おお 雨の音 雨の歌【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0040】


【短編小説】程度の問題/星新一
疑り深いスパイ、エヌ氏の物語。一方でのん気なスパイも失敗に終わる。読み終えると「確かに程度の問題だな」と思う。しかし、実際に現場で仕事をしていると(もちろんスパイ活動ではないが)、どの程度にすればヨイのか、なかなか判断が難しい。人というのは思った以上に、俯瞰して物事を見られないのである。

【詩・俳句・短歌・歌詞】都に雨の降るごとく/ポール・ヴェルレーヌ
訳のおかげか語感がとても気ちよく、それだけで読みたくなる感じだった。個人的には「おお 雨の音 雨の歌」の行で、ギアが上がる感覚にグッときた。ホップ、ステップ、ジャンプみたいな。詩全体としては抽象度が高いので、虫の目のような、ミクロな視点があってもよかったのでは。

【論考】忘却について/森本哲郎
筆者の意見は、「日本は過去を大事にせず、新しいものばかりに目を向ける」といったところだろうか。確かに、建物などはスクラップ&ビルドで新築にしか価値を認めない傾向がある。ただ、たまたま読んだ教養書によれば、正月は歳神様を迎える祝い事で、歳神とは先祖たちのこと。そう考えると、日本も過去を大切にしているように思う。


理想郷として、何をイメージすればヨイのか?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0039】


【短編小説】意気投合/星新一
国や地域が違えば、文明、価値感も異ってくるだろうから、「歓迎」の意味するところも、単なる友好関係とは限らないであろう。どんなどんでん返しがあるのかと思ったら、金属不足な惑星だったという。それにしても、金属が貴重な星の人たちが、宇宙船を簡単に解体したり、利用できるのだろうか?

【詩・俳句・短歌・歌詞】朝 私は海に網をうった……/ラビンドラナート・タゴール
「網をうった」というフレーズを読んででとき、『釣りキチ三平』をふと思い出し、また読みたくなった。さて本題に入ると、インドの詩を初めて読んだと思う。とても独特な感じがする。詩というよりも、散文のようだし、今でたとえると、ツイートみたいな気もする。ロジカルでもないし、思いのまま書かれているように思える。

【論考】ユートピアについて/森本哲郎
まず「ュートピア」という言葉を聞かなくなったなぁと思った。多様性の時代には、理想郷は人それぞれだし、何とも共有しづらいのだ。文中で言われるように、「ユートピアとは自然である」というのは、少なくと現在では当てはまらないのではないか。共有しづらいだけでなく、多くの人にとって、理想はぼんやりしていると思う。


海の響きをなつかしむ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0038】


【短編小説】診断/星新一
正直言って、これはオチてないなーと思った。シュートショートなので、複雑な構成にはできないだろうが、仕掛けは診断者の件だけだと、もの足りなかった。ジャストアイデアたが、院長と青年の掛けけ合いがもっとあったら、よかったのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】耳/ジャン・コクトー
非常にシンプルな詩。日本語だと十七文字で終わる。だからと言って、中身が薄いかと聞かれれば、そんなことはないと思う。この話は何かを伝えようとするよりも、読むことで読み手が色々と想像したり、その人なりの海を想起させようとしていると感じた。とても新鮮。

【論考】文明の出会いについて/森本哲郎
2回ほど読んだが、全体を通して筆者の言わんとすることがよく分からなかった。東洋と西洋が交り合い渦巻いていた時代があったということだとしたら、それはその当時の変化であって、それ以前とそれ以後などと比べる必要もないし、その瞬間だけが貴いというわけではないだろう。


時代によって日本人も変わるだろうよ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0037】


【短編小説】キツツキ計画 /星新一
悪党たちの奇想天外な悪だくみは、運悪く失敗に終わる。ただ、そもそもそんな計画で、大もうけできるのかしらという感じ。キツツキを訓練できるとも、正直思えないので、空想的なストーリー展間だと思う。前半にあった「ツキ計画」とどんな違いがあるのだろうと期待していただけに、ちょっと残念。

【詩・俳句・短歌・歌詞】のちのおもひに/立原道造
「はじめてのものに」と対をなすようだ。どうしても、言葉がスッと入ってこないのである。何だか語かけられているというより、断り続けられているような感触がする。悲しさを歌っているのだろうと思うが、遠回りしているような、もったいつけているよすな表現に思える。

【論考】日本の社会について/森本哲郎
著者は、日本人、日本の社会は同調圧力が強く、画一を迫るという。私が子どもの頃は、盛んにそう言われていたし、自分を含め確かにそうした雰囲気が強かった。しかし、現在はそれほどでもないように感じる。画一的というより、結構てんでバラバラではないだろうか。


恋にははじまりがあり、おわりがある【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0036】


【短編小説】なぞめいた女/星新一
すべて演技だったということか。とは言え、記憶喪失の演技は、さして難しいとは思えない(演級の素人ではあるけれど)。そうした意味で、あまりオチていないなと感じてしまった。昔のドラマなどでは、記憶喪失って、定番ネタだったが、今はあまり題になっていないなとも思った。

【詩・俳句・短歌・歌詞】はじめてのものに/立原道造。
ネットで調べて、いくつか解説のようなものも読んだが、難しかった。作者の言いたかったことの3分の1も理解できていないように感じる。ただ、灰が降るというのは、ある意味美しいと思ったし、恋のはじまりから、終わりまで描いてるのも、ヨイなと思えた。

【論考】友人について/森本哲郎
友人のたとえに、甘酒と水が適当かどうかは置いておくにしても、長く友人でいるためには、淡々とした付き合いの方がヨイというのは同意する。ただ子供の頃の友には作為がないというのも言い過ぎだと感じるし、真の友の定義が不明瞭な点も気になる。


楽観主義に包まれて【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0035】


【短編小説】被害/星新一
終わりが微妙だなと感じてしまった。貧乏神と言えば、ある意味で万能薬的な立て位置に思え、ストーリー構築として、安易すぎるよう思えた。どうしてエル氏につきまとっていたのか、貧乏神とはそもそもどんな性質なのかなど、背景的な情報が乏しいからかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】旅上/萩原朝太郎
言使いがちょっと古く、現代語ではないので、何度か読んだり、ネットでも少し調べたり。ちゃんと意味が分かってくると、何とも前向きな感じが微笑ましく思えてきた。正直、深さのようなものは、あまり感じないものの、若者(きっと)の楽観主義のようなものがにじみ出てきて、気持ちが軽やかにこなった。

【論考】遊びについて/森本哲郎
子どものころから「遊び」とは何か分かっていないなと思ってきたので、ちょっと注目しながら読んだが、一読しただけでは、上手く理解できなかった。「遊び」とは「ゆとり」のことだというのは賛同できるが、心のゆとりとなると、算定不能だし、何だか別の話になってしまったように感じた。


語り得ぬことには、沈黙せねばならない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0034】


【短編小説】肩の上の秘書/星新一
本音と建前のある日本社会を風刺しているのだと思うが、現在はちょっと変わったなとも思う。また、ロボットインコに要約してもらうのだとすると、何のための丁寧な説明なのだろうと、途中で段々と意味を感じられなくなった。そんなこともあり、最後の件は、ちょっと「?」になってしまった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】峠/真壁仁
一回読んだだけでは、作者の真意(恐らく)は理解できなかった。ただ、昔バイクでいくつもの峠を走った体験と重ね合わせると、峠に入る前と峠を下る際め心持ちの違いは、何となく共感できるようになった。とは言え、ひとつの世界とわかれるまでは、感じていなかったが。

【論考】哲学について/森本哲郎
「哲学について」というテーマで、ヴィトゲンシュタインを持ってくるかーというのが第一印象。カントが理性の限界をさぐり、ヴィトゲンシュタインはことばの限界をきわめようとした、というのはその通りかもしれないが、それを読み手が知識として知っても、あまり意味がなく、自らの頭で考えることこそが、やはり哲学なのだと思っている。


光あふれるから、影が強くなるのか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0033】


【短編小説】プレゼント/星新一
核爆発を起こす地球に対して、ラール星からの贈り物。その結果、地球の人々は争いをやめる、結論だけ見れば美談のようにも感じるかもしれない。ただ、所変われば品変わるではないが、ラール星から送られたプレゼントの意図は違っていた。結果の整合よりも、意図の不整合に、どうしてもモヤモヤが残るのだった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】作品第肆/草野心平
詩を十分に理解できているとは思えないものの、あふれる光と「物憂く」の対照的な情景が気になる。そう、世界は光に輝いているのに、自分だけはなぜ影に入ってしまっているのか。全く理由は書かれていないので、無闇矢鱈に想像するしかないのだ。

【論考】運命について/森本哲郎
運命とは何なのか。ここでは、カフカの作品を通じて考えさせられた。どうしてそうであるなのか、人間誰しも理由を考えたくなる。しかし、カフカの小説までではないにしても、人生や運命の理由など解明できることの方が珍しいだろう。生きること自体、自らの意志に発関係なく、与えられたのだから。


内なる宇宙を認識することから始める【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0032】


【短編小説】ある研究/星新一
読み手の先入観や勝手な想像を上手に利用したストーリーにしてやられた。研究と言われると、現在か未来を自動的に想定してしまうだろうが、全く別の時間軸の話だった。「新しい毛皮欲しいの」という妻の発言も、現代ではあまり言われなそうだが、書かれた当時はきっとそれらしいものだったはずだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】春暁/孟浩然
「春眠暁を覚えず」は、よく母親が口にしていたこともあり、懐かしさを感じるくらい。ただ、作者である孟浩然の名前は全く知らなかった。ある意味で当たり前なのであるが、古い詩は、描くことが身の周りのことで、情景も自然と頭に浮かんでくるから、シンプルだけど情感が豊かだと思う。

【論考】宇宙について/森本哲郎
カントの「わが上なる星らりばめたる空と、わが内なる道徳律と」という言葉を取り上げていて、ちょっと前に読んだ書籍で、池田晶子さんも似た主張をされていたこともあり、シンクロする感じがあった。確かに、限りない宇宙は、我々の外側に延々と広がり続け、一方で私の内にも宇宙のような無限が存在するように感じている。


「サヨナラ」ダケガ人生ダ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0031】


【短編小説】波状攻撃/星新一
魚心あれば水心ありというのか、課題のあるところにソリューション(解決策)を持って行けば、容易に信じてもらえるものだ。エセコンサルティングがパッケージ化されたようなストーリーである。それにしても、タイトルが現代的ではなく、あまりピンとこなかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】勧酒/于武陵
五言絶句、中国の詩ということもあってか、原文を読むだけでは、やや平板な感じがした。しかし、井伏鱒二さんの訳を読むんと、グッと立体的な時になってくる。「『サヨナラ』ダケガ人生ダ」の件は、名訳だと思う。

【論考】自分について/森本哲郎
「汝自身を知れ!」というアポロンの神託から、ソクラテスの「無知の知」や哲学の認識論などに話を展開し、ある意味正しい論調だとは思うものの、ロジックがあまりつながっているように思えなかった。「自分」とは不思議な概念だとは理解しているのだが。