「自分」という存在が、自ずと個性を生む【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0090】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】バラ色の人生/ルシア・ベルリン ○
二人の少女の若さゆえの破天荒さ、甘さを描いたストーリー。大人から厳しく接しられていても、それをかいくぐる様子も書かれているから、少女たちの道徳的ではない青春時代を肯定しているのだろうか。ただ、スノッブな感じもあって、私自身は共感しづらかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】葉月/阪田寛夫 △
タイトルは葉月(8月)だが、季節感の描写がないので、タイトルの意図は分からないまま。詩の内容は(恐らく)恋人が来なくて、死んでしまいたいと嘆いている。なぜか舞台は関西で、言葉も関西弁である。これも、作者の意図は理解できなかった。

【論考】個性/池田晶子 ◎
自分が存在し、自ずからそういうふうになることを、個性だと筆者は説明する。自分探しとして、自分らしさを求めることで、かえって個性を失っていくという。これは、「本当の自分」というワナのように思う。あるがままを、自分がまず受け入れることが大切なのだろう。


言われてみるとその通りだと思う【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0089】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ステップ/ルシア・ベルリン ◎
最後の一文、「お願い神さま、どうかあたしを助けて」をいうための短編小説に感じた。舞台は、またもやアルコール依存症のための施設のようだ。皆で、ボクシングのタイトルマッチを観覧しているのだが、誰かを応援しているようで、結局、最終的には自分へ戻ってくる。あたしを助けてという願いが切ない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】僕はまるでちがって/黒田三郎 ○
「僕はまるでちがってしまったのだ」という。昨日と同じようだけれど、違ってしまったのだという。この詩だけを読んでも、どう違ってしまったのか、なぜ違ってしまったのかはわからない。僕が変化していることだけが示されている。白い美しい蝶がいるということは、きって良い変化となのではないだるうか。

【論考】友愛/池田晶子 ◎
友情と愛情は異なること、愛は好き嫌いを超えていて、それがそこに存在することを認めることだと、あっという間に理解してしった。存在を受け入れることで、嫌いという感情を持ちながら、愛することができるのだ。言われてみるとその通りだと思うことも、実際に言ってもらわないといけないのは、どういうことなのだろう。


欠如を抱き他者から満たしてもらう【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0088】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ティーンエイジ・パンク/ルシア・ベルリン ○
一枚のスナップ写真を撮ったような短編小説に感じた。ある意味、飛び石のような描写で、緻密さとは対極にあるが、それが読んだ時の心地良さを生んでいる。ただ、状況を理解するのが難しいという欠点もあり、今回も2回読んだが、事実関係を把握しづらかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】生命は/吉野弘 ◎
表現しづらい世界の真実を、丁寧な筆致で描いた詩だと感じた。「生命は/その中に欠如を抱き/それを他者から満たしてもらうのだ」が、個人的なハイライト。私たちが「欠如」を自覚し、他者から頂戴することに感謝することの大切さ。これは、生命の再発見と言えるのではないか。

【論考】ことばの果てについて/森本哲郎 ○
ことばの果てについては、とても興味がある。この論考では、言いおおすか言いおおせていないかの違いを細かく検証した感じであろうか。言いおおすことで、ことばを越えた世界を表現すると筆者は語るが、人間はことばを越えられるのかという点も検討してもらいたいと思った。


骨の手応えや血のぬめり【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0087】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】セックス・アピール/ルシア・ベルリン ○
「わたし」の従姉は、西テキサス一番の美人。ベラ・リンは、ただただきれいで、周囲の男性の視線を一身に集めてしまう。また、有名人と付き合おうと、まだ少女である「わたし」を、なぜか巻き込んでしまうのだ。そして、そのために性的な扱いをされるのだが、そこがドライに書かれていて不思議な印象が残った。

【詩・俳句・短歌・歌詞】儀式/石垣りん ○
母親は成長した娘に、魚を捌くときの骨の手応えや血のぬめりを伝えなければならないと説く。それはそうだろうと思うと同時に、それが母親と成長した娘でなくてはならないのはなぜなのかとも思う。全く男子が登場しないことに、違和感も感じる。

【論考】常識について/森本哲郎 ○
日本の社会が、常識の名において、問題を解決変できる状態になく、イギリスのコモン・センス(常識)やフランスのボン・サンス(良識)とは異質だという指摘は重要だと思った。日本における常識とは、同調圧力に近いように感じる。また最近では、人々に共通認識と言えることが乏しく、社会全体が断絶しているのではないか。


何故生まれねばならなかったのか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0086】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】エルパンの電気自動車/ルシア・ベルリン ○
短い小説だったが、あまり文章が頭に入ってこなかった。2回ほど読んだが、自分の間題だろうか。聖書の引用があるが、それを知らないためということもあるだろう。ただ、一番の原因は、自分の頭の中が、私生活のモヤモヤや悩みで満たされ、外からの情報を拒否しているのかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】父/吉野弘 ○
誰も答えられない問いである「何故生まれねばならなかったのか」が冒頭で示されるも、その後は、子と父の関係が詠まれている。正直言って、この詩をきちんと理解できなかった。子の生と父は距離を取らざるをえないと言れれるが、それがどんな状態なのかが分からないのである。

【論考】日本語について/森本哲郎 ○
日本語の抽象語は輸入が多く、自分たちのモノにできていないという指摘は正しいと思う。だが、それを乗り越えたるめに、日本語の反省が必要だというのは、対策としてちょっと弱く感じるし、誰もしなさそうではないか。


私も「どうにもならない」【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0085】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】どうにもならない/ルシア・ベルリン ○
今回も、アルコール依存症の物語。前回より、ひどい状況のようだ。小説のページ数も、5ページととても短く、当然、状態の改善は見られない。最後には、朝からお酒を買いに行ってしまう。子どもからも諭されているのに。全く救いがないこともあり、作者はどうしてこの短編を書こうと思ったのだろう?

【詩・俳句・短歌・歌詞】雪/三好達治 ○
学生のとき、仙台に住んでいたので、冬になるとそこそこ雪に降られた。バイクにも乗れなくなるし、利便性の面では困ったが、雪が降っているときは、特別な時間であったなと思う。夜だと、本当にシンとしていた。わずか2行のとても短い詩だったけれど、そうした厳粛な気持ちになれた。

【論考】イメージについて/森本哲郎 △
哲学者、大森荘蔵さんの特別講義を聞く機会があって、映像(イメージ)は記憶できない、記憶は言葉であると説明された。それが正しいとすると、この論考は、間違いだらけになってしまうだろう。内言と外言という観点は、重要だと思う。コロナ禍で、少なくとも私の中で言語が消失してしまったように感じる。


たった3つの単語で彼女はクビに【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0084】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】いいと悪い/ルシア・ベルリン ○
1950年代のアメリカが舞台の小説。その時の世の中の情勢や雰囲気を知らないこともあり、あまりきちんと読めた気がしない。当時のアメリカで、共産党員はどんな立場にあり、見られ方をしていたのか。「貧民街」が出てくるが、実際にどんな感じだったのが。そうしたことが想像でもできれば、もっと物語を味わえたと思う。

【詩・俳句・短歌・歌詞】初節句/大木実 ○
ジェンダーレスな現在に読むと、ちょっと男尊女卑的な古めかしい詩にも思えるが、父親が同姓の子どもを素直に愛しているととらえたい。男の方が、あるいは女の方が、よい、エライということはなく、同性の我が子には、自然と親しみを感じみやすいのではないか。

【論考】異文化について/森本哲郎 ○
親が転勤族で、日本国内とはいえ引っ越すたびに、微妙に、時に大きな違いに出くわして苦労したことを思い出した。異文化に触れることで、改めて自分自身を知るのは、論考に書かれた通りだと思う。ただ、結論が「ルイス・フロイスの『日欧文化比較』を読みましょう」みたいになったのは残念だった。


「自同律の不快」【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0083】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】今を楽しめ/ルシア・ベルリン ◎
今回も、コインランドリーをめぐる物語。「わたし」は、間違って他の人の洗濯機を回してしまう。そうしたことをきっかけに、やや殺伐としたやり取りが発生する。誰もが望むような、幸福な会話が生まれないのは、仕方のないことなのだろう。印象に残るフレーズがいくつかあった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】帰郷/谷川後太郎 ○
帰郷というタイトルだが、人が生きて死ぬことを詠う詩のようだ。ただ、比喩的な表現が多く、自分には詩全体を理解できなかった。合唱曲にもなっているようで、人が生きることのすばらしさを語っていると解釈する人が多いみたいだ。くり返しになるが、自分にはそう思えなかった。

【論考】論理について/森本哲郎 ○
「AハAデアル」という同一律について述べている。筆者は、「私は私である」という自同律が“自分への旅”の出発点だという。これ自体、間違っているわけではないと思う一方で、埴谷雄高さんの「自同律の不快」を思い出した。「私は私である」と言ったときの不確かさも、やはり感じるからだ。


痛みはぜんぶ本当【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0082】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ファントム・ペイン/ルシア・ベルリン ○
題名のファントム・ペインは、幻肢痛のこと、切断した四肢などの感覚や痛みを感じることを指すようだ。この短編は、ボケてしまった父親と娘の物語(あのモイニハン家の話のようだ)。時系列の記述でないこともあり、理解しづらい部分も多かった。ただ、「痛みはぜんぶ本当」ということが言いたかったのだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】春の問題/辻征夫 △
この詩で言いたいことを理解できなかった。春に際して悠久の時を想い、原始時代までさかのぼる視線は素晴しいと感じるものの、そこに「問題」があるとは思えなかったし、春だけ取り上げる意図も分からなかった。「きみ=ぼく」という記述も、唐突に響いた。

【論考】自適について/森本哲郎 △
自適とは、のびのでした気持ちで楽しみながら暮らすこと。この論考では、あまり働きすぎにならず、中庸を重んじることで、「人生の最もすばらしいもの」が手に入るという。それは間違いではないだろうが、最もすばらしいものと言ってしまうと、それの手に入れ方は、人それぞになってしまわないだろうか。


誰も“同じ川”には入れない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0081】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】最初のデトックス/ルシア・ベルリン ◎
「わたしの騎手」ほどではないが、これも短い物語。アルコール中毒になってしまった女性が、車で事故を起こしてしまった話だ。一週間ほど入院をして、退院するのだが、その先に薄い光が見えつつも、タイトルの「最初」という言葉からも、やや不安のある暗い将来も感じられる内容だった。そうした、未来を見通せない感じがよかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】生きる/谷川俊太郎 ◎
生きるとは、小さな営みをくり返すということ、とても多様で、正解があるわけではないこと、ときに大きなことを成し遂げ、高い視座を獲得できること、一方で人はいつでも俯瞰できることを、流れるように語ってくれたと思う。また、谷川さんの詩には人の熱というか、暖かい視線をいつも感じる。

【論考】万物流転について/森本哲郎 ○
ヘラクレイトスが「ある」という見方を「なる」という見へ変えたという点については、同意するし、存在だけでなく生成について問うたことは、とても重要な視点だと思う。ただ、この論考では、ヘラクレイトスの紹介が中心で、万物流転に関する言及が少なく、そこが物足りなかった。