ラッセル【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#033】


【2月2日】ラッセル:1872.5.18~1970.2.2

義務感は、仕事において有用であるが、人間関係ではおぞましいものである。人びとの望みは、人に好かれることであって、忍耐とあきらめをもって我慢してもらうことではない。たくさんの人びとを自発的に、努力しないで好きになれることは、あるいは個人の幸福のあらゆる源のうちで最大のものであるかもしれない。

『ラッセル 幸福論』安藤貞雄訳、岩波文庫、1991年

【アタクシ的メモ】
周囲の人たちを好きになれるかどうかで、個人の幸福度は変わるということか。確かにそうかもしれないが、「義務感」との関係性が、よくわからなかった。


広く告げることで、結婚できるのか?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0060】


【短編小説】空の死神/星新一
ちょっと後味が悪すぎる。訳アリの乗客ばかりを乗せた飛行機が、落雷によって墜落しようとしている。乗客の誰もが現世では都合が悪く、むしろ喜んで死を迎え入れようとする。そのため、乗客を助けようとするCAさんは、逆に邪魔者扱いされて……。読み終った後は、やるせない気持ちにしかならない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】求婚の広告/山之口貘
コミカルな印象も持てなくはないが、何とも共感しづらい内容である。少なくとも、今の時代にはフィットしていないと思う。「あなた」こそを待ち侘びているというのであれば、もうちょっと謙虚な熊度が必要なのでないか。「広告」というのも、押し付けがましい感じが強くなる。

【論考】「風流」について/森本哲郎
「風は何かを教えてくれます」。確かに、そうかもしれない。しかし、教えてくれるのは、風だけではないと思う。様々な自然の営みに気づかされるのが、人間だろう。日本人にとって風は特別な存在であるというのは、やや言い過ぎだと思うし、論考全体としてロジックが通っていないと感じた。


ジャックポット教の信者たち【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0059】


【短編小説】おのぞみの結末/星新一
ジャックポット教の信者たちの物語。小説の中で明示されないが、チャンスがあれば、金を持ち逃げしてもヨイという教義のようだ。逆から言うと、そうしたチャンスの到来を願う宗教といったところ。大金を前にして、偶然にも信者たちが、集まってくる。そして、紆余曲折ありながらも、最後にはおのぞみの結末迎えるのだ。終わり方は、やや唐突だった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】便所掃除/濱口國雄
トイレの掃除は誰しも好きではないだろう。ましてや、公衆便所のような他人のための掃除ならなおさらだ。この詩では、かなり汚れたトイレを、愚痴りながらも、ゴシゴシと洗ってゆく。体験的な記述か、想像で書いているかは判然としないものの、「朝の光が便器に反射します」が、印象的だった。きっと実体験なのだろう。

【論考】人間を解くカギについて/森本哲郎
ちょっと昔話が過ぎるなあと思った。最後まで読んでも、尻切れトンボな感じだし、言いたいこと、主張もはっきりしないまま終わってしまう。ただ、「人問のすべてを知るということは、自分のすべてを知ると外にない」という考えには共感できるので、そこを掘り下げてほしかった。


徳冨蘆花【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#032】


【2月1日】徳冨蘆花:1868.10.25〜1927.9.18

諸君、幸徳君らは時の政府に謀叛人と見做されて殺された。諸君、謀叛を恐れてはならぬ。謀叛人を恐れてはならぬ。新しいものは常に謀叛である。「身を殺して魂を殺す能わざる者を恐るるなかれ」。肉体の死は何でもない。恐るべきは霊魂の死である。人が教えられたる信条のままに執着し、言わせられるるごとく言い、させられるごとくふるまい、型から鋳出した人形のごとく形式的に生活の安を偸んで、一切の自立自信、自化自発を失う時、すなわちこれ霊魂の死である。我らは生きねばならぬ。生きるために謀反しなければならぬ。

『謀叛論 他六篇・日記』中野好夫編、岩波文庫、1976年

【アタクシ的メモ】
「新しいものは常に謀反であり、生きるために謀反しなければならない」という。言葉だけ聞くと決して間違っていないのではあるが、なぜ「謀反」という言葉を使わなければならないのか。「肉体の死は何でもない」と言い切るのも、やや気になる。


いそがなくたっていいんだよ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0058】


【短編小説】ある占い/星新一
オチが全く予想外で、とても面白かった。蛇が自分のシッポに噛みつくみたいな話だが、妙な爽快感があった感じ。占いが当たりすぎるのは、途中不自然な印象もあったが、ストーリー上欠かせない要件だったので、すぐに納得に変わった。今回読んでいる星新一さんの作品の中で、一番好きかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】南の絵本/岸田衿子
「いそがなくたっていいんだよ」から始まる。今の自分にとっては、こんなダイレクトなメッセージがとてもがグサりと刺さった。「あるいてゆけばいい」という最後の一行も、読み手を後押ししてくれる言葉に感じる。コロナ禍で、焦りばかり感じていたので、一瞬かもしれないがとても救われた。

【論考】ことわざについて/森本哲郎
小学6年生の時、自由研究でことわざを検証したことがある。発表したら同級生にはなぜか笑われたけど、ことわざは本当に正しかった。だから、先人たちから継承されてきたことわざを信じている。筆者は、ことわざを芸術作品とも評していたが、最後に述べた哲学の方が近しいと思う。


孟子【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#031】


【1月31日】孟子:前372~前289

人皆人に忍びざるの心有りと謂う所以の者は、今、人乍に孺子の将に井に入ちんとすれば見れば、皆怵惕惻隠の心有り、交を孺子の父母に内ばんとする所以にも非ず、誉を郷党朋友に要むる所以にも非ず、其の声を悪みて然るにも非ざるなり。(「公孫丑上」)

誰にでもこのあわれみの心はあるものだとどうして分かるのかといえば、その理由はこうだ。たとえば、ヨチヨチ歩く幼な子が今にも井戸に落ちこみそうなのを見かければ、誰しも思わず知らずハッとしてかけつけて助けようとする。これは可愛想だ、助けてやろうとの一念からとっさにすることで、もちろん助けたことを縁故にその子の親と近づきになろうとか、村人や友達からほめてもらおうとかのためではなく、また、見殺しにしたら非難されるからと恐れてのためでもない。

『孟子』(上)、小林勝人訳注、岩波文庫、1968年

【アタクシ的メモ】
自然の善意についての記述だろうか。ここでは「忍びざるの心(あわれみの心)」と表現されている。


おぼろの世界に安心する日本人【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0057】


【短編小説】わが子のために/星新一
ダブルのオレオレ詐欺といった所だろうか。とはいえ、唐突に訪れた弁護士の口だけの説明で、そんなに簡単に騙されるとは思えない。男は犯罪組織のボスなのだから。ストーリーのアイデアとしては、悪くないと思うものの、細部がもう少し整えられていたら、もう少し入り込めたかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】言葉のダシのとりかた/長田弘
例えば、メールを書くにしても、単純に思いついたまま言葉を使っているわけではないから「言葉のダンをとる」というのは、ある意味大切だと思う。でも、かつおぶしをモチーフにしているせいでかえってよく分からなくなってしまった。「言葉の一番ダシ」をとるために、結局、何をすべきなのだろうか?

【論考】魂の風景について/森本哲郎
おぼろの世界に対して、ヨーロッパの人たちは世界からる引き離されると感じ、日本人はつつみこまれると感じるという。あまり意識したことはなかったが、それは確かにそうだと思う。あからさまではなく、おぼろげな風景に対しても、それはそれで趣きを感じる。どうしてそうなのかを、仮説でもヨイから示してくれるとよかった。


ガーンディー【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#030】


【1月30日】ガーンディー:1869.10.2~1948.1.30

サッティヤーグラハ、または魂の力は英語で「受動的抵抗(パッスィヴ・レジスタンス)」といわれています。この語は、人間たちが自分の権利を獲得するために自分で苦痛に耐える方法として使われています。その目的は戦争の力に反するものです。あることが気に入らず、それをしないときに、私はサッティヤーグラハ、または魂の力を使います。

『真の独立への道』田中敏雄訳、岩波文庫、2001年

【アタクシ的メモ】
「サッティヤーグラハ」は、マハトマ・ガンディーがつくった言葉のよう。ここでは受動的抵抗と表現されているが、非暴力不服従と言った方がわかりやすいのではないか。


ひとひらのさくらのはなびら【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0056】


【短編小説】親しげな悪魔/星新一
老人の姿をした柔和な悪魔が登場。3つの願いをかなえてもらう代わりに、誰かが不幸になっているという。願いをかなえてもらった青年はたまらず、命を差し出してしまう。悪魔は、そんなこと普通だと言うものの、自の考え方や感情は青年に近しい。それでは、世の中、生き抜いていけないのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】さくらの はなびら/まど・みちお
「さくらのはなびらが、じめんにたどりつく」。それだけとも言えることだが、作者は地球や宇宙にとって、ひとつのことと提えている。確かに、どんなささいな事柄でも、はじまりがあり、おわりがある。そうした小さな事柄が無数に起こることで、世界は少しずつ動いているのだ。

【論考】人生の智恵について/森本哲郎
世阿弥の「秘すれば花なり」を読み解いているのだが、ちょっとよく分からなかったというのが正面な感想。秘すること自体に効果があるとのことだが、どんな効果、効用なのかは、明確に示されていないと思う。言葉の意味をきちんと探求する点ではヨイが、結論が不明瞭なままで終った感じ。


チェーホフ【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#029】


【1月29日】チェーホフ:1860.1.29~1904.7.15

人間は物を考える理性と、物を創り出す力とを、天から授かっています。それでもって、自分に与えられているものを、ますます殖やして行けという神様の思し召しなんです。ところが、今日まで人間は、創り出すどころか、ぶち毀してばかりいました。森はだんだんと少なくなる、河は涸れてゆく、鳥はいなくなる、気候はだんだん荒くなる、そして土地は日ましに、愈々ますます痩せて醜くなってゆく。

『ワーニャ伯父さん』神西清訳(『チェーホフ全集』12、中央公論社、1968年)

【アタクシ的メモ】
この当時から、自然などの環境破壊は問題になっていたということか。現在と比べると、きっとそれほどではないように思うのだが。