あなたは「信頼」がわかる大人ですか?:Faith/George Michael【CD千本ノック 0045本目】


ポップデュオ「ワム!」を解散したジョージ・マイケルが、ソロシンガーとして1987年に発表したのがこの『フェイス』だ。それまでワム!として、メロウな曲もあったが、基本的にはポップなイメージだったので、ソロになってかなりの様変わりに、えらく面食らってしまった。アタクシが、まだまだ幼かったこともあるだろう。

今まで優しくしてくれていた爽やかな歌のお兄さんが、ある夜セクシー美女とデートを楽しんでいて、偶然それを見かけてしまったような感じだった。曲や音楽性のどうこうよりも、リード・シングルの「アイ・ウォント・ユア・セックス」のように、過激なタイトルなんかにドギマギしてしまったのである。

子どもにとっては“お兄さんの変容”に思え、やや引いてしまったのたが、セールス的にはアメリカだけでも1000万枚以上、全世界では2500万枚以上を売り上げたようだ。シングル曲の「フェイス」「モンキー」など、4曲以上全米ナンバー1を獲得したりと、商業的に大成功したスーパーアルバムである。

ジョージ・マイケルとしては、ワム!では実現できなかった、自分のやりたい音楽を素直につくった結果らしい。歌われる内容とともに、音楽的にこれまでのポップス路線からR&B寄りに大きくサウンドが変わった。

今にして思えば、そうした音楽性の変化も、アタクシがなかなか受け入れづらかった理由にあるだろう。発売当時から少し時間が経って自分も大人に成長するにつれて、彼のソロ作品の素晴らしさ感じられるようになった。そうした意味では、大人か子どもかを見分けるリトマス試験紙的なアルバムなのかもしれない。

Faith/George Michael(1987)
1. Faith
2. Father Figure
3. I Want Your Sex (Parts 1&2)
4. One More Try
5. Hard Day
6. Hand To Mouth
7. Look At Your Hands
8. Monkey
9. Kissing A Fool
10. Hard Day (Shep Pettibone Remix)
11. A Last Request (I Want Your Sex Part 3)

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真っ赤な髪の毛と聖書の言葉:Heaven’s Kitchen/Bonnie Pink【CD千本ノック 0044本目】


リード・シングル曲の「ヘブンズ・キッチン」を聴いて、ボニー・ピンクを知った。当時、彼女の髪の毛は真っ赤で、ビジュアル的にもかなりインパクトはあったが、アタクシとしては音楽そのもののパワーを強く感じて、アルバムを手に入れる。

アルバム全曲を聴いても、やはり「ヘブンズ・キッチン」という曲は図抜けた存在だと思う。どうやら、ボニー・ピンクが初めてつくった曲のようだが、ロック・サウンドとしても、力が入りすぎておらず、バランス感が絶妙で気持ちヨイ(この辺りは、カーディガンズの仕事で有名なプロデューサー、トーレ・ヨハンソンの功績かもしれない)。

そして、あまり誰も言及しない部分だが、「ヘブンズ・キッチン」冒頭の「名前があって/そこに愛があって」という歌詞が、個人的にはとても印象的だった。「名前があって」というフレーズは、聖書の「はじめに言葉があった」という著述を意識しているように感じたのである。事の真偽はわからないが、アタクシはこの言葉使いで、ボニー・ピンクを信じてしまったのだ。

Heaven’s Kitchen/Bonnie Pink(1997)
1. Heaven’s Kitchen
2. ほほえみの糧
3. It’s gonna rain!
4. Do you crash?
5. Silence
6. Mad Afternoon
7. Lie Lie Lie
8. Melody
9. Pendulum
10. Get In My Hair
11. Farewell Alcohol River
12. No One Like You

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イド(id)とは、生まれつき持つ無意識の本能的衝動:Merkinball/Pearl Jam【CD千本ノック 0043本目】


アタクシにとっては、ニルヴァーナかパール・ジャムかというくらい好きなバンドであるが、パール・ジャムは、少なくとも日本でそれほど人気がない。非常に残念ではあるが、あまり彼らが好きという話しは聞かないのである。

個人的には、横浜で見たライブなんかも思い出されるし、アルバムでは『Ten』や『Vs.』だけでなく、『バイタロジー 』や『ノー・コード』なども興奮して聴いたが、彼らのファンというとかなりレアになるだろう。

そんな中で、アタクシが紹介したいのはシングルCDである『マーキングボール』。ニール・ヤング御大とアルバム『ミラーボール』を作り上げる中で、同時に録音された曲のようだ。パール・ジャムのオリジナル・アルバムなどに収録されていないため、忘れられた曲とも言えるのだが、アタクシはずっと記憶に残り、心に引っかかっている。

「アイ・ゴット・イド」も「ザ・ロング・ロード」も、音自体に派手さはなく、穏やかで、静かな曲ではあるが、彼らのアイデンティティーを示すような、何とも奥行きを持った曲だ。対訳の歌詞を読んでも、明晰にメッセージがわかるわけではない。それでも、その荘厳なサウンドとともに聴くと、人間の存在論に深く根ざした曲のように感じられる。

アタクシ自身、何かはっきりしない不安を感じているようなときに聴くことが多かった。もしかすると、自己の存在に悩んでしまうような人にとって、この2曲は癒しになったり、ある意味福音のようなものなのかもしれない。

Merkinball/Pearl Jam(1995)
1. I Got Id
2. The Long Road

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美しい横顔からもれる色鮮やかなジャージー・ボイス:Songs Of Colored Love/Winterplay【CD千本ノック 0042本目】


ウィンタープレイというか、この『ソングス・オブ・カラード・ラヴ』というアルバムを知ったのは、土曜日の朝7時半から始まる『サワコの朝』というTVのトーク番組を見ていたから。決まって見る番組でもなく、その前にアニメ番組があって、子どもが見ていたTVをたまたま消さずにつけていて…という全くの偶然だ。

そのときのゲストが坂上みきさんで、心に響く曲として「クァンド、クァンド、クァンド」が紹介された。緩やかだけどリズミカル、どこか旅先で美しい風景を眺めているような気分になった。それでも、その時はヨイ曲だなと感じておしまいだったのだけど、カラフルなジャケット写真も印象に残っていて、後からネットで検索して、何とかアーティスト名やアルバム名を調べてCDを購入したのである。

Quando, Quando, Quando/Winterplay

アルバムを通して聴いて、ハングルで歌われる曲もあり、韓国発のジャジー・ポップ・ユニットだと知った。ただ、1曲目の「ソングス・オブ・カラード・ラヴ」はEGO-WRAPPIN’の「色彩のブルース」を英語でカバーしたものだったり、6曲目の「ムーン・オーヴァー・バーボン・ストリート」もスティングのカバーで、特定の国やジャンルに縛られず、ある意味無国籍的な音楽と言える。

ユニットとしては、やはり女性ボーカル、ヘウォンの歌声が一番の特徴だろう。少し抜けたような軽さがある一方で、きちんと艶っぽさもあって、何とも聴いていて心地よい。ずっと聴き続けていられるので、夜ワインを片手に彼女の声を独り占めしてもヨイし、休日の昼下がりなど、日の当たるカフェでのんびりと聴いてもヨイのではないか。

少し調べていたら、彼女は既にウィンタープレイを脱退しており、偶然にも今このタイミングでソロシンガーとして、『Kiss Me』という新たなアルバムをリリースしたばかりであることがわかった。今の自分として、改めて「クァンド、クァンド、クァンド」も歌い直しているようで、こちらも聴いてみたいと思う。

Songs of Colored Love/Winterplay(2010)
1. Songs Of Colored Love
2. Hot Sauce
3. Melon Man
4. Serivora
5. Quando, Quando, Quando
6. Moon Over Bourbon Street
7. Who Are You?
8. Happy Bubble
9. Cannot Forget
10. I Need To Be In Love
11. Hey Bob
12. You’re In My Heart
13. Men Are No Good

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今も人を魅了し続ける名曲「ゼア・シー・ゴーズ」の引力:The La’s/The La’s【CD千本ノック 0041本目】


1986年、イギリスのリヴァプールで結成されたロックバンド、ザ・ラーズ。正直アタクシは、結成当時やアルバムがリリースされたころのことは全く知らず、気づくと家にCDがあり、何度もプレイヤーに乗せていたという感じ。ロック・ファンなら、好きでも嫌いでも一応は聴いておくべきアーティストだと言えるのかもしれない。

ザ・ラーズについては、このセルフタイトルが最初で最後のオリジナル・アルバムになる。たった1枚のリリースということもあり、ある意味伝説的で、ロック好きにとって馴染みの定番アルバムとなっている。

そうした巨大な引力を維持できているのは、何と言っても「ゼア・シー・ゴーズ」という超名曲があるから。もちろん、ほかの曲も決して悪いわけではないのだが、この曲は存在感が異様にデカいと思う。「顔は美形でないものの、やたらモテる人」といったら、例えが安易だろうか。なかなか論理的に説明しづらくても、感覚的にパッと心を奪われてしまうのだ。

本当にこの曲があるからこそ、これからもずっとザ・ラーズは1人ひとりのファンを魅了し続けるのだろうし、時間を経ても廃れることなく広がり続けるのだろう。何だか、目の前でロックの魔力を見せつけられるような気もするが、まだ聴いたことがない方は、一度自分の耳でその力を確認してみてほしい。

There She Goes*/The La’s

The La’s/The La’s(1990)
1. Son Of A Gun
2. I Can’t Sleep
3. Timeless Melody
4. Liberty Ship
5. There She Goes*
6. Doledrum
7. Feelin’
8. Way Out
9. I.O.U
10. Freedom Song
11. Failure
12. Looking Glass
13. Knock Me Down
14. Endless
15. Come In Come Out
16. Who Knows
17. Man I’m Only Human
18. All By Myself
19. Clean Prophet
20. There She Goes (Original Single Version)

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私たちは孤独でも、何とかやっていけるはず:Fine On The Outside/Priscilla Ahn【CD千本ノック 0040本目】


まずは論より証拠で、動画を見てもらった方がヨイかもしれない。

アタクシがプリシラ・アーンを知ったのが、まさにこの動画だった。詳しい媒体までは覚えていないが、どこかのバズ・メディアの記事で、この「ファイン・オン・ジ・アウトサイド」が紹介されていた。ジブリ映画『思い出のマーニー』の主題歌なので、何かのプロモーションの一環だったのかもしれない。

全編英語ではあるが、運よく動画だったため、字幕があって歌詞の意味もわかった。何より、高層ホテルの一室というシチュエーションがとても印象的だし、人間の孤独をつづった静かで透明感のある曲の雰囲気とマッチしていて、心が洗われるような感じがした。

たった数分の体験ではあるが、プリシラ・アーンの優しい歌声にノック・アウトされて、「ファイン・オン・ジ・アウトサイド」のCDはもちろん、ほかのアルバムも次々に聴いていった。

彼女の声は、とても柔らかくて、穏やか。決して急かされたり、押し付けられたりしないので、何だかせわしなくて、落ち着きたいときによく聴いている。そして、これからも繰り返し聴くと思う。

ちなみに、彼女のオリジナル・アルバムには「ファイン・オン・ジ・アウトサイド」が収録されていない。ただ『Priscilla Ahn Billboard Live TOKYO』というライブ・アルバムでは、生声バージョンが聴けるので、気に入った方はこちらもチェックしてはどうだろうか。

Fine On The Outside/Priscilla Ahn(2014)
1. Fine On The Outside
2. This Old House
3. Fine On The Outside(オリジナル・カラオケ)

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「日本の朝食」が歌う亡き母のための鎮魂歌:Psychopomp/Japanese Breakfast【CD千本ノック 0039本目】


「日本の朝食」というアーティスト名とジャケットに惹かれて購入した。アジア人と思われる女性2人のやや古ぼけた写真がとにかく印象に残った。アタクシにも理由はよくわからない。そんな魅入られ方をしたこともあり、買う前に視聴したりせず、音はわからないままである。大丈夫なのかー。

ジャパニーズ・ブレックファストは、フィラデルフィアで結成されたインディ・ロック・バンド、リトル・ビッグ・リーグのボーカリストであるミシェル・ザウナーによるソロ・プロジェクトだそう。

とにかくサウンドに関する事前情報は何もなく、その音に耳を傾ける。自分勝手に想像していたよりは、ポップな印象だ。それでも歌声はとてもエモーショナル。そして、なぜだか少し懐かしい感じがする。ジャケット写真にイメージを引っ張られているだけかもしれないが、何か郷愁のような感覚が沸き上がってきた。

聞けば、ジャケット写真の女性は彼女の母親で、このアルバムを制作する少し前に病気で亡くなっていた。タイトルの『サイコポンプ』は、心理学者のカール・ユングの著書に登場する「死者の魂を霊界に導く道案内人」を意味するという。つまりこのアルバムは、亡き母に捧げられた、ミシェル・ザウナーによる鎮魂歌だったのだ。

既にジャパニーズ・ブレックファストとして、セカンド・アルバム『ソフト・サウンズ・フロム・アナザー・プラネット(Soft Sounds from Another Planet)』もリリースしている。こちらと聴き比べると、ファーストの『サイコポンプ』はとてもメランコリックなアルバムだったことがわかる。もし「日本の朝食」に興味を持ってもらえたとしたら、どちらも完食してみてはどうだろう。

Psychopomp/Japanese Breakfast(2016)
1. In Heaven
2. The Woman That Loves You
3. Rugged Country
4. Everybody Wants to Love You
5. Psychopomp
6. Jane Cum
7. Heft
8. Moon on the Bath
9. Triple 7

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「Jane Cum」のミュージックビデオはコチラ

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陽光きらめく朝凪ギターロック:Nowhere/Ride【CD千本ノック 0038本目】


アタクシにライドを教えてくれたのは、雑誌『ロッキンオン』を介して文通していた人だった。今だと文通なんて考えられないだろうが、確か1997年くらいではなかったか。その人の最初の手紙で「ライドが好きでよく聴いています。聴きますか?」と問われ、「聴いてない、聴いてない」と慌ててCDを入手したのだ。

その時既にバンドは、4枚のアルバムをリリースしたうえで解散していたので、完全に出遅れ組である。それでも、ファースト・アルバム『ノーホエア』の評判が良さそうで、波のジャケットが気に入ってこともあり、ライドの音源としてこれを最初に買ったと思う。

手紙で教えてもらうまで、長い間全く知らずに過ごしていたのだが、一聴してすぐ好きになった。ノイジーだけど気持ちのヨイギター・サウンドに魅了されたのだ。その後、残りのオリジナル・アルバムやミニ・アルバム、シングルEPなどを、結構買い漁る感じで探して、聴いた。

そんなわけで、ライドの音楽はアルバムや時期を問わず気に入っているし、20年くらい経った今でもこの『ノーホエア』を中心に、本当によく聴いていると思う。アタクシとしては、いわゆるシューゲイザーの中でも突出している存在だ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタインも好きだけど…)。

具体的な曲で言えば、個人的には1曲目「シーガル」、3曲目「イン・ア・ディファレント・プレイス」、5曲目「ドリームズ・バーン・ダウン」、8曲目「ヴェイパー・トレイル」なんかが好きだし、おススメしたい。

だが、なぜ『ノーホエア』がそんなに好きなのかを言語で語るのは難しい。このアルバムを聴くと、やたらとキラキラと光る凪いだ海の風景が思い浮かんでくるのだが、不思議なほど、心情を説明できる言葉は出てこないのである。

制作当時、メンバー4人全員が20歳前後の若者で、ある意味無我夢中で作り上げ、鳴らした音だったのだろう。そうした意味では、何かを狙って音楽ではなく、戦略的に録音したアルバムでもなかった。だからこそ、リスナーのアタクシも言葉を失うのかもしれないーー。何て言い訳を言っていたら、人のせいにしすぎだろうか。

Nowhere/Ride(1990)
1. Seagull
2. Kaleidoscope
3. In A Different Place
4. Polar Bear
5. Dreams Burn Down
6. Decay
7. Paralysed
8. Vapour Trail
9. Taste
10. Here And Now
11. Nowhere

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何ちゃってインストラクターによる平和のための原子力:Amok/Atoms For Peace【CD千本ノック 0037本目】


アトムス・フォー・ピースは、レディオヘッドのトム・ヨークを中心に、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシストであるフリー、レディオヘッドやU2のプロデュースで知られるナイジェル・ゴドリッチ、R.E.M.やベックなどの活動に参加してきたドラマーのジョーイ・ワロンカー、パーカッショニストのマウロ・レフォスコというメンバーで構成された5人編成のバンドだ。

2009年にトム・ヨークが発表したソロアルバム『ジ・イレイザー』のツアーで、集まったことをきっかけにして誕生したバンドだそうだ。エレクトロニクスを利用して、ほとんどトム・ヨークとナイジェル・ゴッドリッチの2人で制作された『ジ・イレイザー』の音を、生演奏でどれだけ再現できるかがプロジェクトの出発点になっているという。

この『アモック』も『ジ・イレイザー』も、不穏な電子音の上に、トム・ヨークの声が重ねられるという曲調でいえば、最近のレディオヘッドと同様のアプローチだ。ただ、『ジ・イレイザー』と『アモック』とで比べると、楽器で演奏することを意識してか、エレクトロニクスばかりが強調されず、人の温度感や肉体性を感じさせる。

バンド名は、第34代アメリカ大統領ドワイト・アイゼンハワーが1953年に演説で語った「Atoms for Peace(平和のための原子力)」から取られたようだ。実は『ジ・イレイザー』の5曲目に、このバンド名と同じ「Atoms For Peace」という曲が収録されている。

また、トム・ヨークの父親が原子物理学者だったようで、そもそも原子力を身近に感じており、意識せざるを得ない問題だったのだろう。彼のことだから、バンドの名前にシニカルな意味を込めていると想像してしている。

とは言え、フジロックで見たアトムス・フォー・ピースのトム・ヨークを思い出すと、あまり皮肉めいた感じは受けなかった。頭にカラフルなヘアバンドをして、その出で立ちは何ちゃってスポーツ・インストラクターにしか見えなかったからだ。

当然、音楽はしっかりしていたが、見た目にシリアスさは感じられず、バンド名や音楽性とギャップが大きすぎるというのが正直なところ。YouTubeのリンクを載せておくので、気になる方はチェックしてもらえたらと思う。

Amok/Atoms For Peace(2013)
1. Before Your Very Eyes…
2. Default
3. Ingenue
4. Dropped
5. Unless
6. Stuck Together Pieces
7. Judge Jury and Executioner
8. Reverse Running
9. Amok

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40年間不変のバンドが見せた最初の変わり身:Achtung Baby/U2【CD千本ノック 0036本目】


この『アクトン・ベイビー』を初めて聴いたとき、「あれれ、あれれ」と思った。U2が変節してしまったうえに、駄作をリリースしたと感じたのである。

前々作の『ヨシュア・トゥリー』は、アタクシにとってロック・アルバムの金字塔。特に1980年代後半ころ、誠実で信頼に値するロックを鳴らしているのは彼らだけだと、勝手に思い込んでいたからなおさらだ。

実際にこのアルバムでは、従来の硬派なロック・サウンドから大きく変化して、打ち込みも利用したダンス・ビートを取り入れた音楽に様変わりしていた。今聴くと、かなり大人しい変化にも感じられなくもないが、当時においては激変でしかなく、別バンドのアルバムに聴こえたくらいである。

なので、発売当初はあまり聴いていないと思うし、正直嫌いなアルバムであった。でもいつのころからか、「ワン」や「ザ・フライ」「恋は盲目(Love Is Blindness)」なんかを、曲単位で聴くようになっていって、気づくとアルバム全体が好きになっていた。

そして、もし今「U2で一番おススメのアルバムは?」と聞かれたら、『アクトン・ベイビー』を挙げるかもしれない。ロック的なアプローチとダンス・ミュージックの配分が絶妙だと思うからだ。

U2は、1980年のデビューから現在に至るまで解散していないだけでなく、オリジナル・メンバーの脱退や変更もなく、40年近く4人でずっと活動してきた。そうした意味では、「不変のバンド」である。

一方で、先に述べたように、音楽性はその時々によって180度変わることも厭わない、「変化を先取りするバンド」でもある。『アクトン・ベイビー』は、そのU2にとっても、最初の大変革を成し遂げた記念すべきアルバムなのかもしれない。

Achtung Baby/U2(1991)
1. Zoo Station
2. Even Better Than The Real Thing
3. One
4. Until The End Of The World
5. Who’s Gonna Ride Your Wild Horses
6. So Cruel
7. The Fly
8. Mysterious Ways
9. Tryin’ to Throw Your Arms Around the World
10. Acrobat
11. Love Is Blindness

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