最も大切なのは「自分を愛すること」【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0110】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】Across The Border/阿部和重 △
理不尽に残忍な展開や描写が続き、読むのが苦痛だった。しかも、その残虐さにりアリティーが乏しく、何とも言葉だけで、人の息づかいのようなものを感じさせず、そうした点でも気分が悪くなった。作者の作品はほとんど読んでいないが、ある種偽悪的な文章は、彼らしさなのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】奈々子に/吉野弘 ◎
親が子に語りかける、とてもあたたかい詩である。親が子に言い聞かせるのではなく、この詩なら、きっと子どもたちも、聞き入れてくれるであろう。最も重視するのは、「自分を愛すること」。誰でもできるようで、勝ち取るのも育むのも実は難しい。親は待つしかないのだろう。

【論考】カクテル/外山滋比古 ○
「ひとりでは多すぎる。ひとりでは、すべてを奪ってしまう」ということのようだ。論文などを書く場合もテーマを一つにしてしまうと、それにこだわってしまい、にっちもさっちもいかなくなってしまうことがある。また、論文をまとめる際も、他の説をすべて否定するのではなく、融合することをすすめている。多様性に近い印象があった。


不意にこの芝生の上に立っていた【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0109】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】清水課長の二重線/朝井リョウ ○
若手社員とベテラン社員の対立的なストーリーなのかと思っていたら、今はしっかり者の社員も、若いころは経験不足でちゃんと苦労していたという話だった。当たり前だが、人は変わるんだなと改めて認識したし、同時に今の存在は、過去によって形づくられるのだとも思った。文体は嫌いではないが、少し苦手かもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】芝生/谷川俊太郎 ○
前回の「かなしみ」同様、理解できたという感じではなかったが、今回は人が生きること、人間の生命について語った詩のように思う。「不意にこの芝生の上に立っていた」というのは、人は自分の意志とは関係なく生まれ出てくることを書いているのだろうか。芝生はグリーンなので、地球上の緑、自然のたとえなのかもしれない。

【論考】寝させる/外山滋比古 ○
夜の頭より朝の頭の方が信頼できることもあり、思考を生み出すにば“寝させる”ことが必須だという。一般の感覚で言っても、その通りだと思ったが、論の進め方が、想像以上に科学的ではないのに少し驚いた。この文章が書かれたのが約40年前だから、社会全体が進歩成熱した証なのかもしれないと思った。


バレンタインは苦い思い出ばかり【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0108】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】初バレンタイン/角田光代 ○
どうして中原千絵子は、チョコレートを買わないまま、バレンタインを迎えてしまったのか。なぜ田宮滋は、20万円近い指輪を買ったのか。その辺りの行動の理由が分からなかったのので、あまり共感できなかった。また、プレゼントした本も、すごいとしか書かれておらず、このストーリーの説得力アップにつながっていないと感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】かなしみ/谷川俊太郎 ○
何度も読んだが、正直、解釈できるほどの理解に至らなかった。何か大きなことを書いているのだろうと思うものの、比喩的な表現も具体的なイメージができなかった。少し検索してみると、少年期の孤独感を詠んだようだ。そういわれれば、そうかもしれないと思うものの、確信にはたどりつけないままでいる。

【論考】醗酵/外山滋比古 ○
卒論などの研究テーマは、自分自身が感じた素材に、異質なアイデアやヒントをかけ合わせることで、新しいものが生まれるという。その時間は時々で変わるが、筆者はそれを醗酵と表現する。これは企画を立てるような時に、AとBが自然と自分の中で融合して、Cになっているのと似ているかもしれない。


美しい願いごとのように紙風船を打ち上げる【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0107】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】さがしもの/角田光代 ◎
読み終えて、自然と涙が出てきて、鼻をかんでしまった。この短編は、祖母と娘の物語なので家族ではあるが、人と人はつながり合い、影響し合いながら、生きているんだなあと、改ためて感じられた。血のつながりとは関係なく。この短編集はどれも本をモチーフとしているが、本があるかどうかも関係ないと思った。

【詩・俳句・短歌・歌詞】紙風船/黒田三郎◎
紙風船をポンポンと打ち上げる様子を詠んでいる。とても短い詩だが、美しい意志を感じた。ある意味、無為で単純な行動を、美しい願いごとにたとえている。ありふれた人間の営みは、無為無意味に思いがちだが、それをスパッと大きく転換させている点が、素敵だと感じる。

【論考】朝飯前/外山滋比古 ○
一言でまとめると、すべてを朝飯前にしようという話。最初は夜よりも朝の方が生産性が高いという主張だったが、段々と知的活動は朝食前がベストなので、朝食を遅らせブランチにして、それを食べたらきちんと寝て、次に起きたら「自分だけの朝」にしようとなっていく。しかも、そうした生活は、筆者自身の実体験からのおススメである。理にかなっているとは思うが、普通の会社員などでは実践できないだろう。


何も語らずそれでも人生に影響を与えた【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0106】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ミツザワ書店/角田光代 ◎
最初は、ちょっと主人公の行動がわざとらくし感じていたが、結果的には、老女の書店店主と主人公の人生が重なり合う素敵な物語であった。万引きしたことも含め、二人に直接的なコシュニケーションはほとんどなかったが、それでも人生に大きな影響を与えたのは、人々が生きている不思議とも言えるのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】街/与謝野晶子 ○
この詩は「遠い遠い処へ来て、/わたしは今へんな街を見て居る」から始まる。その街は、兵隊もおらず、戦争もないという。ある意味で、日本や東京と真反対な街のようだ。「へんな街」と作者は言っているが、自身にとっての理想の街、日本や東京がそんな街になってほいという願いを語っているのだろう。

【論考】不幸な逆説/外山滋比古 ○
前回の「学校はグライダー訓練所」に続く話。学習者の積極性を出すためには、与えすぎるのではなく、少し隠すくらいでよいと筆者は説明する。確かにと思う反面、最今の社会状況を見ていると、足りないから欲するようになるというよりも、他をよそ見してしまうと思う。創造性は「なぜ」を問う、自然な驚きに収斂するのではないか。


学校はグライダー人間の訓練所【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0105】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】引き出しの奥/角田光代 ◎
誰とでも寝てしまう女性が主人公で、どんな話になるのかと思っていたら、伝説の古本を探していくうちに、自分自身や周りの変化から、世界に美しい瞬間を見い出して終わるささやかなハッピーエンドに。そう、きっと美しい一瞬とは、唐突に訪ずれるのだろうし、日常のありふれた光景に隠れているのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】歌/中野重治 △
何度も読んだが、この詩自体の真意はわからなかった。少し調べてみると、この詩はプロレタリア詩であるそうだ。そうやって読むと、いくらか目の前の霧が晴れてきた。とは言え、見えてきたものが絶景かと問われたらそうではない。私にはルサンチマン的な印象しか感じられなかった。

【論考】グライダー/外山滋比古 ○
「学校はグライダー人間の訓練所である。飛行機人間はつくらない」と筆者は指適する。もちろん、これからは自分だけで飛行できるよう、グライダーにエンジンを搭載することが求められるという。ここ最近で言うと、検索で答えらしいモノを見つける人より、自らプランニングできる人が重要ということだろうか。


いつかは分からないが人は必ず死ぬ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0104】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】不幸の種/角田光代 ◎
不幸の種に思える本をめぐる十年にわたる物語。ただ、出来事に対する解釈も人それぞれである。幸福も不幸も、やはり本人の心のありようでしかなく、例えば、離婚も不幸と一方的に決めつける必要はなく、本人にとっては幸福を感じるための決断かもしれないと改めて認識した。

【詩・俳句・短歌・歌詞】鄙ぶりの唄/茨木のり子 △
鄙ぶりとは、田舎めいていること。調べて初めて知ったこともあり、最初に読んだときは、詩の意味が全くわからなかった。ただ、改めて読んでも国有名詞も多く、ぼんやりとしかイメージできない。この詩で伝えようとしていることも、はっきりしないのが正直な感想である。

【論考】人生/池田晶子 ◎
人は必ず死ぬ。しかも、いつ死ぬかは分からない。その事実を直視したうえで、私はどう生きるのか。人生の不思議に向き合うのか、そうではないのか。自分自身は向き合ってと思っているが、日々の暮らしに埋没してしまうと、それもままならない。定期的にこうした言葉に触れ、思い出すしかないのだろうか。


幸福とは自分の心のありようそのもの【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0103】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】彼と私の本棚/角田光代 ◎
私とハナケンは、互いの本棚を通じて、恋人としてのつき合いを深めていた。読書好きの人からすると、とてもよく分かる状況。でもそれは、恋愛における必要条件ではないから、ハナケンに別な好きな人が現れ、分かれることになる。「私」は、なかなか割り切ることができずにいたが、過去の豊かなつき合いが無駄になるわけではないから、新たな生活に力強く進んでもらいたいと思った。

【詩・俳句・短歌・歌詞】虹/まど・みちお △
人間は空を汚してしまった。でも、他の生き物たちのために、「虹は出て下さっている」のだという。私は、こうした人間対自然、人間対他の生き物という対立構造は、あまり好きではないし、事実でもないと思う。人間は他の生手物たちとは違っているが、人が生きていること自体は自然の一部であるだろう。

【論考】幸福/池田晶子 ◎
私自身、感謝の気持ちは持っているものの、幸福感に乏しく、不幸気質だと思っている。「すべての人が幸福を求めている」「幸福とは自分の心のありようそのもの」と改めて明言されると、自分は幸福が取到来するものだと思いすぎていたことに気づく。私の心が今ここにあるからこそ、すぐにでも幸福になれるのだ。


本当に大事なものは、君の中にこそある【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0102】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】手紙/角田光代 ◎
旅の直前に恋人と喧嘩して、おひとり様で旅館に泊まる女性。部屋に置いてあった本の中から、偶然にも手紙を見つける。少し自分の境遇とも似ており、段々と手紙の語り手と自分を重ね合わせるようになる。共感しつつも、相対化することで、現在の自己を超え出ようとしているのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】用意/石垣りん ○
四季の移り変わりと、自身が生きることをオーバーラップさせている。秋から冬にかけて、樹木から葉が落ちることは「洞落」ではなく、次の季節への「用意」ととらえているのだろう。その解釈に異論はないが、それを踏まえた読者への具体的なメッセージが、私としては欲しかった。

【論考】お金/池田晶子 ◎
お金の必要性は十分に認めつつ、「本当の価値、君の人生にとって本当に大事なものは、君の中にこそある」というのが、池田さんのメッセージ。今、仕事の再検討をしているので、ある意味で気づいていることだったが、生活が順調だと、お金を得ることが目的化されがちになってしまうだろう。気をつけなければ。


言葉は時空を超えて存在する【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0101】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】だれか/角田光代 ◎
タイでマラリアにかかった24歳の女性が、病床でたまたま手に取った本を通じて、ある人物の存在をまざまざと感じる。それは単なる妄想なのか、ある種の必然的な確信なのかは定かではない。まさに「だれか」であり、その人物像より風景の方が、ずっと残り続けているようだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】滅私奉公/吉野弘 △
この詩で訴えたい主旨が、ちょっとよく分からなかった。もしかして、原子力について言っているのかもなどと思ったが、単純に人が個を失って、国家のような全体に尽くすことを警告しているのであろうか。例えば、「虚無の手」といった表現も出てくるが、抽象的すぎて、それは何かがとらえられないままである。

【論考】言葉/池田晶子 ★
言葉が持つ特別な力を再認識した。聖書の「初めに言葉ありき」という言葉の真意、言葉が世界を創ったんだということ、目に見えない意味こそが、人や世界を動かしていることに改めて気づかされた。何百年前の言葉であっても、“今”分かるという時空を超えられる点も奇跡的だ。