広く告げることで、結婚できるのか?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0060】


【短編小説】空の死神/星新一
ちょっと後味が悪すぎる。訳アリの乗客ばかりを乗せた飛行機が、落雷によって墜落しようとしている。乗客の誰もが現世では都合が悪く、むしろ喜んで死を迎え入れようとする。そのため、乗客を助けようとするCAさんは、逆に邪魔者扱いされて……。読み終った後は、やるせない気持ちにしかならない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】求婚の広告/山之口貘
コミカルな印象も持てなくはないが、何とも共感しづらい内容である。少なくとも、今の時代にはフィットしていないと思う。「あなた」こそを待ち侘びているというのであれば、もうちょっと謙虚な熊度が必要なのでないか。「広告」というのも、押し付けがましい感じが強くなる。

【論考】「風流」について/森本哲郎
「風は何かを教えてくれます」。確かに、そうかもしれない。しかし、教えてくれるのは、風だけではないと思う。様々な自然の営みに気づかされるのが、人間だろう。日本人にとって風は特別な存在であるというのは、やや言い過ぎだと思うし、論考全体としてロジックが通っていないと感じた。


ジャックポット教の信者たち【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0059】


【短編小説】おのぞみの結末/星新一
ジャックポット教の信者たちの物語。小説の中で明示されないが、チャンスがあれば、金を持ち逃げしてもヨイという教義のようだ。逆から言うと、そうしたチャンスの到来を願う宗教といったところ。大金を前にして、偶然にも信者たちが、集まってくる。そして、紆余曲折ありながらも、最後にはおのぞみの結末迎えるのだ。終わり方は、やや唐突だった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】便所掃除/濱口國雄
トイレの掃除は誰しも好きではないだろう。ましてや、公衆便所のような他人のための掃除ならなおさらだ。この詩では、かなり汚れたトイレを、愚痴りながらも、ゴシゴシと洗ってゆく。体験的な記述か、想像で書いているかは判然としないものの、「朝の光が便器に反射します」が、印象的だった。きっと実体験なのだろう。

【論考】人間を解くカギについて/森本哲郎
ちょっと昔話が過ぎるなあと思った。最後まで読んでも、尻切れトンボな感じだし、言いたいこと、主張もはっきりしないまま終わってしまう。ただ、「人問のすべてを知るということは、自分のすべてを知ると外にない」という考えには共感できるので、そこを掘り下げてほしかった。


いそがなくたっていいんだよ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0058】


【短編小説】ある占い/星新一
オチが全く予想外で、とても面白かった。蛇が自分のシッポに噛みつくみたいな話だが、妙な爽快感があった感じ。占いが当たりすぎるのは、途中不自然な印象もあったが、ストーリー上欠かせない要件だったので、すぐに納得に変わった。今回読んでいる星新一さんの作品の中で、一番好きかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】南の絵本/岸田衿子
「いそがなくたっていいんだよ」から始まる。今の自分にとっては、こんなダイレクトなメッセージがとてもがグサりと刺さった。「あるいてゆけばいい」という最後の一行も、読み手を後押ししてくれる言葉に感じる。コロナ禍で、焦りばかり感じていたので、一瞬かもしれないがとても救われた。

【論考】ことわざについて/森本哲郎
小学6年生の時、自由研究でことわざを検証したことがある。発表したら同級生にはなぜか笑われたけど、ことわざは本当に正しかった。だから、先人たちから継承されてきたことわざを信じている。筆者は、ことわざを芸術作品とも評していたが、最後に述べた哲学の方が近しいと思う。


おぼろの世界に安心する日本人【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0057】


【短編小説】わが子のために/星新一
ダブルのオレオレ詐欺といった所だろうか。とはいえ、唐突に訪れた弁護士の口だけの説明で、そんなに簡単に騙されるとは思えない。男は犯罪組織のボスなのだから。ストーリーのアイデアとしては、悪くないと思うものの、細部がもう少し整えられていたら、もう少し入り込めたかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】言葉のダシのとりかた/長田弘
例えば、メールを書くにしても、単純に思いついたまま言葉を使っているわけではないから「言葉のダンをとる」というのは、ある意味大切だと思う。でも、かつおぶしをモチーフにしているせいでかえってよく分からなくなってしまった。「言葉の一番ダシ」をとるために、結局、何をすべきなのだろうか?

【論考】魂の風景について/森本哲郎
おぼろの世界に対して、ヨーロッパの人たちは世界からる引き離されると感じ、日本人はつつみこまれると感じるという。あまり意識したことはなかったが、それは確かにそうだと思う。あからさまではなく、おぼろげな風景に対しても、それはそれで趣きを感じる。どうしてそうなのかを、仮説でもヨイから示してくれるとよかった。


ひとひらのさくらのはなびら【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0056】


【短編小説】親しげな悪魔/星新一
老人の姿をした柔和な悪魔が登場。3つの願いをかなえてもらう代わりに、誰かが不幸になっているという。願いをかなえてもらった青年はたまらず、命を差し出してしまう。悪魔は、そんなこと普通だと言うものの、自の考え方や感情は青年に近しい。それでは、世の中、生き抜いていけないのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】さくらの はなびら/まど・みちお
「さくらのはなびらが、じめんにたどりつく」。それだけとも言えることだが、作者は地球や宇宙にとって、ひとつのことと提えている。確かに、どんなささいな事柄でも、はじまりがあり、おわりがある。そうした小さな事柄が無数に起こることで、世界は少しずつ動いているのだ。

【論考】人生の智恵について/森本哲郎
世阿弥の「秘すれば花なり」を読み解いているのだが、ちょっとよく分からなかったというのが正面な感想。秘すること自体に効果があるとのことだが、どんな効果、効用なのかは、明確に示されていないと思う。言葉の意味をきちんと探求する点ではヨイが、結論が不明瞭なままで終った感じ。


生まれ出てくる偶然【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0055】


【短編小説】現実/星新一
夢を通して、様々な状況、時空を超えた現実に直面する青年。その現実を受け入れることで、逆に現実を変えてゆく。こんなことは、きっと起こらないことではあるが、不思議な説得力があり、最後にはこんな人生があるかもと思わされていた。時系列じゃないところが、効果的だったのかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】あいたくて/工藤直子
生まれ出てきた偶然と運命に従おうとする気持ちを語っているのではないか。自分が、生きているのは所与のことであり、どう生きるかは意志の問題だから、どうしても迷いが生じてくる。その戸惑いを詩にしたように思う。柔らかい言葉使いも心地良い。

【論考】自然の美しさについて/森本哲郎
自然の何に美を感じるかは、国や風土によって異なるだろうし、もっと言えば人によってもまちまちだと思う。なので、筆者の言わんとする事には替同する。ただ、最後の自然と都会の対立は、書かれた当時は気にならず読めたかもしれないが、今だとちょっとつまづく感じがしてしまう。


好きな人の名は言えない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0054】


【短編小説】侵入者との会話/星新一
事態が二転三転するサスペンス。とは言え、出てくる犯罪者に、ちょっとしたコミカルさというか、抜けてる感じもあり、それほど切迫感はない。やはり星新一さんの世界観。なので、フィクションとして、箱庭を眺めているような読後感であった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】練習問題/阪田寛夫
国語の練習問題のような語り口から、ポロッと「ぼく」の本音が垣間見える微笑ましい詩であった。いわゆる時的、文学的表現じゃない方が、伝わりやすいだろうなと改めて感じた。そうした意味では、読者フレンドリーな作品ではないか。

【論考】住まいについて/森本哲郎
日本人の住まい観は独特で、堅牢さはそこそこに、世の無常を前提とした住居だという。確かにそうだとは思うものの、筆者の論理展開がややくり返しに終始にしていて、スッと入ってこなかった。また、日本人の住まいの先にあるものを、提示してくれたら、論考としてもっとよかったように思う。


その瞬間、ここに存在すること【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0053】


【短編小説】ひとつの目標/星新一
何かに追われるように人を探す。人を探し出すことで、自らが救われるようだ。謎めいた人探しにつき合っていると、命をかけた大がかりな鬼ごっこだったことが明かされる。何だそりゃーというのが最初の感想。成功すれば特権階級になれるようだが、それでも一年かけて人を探したり、逃げたりするだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ぼくが ここに/まど・みちお
その瞬間、ここに存在しているのは唯一であると、以前気づいて、ちょっと驚いたことがあった。この詩はその驚きを、「だいじにみもられているのだ」「なににもましてすばらしいこと」としている。存在するだけですばらしいかどうかは置いておいても、存在者からすると守られていると思うべきだろう。

【論考】母なる自然について/森本哲郎
『遠野物語』に興味は持てたが、自然と都会の対立構造や「母なる自然」のような定型的な母性の美化は、ちょっと違和感を持った。論考全体としても、物語やストーリーの紹介が多く、論理展間よりも情緒的な説明に終始していた印象である。


質屋へ走り、酒屋をたたきおこす【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0052】


【短編小説】ひとつの目標/星新一
善意をもって世界征服をめざすグループに誘われるエフ博士。グループに参加して、人類のためにと、多くの知性やパワーを結集し、史上初めて世界征服が実現する。が、しかし、目標が達してしまうと、優れたメンバーも退屈してしまうのだ。イベント前までの方が、ワクワクするのに似ているかもしれない。ある意味、贅沢な悩みだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】系図/三木卓
初めて自分の子どもが生まれたときのことを思い出した。誕生を喜びながらも、何だかフワフワした感じ。その時、自分の親はどうだったんだろうとは考えなかったが、誰しもきっと似たような感情を持つのだろう。歴史はくり返すというのか、家族の継承というのか。

【論考】「捨てる」ということについて/森本哲郎
一遍は、すべて捨てよと説いたという。確かに余計なものはもちろん、あらゆるものを捨て去れたら、それは超越者であろう。ただ、人間は容易にすべてを捨てられるわけでもなく、捨てるにしてもひとつひとつではないのか。そういう意味では、一遍の説を実践するならば、長い時間がきっと必要だ。


おのぞみの結末【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0051】


【短編小説】一年間/星新一
冒頭の二人の女性を勘違いする件が、事実関係自体、よく理解できなかった。意図した表現だとは思うが、どっちがどっちなのか…?という感じである。ロボットとの生活の結末は、分からなくもないが、人への接し方にそれほど汎用性があるわけでもないのではと思ってしまったのが、正直なところである。

【詩・俳句・短歌・歌詞】I was born/吉野弘
人間の生は、自身の意志ではなく、受け身であるということについては、そう、その通りと思う。カゲロウの話は、初めて聞いたので、驚きとともに、納得感がとても大きかった。これもやはり、詩というよりも散文のように見えるが、だからこそ説得力があったと思う。

【論考】芸術の秘密について/森本哲郎
写生とは対象をうつしとること。なぜうつしとろうとするのか。「うつしてることによって、対象と合一し、対象を超えたいと思うから」というのに、とても共感する。私は小説をそのまま書き写しているが、その行為は、まさに合一と超越のためである。上や横から眺めたり、解釈せず、ありのままを見つめることが、対象と対峙できる唯一の方法ではないのか。