無があるから存在がある【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0007】


【短編小説】月の光/星新一
十五歳の少女と、言葉なくペットとして暮らす話し。状況に賛同できるわけでもないし、またそれがなり立つわけもないと思うしかなかった。この本(『ボッコちャん』)は何度が読んでいるはずだが、違和感を初めて抱くのは、今読んだからだろうか。情緒的な終わり方をしているが、後味はあまりよくないのである。

【詩・俳句・短歌・歌詞】落葉/ポール・ヴェレーヌ
落葉と言っているくらいだから、もの哀しい作品だと思う。ただ言葉が少ないせいか、翻訳のせいか、胸にぐっと来ないのが残念である。とはいっても、トーンや愛囲気は伝わってくるから、不思義にも感じる。

【論考】存在について/森本哲郎
ハイデッガーに直接会っているということに驚いた。それを題材に、存在と無に切り込んでいくのは、心地ヨイ試みである。「人びとは、日常のおしゃべりの中で自分を忘れている」というのは、矮小なようで、もっともな指摘に思う。


共感が難しかったとしても【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0006】


【短編小説】変な薬/星新一
カゼが治るのではなく、カゼの症状が1時間だけ出る不思議な薬。ドラえもん的な斬新な発想と思ったが、ストーリーとして上手く回収できなかったと感じる。ズル体み以外では、あまり役に立つと思えない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】タぐれの時はよい時/堀口大學
この詩はピンと来なかったとないうのが第一の感想。タぐれ時に特別な雰囲気や感覚はあるものの、詩で表現されいることに共感できなかった。もしかすると堀口大學さんの詩は共感しづらく、苦手かもしれない。

【論考】ことばについて/森本哲郎
タイトルとは逆説的な主張が展開される印象。語られることばについてというより、沈黙とは何かりついて終始説明している。現代人を“ラジオ的人間”としており、思わずReadioheadのことを思い出してしまった。ピカートの論述と関係があるのかは後ほど調べたいと思う。


世界は「おどろき」に満ちあふれている【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0005】


【短編小説】来訪者/星新一
他星人の描写が少ないなあと思っっていたら、そういうオチでしたか。やはり論点にすべきは、地球人たちの対応だろう。異那人とコシュニケーションをするときに問われるのは、自分たちの本質である。自己をきちんと示さず相手と対していても、結局小説と同様に笑われてしまうのではないだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】秋のピエロ/堀口大学へ
あまりこの詩の良さを感じなかった。道化であるピエロと涙とのギャップは表現されているものの、なぜその落差が生まれるかは、書かれていないように思う。アタクシが、行間を読めていないだけなのだろうか。

【論考】おどろきについて/森本哲郎
哲学の第一歩に「おどろき」があるという主張にまったく異論はないが、国木田独歩の作品から話を始めたことで、かえて話が分かりづらくなっているように感じた。池田晶子さんのように、もっと素直に、宇宙の不思議、世界の不思議を語った方が理解しやすいと思う。


人とイワシの視点【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0004】


【短編小説】殺し屋ですのよ/星新一
このストーリーを星新一さんは、どうやって思いついたんだろうと思った。病院で看護師さんを見ながら考えたのだろうか。ただ、現在のように、世の中が透明化している時代にはなりたたないのかもしれない。タイトルは透逸だ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】大漁/金子みすゞ
100分de名者でも取り上げていて、初見ではなかった。やはり、人間とイワシたち、2つの視点で書かれている点が独特である。誰か特定できない大きな視点(常識的な人)だけで、話を進めていないのが素晴らしいと思う。

【論考】思索について/森本哲郎
考えが、アイデアのようになっているかもしれない。池田晶子(を最近読んだ)によれば、誰にとっても正しい本当の考えが、本来考えと言えるのである。私だけに通用するのであれば、それは意見に過ぎないのである。これについては、少し論理性が少ないように感じる。


からまつから世界の存在を感じる【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0003】


【短編小説】おーい でてこーい/星新一
なかなかに恐い話。結局、自分のした事は、自分に戻ってくる。都合のよい「穴」などないのである。
今間題になっている環境の話に通ずるものがある。星新一さんが予見していたわけではないだろうけど。

【詩・俳句・短歌・歌詞】落葉松/北原白秋
からまつを通して世界の存在を感じる。最初にある「からまつはさびしかりけり。/たびゆくはさびしかりけり。」がキモになっているように思う。物言わぬ存在物をじっと眺めることで、時が自然と流れ、無常であることが浮かび上がってくるのであろう。

【論考】あやまちについて/森本哲郎
四つの偶像(イドラ)によって、人間の知性は曇らされてしまう。確かに完全なる客観的な直実を見つけ出すのは難しい。不可能と言えるかもしれない。それに対応するには、著者が言うように、自分たちがイドラに捉われていると自覚しつづけるしかないのかもしれない。


美しき日々は過ぎゆく【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0002】


【短編小説】ボッコちゃん/星新一
バーのマスターが道楽でつくった完全なる美人のロボットによって引は起こされるとんでもない悲劇。人生は偶然のつみ重ねによって、ある意味必然的な結果に到達する。なぜ、「ボッコちゃん」という名前なのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】素朴な琴/八木重吉
わずか4行のとても短い詩。その中でも、「秋の美しさに耐えかね」が、自分にとっては印象的であった。明るさと美しさが、やはり世界を動かしていくのであろうか。若くして命を失った八木重吉の世界観は、非常にポジティブだったのかもしれない。

【論考】希望について/森本哲郎。
人は、馴れることで生き、その馴れを否定することで希望を持つ、と著者は語る。希望も人それぞれだとは思うが、自分にとってはもっとフワクワとした空想めいたものように感じる。現在の否定というよりも全く新い物語のスタートのような。


知的な冒険が始まる【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0001】


【短編小説】悪魔/星新一
「欲深くなりすぎると、失敗を招く」という教訓よりも、「どんな事象にも複数の意味がある」と言われているように感じた。金貨が目の前で増えれば、それはうれしいことだが、一方で物質としての重さも同時に増すのである。思いついた例でたとえれば、勝負に勝って喜んでいる場合も、負けを悲しむ敗者が必ず存在しているということだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】初恋/島崎崎藤村
原文のままでは理解できず、訳文を読んでしまった。とても鋭敏な感覚を、言語化していると思う。そして、ふとした何かを契機に、恋心が動きはじめるのは、とてもよく理解できる。

【論考】逆境について/森本哲郎
人間の本性が逆境で表われるとは、ある意味当り前の言説と言えなくもないが、西洋や中国のストーリー(物語)を引用することで説得力は圧倒的に高まるし、思考は深まる。自分はどうだろうと考えたが、やはり日本人的なのかなと思った。