日常をセンチメンタルに塗り替えるスーパーバンド誕生:chatmonchy has come/チャットモンチー【CD千本ノック 0055本目】


チャットモンチーのデビュー・ミニアルバム。「薄い紙で指を切って 赤い赤い血がにじむ/これっぽっちの刃(やいば)で/痛い痛い指の先」という歌詞で始まる「ハナノユメ」から、「何でもない毎日が本当は/記念日だったって今頃きづいたんだ 今頃気づいたんだ」と、卒業をテーマに歌った「サラバ青春」までの6曲で構成されている。

ジャケット写真を見ると、これは誰というくらいその後の彼女たちの見た目と違う。若さというよりも、幼さなく、アカ抜けていないように見える。

ただ音楽的には、この時点でもう完成してしまっていたように感じた。橋本絵莉子のハイトーンボイス、3ピースで奏でられるバンド・サウンド。平凡な日常を題材にしながらも、センチメンタルな気分にさせられる。

彼女たちがデビューする頃、プロデュースを担当していた元スーパーカーのいしわたり淳治が、しきりと「すごいバンドがいるんだよね」と言っていたのを覚えている(何かのメールマガジンだったか?…具体的な媒体は忘れてしまった)。

いわゆる宣伝的な発言と思っていたこともあり、実際にCDを聴いてみて、言葉通りヨイバンドだったので、ビックリしてしまった。ライブなどを見たことはないが、デビュー以来、新しいアルバムが出ると欠かさずフォローしてきたバンドである。

chatmonchy has come/チャットモンチー(2004)
1. ハナノユメ
2. DEMO、恋はサーカス
3. ツマサキ
4. 惚たる蛍
5. 夕日哀愁風車
6. サラバ青春

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「ボス以来の逸材」とも評価されるシンガー・ソングライターのファースト:musicforthemorningafter/Pete Yorn【CD千本ノック 0054本目】


今はもう店がなくなってしまったが、銀座にあったHMVによく通っていた。そこでたまたま見たHMVの冊子の中に、「注目すべき男性SSW」みたいなページがあって、ピート・ヨーン、ライアン・アダムス、デヴェンドラ・バンハート、スフィアン・スティーヴンスの4人が紹介されていた。

そもそも「SSWって何のこと?」などと、略語に戸惑いながら(シンガー・ソングライターの略だった)、4人とも全く知らないアーティストだったので、すぐに店舗で1人ひとりCDを探し始めた。しかし、どれも在庫がなく、「どんな販促冊子やねん」と思いながら、後日改めてあちらこちらに足を運んで(結局、HMVのほかの店舗にもあまり在庫がなかった…)、4人4枚のCDを探し出した。

そのうちの1枚が、この『ミュージックフォーモーニングアフター』だ。これは、ピート・ヨーンのファースト・アルバム。派手なメロディー展開などとは縁遠く、淡々と自分の声で歌い上げる正統派のアメリカン・ロックが鳴っている。ほとんど事前情報が頭に入っていなかったこともあり、一聴してベテラン・シンガーの仕事に思った。それくらい、新人とは思えない完成度の高いアルバムだった。

ライナーノーツを読むと、彼の楽曲づくりは「ドラムから始まる」とちょっと変わっている。まずはビートありきでリズムを頭に思い浮かべ、そこから曲を作り上げていくのだそうだ。それだからか、どの曲も小気味よく、前にスルスルと進んでいく感覚がある。

また、シンガー・ソングライターらしく声自体もヨイのだが、少し投げ出すような歌い方も、アタクシにとっては魅力の1つ。リズミカルなメロディーにのったピート・ヨーンのラフな歌声は、色気が漂うのである。

ちなみに、このピート・ヨーン。特にデビュー当時は「ブルース・スプリングスティーン以来の逸材」との声もあり、本国アメリカでは評価が高いようだ。一方、日本ではあまり知名度がないままで、最近のリリースは国内盤の発売もない状態である。アタクシ的には、出会ってからずっと指折りのシンガー・ソングライターなので、こうした状況が残念でならない。

musicforthemorningafter/Pete Yorn(2001)
1. Life On A Chain
2. Strange Condition
3. Just Another
4. Black
5. Lose You
6. For Nancy (‘cos It Already Is)
7. Murray
8. June
9. Sense
10. Closet
11. On Your Side
12. Sleep Better
13. Ez
14. Simonize
15. Knew Enough To Know Nothing At All*

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iPodのおかげで「ベック終わった」の誤解が解ける:Sea Change/Beck【CD千本ノック 0053本目】


ベックの出世作『メロウ・ゴールド』(1994)、大ヒット・アルバム『オディレイ』(1996)の後に、『ミューテーションズ』(1998)、『ミッドナイト・ヴァルチャーズ』(1999)と続き、2002年にリリースされたのが、この『シー・チェンジ』である。

『オディレイ』後の2枚は、商業的な成功を収めたとは言えないようだが、アタクシ的にはベック・サウンドのカラフルさ、雑多感、多様性が軽やかに融合した曲調や、ブルースをベースにしながらも、彼独自の持ち味感じさせる音楽に満足していた。

だが、『シー・チェンジ』を聴いたときの第一印象は、あまりにも地味すぎるものだった。ブルースがルーツ音楽だとはいえ、そのミニマルな音はベックらしさに欠けると感じたのである。だから1~2度聴いて、「もうベックはおしまいだな」と思って、CDラックにしまって全く聴かずにいた。仮にベックを聴くとしても、それ以前に馴染んだ過去のアルバムだけだった。

そのままCDでのみ音楽を聴く環境でいたら、『シー・チェンジ』は二度と手に取らなかったかもしれない。ただ、いつしか音楽ライブラリーをすべてiPodに入れて、シャッフル再生などを楽しむようになっていた。

そのように音楽の聴き方が変わっていたため、たまたま『シー・チェンジ』の曲を聴くことがあった。シャッフル再生でたまたま流れた、まさに偶然の再会ではあるが、「あれ、このすごくヨイ曲は誰だっけ?」となった。iPodをいそいそと確認して、『シー・チェンジ』の曲であることがわかり、アタクシがこのアルバムに抱いていた誤解が突如解けたのである。

時間が経って趣味に変化があったらか、その時の気持ちに運よくフィットしたのか、印象や評価が180度変わった理由はよくわからない。それでも、華やかさとは対極にあるこの真っ直ぐなサウンドを改めて聴き、非常に心地よく響き、体に深くしみ込んできたのである。

おかげで今では、ベックの中で一番よく聴くアルバムになっている。何より最初に聴いたときと、その後に聴き直した際のギャップの大きさはとても印象的で、アタクシ的には、その落差が忘れられない一枚なのだ。

Sea Change/Beck(2002)
1. The Golden Age
2. Paper Tiger
3. Guess I’m Doing Fine
4. Lonesome Tears
5. Lost Cause
6. End Of The Day
7. It’s All In Your Mind
8. Round The Bend
9. Already Dead
10. Sunday Sun
11. Little One
12. Side Of The Road
13. Ship In The Bottle

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「オーシャン」という12分の愉楽:Live At Red Rocks/The John Butler Trio【CD千本ノック 0052本目】


ジョン・バトラー・トリオを知ったのは、2014年のフジロック。それ以前、アルバムがリリースされると名前くらいは見知っていたが、初めてきちんと音を聞いたのは、3日目のグリーン・ステージだった。

その時、Instagramで感想を投稿している。コメントは次のような感じ。「グリーンステージでJOHN BUTLER TRIO。期待していなかったのだが、とてもよかった。特にギターソロが、見たことのないような音の出しかたをさせつつ壮大なスペクタクルのような演奏だった。ちょと人生観変わっちゃたヨ。#fujirock #frf」。

ここで、アタクシが言及していたのは、『ライブ・アット・レッド・ロックス』ではDisc1の最終曲として収録されている「オーシャン」という曲のこと。聴いた時点では、曲名も何も知らなかったのだが、偶然に出会った“壮大なスペクタクル”に魅せられ、熱病に侵されたようになったのだ。なので、自宅に帰って来てから、あれこれ調べた。

「オーシャン」はもともと、ジョン・バトラーがデビュー前、路上ライブをしているころから演奏していた曲であること。毎回同じ旋律ではなく、その時々でアレンジを加えていること。珍しい12弦ギター(改造して11弦にしているらしい)を使って演奏していること。などなど。

このCDを買ったのも、とにかくもう一度「オーシャン」を聴きたくて。やや入手しづらいアルバムだったが、血眼になって探した結果、何とか手に入れた。

さらに、彼ら自身の公式サイトで動画を公開していたこともわかった。CDではもちろん音だけしか聴けないし、フジロックでも遠目にしか見えなかった実際の演奏が、間近で見られる。12分弱とかなり長い映像であるが、ここまで読んでいただいた方には、ぜひ自分の目と耳で確かめてほしい。

アタクシ自身、音楽はアルバム単位で聴くことがほとんだし、メロディーだけでなく、歌声に心動かされることが多い。それでも、このギター・インストゥルメンタルは、圧倒的な存在感を持っているし、アタクシの心をユサユサと、変わらず揺さ振り続けている。きっともう一生聴き続けるのだと思う。

Live At Red Rocks/The John Butler Trio(2011)
【Disc1】
1. Introduction
2. Used To Get High
3. I’d Do Anything
4. Betterman
5. Don’t Wanna See Your Face
6. Revolution
7. Hoe Down
8. Better Than
9. Johnny’s Gone
10. Take Me
11. Treat Yo Mama
12. Losing You
13. Intro To Ocean
14. Ocean
【Disc2】
1. Ragged Mile
2. Zebra
3. Good Excuse
4. C’mon Now
5. Close To You
6. Peaches And Cream
7. One Way Road
8. Funky Tonight

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立ち尽くす、すべてのものが終わる:The Doors/The Doors【CD千本ノック 0051本目】


「ロック好きなら、ドアーズくらい聴いておかなきゃ」くらいの気持ちで、『ハートに火をつけて(The Doors)』を購入した。ただアタクシは、バンド・サウンドのオルガンやらキーボードやらがやや苦手。そんなこともあり、キーボードが目立つ彼らのファースト・アルバムは、好んで聴く感じではなかった。

しかし、映画『地獄の黙示録』で「ジ・エンド」が流れているのを聴いて、「スゴイ曲が入っていたんだー」とすっかり認識を新たにした。こんな名曲にちゃんと気づいていなかったなんて、恥ずかしい限りである。

さらに恥の上塗りだが、今回ライナーノーツを読んだり、あれこれ調べていて、「ジ・エンド」の歌詞に深い意味があるのを知った。冒頭の「This is the end」というフレーズは、何より強く印象に残っていたのだが、後半で父親を殺したいと語り、母親を求めるくだりがあったのだ。この曲が「エディプス・コンプレックス」をテーマにしていたと、全然知らないままで聴いていたのである。

アタクシのつたない英語力ではあるが、ボーカルのジム・モリソンが書いた「ジ・エンド」の詩を読むと、人間の奥底にある欲望と、それを追い求めることで「終焉」に直面してしまう様子が、叙情的に描かれていた。発表当時も、物議を醸したようだが、本当に衝撃的な歌なのである。アタクシが言うのもナニだが、もしこのアルバムや「ジ・エンド」を聴くことがあったら、併せて歌詞も堪能してほしいと思う。

The Doors/The Doors(1967)
1. Break On Through (To The Other Side)
2. Soul Kitchen
3. The Crystal Ship
4. Twentieth Century Fox
5. Alabama Song (Whisky Bar)
6. Light My Fire
7. Back Door Man
8. I Looked At You
9. End Of The Night
10. Take It As It Comes
11. The End

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EDM王子による最新鋭「フィーリング・グッド」:Stories/Avicii【CD千本ノック 0050本目】


学生の頃からロッキング・オンを読んでいて、今でも買い続けている。ただ、読むのは数年遅れとかもあって、トレンドとは関係なく、やや文献化している状態だ。

アヴィーチーを知ったのは、そんなロッキング・オンの記事から。EDMの王子様的な扱いで、「そんなにスゴイのか~」と興味を持った。だが、既にDJは引退すると話していたと思うので、完全に周回遅れである。

早速何枚かCDを入手して聴いたが、「これは王子様かしら~」というのが第一印象。エッジも効いているいるし、キャッチーさはあるのでヨイとは思うものの、すごく体がうずくとか、長く記憶に残るという感じではない。少なくともアタクシ的には、突き抜けた感覚は体験できなかった。

ではどうして、こうしてエントリーを書いているかというと、この『ストーリー』(日本独自のCDのみではあるが)に「フィーリング・グッド」が収録されているから。アタクシ、この曲をニーナ・シモンのカバーでちゃんと知ったのだが、アヴィーチー版は最新カバーということもあってか、刺激的で聴きごたえがある。

どうやらボルボの広告キャンペーン用に作られた曲のようだが、伸びやかに広がる感じは、ニーナ・シモンの歌いっぷりとは別の魅力がある。アヴィーチーの再解釈は成功ではないだろうか。

ちなみに、オリジナルはギルバート・プライスという人らしい。ネットで検索して書いているだけだけです。ごめんなさい。

Stories/Avicii(2015)
1. Waiting For Love
2. Talk To Myself
3. Touch Me
4. Ten More Days
5. For A Better Day
6. Broken Arrows
7. True Believer
8. City Lights
9. Pure Grinding
10. Sunset Jesus
11. Can’t Catch Me
12. Somewhere In Stockholm
13. Trouble
14. Gonna Love Ya
15. The Days
16. The Nights
17. Levels (Radio Edit)
18. I Could Be The One (Nicktim Radio Edit)
19. Silhouettes (Radio Edit)
20. X You (Radio Edit)
21. Feeling Good

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「ただの1秒が 永遠より永くなる 魔法みたい」:Documentary/秦基博【CD千本ノック 0049本目】


もう「アイ」を聴きたくて買ったアルバムである。アタクシ的には、あまり一曲だけのためにCDを購入することはないのであるが、そうした意味ではやや例外的な一枚になるだろう。

ただ、それくらいこの曲はグッとくるし、秦さんの歌いっぷりも魂こもっているのだ。インターネットで検索していたら、素敵な動画も出てきたので共有したい。

曲の中では、下記のように歌われる。
「目に見えないから 愛なんて信じない/そうやって自分を ごまかしてきたんだよ」
「遠く遠くただ 埋もれていた/でも 今 あなたに出会ってしまった」
「その手にふれて 心にふれて/ただの1秒が 永遠より永くなる 魔法みたい」

こうした歌詞が、少なくともアタクシには身に染みる。そして、恋愛の達人でもないし、愛の伝導士でもないのだが、この「ただの1秒が 永遠より永くなる 魔法みたい」という歌詞が、特別なフレーズだと思う。

感情や人の気持ちによって、時間的感覚がねじれるような感覚を端的に語っている。こんな言葉に、やたらと感情移入してしまうアタクシは、ナイーブすぎだと言われてしまうのだろうか。

Documentary/秦基博(2010)
1. ドキュメンタリー
2. アイ
3. SEA
4. oppo
5. 猿みたいにキスをする
6. Halation
7. 透明だった世界
8. 今日もきっと
9. パレードパレード
10. 朝が来る前に
11. Selva
12. アゼリアと放課後
13. メトロ・フィルム (Album ver.)

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映画『恋する惑星』で「夢中人」に恋をする:樂樂精選/王菲【CD千本ノック 0048本目】


フェイ・ウォン(王菲)を知ったのは、映画『恋する惑星』。女優として出会ったのだが、劇中で使われた「夢中人」の伸びやかな歌声に魅了され、アタクシとしてはシンガーとしての方が評価が高い。

どうしても「夢中人」を聴きたくて、そして、フェイ・ウォンの歌声を堪能しようと、当時アルバムをあれこれ探して、この『樂樂精選』にたどり着いた。逆から言うと、サントラ以外で「夢中人」を収録していたのは、このCDだけだったと思う。今なら音楽配信で自由に取捨選択できるだろうから不便ではあった(それはそれで面白い体験ではあるのだが…)。

今回、改めてCDとして『樂樂精選』を探してみると、現在は入手できないようだ。AmazonではCDとしても出てこないし、Wikipediaではオリジナル・アルバムにもなっていない。

アルバムの内容については、中国語が中心で、ちょっと演歌っぽい曲調のものもあり、洗練された一枚とは言えないだろう。それでも、やはりフェイ・ウォンの声は美しく、軽やかで気持ちヨイ。もちろん「夢中人」では、アタクシ的にグッと盛り上がる。

この「夢中人」、フェイ・ウォンの曲だとばかり思っていたが、原曲があることを知った。クランベリーズ(The Cranberries)の「ドリームス(Dreams)」だそう。「夢中人」好きとしては、原曲もチェックしなくちゃいけないなあ。

樂樂精選/王菲(1996)
1. 曖昧
2. Di-Dar
3. 夢中人
4. 討好自己
5. Summer Of Love
6. 夢遊
7. 愛與痛的邊縁
8. 天與地
9. 如風
10. 知己知彼
11. 浪漫風暴
12. 執迷不悔(Mandarin Ver.)
13. 背影
14. 紅粉菲菲
15. 一人分飾兩月
16. 回憶是紅色天空


ゆる名曲「行け行けじゅんちゃん」を擁する哲学ファンク・アルバム:続いてゆくのかな/Flying Kids【CD千本ノック 0047本目】


通称「イカ天」、『平成名物TV・三宅裕司のいかすバンド天国』で初代グランドキングになってデビューしたファンク・バンド、フライング・キッズ。そのファースト・アルバムが『続いてゆくのかな』である。

イカ天はチョコチョコ見る程度だったが、フライング・キッズは結構すぐに好きになり、このデビューCDから購入したし、1998年に解散するちょっと前くらいまではフォローしていた(ちなみに、2007年に再結成して現在も活動中)。

なので、彼らのCDは4~5枚くらい持っていたと思う。ただ今手元に残っているのは、残念ながらこの『続いてゆくのかな』だけである。一度、CDを大量に断捨離したことがあって、その際に多分中古CD屋さんに売ってしまったのだ。

しかし、この一枚だけは絶対に手放せなかった。もう圧倒的にお気に入りのCDだったからだ。ボーカルの浜崎貴司が荒々しく、そして生き生きとしているし、コーラスの浜谷淳子との掛け合いが絶妙で、本当に気持ちのヨイアルバムなのである。

それぞれの曲を見ても、「みんなあれについて考えてる」という意味深なフレーズが飛び出す「あれの歌」、「続いてゆくのかな 行け行け」「続いてゆくのかな やだやだ」と、とぼけたように繰り返す「行け行けじゅんちゃん」、エモーショナルで劇的な哲学ファンク「我思うゆえに我あり」、慈愛に満ちたデビューシングル「幸せであるように」など、硬軟取り混ぜた名曲ぞろいだ。

再結成後のアルバムや曲など、フライング・キッズのすべての音源に触れているわけではないが、アタクシ的には彼らの最高傑作だと思っている。何よりCD全体を通してバンド・メンバーの勢いやグルーブ感が、過剰なほどにあふれている点でも特別なアルバム。決して忘れることのできない一枚なのである。

続いてゆくのかな/Flying Kids(1990)
1. あれの歌
2. キャンプファイヤー
3. 行け行けじゅんちゃん
4. ちゅるちゅるベイビー
5. ぼくはぼくを信じて~満ち足りた男
6. 我思うゆえに我あり
7. 幸せであるように
8. きのうの世界
9. 君が昔愛した人
10. おやすみなさい
11. あれの歌(再び)

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底抜けのポップさを武器にメガセールスを記録した名盤:Dookie/Green Day【CD千本ノック 0046本目】


みんな大好きグリーン・デイ。このパンク・ロックバンドが、1994年に出した通算3作目で、メジャー・デビュー・アルバムが『ドゥーキー』である。2011年時点で1500万枚以上売り上げているようで、まさにメガヒット・アルバムだ。

発売当時、シングル・カットされた「ロングビュー」「ウェルカム・トゥ・ザ・パラダイス」「バスケット・ケース」「シー」「ホエン・アイ・カム・アラウンド」などが、あちらこちらで流れてきて、望むと望まざるとにかかわらず何度も耳にしていた。人気もすごく、誰もが高く評価していた記憶がある。

曲自体をたくさん聴く機会があったものの、アタクシはこのアルバムが好きになれなかった。そのころ、よく音楽について話していた友人から「グリーン・デイ、どう?」と聞かれると、「何か好きになれないんだよね」と答えていた。なので、自分ではCDを買わないままだった。

「何か」と言っていたくらいなので、それほど明確な理由はなかったのだが、グリーン・デイの特徴であり、良さであるポップさや明るさが、根暗な自分にはフィットしなかったのかもしれない。「暗いロックの方がエライ」みたいな気持ちもあったのだろう。

しかしながら、次作の『インソムニアック』が出たことで、彼らの見方が変わった。『ドゥーキー』と比べてやや落ち着いた感じがあって、これなら聴いてみようと思ったのだ。そうしてグリーン・デーをちゃんと聴いてみると、「何だ凄いヨイじゃん」となった。そんなこともあり、『ドゥーキー』は後戻りする形で聴いて、今は大好きで、繰り返し聴くCDになっている。

ただ、アタクシの性格の暗さは変わらないため、「ちょっと『ドゥーキー』は明るすぎるから、ほかのアルバムを聴こう」と思うこともなくはない。それでも、彼らの底抜けのポップさはやはり一番の武器だと思うし、その良さが曲にきちんと具現化されたからこそ、ビッグ・セールスを記録できたのだと思う。

Dookie/Green Day(1994)
1. Burnout
2. Having A Blast
3. Chump
4. Long View
5. Welcome To Paradise
6. Pulling Teeth
7. Basket Case
8. She
9. Sassafras Roots
10. When I Come Around
11. Coming Clean
12. Emenius Sleepus
13. In The End
14. F.O.D.

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