ、失意のまま27歳で亡くなったという。


「人生には正解がない」【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0119】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】いまニ十歳の貴女たちへ/白石一文 △
「人生には正解がない」と語る小説というよりは、スピーチのような文章。語っている主体は誰なのか全く分からない。筆者本人なのか、神のような超越者なのか、定かではないのだ。主語を明確にしないまま、不倫は悪とは言えないと明言されても、読み手としては偏った意見にしか感じられないのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】嫁こ/斎藤庸一 △
こんなお嫁めさんが欲しいといったことを、ある意味、真正直に語っているのだろう。私自身も若いころ、まだ結婚を真剣に考えていないくらいの年齢の時に、理想の相手を夢見たかもしれない。ただ、既に結婚もし、令和の時代に読む女性差別的な印象を感じてしまうのだった。

【論考】手帖とノート/外山滋比古 ○
考えが浮かんだら、寝させておくために、手帖ノートに記録しておくべきだという。単にメモするのでなく、データ・ベースに貯めるようして、ちゃんて整理、管理する方法を示している、これで書かれたころは、一定の効果があったと思われるが、スマホ時代にある現在だと、手法としては、すべて塗り替えられてしまったように感じる。


アンデルセン【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#093】


【4月2日】アンデルセン:1805.4.2~1875.8.4

そのとき、貧しい家の子供たちのうちでいちばん下の子がはいってきました。それは小さい女の子でした。その子は兄さんと姉さんの首にかじりつきました。なにかとても大事なことを話しにきたのです。でもそれは、ないしょで言わなければならないことでした。「あたしたち、今夜ね――なんだと思う?――あたしたち、今夜ね。あたたかいジャガイモがたべられるのよ!」
そして女の子の顔は幸福に光りかがやきました。ろうそくがその顔をまともに照らしました。(「ろうそく」)

『完訳 アンデルセン童話集』(7)、大畑末吉訳、岩波文庫、1984年

【アタクシ的メモ】
あたたかいジャガイモを食べられことが、幸せにつながるというのが、今の日本と状況が違いすぎる。私自身も過去に、多少食べ物に困ったこともあったが、そんなのたかが知れているので、食事ができることの有難さが、身に染みていないかもしれない。


理性や言葉に性別は関係しない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0118】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】マダガスカル、バナナフランベを20本/桐野夏生 ○
ヨイ意味で癖がなく、読みやすい文章だというのが第一印象。ストーリーも別れ話を切り出そうとする女性が、何だか別の方向に行ってしまうという感じが、日常感もあり面白かった。とは言え、歌が下手な人が、ステージで歌い続けるなど、納得しづらいンテューシュもあり、後半は少し興が削がれた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】海鳴り/高良留美子 ○
女性性について詠んだ詩なのだろうか。自分は男性なこともあり、比喩的な表現を含めて、内容があまり理解できていないように思う。理性や言葉は性別に関係ないと考えているので、女性らしさの詩であっても、性別を問わない表現にしてもらえるとよかったのにと感じた。

【論考】つんどく法/外山滋比古 ○
つんどく法とは、自分が調べたいテーマに関する書籍を片っ端しから集め、メモも取らず次々と読んでいく方法だという。前回は、メモを取ることを前提にしていたが、この方法では自分の記憶力を信じて、とにかくインプットを増やすようだ。自分はメモがやや苦手なので、無意識につんどく法をやってきた感じである。


チェ・ゲバラ【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#092】


【4月1日】チェ・ゲバラ:1928.6.14~1967.10.9

僕はこの地に、僕を息子のように受け入れてくれた国民を残し、僕はこの地に、僕自身の一部を残して行く。僕は、新しい戦場に、君が僕に吹き込んでくれた信念と、わが国民の革命魂と、もっとも神聖な革命家としての義務を果たすための良心をたずさえて出かける。帝国主義のあるところ、いたるところで戦う。それが僕の決意を固め、僕の苦痛を柔らげよう。(「フィデル・カストロ宛書簡、1965年4月1日」

『ゲバラ 革命の回想』真木嘉徳訳、筑摩書房、1971年

【アタクシ的メモ】
革命魂がチェ・ゲバラの原動力であり、行為することが意志を強め、ある意味でストレス解消にもつながるのだろう。