「猶予期間は誰にでもある、無罪だ」ということらしい:無罪モラトリアム/椎名林檎【CD千本ノック 0065本目】


ノストラダムスの大予言によれば「恐怖の大王」が空から来ると言われていた1999年。その年にリリースされたのが、椎名林檎の『無罪モラトリアム』だ。世を儚んだ世紀末から、もう20年近く過ぎていることになる。

『無罪モラトリアム』は、彼女にとってデビューアルバム。今このタイミングで改めて聴いても、全然古びていないし、椎名林檎の初期衝動がパンパンに詰まっているように感じた。好き嫌いにすぎないが、彼女の作品の中で一番ヨイCDではなないだろうか。少なくともアタクシには、最も印象に残っているアルバムだ。

椎名林檎を知ったのは、サードシングルの「ここでキスして。」だったと記憶している。CDがスマッシュヒットして、「カウントダウンTV」で見たのが初めてだと思う。見たといっても10秒程度だったはずだが、「必ずこの人の音楽をチェックしなきゃ」と一発で覚えてしまった。

当時はまだまだJポップというか、日本の音楽シーンが元気な頃で、CDなんかもよく売れていたのだが、アタクシが聴きたいと思うサウンド、アーティストにあまり出会えないでいた。

国内でよく売れているCD、アーティストなんかも、自分の守備範囲とはやや離れていたので、彼女の音楽を聴いて、「そうそう、こんなロックが聴きたかったんだよな」と溜飲を下げたのである。

今ではオリンピック関連のサウンドも手がけ、ある意味日本を代表する音楽家になっている椎名林檎。年々進化を遂げ、日々洗練されてきたのであろう。もちろん、その仕事ぶりに不満があるわけではない。

それでも、彼女の原点ともいえる無罪モラトリアム的な音楽、女性らしいチャーミングさとべらんめいな巻き舌が同居するボーカルや、何かを叩きつけるような、まだ角が取れていないロック・サウンドを、またいつか聴いてみたいなと勝手に期待してしまうのだ。

無罪モラトリアム/椎名林檎(1999)
1. 正しい街
2. 歌舞伎町の女王
3. 丸の内サディスティック
4. 幸福論(悦楽編)
5. 茜さす 帰路照らされど…
6. シドと白昼夢
7. 積木遊び
8. ここでキスして。
9. 同じ夜
10. 警告
11. モルヒネ

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17歳の絶頂期を経て、今もギターを弾き続ける:Pictures For Pleasure/Charlie Sexton【CD千本ノック 0064本目】


今から30年以上前の1985年、チャーリー・セクストンが17歳の時にリリースしたファースト・アルバムが、『ピクチャーズ・フォー・プレジャー』である。セールス的には全米15位にとどまるものの、その当時は、日本を含めロック・アーティストとして評価されるだけでなく、アイドル的な人気を誇っていた。

確か若手の中でも、ある意味で超早熟な音楽性の高さが認められ、ロック界に現れた希望の星という感じだったし、そのスタイルやルックスのよさから、女性からキャーキャー言われていた。

もちろんアタクシも、その頃、彼のアルバムを聴いたがピンと来なかった。ロックの今後を担うアーティストやアルバムには思えなかったのが正直なところだ。決して、女子にモテているのを妬んだわけではない。

なので、最近までCDなどの音源も手元になかった。実力が伴わず人気先行というイメージを持ったまま、ずっと彼の音楽に触れずに過ごしてきたことになる。

ただ、数年前に紙ジャケ仕様のリマスター盤が出ていて、たまたまCD屋で見かけて、改めて聴いてみようと思った。いけ好かない印象よりも、懐かしさが勝ったのだろう。30年も経てば、聴く方も変わるのだ。

実際に『ピクチャーズ・フォー・プレジャー』を聴いてみると、「ビーツ・ソー・ロンリー」くらいしか聴き覚えがなかったが、当時聴いたのとはまた別の感覚も持った。周囲の評判やあの頃の喧騒がないせいか、フラットな気持ちで聴けて、普通のロックCDに聴こえた。アルバムの中にいた若くて嫌な感じのイケメンは消えてしまった。都合がヨイ年寄りだ。

チャーリー・セクストンというと、このアルバムくらいしか記憶にない。だが今も現役で、最近ではボブ・ディランのバックバンドでギターを弾いたりしているそうだ。きっとギタリストとして、生涯ロックを鳴らし続けていくのだろう。

Pictures For Pleasure/Charlie Sexton(1985)
1. Impressed
2. Beat’s So Lonely
3. Restless
4. Hold Me
5. Pictures For Pleasure
6. Tell Me
7. Attractions
8. You Don’t Belong Here
9. Space
10. Impressed (Extended Dance Remix)

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10年以上の活動でバンド自身初のライブアルバム:LIVE AT XXXX/The Birthday【CD千本ノック 0063本目】


気が付けば、ザ・バースディとして10年以上活動していることになる。バンドの中心人物であるチバユウスケは、ミッシェル・ガン・エレファント(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)後、ロッソ(ROSSO)の例もあったので、正直それほど長続きしないのではと勝手に思っていた。だが、既にミッシェルを超える活動期間なのだ。

この『LIVE AT XXXX』は、そのザ・バースディにおいて初のライブアルバムで、完全生産限定盤でリリースされた。なので、音源はCDのみで、デジタル配信などはされていないようだ(Apple Musicは、過去のアルバムからの曲を組み合わせているだけ)。

通常ライブ盤というと、ベスト的な選曲に加えて、ライブ会場の生の雰囲気が垣間見えたり、リスナーにとってコストパフォーマンスの高いことが多いのではないか。しかし、このCDは、そうした期待に十分に応えてくれているのかよくわからない。

もちろん、彼らがツアーで鳴らしていた音が収録されているし、アタクシが生で聴いてきたザ・バースディの感触が再現されてはいるものの、何だか一枚のアルバムとして聴くと、小粒な感じになってしまっていた。「ザ・バースディって、もっとすごくなかったけ」と思ってしまったのである。

ファンなら初のライブCDだし、限定盤だから後で買えなくなるかもしれないし、どうしても買ってしまうだろうが、ファンじゃない人に対してもおススメできるかと問われると、やや躊躇してしまうアタクシがいる。

シングルCDも含めて音源が出るとずっとフォローしてきたし、フジロックなどのアクトで、彼らのライブを堪能してきた身としては、とっても残念ではあるが、それがこのCDを聴いて正直な感想なのだ。

LIVE AT XXXX/The Birthday(2018)
1. 24時
2. 夜明け前
3. ROCK YOUR ANIMAL
4. 木枯らし6号
5. LOVE SHOT
6. 情熱のブルーズ
7. LEMON
8. VINCENT SAID
9. Red Eye
10. プレスファクトリー
11. 夢とバッハとカフェインと
12. GHOST MONKEY
13. 1977
14. 抱きしめたい
15. なぜか今日は

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地下鉄の雑踏に響くポジティブでマジカルな歌声:The Subway Recordings/Susan Cagle【CD千本ノック 0062本目】


スーザン・ケイグルの『ザ・サブウェイ・レコーディングズ』は、そのタイトルの通り、ニューヨークの地下鉄で録音されたアルバムだ。

9.11の同時多発テロをきっかけに、シンガー・ソングライターのスーザン・ケイグルは、マンハッタンの地下鉄駅構内で「サブウェイ・ライブ」と称したパフォーマンスを、兄弟姉妹とともに始めた。その姿を見た音楽プロデューサーに見出され、レコード会社との契約に至ったのである。

そうした経緯もあって、彼女のデビューアルバムは地下鉄構内でレコーディングされた。実際に、列車の車輪が軋む音や人々が行き交う雑踏の様子がCDのそこかしこから聞こえてくる。まさにストリート・ライブに立ち会った感じだ。

普通ならレコーディングに向いていない場所であるだろうが、スーザン・ケイグルの声は気持ちよいほどポジティブに響く。多くの人が集まっては来るものの、本来通り過ぎるだけの場所である駅。そこで鳴らされるメロディーと彼女の歌声は何とも柔らかく、社交的なオーラをまとっている。ある意味、とてもマジカルな一枚だ。

そう言えばアタクシ、このアルバム後のスーザン・ケイグルの動向を知らないなと思って、改めて調べてみると、現在はスーザン・ジャスティスという名前で活動しているようだ。

ただ、あまり活発な活動はしていないようで、Apple MusicやAmazonでもほとんど音源が見つけられなかった。『ザ・サブウェイ・レコーディングズ』にとどまらず、もっと別の形で彼女の歌声が聴けたらうれしいのになあと思う。

The Subway Recordings/Susan Cagle(2006)
1. Shakespeare
2. Stay
3. Dream
4. Be Here
5. Ain’t It Good To Know
6. Manhattan Cowboy
7. Happiness Is Overrated
8. You Know
9. Transitional
10. Ask Me
11. Better That Way
12. What Else Can I Do
13. Shakespeare

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敬意を持って「さん」付けで呼ばせてもらっています:なんだこれくしょん/きゃりーぱみゅぱみゅ【CD千本ノック 0061本目】


正直言って、最初はナメていました。きゃりーぱみゅぱみゅさんを。今ではすっかり「さん」付けです。もちろん、プロデュースする中田ヤスタカの功績は絶大だろうし、音楽制作という面では彼がほとんどイニシアチブを取っているのかもしれない。

とは言え、リスナーとしては最終的なアウトプットに触れるし、中田ヤスタカのユニットであるCAPSULEも聴いているが、きゃりーぱみゅぱみゅさんの方が圧倒的にキャッチ―だし、ハッピーな気持ちになるのだ。

実際に、「にんじゃりばんばん」はアタクシの子どもたちも大好きだ。保育園のお遊戯で取り上げられたのが直接的なきっかではあるが、子どもが一回聴くだけで好きになれる、きゃりーぱみゅぱみゅさんのポップさは尋常ではないと思う。

そんなこともあり、きゃりーぱみゅぱみゅさんのアルバムリリースは、アタクシ割とまじめにフォローしている。この『なんだこれくしょん』をはじめ、どのアルバムも期待を裏切ることはないし、何より子どもたちと共有できる音楽として、これからも聴き続けていくことだろう。きゃりーぱみゅぱみゅさん、これからもよろしくお願いいたします。

なんだこれくしょん/きゃりーぱみゅぱみゅ(2013)
1. なんだこれくしょん
2. にんじゃりばんばん
3. キミに100パーセント
4. Super Scooter Happy
5. インベーダーインベーダー
6. み
7. ファッションモンスター
8. さいごのアイスクリーム
9. のりことのりお
10. ふりそでーしょん
11. くらくら
12. おとななこども

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デビュー当時は「ボーカルが元ボクサー」で話題になった:Hurricane#1/Hurricane#1【CD千本ノック 0060本目】


ハリケーン#1は、ライド解散後の1996年にアンディー・ベルを中心に結成されたイギリスのロックバンド。後期ライドの評価は、概して低くかったが、アタクシ的には結構好みの音楽だったので、このバンドの誕生は歓迎だったし、アルバムも期待して聴いた。

ボーカルはアレックス・ロウ。ハスキーな声と黒っぽい歌い方は、玄人好みな感じではあるが、アタクシにはドスンと響いた。なので、有望な新人ボーカリストの登場を喜んだし、アルバムとしてもリリースからずっと繰り返し聴いた。

当時、マスメディアにもそれなりの露出はあったように思うが、残念ながら大きな話題にはならなかったと記憶している。ロック好きの人と話していても、ハリケーン#1の名前が出ることはあまりなかった。

わずか2枚のアルバムリリースのみで、1999年には解散してしまたことも大きいのかもしれない(2015年にアレックス・ロウが再結成し、『ファインド・ホワット・ユー・ラヴ・アンド・レット・イット・キル・ユー』というアルバムをリリースしている)。

そうした意味では、目立ったバンド、多くの人の記憶に残るバンドではなかったが、アンディー・ベルのソングライティング、アレックス・ロウのソウルフルな歌声は、今聴いても色褪せることはないだろう。もし興味がわくようであれば、ファースト・シングルの「ステップ・イントゥー・マイ・ワールド」から聴くのがヨイかもしれない。

Hurricane#1/Hurricane#1(1997)
1. Just Another Illusion
2. Faces In A Dream
3. Step Into My World
4. Mother Superior
5. Let Go Of The Dream
6. Chain Reaction
7. Lucky Man
8. Strange Meeting
9. Monday Afternoon
10. Stand In Line

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「ドンルク」はみんなで歌う、みんなの名曲:Don’t Look Back In Anger/Oasis【CD千本ノック 0059本目】


「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」は、オアシスにおいて「ワンダーウォール」に負けず劣らずの超名曲だと思っている。この曲、オアシスを聴いたことのある人なら、きっと同意してくれるだろう。

ただ同じアーティストによる、同じアルバムに収録された名曲といっても、それぞれの曲でリスナーの反応はやや違っている。「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」は、彼らの演奏や歌を聴くだけでなく、みんなで歌う曲になっているのだ。

実際、フジロックなどのライブで演奏されたときも、老若男女を問わず大合唱になる。ライブの後半、盛り上がった段階だからということもあるだろうが、みんな気持ち良さそうに声を張り上げていた。こうした反応は、オアシスが解散して、ノエル・ギャラガーがソロになってからもずっと変わらない。

そうした意味では、オアシスやノエル・ギャラガーの名曲というよりも、みんなの名曲ということなのかもしれない。多少のおふざけもあるだろうが、イギリスの国歌だと評する人もいて、何だか人々を結束させるパワーがあるようにも感じる。

ちなみに、この「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」は、ノエル・ギャラガーが初めてボーカルをとった曲。「ヨイ歌だったからリアムに歌わせなかった」というオアシスらしいエピソードが残る歌でもある。

Don’t Look Back In Anger/Oasis(1995)
1. Don’t Look Back In Anger
2. Step Out
3. Underneath The Sky
4. Cum On Feel The Noize

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記録よりも記憶に残る「不思議な壁」:Wonderwall/Oasis【CD千本ノック 0058本目】


「ワンダーウォール」は20年以上前にリリースされているが、今でも人々の記憶に深く残るオアシスの超名曲だ。アタクシ的には、一人夜の帰り道などに、大音量で聴いてシミジミすることが多かった。アタクシだけでなく、本当に多くの人から愛されている曲だと思う。

「Wonderwall」を文字通りに訳すと「不思議な壁」。辞書にもない言葉なのだが、CD付属の対訳では「終着点」となっている。これ以上先に進めない存在。つまりは、「お前が俺の終着点だ」ということのようだ。

この言葉自体は、ジョージ・ハリスンが手がけたサウンドトラック『Wonderwall Music』から取られたらしい。今回初めて音源をチェックしてみたら、東洋的なサウンドでかなり不思議な感触。オアシスが鳴らすロックとは、かなりかけ離れている。ノエルは、こんな音楽も聴いて、何か影響を受けたのだろうか。

また、改めて気づいて驚いたのだが、「ワンダーウォール」のチャート最高順位が、全英で2位、全米は8位だったこと。セールス的には、ナンバー1にはなっていないのだ。

例えばフジロックなんかで、この曲が演奏されると、オーディエンスは誰もが沸き立ち、尋常ではない雰囲気になる。ファンや聴き手にとって、非常に特別な曲であり続けた。こうした反応を思い返してみると、やはり大事なのは「記録よりも記憶に残る」かどうかなのだなと思う。

Wonderwall/Oasis(1995)
1. Wonderwall
2. Round Are Way
3. The Swamp Song
4. The Masterplan

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その声に宿るのは美しさではなく、人を魅了する力:Jake Bugg/Jake Bugg【CD千本ノック 0057本目】


あのノエル・ギャラガーが、「この子こそ、音楽の未来」と言ったのだそうだ(ライナーノーツによれば)。『ジェイク・バグ』は、その“音楽の未来”が最初にリリースしたセルフタイトルのアルバムである。

ノエルに認められただけでなく、世間からボブ・ディランの再来とも言われ、どこからも評判がヨイ。ただアタクシ自身は、そんな音楽シーンや周囲からの評価は知らず、CD屋で視聴して「あ、これはスゴイ新人だ」と直感的に感じ、いそいそとアルバムを購入した。

音楽を聴いてもらえればわかるが、特に凝ったサウンド・プロダクションはなく、彼のギターと声だけが鳴っているシンプルな構成だ。ジェイク・バグを知らない人に、音だけ聴かせて、70年代のフォーク・ロックだと言ったら、信じる人は少なくないだろう。

しかし、決してジェイク・バグの音楽が古臭いわけではない。ギター・ロックというお馴染みの方法論を彼が選択しているだけで、ファースト・アルバムに収められた17曲はどれも特別な存在感を放っている。

中でも声が印象的で、不思議なほど聴き手の耳にドッと飛び込んでくる。ギターと声という最小限の要素しかないサウンドだからこそ、かえって彼の声が強く響くのかもしれない。

しかも、彼の声はいわゆる美声ではないのである。ミック・ジャガーなどがそうであったように、美しさだけではなし得ない、人を魅了する何かを手に握りしめている点でも、非常にロック・シンガーらしいアーティストだと思っている。

Jake Bugg/Jake Bugg(2012)
1. Lightning Bolt
2. Two Fingers
3. Taste It
4. Seen It All
5. Simple As This
6. Country Song
7. Broken
8. Trouble Town
9. Ballad Of Mr Jones
10. Slide
11. Someone Told Me
12. Note To Self
13. Someplace
14. Fire
15. Kentucky
16. Love Me The Way You Do
17. Green Man

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カルアミルクが甘いことすら知らなかった:家庭教師/岡村靖幸【CD千本ノック 0056本目】


岡村靖幸の『家庭教師』を、繰り返し聴く時期があった。大学に受からず浪人していたが、また受験に失敗するじゃないかと不安に思っていた頃。とても好きになった人がいたが、その思いはかなわず、空回りしていた頃。そんな時に、この音楽は不思議なほどスッと入ってきて、アタクシの心にしみわたった。

正直、一筋縄ではない、変態的なアルバムであるが、悶々としている自分を噛みしめながら、「カルアミルク」や「あの娘ぼくがロングシュートを決めたらどんな顔するだろう」を聴いては、独り溜飲を下げていた。

そんな屈折した一枚ではあるが、ずっと心に残っているし、アタクシにとっては、岡村靖幸を代表するアルバムなっている(ほかのアルバムを、ちゃんと聴いていないので、かなり主観的な判断だ)。

もしこのアルバムを聴いたら、きっとカルアミルクを飲みたくなるだろう。実際アタクシは、やっと大学生になって、すぐにカルアミルクを飲んでみたのである。それは苦々しいものではなく、何とも甘ったるい味わいだった。

家庭教師/岡村靖幸(1990)
1. カルアミルク
2. (E)na
3. 家庭教師
4. あの娘ぼくがロングシュートを決めたらどんな顔するだろう
5. 祈りの季節
6. ビスケット Love
7. ステップ UP↑
8. ペンション

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