きっとその人にしか歌えないコトが存在する:COVER 70’s/柴田淳【CD千本ノック 0080本目】


柴田淳はずっと知っていたし、気になっていたのだが、運悪く聴く機会がなかった。雑誌や店頭などでちょくちょく見かけてはいたものの、彼女の音楽を聴こうと思うまでの、強いきっかけが見つからないまま、今まで来てしまったのだ。

そんな折、タワーレコードで「タワレコチョイスまとめ買いセール」をやっていて、彼女のカバーアルバム『COVER 70’s』が対象商品になっていた。少し安くなるのなら聴いてみようかなという気持ちと、70年代に人気を博した曲のカバーということであれば、CDとして外れはないだろうと思い、購入に至った。

初っ端の「異邦人」から、流麗でパワフルな歌声を聴かせてくれ、アタクシの予想とは異なっていたが、一気に期待感が高まる。選曲は、やや縁遠いものもあったが、どの曲もいつかどこかで聴いたことのある名曲ばかり。彼女の歌唱力を考えれば、失敗のない一枚だろうと思ったし、結果その通りだった。

その中でも印象的だったのが「青春の影」。本家チューリップのオリジナル曲も好きだが、柴田淳バージョンを聴いて、これまで感じてこなかった感情が沸いてきた。彼女の歌のおかげで、この曲の新たな魅力が浮かび上がってきたのだと思う。歌い手の声や歌い方で、曲の出来は左右されるんだなと改めて気づいた。実に、当たり前な話しだけど。

COVER 70’s/柴田淳(2012)
1. 異邦人
2. みずいろの雨
3. 迷い道
4. あなた
5. 木綿のハンカチーフ
6. 飛んでイスタンブール
7. 青春の影
8. 秋桜
9. 東京
10. スカイレストラン
11. 22才の別れ
12. MR. サマータイム

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グランジの再来ではなく、あふれ出る現在進行形の初期衝動:Attack On Memory/Cloud Nothings【CD千本ノック 0079本目】


クラウド・ナッシングスは、確か渋谷のタワーレコードでリコメンドされていて、うたい文句が「ニルヴァーナ meets~」「ニルヴァーナ好きなら~」みたいな感じだったのと、ニルヴァーナ『イン・ユーテロ』の仕事で知られるスティーヴ・アルビニの名前もあったので、グランジの再来的なバンドなのかしらと思って、CDを購入した。

この『アタック・オン・メモリー』は、彼らのキャリアとしては『クラウド・ナッシングス』に続く2枚目にあたる。米国のオハイオ州に住む当時18歳だったディラン・バルディが、自宅で一人デモ制作を始めたことから、バンドはスタートしたという。

アルバムを一聴して思い起こしたのは、宣伝文句の通りニルヴァーナが鳴らした音。すごく似ているわけではないが、シャウトの感じとか、若々しさとか、グランジを想起させた。最近では、すっかり往年のスタイルになっているので、懐かしい感じもあった。

ただ今になって改めて聴くと、そうした印象は少し遠のいてしまっている。もちろん過去に活躍したアーティスト(ニルヴァーナやピクシーズなど)の影響は受けているのであろうが、クラウド・ナッシングスならではの個性も十分に伝わってきた。ディラン・バルディのソング・ライティング力も、現役アーティストの中では頭一つ抜けていると思うし。

ちなみにおススメは、2曲目の「Wasted Days」。ほぼ9分と長尺だが、後半のインストゥルメンタル・パートが出色の出来である。不穏なドラム音が通底する中で、音が重なり合って上り詰めていく感じが、とっても気持ちヨイ。1曲くらい聴いてみようかなという方は、まずこの曲を試してもらいたい。

Attack On Memory/Cloud Nothings(2011)
1. No Future/No Past
2. Wasted Days
3. Fall In
4. Stay Useless
5. Separation
6. No Sentiment
7. Our Plans
8. Cut You

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「これが狂った世界だ」と歌ってると思っていた:Live Jam/The Jam【CD千本ノック 0078本目】


ザ・ジャムは、アタクシが音楽を聴くようになった頃には既に解散していたので、ロック史を復習するような意味合いで『イン・ザ・シティ(In the City)』なんかから、一枚一枚さかのぼって聴いていったアーティストだ。

ただ、正直言うと、彼らのサウンドにはあまりのめり込めず、ロック・クラシックだから聴くべきアルバムだろうくらいに考えていた。なので、一通りオリジナル・アルバムは入手して聴いたのだが、CDを整理する機会に手放してしまった。

(2015年に低価格で再販されたので、改めて購入したのだが、なぜか『ザ・ギフト(The Gift)』だけは販売されないまま。理由はよく分からない)

だがしかし、この『ライブ・ジャム』だけは、ずっと手放さず、繰り返し聴いてきた。ライブ音源をそのままCDにしているせいか、生々しいサウンドが気に入っていていたのだ。

特に1曲目の「ザ・モダン・ワールド」で歌われる冒頭の「This is a modern world, this is a modern world.」という歌詞が、「This is a mad world, this is a mad world.」だと思っていた。「クー、『これが狂った世界(mad world)だ』って、イカスなー」と、一人で誤解していたのである。

そんな勘違いがありつつも、長らく聴いてきた『ライブ・ジャム』。今聴いても、ライブの音楽はちゃんと格好ヨイし、やはり「mad world」に聴こえると思うので、ぜひ皆さんにも確認してもらいたい。

Live Jam/The Jam(1993)
1. The Modern World
2. Billy Hunt
3. Thick As Thieves
4. Burning Sky
5. Mr. Clean
6. Smithers-Jones
7. Little Boy Soldiers
8. The Eton Rifles
9. Away from the Numbers
10. Down In the Tube Station at Midnight
11. Strange Town
12. When You’re Young
13. ‘A’ Bomb In Wardour Street
14. Pretty Green
15. Boy About Town
16. Man In the Corner Shop
17. David Watts
18. Funeral Pyre
19. Move On Up
20. Carnation
21. The Butterfly Collector
22. Precious
23. Town Called Malice
24. Heatwave

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等身大で鳴らす本格的なロック・サウンドの力:生命力/チャットモンチー【CD千本ノック 0077本目】


『生命力』は、チャットモンチーのメジャーデビュー後、chatmonchy has come『耳鳴り』に続く、3枚目のアルバム。デビュー当時から完成度が高かったこともあり、この『生命力』で、音楽的に何かが大きく変わっているようには感じない。1枚目からここまで、あっと言う間に駆け抜けてしまったのではないだろうか。

アタクシ的には、チャットモンチーの最も大きな要素、ストロングポイントとして、橋本絵莉子のボーカルがあると思っている。あのハイトーンボイスは、単に高い声で上手に歌えるだけでなく、強く聴き手の感情に訴えかけるのだ。ちゃんと情感のこもった声は、洋の東西を問わず、実はなかなか聴けるものではないと思っている。

曲の歌詞についても、「親知らずが生えてきたよ」と歌う「親知らず」や、「わたしが神様だったら/こんな世界は作らなかった」とシャウトする「世界が終わる夜に」など、身の回りの話題だけにとどまらず、抽象的なテーマにおいても、気取らず、率直な言葉で紡がれていて、とても好感が持てる。

チャットモンチーらしさだと言えばそれまでだが、こうした等身大の彼女たちが、本格的なロック・サウンドを鳴らしているのが、これまた珍しいと思うし、本当に格好ヨイと感じている。

生命力/チャットモンチー(2007)
1. 親知らず
2. Make Up! Make Up!
3. シャングリラ
4. 世界が終わる夜に
5. 手のなるほうへ
6. とび魚のバタフライ
7. 橙
8. 素直
9. 真夜中遊園地
10. 女子たちに明日はない
11. バスロマンス
12. モバイルワールド
13. ミカヅキ

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新たな「歓喜(Rapture)」の再来を望む:In The Grace Of Your Love/The Rapture【CD千本ノック 0076本目】


ザ・ラプチャーの『イン・ザ・グレイス・オブ・ユア・ラブ』は、自分が買ったはずではあるが、いつどこで購入したのか、記憶にないというのが正直なところだ。

以前iPod nanoでシャッフル再生していて、サーフィンしている男性のジャケト写真が印象に残ったことで、「ああ、アタクシはこのCDを所有しているんだな」と認識した。恥ずかしながら、気が付くと手元にCDがあって、彼らの音楽を聴いていたことになる。購入理由も覚えていない(いい加減なリスナーで申し訳ない…)。

さらに、彼らはニューヨークのダンス・パンクバンドということだが、アタクシは「ダンス・パンク」というものがよくわかっていない(返す返す申し訳ない…)。パンクはタテノリで、ダンスとは縁遠い感じがしてしまう。

それでもこのCDを無心に聴けば、前衛的なサウンドは気持ちよく感じるし、ダンス的なアプローチはポジティブに作用していると思う。先入観なく聴いて(持ちようもないのであるが…)、ヨイアルバムだと感じている。

ただ、ザ・ラプチャー自体は既に解散しており、この『イン・ザ・グレイス・オブ・ユア・ラブ』が最後のアルバムになっている。

ラプチャー(Rapture)という単語の意味は、キリスト教の終末論においてイエス・キリストの再臨の際に起きるとされる現象のこと。一般的には、「狂喜」「歓喜」「有頂天」などを指す。やはり新たな歓喜が来ないのは、残念なこととだ。小さな望みではあるが、ラプチャーの再来を願う。

In The Grace Of Your Love/The Rapture(2011)
1. Sail Away
2. Miss You
3. Blue Bird
4. Come Back To Me
5. In The Grace Of Your Love
6. Never Die Again
7. Roller Coaster
8. Children
9. Can You Find A Way?
10. How Deep Is Your Love?
11. It Takes Time To Be A Man
12. In Love Divine
13. How Deep Is Your Love?

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ルーファスとは、終電を逃した夜に一晩を伴にした仲:Rufus Wainwright/Rufus Wainwright【CD千本ノック 0075本目】


ルーファス・ウェインライトのデビュー・アルバム『ルーファス・ウェインライト』は、アタクシにとって忘れられないアルバムである。社会人なり立てのころ、終電を逃してしまったことがあって、そのまま一晩中家に向かって歩き、ずっとこのアルバムをリピートして聴き続けたことがあったからだ。

今だったらタクシーを拾って帰ると思うが、当時はそんな頭がなく、とにかく歩くしかないと思い込んで、トボトボと家路についた。その時、多分たまたまディスクマンに入っていたCDがこの『ルーファス・ウェインライト』だったのである。

意気消沈しつつ音楽に耳を凝らすと、オペラを思わせるような流麗なサウンドとルーファス・ウェインライトの粘っこい美声が混然一体となって響いていた。そして、「人生はヨイことばかりではないが、まあそんなに悪いもんでもないぞ」と語られているような気分になったのである。CDを入れ替えるのが面倒だったこともあり、本当に朝まで繰り返し、何度も何度も彼の歌を聴いた。

そんな一晩を伴にしたアルバムということもあり、彼の音楽は、アタクシの頭にこびりついている。特に1曲目「フーリッシュ・ラブ」の「I don’t want to hold you and feel so helpless(君を抱きしめて/どうしようもない気持ちになりたくないんだ)」という歌いだしを聴くと、自然とあの夜のことが思い出されてくるのだ。その道に人影はなく、自分一人で黙々と歩くしかなかったことを。

Rufus Wainwright/Rufus Wainwright(1998)
1. Foolish Love
2. Danny Boy
3. April Fools
4. In My Arms
5. Millbrook
6. Baby
7. Beauty Mark
8. Barcelona
9. Matinee Idol
10. Damned Ladies
11. Sally Ann
12. Imaginary Love
13. A Bit Of You

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「スマートなのにエモい」という稀有な存在だった:On my way back home/OCEANLANE【CD千本ノック 0074本目】


最近たまたまオーシャンレーンの曲を繰り返し聴くことがあって、懐かしさも手伝い、「今どんなリリース状況なのかな」と調べたら、2011年に活動を休止しているようでビックリしてしまった。

しかも、彼らのリリースは欠かさずチェックしてきたと思っていたのだが、4枚目のアルバム『Crossroad』を聴いていなかったことも発覚(5枚目は入手済みだった)。慌てて注文したりした。

そんな風に、ややいい加減なリスナーであるアタクシではあるが、オーシャンレーンというと真っ先に思い出すCDが、今回紹介するファースト・アルバムの『オン・マイ・ウェイ・バック・ホーム』なのだ。

青空が眩しいジャケット写真は、かなりアタクシ好みで、この印象は鮮明にあるのだが、どうして聴くにいたったかはあまり覚えていない。

ただ、日本人アーティストだと思ってきいたら、全曲英語の詞だし、発音も良すぎて、「あれ海外アーティストだったのかな」と疑うほどだったので、出会ったときの驚きは大きかった。

流暢な英語の歌詞だけでなく、サウンド自体も非常にスマートなのに、エモーショナルなロックを聴かせくれるアーティストだった。そうした音楽性において、日本だけでなく、世界的にも珍しい存在ではなかっただろうか。

個人的には、ジミー・イート・ワールド(Jimmy Eat World)を若々しく、青々しくした感じだと思っており、世界屈指のエモ・バンドと言っても、言い過ぎではないだろう。

5年以上活動休止に気づかなかった人間が言うのも何だか、またいつかオーシャンレーンの新しいサウンドを聴けるとうれしいと思う。今度も気づかぬうちに、活動再開していたりして。

On my way back home/OCEANLANE(2004)
1. Everlasting Scene
2. Sign
3. Ships and Stars
4. Haze in Heart
5. Million
6. Terminal
7. Ten Second Illusion
8. Broken Wings
9. Scent Of The Air
10. Fade In Time

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ポスト・ダブステップの寵児は、革命的な音楽を鳴らしている?:James Blake/James Blake【CD千本ノック 0073本目】


ジェイムス・ブレイクはポスト・ダブステップの寵児だ(とのこと)。アタクシ、音楽ジャンルに疎く、苦手意識しかないのだが、「ダブステップ」を調べてみると、Wikipediaには「1999年にイギリスのロンドンで誕生した強くリバーブのかかったドラムを用いた2ステップの総称」と 書かれている。「リバーブ」とは残響効果であり、「2ステップ」はリズムにおけるノリのポイントが2種類存在していること(のようだ)。

こう書いている本人が、ダブステップに対して理解不足のまま話しを進めてしまうが、そのダブステップの「ポスト=次」に当たるのが、ジェイムス・ブレイクが鳴らすサウンドなのである。

実際に、初めてジェイムス・ブレイクのデビュー・アルバム『ジェイムス・ブレイク』を聴いた時は、これまで全く聴いたことがないサウンドに相当困惑してしまった(自分がよく把握できていない音楽の次であり、未来なのだから、当然ではあるのだが…)。

そんな“未知との遭遇”ではあったものの、彼のサウンドが不思議と耳に残ったというか、体験として心地よかったのである。

音楽における勝利の方程式をすべて解体するように、静かなビート、ダークな浮遊感、物悲しい歌声、優しい孤独感、デジタルな包容力など、これまでほとんど表現されていなかった要素が、一体になった曲が淡々と進んでいく。それは、革命的な音楽が穏やかに鳴り始めているようにも聴こえた。

James Blake/James Blake(2011)
1. Tep And The Logic
2. Unluck
3. The Wilhelm Scream
4. I Never Learnt To Share
5. Lindisfarne I
6. Lindisfarne II
7. Limit To Your Love
8. Give Me My Month
9. To Care (Like You)
10. Why Don’t You Call Me
11. I Mind
12. Measurements
13. You Know Your Youth

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穏やかな人柄を聴かせるロック:Let It Come Down/James Iha【CD千本ノック 0072本目】


このアルバムがリリースされた時は、ある意味衝撃的だった。あのスマッシング・パンプキンズのギタリスト(当時)が出すソロ・アルバムだから、きっと過激な音になるのだろうと思っていたら、予想に反してとても穏やかで、ピースフルなロックが鳴っていた。「えー、意外!」と、多くの人が感じたのではないだろうか。

ライナーノーツにある発売当時の本人へのインタビューでは、次のようなに言っている。「ただひたすら、すべての曲をストレートに、メロディアスに、正直に、ダイレクトに、って心掛けたんだ」。

実際にどの曲も、非常にソフトでまろやかなメロディー、サウンドにあふれている。ジェームス・イハという一人のシンガー・ソングライターが、飾ることなく、等身大の自分を表現したアルバムなのだ。

激しいロック・サウンドを期待したリスナーには、淡々としすぎに感じるだろうし、ジェームス・イハのボーカルも率直に言って上手いわけではない。一言で表現すれば地味なアルバムである。でも、取り立ててナニと言えない感じ、その普通さが、このアルバムの一番の聴きどころだと思っている。

彼自身が投影されたサウンドは、聴いていて落ち着くし、ホッとする。アタクシたちは、ジェームス・イハの穏やかな人柄を聴いて、喜んでいるのかもしれない。人柄で聴かせるアルバムって、あるようでなかなかないものだ。だからこそ、アタクシがこの珍しいCDを何度も聴き続けているのだと思う。

Let It Come Down/James Iha(1998)
1. Be Strong Now
2. Sound Of Love
3. Beauty
4. See The Sun
5. Country Girl
6. Jealousy
7. Lover, Lover
8. Silver String
9. Winter
10. One And Two
11. No One’s Gonna Hurt You
12. My Advice
13. Take Care
14. Falling

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カバーすることで、また別の名曲が生まれる:Fake Book/大橋トリオ【CD千本ノック 0071本目】


『フェイク・ブック』は、大橋トリオが宇多田ヒカル、海援隊、マイケル・ジャクソンの楽曲を歌ったカバー・アルバム。アタクシ的には、彼のアルバムとして初めて購入したCDになる。

もともと大橋トリオの名前は知っていたが、運悪くきちんとその音楽を聴けずにいた。ところが、ある時、ネット上で「贈る言葉」の動画をYouTubeで見かけ、印象的な映像含め一目惚れして、このアルバムにたどり着いたのである。

「贈る言葉」といえば、テレビで「金八先生」を見ていた者からすれば、もう何度も聴いていて、武田鉄矢のイメージが刷り込まれている。これまで、あの曲を仮にカバーしても、オリジナルを超えた印象を与えられる人はいなかった。

だが、大橋トリオはゆるりと、彼なりのアプローチで全く別の曲のようにしてしまった。しかも、歌い上げるわけでもないのに、歌詞の中にある一つひとつの言葉が、オリジナルよりもビビットに聴こえてくる。海援隊の歌からは感じ取れなかった、新たな魅力を引き出しているのだ。

この『フェイク・ブック』はカバー・アルバムではあるが、ある意味、大橋トリオのオリジナル・アルバムと言っても過言ではないだろう。それくらい、あまたの名曲を再解釈し、大橋トリオ自身の音楽に塗り替えてしまっている。

Fake Book/大橋トリオ(2010)
1. Dancing In The Moonlight
2. treaveling
3. 贈る言葉
4. HUMAN NATURE
5. I’m Yours
6. Greapefruit Moon
7. Dreames
8. 突然の贈り物

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