レット・イット・ビーという漠たる宇宙【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0030】


【短編小説】妖精/星新一
何でも願いをかなえてくれる妖精。ただし条件があり、同時にその2倍が、ライバルにもたらされるという。そのため、あらゆる願いが求められない。ジレンマ。最終的には、ライバルの元へ行くよう願うが、自分にはずっと何も起きない。皮内な結果を受け入れるしかないケイ。妖精という特別な存在と、平凡な自分とのギャップが、鮮明に突きつけられただけに終わる。

【詩・俳句・短歌・歌詞】わたしと小鳥とすずと/金子みすゞ
解説にあった通り、「いつも見えないものを見ていたのだ」と思う。みすゞのとてもフラットで、ある意味で現代的な視点が心地ヨイ。書いた本人も、将来そんな世の中になると思っていたわけではないだろう。完全に後付けではあるけれど、予言のようにも聞こえるのが不思議である。

【論考】人間らしさについて/森本哲郎
ビートルズの「レット・イト・ビー」が出てきたのにびっくり。現在は、社会が情報化されており、世の中のシステム化も進んでいて、あるがままにと言われても、そのままの姿や行動を規定することが困難のように思う。文中に「さまざまに解釈でき」とあったが、私としては漠たる宇宙に投げ出されてしまったように感じる。


嫉妬は緑色の目をした怪獣【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0029】


【短編小説】追い越し/星新一
自動車も女性も新ければヨイという価値感には共感しないけれども、後味の悪い結末である。起きたことだけ言うと、別れたことで女性は自殺し、その影響で男性も命を落としてしまう。どうして2人は命を失わなければならなかったのか、その理由の希薄さが、居心地を悪くさせているのだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】猫/萩原朔太郎
確かに、猫の鳴き声を聞いていると、何だか会話が成立しているようにも感じ、この詩がある意味で正しいようにも思う。ただ、個人的には、「この家の主人は病気です」とだけ言い切られて終わるのが、かなり気持ちが悪い。それが事実だったとしても、なぜ情報として取り上げられたのだろうか。

【論考】嫉妬について/森本 郎
シェイクスピアが言う通り嫉妬は、緑色の目をした怪獣なのかもしれない。だが、私個人としては嫉妬することはほとんどなくなったし、SNSの浸透やコロナ禍によって、正直、人と人のつながりも希薄になり、周囲の人たちに感情を抱きづらい状況になっているように思う。なので、嫉妬が原因で人を殺すかもと言われても、あまり現実感がない。


光がこぼれる不思議【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0028】


【短編小説】気前のいい家/星新一
細かく考えると、指定したカバンじゃないと防犯できないなど、欠点もあると思うが、よくできた話である。エヌ氏はますます繁栄していくだろと感じるものの、読者としては、何となくスッキリしない気分もある。どちらかー方がすべてを得るということに、納得できないのかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】薔薇二曲/北原白秋
解説などを読むと、「ナニゴトノ不思議ナケレド」が、実は不思議だというところに、この詩の本質や意義があるという。もちろん、存在と生成に世界の不思議はあるのだけれど、私個人としては、最後の「光りコボルル」が一番印象に残った。光りがこぼれる不思議と言えばヨイのだろうか。

【論考】ふるさとについて/森本哲郎
私自身について言うと、親が転勤族だったため、ふるさとと言えるような場所はない。ましてや、田園と都市を対立的に語るのもやや抵抗感がある。帰るような場所があるのは、むしろ羨望に値するというのが正直なとこころだ。自身が根なし草に感じることも少なくない。


二元論の終焉?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0027】


【短編小説】闇の眼/星新一
暗間の中でも、光がなくても、知覚できる新しい人間が生まれた。これまでとは、まったくの別人種とも言えるだろうが、そうなったことで、両親はとまどいばかりを覚える。進化の最先端にあるとも言えるが、喜びはなく、普通ではない坊やをもてあまし気味。もし自分も同じ状況だったら、どうなるのだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】春の朝/ロバート、ブラウニング
「すべて世は事もなし」。日々、平穏であるということ。他の読書でも同じ表現が出てきて、シンクロしていた。詩自体は、とても短く、淡々としている。ある意味で、現実を描写しているというよりも、世界はそもそも平穏である宣言のように感じた。私個人としては、願望でもある。

【論考】迷いについて/森本哲郎
人間のたましいは、情熱(パトス)と理性(ロゴス)であるというのは、感情としては受け入れられる。ただ、二元論的な2つのたましいの対立は、少し頭の中にクエスチョンが浮かぶ。現在は、あられることで対立構造が希薄だからかもしれない。思考のくせが変わったのだろうか?


人によって「ゆきとどく」も異なるなずで【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0025】


【短編小説】ゆきとどいた生活/星新一
あらゆることが自動化されており、亡くなったテール氏も、会社の前まで連れていかれることに。ゆきとどいたというよりも、過剰な手当だと思う。とても皮肉な感じがするし、哀しくもある。やはり人間の目や判断がない生活は、なかなか受け入れづらいだろう。それにしても、現在の様々な自動化と近い雰囲気があるのは、星新一さんの先見の明に少し驚いた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】山のあなた/カールブッセ
きちんと解釈、理解できているわけではないが、お馴染みの詩である。久々に読んだが、不思議と胸に迫ってくる。改めて言葉が持つ力は強く、少ない言葉のなかでも、人それぞれに行間を感じられるのではと感じた。

【論考】ふたたび人間の心について/森本哲郎
人間の心は、サットヴァ(純質)、ラジャス(激質)、タマス(陰質)という3つの成分からできていて、どれも心を束縛してしまうから、同じ距離を保つべきだそう。大きな異論があるわけではないものの、すんなりと腹落ちするわけでもない。心に関する2つの論考を読んで、あまりきちんと考えてこず、無知であることを再認識した。


心とは何で、どうやって存在しているのか?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0025】


【短編小説】人類愛/星新一
罪を憎んで人を憎まずなのか、私憤を晴らすチャンスと見て、その機会を生かすのか、ある意味で人間性が問われる。私自身は、憤りにかられても、社会的な正しさが気になって、助けてしまうだろうと思った。それは良い人間性などではなく、規範に逆らえない、個を発動できない性質からくるだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】あどけない話/高村光太郎
「智恵子は東京に空が無いといふ」は、不思議なほど強烈に頭に刻まれているフレーズだ。当初は、都会と地方の対立と理解していたが、実際に安達太良山の空を見たこともあり、環境や風景に自己のアイデンティティーを感じられるかどうかの違いなのかもしれないと思う。単に故郷の空は澄んでいて美しいとかではなく。

【論考】人間の心をついて/森本哲郎
あまり心について考えていないことに思い当った。西洋哲学において、ほとんど議論されていないからかもしれない。とは言え、自分自身では心の存在を実感しているし、思考とはやや別の動きをしていると思う。この論考の中でも、心の定義はさておき、筆者の体験談が中心で構成されいる。心の謎が浮かんできた。


生きている人たちは死を経験していない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0024】


【短編小説】雄大な計画/星新一
三郎は優秀なゆえに、スパイを目的に競合企業に入社する。結論は、最初の方を読んで想像できてしまった。遠くの親戚より近くの他人というか、入社したこともない会社のために、忠誠心を何年も継続させるのは、雄大なというより、無謀な計画。フィクションとは言え、話を持ち掛けたR産業の社長が滑稽に感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】小諸なる古城のほとり/島崎藤付
原文だけだとちょっと分からず、ネットで現代語訳を読んだ。淡々と情景を表現しており、とても潔く、それでいて美しい風景が思い浮かぶ。現代のように、オンラインがなく、余計な情報があふれる時代ではないからこその詩だと思えた。人の小さな視点から、世界をに率直に見ているのが、非常に心地よい。

【論考】死について/森本哲郎
死について、改めて考える機会をもらったという点ではよかった。だだ、内容としては、「死をいつも引きつけておき、死の準備をせよ」と主張するにとどまり、準備とは何かがやや不明である。死に方を考えるのは、まさに生き方の検討であり、死そのものを考えているわけではない。池田晶子さんの書籍が読みたくなった。


「疎外」とは「メタ認知」ではないか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0023】


【短編小説】マネー・エイジ/星新一
ワイロが当たり前で、お金のやり取りがコミュニケーションの根幹な世界。ある意味では、とてもシンプルで暮らしやすいとも思ってしまった。とは言え。すべてを貨幣に換算するのは、データ至上主義的で、行間がないにも等しいから、やはりフィクションでしか成り立たないとも思った。人はお金のみにて生きるにあらず、ではないのか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】風景/山村暮鳥
圧倒的な「いちめんのなのはな」の連続。一つひとつを読まずども一目で風景が浮かんでくるだろう。そして、その中に一行だけ違う文言が入ってくることで、ニュアンスを生み出している。それにしても、「病めるは昼の月」の不穏さが目立つ。解説でも触れているが、個人的には著者の真意は理解できなかった。

【論考】疎外について/森本哲郎
自己を認識するために、疎外が大事。また外に出すだけではなく、自分の中に改めて取り込む必要があるというのも同意する。ただ、どうやって外化するのか、どうやって自らに取りもどすのかに言及していないため、札上の空論に聞こえてしまうのではないか。


寛容とは相手の理を認めること【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0022】


【短編小説】親善キッス/星新一
地球とよく似たチル屋に訪れた地球人たち。美しい女性たちに迎えられて、口と思われる所へキスするが…。同様に見えるものは、自分と同じと考えがちだが、文化が違えば、同じとは限らず、ましてや惑星が違っているのだから、口に見えても、それは口ではないのかもしれないのだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】青い蝶/ヘルマン・ヘッセ
原文ではなく、翻訳で読んでいるが、とても美しい詩だと思った。また、とても短い言葉の連なりにすぎないが、言葉のもつカ、底力のようなものを感じた。ある一瞬を切り取っただけなのに、強く、その場を想起させ、少なくとも私の心を揺さぶった。

【論考】寛容について/森本哲郎
寛容とは許すこと、と考えていたが、ここでは相手の理を認め、受け入れることと理解した。単純に相手の理も認めると矛盾にもなるとは思うか、何かが正しく、それが絶対的であるとなれば、逆に貴容は成立しないだろう。


死者は自分の死を悲しむことができない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0021】


【短編小説】誘拐/星新一
話としてはよくできているが、オチが予想できたこともあり、ちょっと興醒めしてしまった。それにしても、最近は誘拐の話を聞かない。単に報道されていないだけるかもしれないが、刑事ドラマでは定番のネタだっただけに、隔世の感がある。時代や社会の変化にともなって、小説で扱うテーマも変わってくるのだと再認識した。

【詩・俳句・短歌・歌詞】倚りかからず/茨木のリ子
著者の主張に賛同するものの、詩というよりも、個人の宣言にすぎないように感じる。正直、詩情が足りないと思った。一方で、このように単刀直入に言わなけれなならない時代だったのかも、と想像した。特に女性だったら、はっきりと宜言しないかぎり、誰も耳を傾けてくれなかったのではないか。

【論考】悲しみについて/森本哲郎
「人間は死というものからのがれることのできない悲しい存在」に引っかかってしまった。ただよく読むと、「一瞬、一瞬を、いとしみながら生きること」が大切というメッでージがあり、それについては同意できる。死に近い人ほど、一瞬を大事にできるというのは逆説的すぎる気もする。