最も大切なのは「自分を愛すること」【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0110】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】Across The Border/阿部和重 △
理不尽に残忍な展開や描写が続き、読むのが苦痛だった。しかも、その残虐さにりアリティーが乏しく、何とも言葉だけで、人の息づかいのようなものを感じさせず、そうした点でも気分が悪くなった。作者の作品はほとんど読んでいないが、ある種偽悪的な文章は、彼らしさなのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】奈々子に/吉野弘 ◎
親が子に語りかける、とてもあたたかい詩である。親が子に言い聞かせるのではなく、この詩なら、きっと子どもたちも、聞き入れてくれるであろう。最も重視するのは、「自分を愛すること」。誰でもできるようで、勝ち取るのも育むのも実は難しい。親は待つしかないのだろう。

【論考】カクテル/外山滋比古 ○
「ひとりでは多すぎる。ひとりでは、すべてを奪ってしまう」ということのようだ。論文などを書く場合もテーマを一つにしてしまうと、それにこだわってしまい、にっちもさっちもいかなくなってしまうことがある。また、論文をまとめる際も、他の説をすべて否定するのではなく、融合することをすすめている。多様性に近い印象があった。


ラスキ【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#084】


【3月24日】ラスキ:1893.6.30~1950.3.24

一口にいえば、キリスト教が解決しようとした問題は、一方には貧民における貧困の存在と、他方には富者の富を侵犯から防衛する国家権力と、この二つをいかに和解させるかということにあった。そしてその問題を、一切露骨に本質だけをいえば、彼等は、貧民たちに、富者には困難な来世の救済を約束することによって、解決したのであった。

『信仰・理性・文明』中野好夫訳、岩波書店、1951年

【アタクシ的メモ】
貧しい人たちに対して、来世はきっと救われると説くことで、現状を納得してもらい、貧困と富の分断を継続させたということだろうか。それであれば、非常に皮肉な物言いであるし、やはりニーチェによるキリスト教批判を思い起こす。


不意にこの芝生の上に立っていた【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0109】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】清水課長の二重線/朝井リョウ ○
若手社員とベテラン社員の対立的なストーリーなのかと思っていたら、今はしっかり者の社員も、若いころは経験不足でちゃんと苦労していたという話だった。当たり前だが、人は変わるんだなと改めて認識したし、同時に今の存在は、過去によって形づくられるのだとも思った。文体は嫌いではないが、少し苦手かもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】芝生/谷川俊太郎 ○
前回の「かなしみ」同様、理解できたという感じではなかったが、今回は人が生きること、人間の生命について語った詩のように思う。「不意にこの芝生の上に立っていた」というのは、人は自分の意志とは関係なく生まれ出てくることを書いているのだろうか。芝生はグリーンなので、地球上の緑、自然のたとえなのかもしれない。

【論考】寝させる/外山滋比古 ○
夜の頭より朝の頭の方が信頼できることもあり、思考を生み出すにば“寝させる”ことが必須だという。一般の感覚で言っても、その通りだと思ったが、論の進め方が、想像以上に科学的ではないのに少し驚いた。この文章が書かれたのが約40年前だから、社会全体が進歩成熱した証なのかもしれないと思った。


イエス【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#083】


【3月23日】イエス:前4頃~後28

さて、第六刻から地のすべてを闇が襲い、第九刻に及んだ。また、第九刻頃に、イエスは大声を上げて叫び、言った、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」。これは、わが神よ、わが神よ、なぜ私をお見棄てになったのか、という意味である。そこで、そこに立っていた者のうち何人かが、これを聞いて言い出した、「こいつはエリヤを呼んでいるぞ」。すると、すぐさま彼らの一人が走って行き、そして海綿をとって酢で満たした後、葦の先につけ、彼に飲まそうとした。しかしほかの者たちが言った、「やめろ。エリヤがやって来てこいつを救うかどうか、見てやることにしよう」。しかしイエスは、再び大声で叫びながら、息を引き取った。(『マタイによる福音書』)

『新約聖書I マルコによる福音書 マタイによる福音書』佐藤研訳、岩波書店、1995年

【アタクシ的メモ】
イエスが亡くなる場面。処刑されたのだから、ある意味当たり前なのかもしれないが、非常に残忍に扱われている。聖書の描写だからかもしれないが、亡くなる前に大声を出す姿に、少し違和感を感じた。


バレンタインは苦い思い出ばかり【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0108】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】初バレンタイン/角田光代 ○
どうして中原千絵子は、チョコレートを買わないまま、バレンタインを迎えてしまったのか。なぜ田宮滋は、20万円近い指輪を買ったのか。その辺りの行動の理由が分からなかったのので、あまり共感できなかった。また、プレゼントした本も、すごいとしか書かれておらず、このストーリーの説得力アップにつながっていないと感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】かなしみ/谷川俊太郎 ○
何度も読んだが、正直、解釈できるほどの理解に至らなかった。何か大きなことを書いているのだろうと思うものの、比喩的な表現も具体的なイメージができなかった。少し検索してみると、少年期の孤独感を詠んだようだ。そういわれれば、そうかもしれないと思うものの、確信にはたどりつけないままでいる。

【論考】醗酵/外山滋比古 ○
卒論などの研究テーマは、自分自身が感じた素材に、異質なアイデアやヒントをかけ合わせることで、新しいものが生まれるという。その時間は時々で変わるが、筆者はそれを醗酵と表現する。これは企画を立てるような時に、AとBが自然と自分の中で融合して、Cになっているのと似ているかもしれない。


丸山真男【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#082】


【3月22日】丸山真男:1914.3.22~1996.8.15

自由は置き物のようにそこにあるのでなく、現実の行使によってだけ守られる、いいかえれば日々自由になろうとすることによって、はじめて自由でありうるということなのです。その意味では近代社会の自由とか権利とかいうものは、どうやら世界の惰性を好む者、毎日の生活さえ安全に過ごせたら、物事の判断などはひとにあずけてもいいと思っている人、あるいはアームチェアから立ち上がるよりもそれに深々とよりかかっていたい気性の持主などにとっては、はなはだもって荷厄介なしろ物だといえましょう。(「「である」ことと「する」こと」)

『日本の思想』岩波新書、1961年

【アタクシ的メモ】
自由だけでなくほとんどの事柄、状態は、元から存在しているのではなく、人々の行動によって生成されるのだと思う。


美しい願いごとのように紙風船を打ち上げる【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0107】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】さがしもの/角田光代 ◎
読み終えて、自然と涙が出てきて、鼻をかんでしまった。この短編は、祖母と娘の物語なので家族ではあるが、人と人はつながり合い、影響し合いながら、生きているんだなあと、改ためて感じられた。血のつながりとは関係なく。この短編集はどれも本をモチーフとしているが、本があるかどうかも関係ないと思った。

【詩・俳句・短歌・歌詞】紙風船/黒田三郎◎
紙風船をポンポンと打ち上げる様子を詠んでいる。とても短い詩だが、美しい意志を感じた。ある意味、無為で単純な行動を、美しい願いごとにたとえている。ありふれた人間の営みは、無為無意味に思いがちだが、それをスパッと大きく転換させている点が、素敵だと感じる。

【論考】朝飯前/外山滋比古 ○
一言でまとめると、すべてを朝飯前にしようという話。最初は夜よりも朝の方が生産性が高いという主張だったが、段々と知的活動は朝食前がベストなので、朝食を遅らせブランチにして、それを食べたらきちんと寝て、次に起きたら「自分だけの朝」にしようとなっていく。しかも、そうした生活は、筆者自身の実体験からのおススメである。理にかなっているとは思うが、普通の会社員などでは実践できないだろう。


ソクラテス【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#081】


【3月21日】ソクラテス:前470~前399

しかしもう去るべき時が来た――私は死ぬために、諸君は生きながらえるために。もっとも我ら両者のうちのいずれがいっそう良き運命に出逢うか、それは神より外に誰も知る者がいない。(『ソクラテスの弁明』)

プラトン『ソクラテスの弁明 クリトン』久保勉訳、岩波文庫、1964年

【アタクシ的メモ】
「生」ではなく「死」であっても、それは時に「良き運命」になりうるということか。自身にとって過酷な判決であっても、法に従うことが良き行為だと言いたいのだろうか。


何も語らずそれでも人生に影響を与えた【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0106】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ミツザワ書店/角田光代 ◎
最初は、ちょっと主人公の行動がわざとらくし感じていたが、結果的には、老女の書店店主と主人公の人生が重なり合う素敵な物語であった。万引きしたことも含め、二人に直接的なコシュニケーションはほとんどなかったが、それでも人生に大きな影響を与えたのは、人々が生きている不思議とも言えるのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】街/与謝野晶子 ○
この詩は「遠い遠い処へ来て、/わたしは今へんな街を見て居る」から始まる。その街は、兵隊もおらず、戦争もないという。ある意味で、日本や東京と真反対な街のようだ。「へんな街」と作者は言っているが、自身にとっての理想の街、日本や東京がそんな街になってほいという願いを語っているのだろう。

【論考】不幸な逆説/外山滋比古 ○
前回の「学校はグライダー訓練所」に続く話。学習者の積極性を出すためには、与えすぎるのではなく、少し隠すくらいでよいと筆者は説明する。確かにと思う反面、最今の社会状況を見ていると、足りないから欲するようになるというよりも、他をよそ見してしまうと思う。創造性は「なぜ」を問う、自然な驚きに収斂するのではないか。


ライト・ミルズ【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#080】


【3月20日】ライト・ミルズ:1916.8.28~1962.3.20

いかなる保守主義的イデオロギーをも持たぬ保守的な国家であるアメリカは、今や、むき出しの、恣意的な権力として、全世界の前に立ち現れている。その政策決定者たちは、現実主義の名において、世界の現実について気狂いじみた定義を下し、それを押しつけている。精神的能力においては第二級の人物が支配的地位を占め、凡庸なことを重々しくしゃべっている。そこでは自由主義的言辞と保守的ムードが蔓延し、前者では曖昧さが、後者では非合理性が原則となっている。

『パワー・エリート』(下)、鵜飼信成・綿貫譲治訳、東京大学出版会、1958年

【アタクシ的メモ】
書かれた当時の世界状況は、あまり定かではないが、アメリカが「世界の警察官」として、ある種覇権を握り始めたころの指摘であろうか。前者と後者と表現を分けているが、曖昧さと非合理性って結構似通っているようにも思うのだった。