スタンダール【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#023】


【1月23日】スタンダール:1783.1.23~1842.3.23

さて、諸君、小説というものは大道に沿うてもち歩かれる鏡のようなものだ。諸君の眼に青空を反映することもあれば、また道の水溜りの泥濘を反映することもあろう。すると諸君は、鏡を背負籠に入れてもって歩く男を破廉恥だといって非難する! 鏡は泥濘を映し出す、そこで諸君はその鏡を非難しようというんだ!

『赤と黒』(下)桑原武夫・生島遼一訳、岩波文庫、1958年

【アタクシ的メモ】
世界はよくも悪くも語られる可能性があるということか。そして、悪く語られたからといって、非難しても仕方がないと言いたいのだろうか。


地球は人類のものなのだから【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0050】


【短編小説】最後の地球人/星新一
そんな世界にはならないだろうと思いながらもグイグイと読まされ、身につまされてしまった。前半にあった「地球は人類のものなのだから」という一文が印象に残る。また、最後の「光あれ」も象徴的 ではあるが、どうしてそれほど自信を持てるのが、私には理解できなかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】虫の夢/大岡信
ある意味、宣言のような、叫びのような詩である。ロジカルなわけではないが、何とも説得力がある言葉たち。得てして人は、自分がにんげんであることを忘れて、自分の視点や認識だけで、世界を決めつけてしまう。作者はそうした態度に対して、明確に警告を発してくれているようだ。

【論考】情感について/森本
この論考を読んで、「保育園落ちた日本死ね!!!」を思い出した。もちろん句ではないけれど、短い言葉で圧倒的な情感を表現していたからだ。また蚊屋に関する件についても、現在はオンラインの情報が膨大に増え、物に対して情感を見い出すことが激減したなとも思った。


「カインとアベル」「神奈備」など【「1日1ページ教養シリーズ」を毎日読む#021】


第3週第7日(日)
■1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
21 宗教:カインとアベル
カインとアベルは、アダムとイブの一番目と二番目の息子。兄カインは土地を耕す者になり、弟アベルは羊を飼う者になった。ある日、神が二人に捧げ物をするように命じたことから、カインは嫉妬でアベルを殺してしまう。それを知った神は、罰としてカインを呪い、また殺されないように印をつけたという。

■1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365【人物編】
21 伝道者・預言者:ゾロアスター
ゾロアスターが創始したゾロアスター教は、2000年以上にわたり、現在のイランとインドにおよぶ広範な地域で信奉された宗教。ゾロアスター教では、究極的な魂の審判者である最高神アフラ・まずだーを信奉し、来世の存在を信じる。死後の世界では、善人と悪人が区別されるという来世観である。

■1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365【現代編】
21 大衆文化:『ちびっこギャング』
アメリカの映画監督ハル・ローチが生み出した子供向け短編シリーズ『ちびっこギャング』は、1922年に初登場し、その後、数十年にわたって映画館やテレビで人々を楽しませた。ローチは出演者として、白人と黒人の両方を起用するなど、当時としては非常に革新的だった。

■1日1ページ、読むだけで身につくからだの教養365
21 医学の歴史:穿頭術 古代インカの脳外科手術
紀元1000年にさかのぼる、古代インカ人の頭蓋骨において、頭部外傷を治療するための手術を受けていた証拠が示された。具体的には、頭蓋骨のごく一部が穿頭術(また穿孔術)と呼ばれる方法によって、除去されていたのである。頭蓋骨に穴を開け、余分な液体を排除しようとしたようだ。

■1日1ページ、読むだけで身につく日本の教養365
21 哲学・思想:神奈備
神奈備とは神が宿る場所、物の意とされるが、主に神が住むとされる山を指す。奈良の三輪山(御諸山)が代表例で、きれいな円錐形をした成層火山(コニーデ)であることが多い。

■1日1ページ、読むだけで身につく日本の教養365【歴史編】
21 文化・芸術:青銅製祭器
本格的に青銅が渡来したのは、鉄とほぼ同時の弥生時代だったと考えられる。鉄より錆びにくい青銅は、長期間輝きが保たれるため、祭祀具に最適であった。青銅器の呪具として、謎が多いのが銅鐸だ。後期になるほど、大型化している。


「こういうがええんじゃ」【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0049】


【短編小説】なぞの青年/星新一
「なぞの青年」の正体は、税務署の職員。自らの意志で、困っている人たちへお金を提供していた。「わたしが異常で、ほかの議員や公務員たちは、みな正気だとおっしゃるのですか」という発言が印象に残った。法や制度に忠実だと、正しく間違いはないが、実は誰も幸せにしない、というアイロニカルな状能を指摘しているのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】学校/辻征夫
エッセイのような詩。自分は学校がそれほど好きではなかったが、行くのが嫌になるほどでもなかった。ただ、自分の子どもが学校に行けなくなったこともあり、じんわり共感しながら読めたと思う。最後の、同じく学校をサボっている娘から、「行けば?」と勧められるコミカルさと、「うん」と行く気になるポジティブさが、何とも微笑ましい。

【論考】「自分の世界」について/森本哲郎
どんな年齢であれ、確固たる自分の世界を持っていることは重要だし、貴いとも思う。一方で、当人が持つその世界像が色眼鏡で見て、偏りでしかなかったら、どうなのだろう。「自分の」と言うくらいだから、他者とは何らか異っているはずだ。自己と違った認識を受け入れ、認めることは、そんなに簡単ではない。


フランシス・ベーコン【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#022】


【1月22日】フランシス・ベーコン:1561.1.22~1626.4.9

ある書物はちょっと味わってみるべきであり、他の書物は呑み込むべきであり、少しばかりの書物がよく噛んで消化すべきものである。すなわち、ある書物はほんの一部だけ読むべきであり、他の書物は読むべきではあるが、念入りにしなくてよく、少しばかりの書物が隅々まで熱心に注意深く読むべきものである。

『ベーコン随想集』渡辺義雄訳、岩波文庫、1983年

【アタクシ的メモ】
書物といっても、内容や深さは様々なので、力の入れ具合を変えるのはもちろんではある。ただ、現代のような情報爆発時代においては、オンラインコンテンツも含め、読むべき書物(テキストコンテンツ)の取捨選択や、力の入れ具合を早めに決定することが重要になってくる。


「プラトン」「節分」など【「1日1ページ教養シリーズ」を毎日読む#020】


第3週第6日(土)
■1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
20 哲学:プラトン
プラトン(紀元前427頃~前347)の哲学的著作は対話篇と呼ばれ、二人以上の人物が議論する形式だ。プラトン哲学で有名なのがイデア論。イデアとは抽象的、非物質的なもので、現実世界の事物はイデアを模倣しているとした。また、人が何かを知るとは、魂が肉体に宿る前にしっていたことを想起する(思い出す)という想起説を唱えた。

■1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365【人物編】
20 反逆者・改革者:ルキウス・ユニウス・ブルートゥース
ルキウス・ユニウス・ブルートゥースは、ローマの王政を崩壊させ、共和制ローマを樹立。ローマの主権を、代表者会議である元老院に委ねた。共和制ローマは、のちにアメリカ合衆国憲法の手本となった。共和制の樹立は、ルクレティアの凌辱という個人的な復讐がきっかけである。

■1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365【現代編】
20 スポーツ:ジム・ソープ
ジム・ソープ(1888~1953)は、アメリカにおける究極のスポーツ万能選手。大学時代は11の異なるスポーツで優秀選手に選ばれ、野球とアメリカンフットボールのプロ選手として活躍した。1912年には、ストックホルム・オリンピックの五種競技と十種競技(世界記録)で金メダルを獲得した。

■1日1ページ、読むだけで身につくからだの教養365
20 ライフスタイルと予防医学:炭水化物
炭水化物は、タンパク質、脂質とともに3大栄養素の一つ。体内での消化スピードによって、速く消化される単純糖質と、健康に良く消化に時間のかかる複合糖質に分かれる。炭酸飲料、キャンディー、ケーキなどは、悪玉炭水化物と呼ばれることもある。

■1日1ページ、読むだけで身につく日本の教養365
20 伝統・文化:節分
節分は元々読経を行ったり、物忌み(静かに家にこもる)をしたりする日だった。現在は、立春の前日である2月3日を節分と呼ぶ。節分の日に豆まきをするのは、悪魔のような鬼の目(魔目)をめがけて豆を投げれば、「魔滅」、魔が減るからだと言われている。

■1日1ページ、読むだけで身につく日本の教養365【歴史編】
20 人物:卑弥呼
『三国志』の「魏書東夷伝倭人条」(魏志倭人伝)や後漢書の「東夷列伝」に記述のある女王が卑弥呼である。魏の明帝(202?~239)から、「親魏倭王」の名と紫の組み紐、金印、百枚の銅鏡を賜った。


そうだ ぼくは くまだった よかったな【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0048】


【短編小説】冬きたりなば/星新一
広告だらけの宇宙船を操るエヌ博士。広告だらけということは、あまり本題とは関係がなかった。新しい惑星にたどり着くと「何かある?」と、先読みするよろになってしまったっている。春を迎えるまでの冬眠期間が5000年だということだが、その期間生きつづけれる生体なのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】くまさん/まど・みちお
やはり詩は読みやすかったり、リズム感があると、不思議なほど受入れやすい。正を言ってこの詩の深い含意が理解できているわけではないものの、楽しく、気分良く読み終えるのだ。すべてひらがな表記も意味があるのだろうが、真意はわからないままである。

【論考】空しさについて/森本哲郎
無ではなく、空とは何なのか。この文章を読んただけでは、まだまで間口に立っただけのように感じる。「空しさ」ととらえると、私自身はもっと分からなくなってしまうだろう。日々、空しいと感じつつも、どうしたらその状態を抜け出せるのが、まったく見えないのである。


ジョージ・オーウェル【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#021】


【1月21日】ジョージ・オーウェル:1903.6.25~1950.1.21

ナショナリストの考え方の中には、真実なのに嘘、知っているのに知らないことになっているという事実が、いろいろある。知っている事実でも、認めるのに耐えられないというので脇へ押しのけられたまま、意識的に論理的思考から外されてしまうことがあるかと思えば、綿密に検討されたにもかかわらず、自分一人の心の中でさえ、事実であることをぜったいに認めないといったことが起こるのだ。(「ナショナリズムについて」)

『オーウェル評論集』小野寺健編訳、岩波文庫、1928年

【アタクシ的メモ】
これが事実であれば、ナショナリストとは対話できないことになる。当たり前だが、互いに話し合うには、共通理解がなければ、ずっとボタンは掛け違えたままだからだ。


「シオニズム」「高松塚古墳壁画、キトラ古墳壁画」など【「1日1ページ教養シリーズ」を毎日読む#019】


第3週第5日(金)
■1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365
19 音楽:和声(ハーモニー)
和声とは、二つ以上の異なる高さの音を同時に響かせたもの。中世の作曲家たちは、響く感じのする4度(ドとファ、レとソなど)や5度を好んで使った。ルネサンス期になると、三和音が和声の基本となった。何度の音程を組み合わせてっ和音を作るかによって、長調や短調になるかが決まる。

■1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365【人物編】
19 文筆家・芸術家:アイスキュロス
ギリシア悲劇を確立したアイスキュロス(前525頃~前455頃)は、作品が現存する最古の劇作家のひとり。その作品に最古の劇『ペルシア人』や『アガメムノン』などがある。『ペルシア人』では、勝利を収めたギリシア側ではなく、ペルシア人の視点から戦いを語っている。

■1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365【現代編】
19 思想と社会:シオニズム
ハンガリー系ユダヤ人テオドール・ヘルツル(1860~1904)は、近代シオニズム運動を創始することになった。シオニズム運動は、ユダヤ人には祖国が必要で、早急に手に入れるための活動である。1897年、バーゼル綱領を採択し、「パレスチナにユダヤ人の故国を設立する」ことに合意し、世界シオニスト機構(WZO)を設立した。

■1日1ページ、読むだけで身につくからだの教養365
19 性徴と生殖:卵巣
卵巣はおよそクルミくらいの大きさで、真珠色をした2つの組織の塊であり、女性の生殖器系において中心的な役割を果たす。卵子を収めるだけでなく、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンを分泌。排卵や月経を調整するだけでなく、骨、心臓、乳腺、皮膚、膣の健康維持を助けている。

■1日1ページ、読むだけで身につく日本の教養365
19 芸術:高松塚古墳壁画、キトラ古墳壁画
1972年3月21日、奈良県明日香村の高松塚古墳において、「飛鳥美人」とも呼ばれる男女群像の極彩色の壁画が見つかった。彩色の壁画は日本初だった。また、1983年11月には同じ明日香村のキトラ古墳でも彩色された壁画が見つかる。こちらは、獣の頭と人間の身体を合わせた獣頭人身十二支像が描かれていた。

■1日1ページ、読むだけで身につく日本の教養365【歴史編】
19 暮らし・信仰:環濠集落
弥生時代に水稲農耕が始まると戦乱が始まり、それに備えて防備を固めたが、そのひとつが環濠である。環濠とは、集落や周囲をめぐらせた水路のこと。濠は「ほり」と読むが、堀との違いは、人工で掘った「堀」に対して、河川などを利用したものを「濠」と呼ぶのである。


「アジアは一つである」をめぐる論考【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0047】


【短編小説】白い記憶/星新一
何度も曲り角でぶつかり、気を失う二人。ちょっと取ってつけたようなシチュエーションである。ストーリーが面白くないわけではないが、何だか色々な言動にアリティを感じられないせいで、あまり小説の世界に入っていけない。自分の物語に対する好みもあるだろうけど。

【詩・俳句・短歌・歌詞】聴く力/茨木のり子
作者本人のことを書いたのだろうか。明示されていないが、恐らく自分のことを語っているのであろう。言葉というものは、「私」と「あなた」が存在して初めて意味があり、成立するから、作者の言う通り「受けとめる力」は大切である。ちなみに、「うからやから」は、親族という意味だそうだ。

【論考】理想と現実について/森本哲郎
岡倉天心の「アジアは一つである」というも言葉をめぐる論考。筆者が解釈するように、アジアが一つではないから、上の言葉があったのだと思う。卑近な例だが、一体感が乏しいから「One MIZUHO」とか言うのだろうし。ただ、今の世の中は多様性の時代なので、ますます一つになりづらくなっている。