無知のつぶやき【1000のカスタネット#0002】


「世界が終わるとき」

世界の終わりがきたら
きみはどうする?

ぼくは、タマゴを割ってみるね
生タマゴかゆでタマゴかわからないから

初出:https://kazuhiq.com/19960903/sekaigaowarutoki/ (1996年9月3日)
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自分は最後まで、知ろうとする人でありたいと思っている。


言語化によって締め出されるモノ【1000のカスタネット#0001】


「こぼれ落ちるもの」

こぼれ落ちるもの、その流れすべる姿を心にとめる。それなくして、何も語ることはできない。

ただ話す、そのなめらかさ、その誇らしさ、その上昇気流に気持ちをとられ、見誤ってはいけない。その病気に侵されたものは、決して何も見ていない。

盲目なのだ。その自らに気づかぬもの、それが覆い尽くす瞬間、瞬間が、毒ガスの様に憂鬱な空気を這いつくばらせる。

初出:https://kazuhiq.com/19941105/koboreochiru/ (1994年11月5日)
—–

データとして残っていて、自分が書いた最も古いテキスト。今読むと、正直何を言おうとしていたのか正確なところは分からない。ただ、語ることで、言葉にすることで、その言語化から必ず締め出されるものがあると言いたかったのではないだろうか。


ロックンロールを壊そうとして:Destroy Rock & Roll/Mylo(2004)【CD千本ノック 0121本目】


「Destroy Rock & Roll」ということだから、「ロックンロールをぶっ壊しちまえ」ということなのだろう。リリース当初は、ダンス・ミュージック革新の担い手という評価をされていたと記憶している。

このアルバムも、iMacか何かで、制作コストを10万円くらいしかかけずに作ってしまったのではなかったか。アイデア一つで、軽やかにロックンロールを解体しようとし、ヒットにもつなげたということだ。

例えば、タイトル曲の「ロックンロールを破壊せよ(Destroy Rock & Roll)」の歌詞は、マイケル・ジャクソンやマドンナなど、ロック・スターの名前を読み上げるだけなのだが、曲として聴くと、ちゃんと身体がムズムズする。ダンス・ミュージックとして、高揚感をともなったサウンドを鳴らしていたと思う。

ただ、発表から10年以上経った現時点から振り返ってみると、彼の音源はApple Musicにもないし、AmazonでもMP3は展開されていない。このアルバム以外のリリースもなかったようだ。

結果的には、一発屋だったということになるだろう。少なくともこのアルバムは、ダンス・ミュージックとして、今聴いてもそんなに悪くないと思うので残念だ。

それにしても、タイトルを考えるとたちの悪い冗談のような結末である。ロックンロールを壊そうとして、結局マイロ自身が砕かれてしまったのかもしれない。

Destroy Rock & Roll/Mylo(2004)
1. Valley Of The Dolls
2. Sunworshipper
3. Muscle Cars
4. Drop The Pressure
5. In My Arms
6. Guilty Of Love (’05 Version)
7. Paris Four Hundred
8. Destroy Rock & Roll (’05 Version)
9. Rikki
10. Otto’s Journey
11. Musclecar Reform (’05 Mixdown)
12. Zenophile (’05 Version)
13. Need You Tonite
14. Emotion 98.6
15. Soft Rock
16. Peach Melba
17. Destroy Rock & Roll (Tom Neville’s Clean Edit)

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エモ界のレジェンドは穏やかな音を鳴らす:American Football/American Football(1999)【CD千本ノック 0120本目】


アメリカン・フットボールは、マイク・キンセラ(オーウェンというソロ・プロジェクトもやっているそう)率いるエモ界のレジェンドだという。この『アメリカン・フットボール』は、1999年にリリースしたファースト・アルバムだ。

その後、すぐに解散してしまったので、これが唯一の音源となっていたが、2014年に奇跡のリユニオン。2016年には17年ぶりに、新作『アメリカン・フットボール』を発表した(ファーストと同じタイトルで、かなりややこしい)。

アタクシは、それほどエモ界に詳しいわけではなく、全く知らないアーティストだったのだが、渋谷のタワーレコードでプッシュされていたため、CDを入手した。さっと視聴したような気はするが、レジェンドなどと言われると聴かないわけにはいかないだろう。iTunesの追加日を見ると2014年5月なので、再結成前だったようだ。

サウンドは淡々としていて、穏やかな感じである。伝説的なバンドという事前情報から、勝手にもっとガンガン煽ったり、泣きメロ満載なのかと思っていたら、とても繊細な音色に心洗われてしまった。

アタクシ的には、必聴の一曲だったり、ドキャッチーな曲があるわけではないが、アルバムを通して聴くと、またもう一度聞きたくなるから不思議である。そんな聴き手の気持ちにすっと入り込んで、定着してしまうからこそ、レジェンドと呼ばれるのかもしれない。

American Football/American Football(1999)
1. Never Meant
2. The Summer Ends
3. Honestly?
4. For Sure
5. You Know I Should Be Leaving
6. But The Regrets Are Killing Me
7. I’ll See You When We’re Both Not So Emotional
8. Stay Home
9. The One With The Wurlitzer

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「富士銀行」と呼ばれるアルバム:Mogwai Young Team/Mogwai(1997)【CD千本ノック 0119本目】


今でこそモグワイは好きで、CDもシングルを含めて20枚近く持っている感じなのだが、初めて聴いた頃はとにかくインストゥルメンタル、歌声がないというのに拒否感があり、自分からは積極的に聴かず、避けていた。

でも確かフジロックでライブをたまたま見て、気に入ってしまったのだ。静と動の振幅の激しさというか、轟音カタルシスに、もう降参したのである。それ以降、3枚目の『ロック・アクション』くらいからは、アルバムが出ると買うという感じになっていたと思う。

そんな経緯もあって、このアルバムはさかのぼる格好で聴いたのだ。恥ずかしながら、『モグワイ・ヤング・チーム』がファースト・アルバムであることも、最近まで知らずにいた。

しかも、当時メンバーの平均年齢は18歳だったというから、まさに“恐るべき子どもたち”によってドロップされたサウンドだったのだ。今聴いても、古びた感じはほとんどなく、完成度の高さに驚かされる。

余談になるが、ジャケットには今はなき富士銀行の看板が写っていて、国内盤は黒く塗りつぶされている。メンバーが撮影した写真を利用したからで、富士銀行恵比寿支店(現:みずほ銀行恵比寿支店)の外観だとのこと。看板自体はもうないようなので、確認方法はジャケットと本物のビルを見比べるしかないようだ。

Mogwai Young Team/Mogwai(1997)
1. Yes! I Am A Long Way From Home
2. Like Herod
3. Katrien
4. Radar Maker
5. Tracy
6. Summer (Priority Version)
7. With Portfolio
8. R U Still In 2 It
9. A Cheery Wave From Stranded Youngsters
10. Mogwai Fear Satan

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ピューリッツァー賞を受賞した初のラッパー:DAMN./Kendrick Lamar(2017)【CD千本ノック 0118本目】


ケンドリック・ラマーを聴いたのは、rockin’onで猛プッシュしていたから、そしてこの『DAMN.』を手の取ったのは、凄いアルバムだよと各方面から聞いたため。結構、長い物には巻かれる性格というか、世間でヨイと言われているものは、一応試してみるのだ。

『DAMN.』を聴く前に、既にリリースされていた『Good Kid, M.A.A.D City』『To Pimp a Butterfly』『Untitled Unmastered』を聴いていたが、ピンと来こないなぁというのが、アタクシのケンドリック・ラマー評。ザックリなのにバッサリな判断で、恐縮してしまう。

なので、このアルバムがいくら話題になっていても、半信半疑で聴き始めたし、聴いたばかりの頃は、そんなにヨイとは思わなかった。「これまで同様、パッとしないアルバムかな」と感じていたのが、正直なところである。

それでも、激プッシュしているWebサイトの記事なんかを改めて見かけて、再度聴いているうちに、段々と癖になってきた。言葉では説明しづらいのだが、何だか“現在の音”がなっているし、だからこそ“今”聴くべきだと感じるようになったのである。

例えば1曲目の内容は(アタクシ、英語はできないので、解説記事などによると)、探し物をする盲目の女性に手を貸そうとして、「何か失くされましたか?」と問いかけると、「失くしたのは、あなたの命よ」と言われ、銃声が響く――、という感じだ。歌われるストーリーは不条理だし、銃を撃ったのは誰で、誰に対してなのかは言及されず、謎めいている。

また、タイトルになっている「damn」という言葉は、かなり行儀のよくないスラングだそうで、「くそっ!」「ちくしょう!」を意味するらしいが、もともとは「~を永遠に罰する、地獄に落とす」という意味だという。英語知らないせいかもしれないが、『DAMN.』というタイトル名にも深い含意があるように思えてならない。

実際『DAMN.』は、ジャーナリズムや文学、作曲などについて、アメリカで最も権威のある賞と言われるピューリッツァー賞の音楽部門を受賞した。ヒップホップ作品やラッパーとしての受賞は史上初の快挙。ピューリッツァー運営委員会は、「現代のアフリカ系アメリカ人の生活の複雑さを見事に捉えた名曲集」だと評価しているそうだ。

日本に暮らしていると、“現代のアフリカ系アメリカ人の生活の複雑さ”というのは、勝手に想像するしかないのだが、やはり現在性が圧倒的だからこそ、ピューリッツァー賞をという栄誉に輝いたのだろう。

DAMN./Kendrick Lamar(2017)
1. BLOOD.
2. DNA.
3. YAH.
4. ELEMENT.
5. FEEL.
6. LOYALTY.
7. PRIDE.
8. HUMBLE.
9. LUST.
10. LOVE.
11. XXX.
12. FEAR.
13. GOD.
14. DUCKWORTH.

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一家に一枚の名ライブ盤:Live/Donny Hathaway(1972)【CD千本ノック 0117本目】


いつの間にか家に、このCDがあった。いつどこで買ったか、どんなシチュエーションだったのか、全く記憶にないのが正直なところ。ライナーノーツの日付を見ると1998年なので、それ以降に買ったことだけは分かる。

購入前からとにかくジャケットが印象に残っていて、やたらとお馴染みのアルバムだった。なので、誰かに勧められたわけではなかったとも思うのだが、聴くのが当たり前な雰囲気を持っていた。

そんなこともあり、アタクシ的には、音楽好きにとって一家に一枚の必聴アルバムだと思っている。実際にサウンドはグルーブにあふれていて、とてもクールだ。リリース後45年以上経った今聴いても、非常にイケてるアルバムだと思う。

このアルバムは、『ライブ』というタイトルの通りライブ盤。もちろんライブ・アルバムとしてずっと聴き続けてきて、気に入っていたのだが、あまりに自然とアタクシの生活に入り込んで来ていたためか、実は今回このエントリーを書くまでアルバム・タイトルをきちんと認識していなかった。

購入から(恐らく)30年くらい経って、「そうかー。『ライブ』という名のライブ盤だったのかー」と、今噛みしめている。やや恥ずかしい、いや、相当に恥ずかしいのである。すっきりしたけど、何だか後ろめたい。

さて、アタクシの羞恥心は置いておくとして、珠玉の名ライブ盤なのは間違いないので、ダニー・ハサウェイ未体験という方は、ぜひ試してみてほしいなあと思う。

Live/Donny Hathaway(1972)
1. What’s Goin’ On
2. The Ghetto
3. Hey Girl
4. You’ve Got a Friend
5. Little Ghetto Boy
6. We’re Still Friends
7. Jealous Guy
8. Voices Inside (Everything is Everything)

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よそ者のブルースを奏でる「あのバンド」:The Band/The Band(1969)【CD千本ノック 0116本目】


ザ・バンドのセカンド・アルバム『ザ・バンド』のCDを買ったのは、確かファースト・アルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』を聴いて、気に入ったからだったと思う。このバンドなら、外れはないだろうと考えたのだ。

ライナーノーツには、ザ・バンドのファーストとセカンド・アルバムは傑作だと書かれていた。そうした意味では、効率のヨイ買い物をしたのだろうか。

彼らのサウンドは、フォーク、ブルース、カントリーといったアメリカのルーツ・ミュージックをベースにしたロックだ。そして、このアルバムは南部的なアメリカン・ミュージックの到達点とも言える内容だと思う。

ただしメンバーは、アメリカ人は1人しかおらず、残り4人はカナダ人だった。そんなこともあり、アメリカの音楽評論家グリール・マーカス(Greil Marcus)は、ザ・バンドの音楽を「よそ者のブルース」と評したそうだ。

もしかすると、そうした外部の視点からアメリカンのルーツ・ミュージックを見ていたからこそ、様々な音楽の良さを上手くまとめ上げられたのかもしれない。

アタクシ的に、一押しの一曲があるわけではないが、逆にどの曲を聴いても心地よいバイブが流れている。アルバム全体を通して、本当に気持ちがヨイのだ。ほぼ半世紀の間、聴き継がれているのは伊達ではないのだろう。

ちなみに、彼らのシンプルなバンド名は、周囲から実際に「あのバンド」と呼ばれていたことに由来するという。

The Band/The Band(1969)
1. Across The Great Divide
2. Rag Mama Rag
3. The Night They Drove Old Dixie Down
4. When You Awake
5. Up On Cripple Creek
6. Whispering Pines
7. Jemima Surrender
8. Rockin’ Chair
9. Look Out Cleveland
10. Jawbone
11. The Unfaithful Servant
12. King Harvest (Has Surely Come)
13. Get Up Jake (Outtake­Stereo Mix)
14. Rag Mama Rag (Alternate Vocal Take­Rough Mix)
15. The Night They Drove Old Dixie Down (Alternate Mix)
16. Up On Cripple Creek (Alternate Take)
17. Whispering Pines (Alternate Take)
18. Jemima Surrender (Alternate Mix)
19. King Harvest Has Surely Come (Alternate Performance)

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このアルバムを教えてもらったことだけ覚えている:Wild Wood/Paul Weller(1993)【CD千本ノック 0115本目】


音楽好きが集まると、必ずと言ってヨイほど聞くのは「一番好きなアーティストは?」「一番好きなアルバムは?」という質問である。

記憶は定かではないが、学生の頃だったか、ロックが好きな人たちが集まって飲んだことがあった。大体全員が初対面だったので、好きなアーティスト、好きなアルバムの質問大会になっていたと記憶している。

その際、隣合わせたある同年代の男性に尋ねると、好きなアーティストはポール・ウェラー、中でも(その当時)一番好きなのは『ワイルド・ウッド』という答えだった。

アタクシは、もちろんポール・ウェラーを知っていたが、それほど注目していたわけではないし、特にソロになってからの動向は全く気にしていなかった。メジャー感のあるアーティストでもなかったので、ややビックリしてしまった。

それでも後日、彼の言に従って『ワイルド・ウッド』を購入した。早速聴いてみると確かに格好ヨイではないか。やはり大ヒットしそうな感じはしないものの、ロック好きならきっと受け入れられて、楽しめるアルバムなのである。

こうした偶然の出会いではあったが、ポール・ウェラーのこの頃のアルバムは長く聴き続けている。サウンド自体が持つ若々しさのおかげで、今だとちょっと眩しい音に聴こえるかもしれない。

それにしても、音楽は不思議だ。残念ながら、このアルバムを教えてくれた彼の名前や顔は全く覚えていない。それでもCDは目の前に残っていて、いつもアタクシに何らかの感情を思い出させてくれるのだから。

Wild Wood/Paul Weller(1993)
1. Sunflower
2. Can You Heal Us (Holy Man)
3. Wild Wood
4. All The Pictures On The Wall
5. Instrumental 1
6. Has My Fire Really Gone Out?
7. Instrumental 2
8. 5th Season
9. Country
10. The Weaver
11. Moon On Your Pyjamas
12. Shadow Of The Sun
13. Holy Man (Reprise)

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鳴るべき場所を選ぶ音楽なのだろうか:Pink Moon/Nick Drake(1972)【CD千本ノック 0114本目】


アタクシが敬愛するニック・ドレイクの3枚目にして最後のオリジナル・アルバム。『ピンク・ムーン』は、30分足らずの11曲で構成されている。録音当時の彼は、精神科医にかかっている状態で、心はもちろん体調もよくない状況だったようだ。

サウンドは、ギターとわずかなピアノ、そして彼の声だけで成り立っているにもかかわらず、とても奥行きのあるものになっているように思う。音楽を聴いているだけでは、彼の置かれたシンドイ事態に気づかないほどである(アタクシの耳が悪いだけなのかもしれないが…)。

収録を担当したエンジニアのジョン・ウッドは、このミニマルな音楽をデモテープと思い「どうアレンジして欲しいのか」と問うと、ニック・ドレイクは「アレンジはいらない、装飾はいらないんだ」と答えたそうだ。確かにこれまでの2作と比べても、むき出しな感覚があり、彼が奏でた音、彼が歌った声が耳元で聴こえてくる。

発表当時のニック・ドレイクが受けた商業的な低調な評価通り、再評価されリスナーが増えた現在においても、ポピュラリティの高い音楽、アルバムではないのかもしれない。それでも、アタクシにとっては、手放せない作品であり、聴き続けるアーティストである。そうした意味では、鳴るべき場所を選び、細々と聴き継がれていく音楽なのかもしれない。

Pink Moon/Nick Drake(1972)
1. Pink Moon
2. Place To Be
3. Road
4. Which Will
5. Horn
6. Things Behind The Sun
7. Know
8. Parasite
9. Free Ride
10. Harvest Breed
11. From The Morning

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