海だけは終わらないのだ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0165】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】設計図/リディア・デイヴィス ○
ある土地、ある家、ある友人に対して、執着する主人公。環境や状況は良くなくても、そこから去ることができない。最後まで、自分が夢みた場所にこだわり続ける。ただ、それは周囲の誰からも望まれていないとしても。最後に、夢うつつのような中で、幸福を感じており、幸せとは自らが生み出すものだと改めて感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】かなしくなったときは/寺山修司 ◎
「かなしくなったときは/海を見にゆく」という。自分は海まで2~3kmの距離に暮らしているから、目に触れる機会は比較的多いと思う。確かに、海を見ていると、不思議と落ち着いたり、ある意味で充足感のようなものを感じる。作者が「人生はいつか終るが/海だけは終わらないのだ」と言う通り、終わりがない存在だからなのか。

【論考】「現実」という夢/池用晶子 ○
「『本当にあったこと』は、『夢』と『現実」のあわいに消えていく」と、筆者は語るが、最近になって私も、それをよく実感している。現実に起きたことの記憶が、とてもあいまいだからである。また、全くの記憶違いも何度も経験している。夢と現実を混濁するのではなく、生(=現実)の意味を問わなければならないのかもしれない。


へラクトレイトス【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#139】


【5月18日】へラクトレイトス:前535頃~前475頃

魂の際限は、どの途をたどって行っても、君は見つけ出すことはできないだろう。それほどにも深いロゴス(理)を魂はそなえているのだ。(「へラクトレイトス)

ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』(下)、加来彰俊訳、岩波文庫、1994年

【アタクシ的メモ】
最近はロゴスや理(ことわり)について、考えることが多い。何が正しいかではなく、理にかなった行動が必要だと感じる。正しさは突き詰めると、相対的であり、理に従った方が普遍性が高いと思うからだ。


死体と死は違っている【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0164】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ある人生(抄)/リディア・デイヴィス △
ある人、「私」の人生を抜き書きした体裁。あまり連続性があるわけでもないので、この人がどんな人なのか、どんな性格なのかといったことも、あまりイメージできないままである。メッセージとしては、最後にある通り、やりたいことをやって生きろということなのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】Diamond ダイヤモンド/寺山修司 ○
「ほんとうに愛しはじめたときにだけ/淋しさが訪れるのです」と、作者は言う。それに反論したいわけではないが、私自身はあまり共感できない。愛することで、淋しさが生まれるのだろうか。少なくとも、自分にはそうした実感はないから、上手く飲み込めずにいる。また、タイトルのダイヤモンドもわからなかった。

【論考】「聖なるもの」の行方/池田晶子 ○
私たちは、死体を見たり、葬儀に参列することで、死を理解したように感じるが、「死体と死は同じものではない」と筆者が言うように、生きている人にとって死とは、絶対に分からないものなのである。死を医学的、科学的に規定することは可能であろうが、死は生と対極にあり、死んだことのない我々にとって不可知なのだ。


ノヴァーリス【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#138】


【5月17日】ノヴァーリス:1772.5.2~1801.3.25

わたしたちは、宇宙を旅することを夢みている。だが宇宙は、わたしたちの内にあるのではないか。わたしたちは精神の深みを知っていない——内に向かって神秘にみちた道が通じている。ほかならぬわたしたちの内にこそ、永遠とその世界——過去と未来があるのだ。(「断想」)

『青い花』青山隆夫訳、岩波文庫、1989年、解説より

【アタクシ的メモ】
カントの「我が上なる星の輝く空と我が内なる道徳律」と似た言葉だろうか。「わたしたちの内にこそ、永遠とその世界——過去と未来があるのだ」というのは、私も同意する。


人間が作れる一番小さな海【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0163】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】手紙/リディア・デイヴィス ◎
別れた男女、その女性が主人公。男性は不在だが、痕跡を追うように、男性に近づこうとする。未練と言えば簡単だが、女性の感情表現はほとんど示されず、小さな行動が丹念に描かれている。あより抑揚がない、いつも通りの淡々とした文章によって、かえって女性の情緒が表現されているように感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】一ばんみじかい抒情詩/寺山修司 ○
「なみだは/にんげんのつくることのできる/一ばん小さな/海です」。これが詩の全文。確かにと、納得する半面、作者は「海」を何ととらえているのだろうか。単純に一定量の液体ということではないだろう。また、読み手にとって「海」は、何を想起すると考えているのか。端的に言って、美しい詩だと思うが、読者とのかけ橋があいまいにも感じる。

【論考】表微の部屋/ロラン・バルト ○
何度か読んだが、きちんと理解できていない。日本は、「空間の特殊な構造化がおこなわれている」という。どこが特殊なのか判然としないものの、西洋と違って境界があいまいで、装飾がほとんどないということか。それは、文明が未発達だったということより、神(一神教)の不在が大きな理由だと思う。


エックハルト【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#137】


【5月16日】エックハルト:1260頃~1327

苦しむことほど苦いものはない。しかし苦しんだことほど甘美なこともない。世間では、苦しむことほど身を醜くするものはないが、逆に神の前では、苦しんだことほど魂を飾るものはないのである。(「離脱について」)

『エックハルト説教集』田島照久編訳、岩波文庫、1990年

【アタクシ的メモ】
神の前では、苦しむことで魂を磨き上げられるということか。偶然にも本日5月16日に、自分を苦しめるようなことが起きたが、自己の魂を鍛錬すると思って、日々を過ごしたい。


ひったへにびっくり【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0162】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】鼠/リディア・デイヴィス ○
その家には鼠がおり、罠を仕掛けて捕まえ、罠ごと雪が積もる屋外に捨ててしまうという話。文章がいつも通り淡々としているし、シチュエーションの違う場面が、ある意味でぶっきら棒につなげられているため、とても不思議な読後感である。著者のメッセージは、把握できなかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】えかきうた/谷川後太郎 ○
これは、ビジュアル詩と言った方がヨイのかもしれない。「ひ」「へ」「び」で「ひった/へに/びっくり」した顔が描けるからだ。また、この時も、意味本意な詩ではなく、とても短いが言葉遊び的な要素が強く、ユーモアを感じる。こうした詩はどうしても幼い感じもあるが、個人的には好みである。

【論考】暴力の表現体/ロラン・バルト △
全学連について。「暴力以前の力を統御することこそが大切である」「全学運の暴力は暴力それ自身の調整に先行しない。調整と同時に発生する」といった個所が気になった。全体を読んで、今回も理解に苦しんだが、全学運は暴力が目的化しており、逆から言えば、暴力を行使する理由が希薄だと言いたかったのだろうか。


シレジウス【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#136】


【5月15日】シレジウス:1624.12.25~1677.7.9

薔薇はなぜという理由なしに咲いている。薔薇はただ咲くべく咲いている。薔薇は自分自身を気にしない、ひとが見ているかどうかも問題にしない。

『シレジウス瞑想詩集』(上)、植田茂雄・加藤智見訳、岩波文庫、1992年

【アタクシ的メモ】
自然は無為であるということ。ただ人間は、自然や無意味に見える事柄にも、理由や意味を見い出そうとする。それは知的捏造であり、一方で探求でもあるのだろう。


意味本意の詩からの脱走【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0161】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ミルドレッドとオーボエ/リディア・デイヴィス ○
ミルドレッドは、女性の名前のようで、一人称で語る私を含め、このミルドレッド以外は名前が出てこない。アパートの住人はやや変わった人たちばかりみたいに描かれている。一方、「私は善良な市民で、母親で、私は早く寝る」と述べられているが、それをどこまで信じてヨイのかは、短い小説でもあり、よくわからない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ののはな/谷川俊太郎 ○
冒頭は「はなののののはな」から始まる。正直、きちんと読めなかったが、調べてみると、「花野の野の花」のようだ。花野という言葉を知らなかったので、読めないのも当然だったのだろう。作者の意図としては、あまり意味本位な詩にしたくなかったらしい。もちろん、それは成功していると思う。

【論考】瞼/ロラン・バルト △
筆者は、日本人の目が特別だと語る。これまで通り、正直、説明されていることは、よく分からないままである。一部引用すると、「眼は、裂け目のなかで自由である」そうだ。ただ、分からないなりに読んで解釈すると、彫りが深い西洋人とは、目つき、顔つきが違っていると言っているにすぎないのではないか。


斎藤茂吉【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#135】


【5月14日】斎藤茂吉:1882.5.14~1953.2.25

あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり

かがやけるひとすぢの道遥けくてかうかうと風は吹きゆきにけり

野のなかにかがやきて一本の道は見ゆここに命をおとしかねつも

『斎藤茂吉選集』第1巻、柴生田稔・佐藤佐太郎編、岩波書店、1981年

【アタクシ的メモ】
道に関する歌。そこに自分の運命を見たり、風がそよそよと吹き抜けていたり。