「日本は北朝鮮より怖い」の真意【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0140】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】しおかぜ/櫻木みわ ○
最初の読み始めは、ほとんど集中できず、文章も頭に入ってこなかった。だが、特定失踪者問題調査会のラジオ放送「しおかぜ」についての小説だと分かると、俄然、注意力が高まった。そして、失踪者の家族が語る「日本は北朝鮮より怖いんじゃないか」という発言を聞くに至り、無作為の日本が目の前に立ち現れてきて、急に恐ろしい気持ちになるのだった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】幻の花/石垣りん ○
作者の真意まで読み解けた感じはないものの、人が人生を重ねる中で、経験や記憶が積み上がり、一つの事象であっても複層的に見えることを詠んだ詩ではないかと思った。でも、まぼろしの花の意味や、なぜ今年の花を連れ去るのか、私は何の手に引かれているのかなどは、不明なままであった。

【論考】沈黙の言語/ロラン・バルト △
まだ始まったばかりだが、相変わらず理解できないまま読んでいる。この物言い(翻訳?)にも、いつか慣れるのではないかと思ってのことだ。今回は、日本語は非言語的なコシュニケーションの領域が広いということのようだ。一方、西洋ではコシュニケーションは言語(のみ)で行われるという。この辺りは、よく言われてきたことなので、新発見ではないだろう。


シェークスピア【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#114】


【4月23日】シェークスピア:1564.4.23~1616.4.23

明日、また明日、また明日と、小刻みに一日一日が過ぎ去っていき、
定められた時の最後の一行にたどりつく。
きのうという日々はいつも馬鹿者どもに、
塵泥の死への道を照らして来ただけだ。
消えろ、消えろ、束の間のともし火!
人生はただ影法師の歩みだ。
哀れな役者が短い持ち時間を舞台の上で派手に動いて声を張り上げて、
あとは誰ひとり知る者もない。

『マクベス』木下順二訳、岩波文庫、1997年

【アタクシ的メモ】
「人生はただ影法師の歩みだ」という言葉が強烈。これがシェークスピアの人生観ではないだろうが、生きることを非常に矮小に見ている。


日本語は非論理的って本当だろうか?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0139】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】おとぎ輪廻/木下昌輝 △
昔話、おとぎ話の登場人物が、オールスター戦のように、この短編小説の中に数々現れては、一つの物語をつないでいる格好だ。ただ、読んで感じたのは、「だから何?」ということだ。自分たちの知っているキャうクターが現れ、特別な能力を示しただけでは、ストーリーは生まれないのではないか。かえって、物語構築の離しさに気づかされた感じだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】時代おくれ/茨木のり子 ○
最新のツールやデバイスを使っているからといって、優れているわけでもないし、ましてや幸福になれるわけではない。作者が言うように、時代おくれを自認しながら生きるのも、それは一つの考え方だと思う。例えば、最近の子どもたちは、小学生くらいでスマートフォンを使うが、それで賢くなっているわけでもないし、成長が促されるわけでもないと思う。

【論考】見知らぬ言葉/ロラン・バルト ○
またしても、全文を理解できぬままの読みで終わってしまった。日本語は、西洋の言語とは違い、主語、主体もあいまいで、客体もはっきりしないという。いわゆる西洋語は論理的で、日本語は非論理的、情緒的であるという言説であるうか。しかし、このロラン・バルト自身の文章は、主語と客体(目的語)がはっきりしていないと思うので、言語の間題ではないと思うのだが。


レーニン【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#113】


【4月22日】レーニン:1870.4.22~1924.1.21

わたしはこう思うのです。このような奇跡を人間はつくることができるのだと……。……罪のないばかを言って汚らしい地獄に生きながら、このように美しいものをつくることができる人間の頭をなでてやりたくなるのです。でも、今日はだれの頭もなでてやるわけにはゆきません。手を嚙み切られてしまいますからね。逆に、頭をたたいてやらねば、情け容赦なくたたいてやらねばならないのです。われわれは、理想としては人間に対するあらゆる暴圧に反対なのですけれどもね。そうです、この仕事は、おそろしくむずかしいものですよ!(「レーニン」)

ゴーリキー『追憶』(江口朴郎「レーニンと現代の課題」、『レーニン』『世界の名著』52、中央公論社、1966年より)

【アタクシ的メモ】
どの辺りが、英知のことばなのか判然としない。地獄にいながらも美しいものをつくることができるという人間に対する肯定なのか、時に厳しく指導しなければ人間は成長しないという認識なのか。


表徴の帝国【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0138】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】洞ばなし/河﨑秋子 △
もうすぐ7歳になる女の子の話。前回の「泣くのにいちばんいい時間」とは非常に対照的な内容で、女の子が洞に飲み込まれていく、ホラー的なストーリーで、正直後味が悪い。洞とホラ(嘘)をかけているのだろうが、女の子が嘘をつきながら、母親の宝石を盗み出さなければならない理由がわからなかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】焚火/北原白秋 ○
最近ではキャンプ以外で、焚火をすることもなくなり、何か火が燃えている状態を見ることもほとんどなくなった。なので、詩を読むと、とても遠いことが書かれた感じがある。何とか昔の思い出を呼び戻しながら読んだものの、今回も作者の真意はつかめなかった。

【論考】かなた/ロラン・バルト ○
原文がそうなのか、翻訳が悪いのか判然としないものの、主旨がつかめなかった。いくつか象徴的な言葉はあるが、全体的に言葉足らずというか、説明不足な感じである。断片的は言葉を、少し勝手につなぎ合わせると、日本は《言語の無化》により、意味が引き裂かれたまま、エクリチュール(表現体)となっているといったところか。


ケインズ【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#112】


【4月21日】ケインズ:1883.6.5~1946.4.21

経済学者や政治哲学者の思想は、それらが正しい場合も誤っている場合も、通常考えられている以上に強力である。実際、世界を支配しているのはまずこれ以外のものではない。誰の知的影響も受けていないと信じている実務家でさえ、誰かしら過去の経済学者の奴隷であるのが通例である。虚空の声を聞く権力の座の狂人も、数年前のある学者先生から〔自分に見合った〕狂気を抽き出している。

『雇用、利子および貨幣の一般理論』(下)、間宮陽介訳、岩波文庫、2008年

【アタクシ的メモ】
経済学者や政治哲学者の思想は、過去の何らかの学説から強く影響を受けているため、強力であると言いたいのだろうか。もっと抽象化して言えば、人間が紡いできた知性は、その歴史によって強化され続けるということなのかもしれない。


人工的知性は人間を乗り越えるのか?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0137】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】泣くのにいちばんいい時間/川上弘美 ◎
十歳の女の子が主人公で、漢字の表記も含め、年齢らしい思考がとても気持ちヨイ物語。登場人物のキャラクターの描き方も巧みなので、ちゃんと読み手の頭に思い浮かべられ、生き生きと動いてくれる。自分と性別も年齢も違っているから、共感というよりも納得感の強いストーリーテリングであった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】他ト我/北原白秋 ○
前回と同じ北原白秋の詩。4行というのも同じだ。二人でも、一人でも淋しいと嘆いている。それ自体、全くの同感とはいわないまでも、言っていることは理解できる。ただ、この詩のメッセージにまでは、たどり着けない。他ト我とは、夫婦のことを差しているのだろうか。子どもがいない淋さを詠んだと妄想してしまった。

【論考】コンピューター/外山滋比古 ○
コロンピューターの登場によって、人間の知的活動やその存在価値が変わっていくだろうという内容。今で言うと対話型AIであったり、ちょっと前のインターネットの登場に似ているのかもしれない。議論も、コンピューターによって、人間の仕事が奪われかねないという方向に進む。ただ、コンビューターには創造性があるわけではないから、何かを生み出す際は、きっと人間が登場するだろう。


親鸞【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#111】


【4月20日】親鸞:1173.4.1~1262.11.28

煩悩具足の身なればとて、こゝろにまかせて、身にもすまじきことをもゆるし、くちにも、いふまじきことをもゆるし、こゝろにも、おもふまじきことをもゆるして、いかにもこゝろのまゝにてあるべしとまふしあふてさふらふらんこそ、かへす〲不便におぼえさふらへ。ゑひもさめぬさきに、なほさけをすゝめ、毒もきえやらぬにいよ〱毒をすゝめんがごとし。くすりあり、毒をこのめとさふらふらんことは、あるべくもさふらはずとぞおぼえ候。(『末燈鈔』)

『親鸞集 日蓮集』多屋頼俊校注(『日本古典文学大系』82、岩波書店、1964年)

【アタクシ的メモ】
思うがままに生きるのは、薬があるから毒を飲んでも構わないという考えと同じであると言っているようだ。煩悩に従うのではなく、そこから抜け出そうと努力することが大事なのだろう。


何故ビール樽をころがすのか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0136】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】#コロナウ/金原ひとみ △
タイトルの通り、コロナ禍にある人々を描いた作品。こんなにみんな不倫するのかなぁ、というくらい不倫だらけである。括弧書きの会話文だけの箇所が多く、今現在を描写している感じはあるが、とても理解しづらかった。また子どもも、とてもませていて、あまりリアリティーを感じなかった。トレンドを追いすぎなのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ビール樽/北原白秋 ○
これも4行のとても短い詩。何故かビール樽を熱心にころがしている。想像力が乏しいせいか、居酒屋のような飲み屋さんの様子を詠んだのかなぁと思った。落日(イリヒ)という言葉も出てくるが、何だか明るい印象が残る。とは言え、作者の伝えたいことは、あまりピンとこないままであるが。

【論考】拡散と収斂/外山滋比古 ○
われわれには、与えられた情報を変え、脱け出ようとする拡散的作用と、バラバラなものをまとまりに整理する収斂的作用の2つの能力があるという。収斂的思考は受動的であり、拡散的思考は創造的である。学校教育は収斂が中心なので、拡散と収斂の行き来をするのがよさそうだ。


ダーウィン【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#110】


【4月19日】ダーウィン:1809.2.12~1882.4.19

いろいろな種類の多数の植物によっておおわれ、茂みに鳥は歌い、さまざまな昆虫がひらひら舞い、湿った土中を蠕虫ははいまわる、そのような雑踏した堤を熟視し、相互にかくも異なり、相互にかくも複雑にもたれあった、これらの精妙につくられた生物たちが、すべて、われわれの周囲で作用しつつある法則によって生みだされたものであることを熟考するのは、興味ふかい。

『種の起源』(下)八杉龍一訳、岩波文庫、1990年

【アタクシ的メモ】
当たり前だが、生物の生態系(エコシステム)は、非常に複雑なのだろうと思う。もちろん、それ自体をデジタル化することもできないから、はっきりと見える化することも困難なはずである。