地球は人類のものなのだから【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0050】


【短編小説】最後の地球人/星新一
そんな世界にはならないだろうと思いながらもグイグイと読まされ、身につまされてしまった。前半にあった「地球は人類のものなのだから」という一文が印象に残る。また、最後の「光あれ」も象徴的 ではあるが、どうしてそれほど自信を持てるのが、私には理解できなかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】虫の夢/大岡信
ある意味、宣言のような、叫びのような詩である。ロジカルなわけではないが、何とも説得力がある言葉たち。得てして人は、自分がにんげんであることを忘れて、自分の視点や認識だけで、世界を決めつけてしまう。作者はそうした態度に対して、明確に警告を発してくれているようだ。

【論考】情感について/森本
この論考を読んで、「保育園落ちた日本死ね!!!」を思い出した。もちろん句ではないけれど、短い言葉で圧倒的な情感を表現していたからだ。また蚊屋に関する件についても、現在はオンラインの情報が膨大に増え、物に対して情感を見い出すことが激減したなとも思った。


「こういうがええんじゃ」【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0049】


【短編小説】なぞの青年/星新一
「なぞの青年」の正体は、税務署の職員。自らの意志で、困っている人たちへお金を提供していた。「わたしが異常で、ほかの議員や公務員たちは、みな正気だとおっしゃるのですか」という発言が印象に残った。法や制度に忠実だと、正しく間違いはないが、実は誰も幸せにしない、というアイロニカルな状能を指摘しているのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】学校/辻征夫
エッセイのような詩。自分は学校がそれほど好きではなかったが、行くのが嫌になるほどでもなかった。ただ、自分の子どもが学校に行けなくなったこともあり、じんわり共感しながら読めたと思う。最後の、同じく学校をサボっている娘から、「行けば?」と勧められるコミカルさと、「うん」と行く気になるポジティブさが、何とも微笑ましい。

【論考】「自分の世界」について/森本哲郎
どんな年齢であれ、確固たる自分の世界を持っていることは重要だし、貴いとも思う。一方で、当人が持つその世界像が色眼鏡で見て、偏りでしかなかったら、どうなのだろう。「自分の」と言うくらいだから、他者とは何らか異っているはずだ。自己と違った認識を受け入れ、認めることは、そんなに簡単ではない。


そうだ ぼくは くまだった よかったな【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0048】


【短編小説】冬きたりなば/星新一
広告だらけの宇宙船を操るエヌ博士。広告だらけということは、あまり本題とは関係がなかった。新しい惑星にたどり着くと「何かある?」と、先読みするよろになってしまったっている。春を迎えるまでの冬眠期間が5000年だということだが、その期間生きつづけれる生体なのだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】くまさん/まど・みちお
やはり詩は読みやすかったり、リズム感があると、不思議なほど受入れやすい。正を言ってこの詩の深い含意が理解できているわけではないものの、楽しく、気分良く読み終えるのだ。すべてひらがな表記も意味があるのだろうが、真意はわからないままである。

【論考】空しさについて/森本哲郎
無ではなく、空とは何なのか。この文章を読んただけでは、まだまで間口に立っただけのように感じる。「空しさ」ととらえると、私自身はもっと分からなくなってしまうだろう。日々、空しいと感じつつも、どうしたらその状態を抜け出せるのが、まったく見えないのである。


「アジアは一つである」をめぐる論考【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0047】


【短編小説】白い記憶/星新一
何度も曲り角でぶつかり、気を失う二人。ちょっと取ってつけたようなシチュエーションである。ストーリーが面白くないわけではないが、何だか色々な言動にアリティを感じられないせいで、あまり小説の世界に入っていけない。自分の物語に対する好みもあるだろうけど。

【詩・俳句・短歌・歌詞】聴く力/茨木のり子
作者本人のことを書いたのだろうか。明示されていないが、恐らく自分のことを語っているのであろう。言葉というものは、「私」と「あなた」が存在して初めて意味があり、成立するから、作者の言う通り「受けとめる力」は大切である。ちなみに、「うからやから」は、親族という意味だそうだ。

【論考】理想と現実について/森本哲郎
岡倉天心の「アジアは一つである」というも言葉をめぐる論考。筆者が解釈するように、アジアが一つではないから、上の言葉があったのだと思う。卑近な例だが、一体感が乏しいから「One MIZUHO」とか言うのだろうし。ただ、今の世の中は多様性の時代なので、ますます一つになりづらくなっている。


ソウイウモノニワタシハナリタイ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0046】


【短編小説】よごれている本/星新一
よごれている本は、魔王のための犠牲を集めている魔法の本。エス氏はふと興味を持ったばかりに犠牲になってしまう。身につまされるほどではないけれど、好奇心がきっかけなので、人間なら誰しもハマってしまう可能性がある。それで、フィクションだと割り切れないのだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】雨ニモマケズ/官沢賢治
暗唱できるわけでもないが、全部知っているつもりになっていた。改めてすべて読むと、最後の「ソウイウモノニ/ワタシハ/ナリタイ」は、ちょっとオチのように読めた。ここの所、とても気持ちが沈んでいるのだが、自分も目標を持たなきゃなと、何だか少し元気をもらえたような気がする。元気百倍とまではいかないけれど。

【論考】真心について/森本哲郎
「真心」と言われて、最近あまり口にしたり、聞くことが少なくなったなぁと思った。中でも一番印象に残ったのは、本居宣長の「歌は心で感じたことを、善とか悪とかにかかわらず、そのまま読むものだ」という発言。確かに、あらゆる表現が、善悪を越えていると強くなるし、何より真心にも通じると感じた。


良心をめざめさせる薬【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0045】


【短編小説】盗んだ書類/星新一
星新一さんらしいショート・ショート。でも、今になって読むと、効果、効能が分からない薬の書類を盗んで、自分で作って飲むだろうか、すごい薬なのにセキリティがゼロに近く、大丈夫だろうか、など色々と突っ込めなくもない。なので、リアリティというよりも、ストーリー構成のみで勝負しているのだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】わたしが一番きれいだったとき/茨木のり子
自分のようなベビーブーマー世代は、戦争はなかったけれど、バブルも崩壊し、失われた30年だったり、あまりヨイことはなかったと思っている。それでも人は、その時を生きるしかなく、その状況を受け入れるしかない部分がある。作者のように発奮しながらも、「その時」を見渡して、自らの生き方を決める必要があるのだろう。

【論考】女の美しさについて/森本哲郎
女性に限らず人の美しさは、生きていること、あるいはどのように生きているかによって大きく変わると思っている。顔立ちの よさも、全く無開係だとは言わないまでも、同じ人物でもその瞬間の状態によって、美しく見えたり、見えなかったりするからだ。そうした意味では、筆者の意見がとても納得できる。


人間を越えたものに対する畏怖【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0044】


【短編小説】欲望の城/星新一
過ぎたるは及ばざるが如しな話ではあるが、夢を見ることで欲望が満たされるという。欲しがるたびに物が増え、そして増えてすぎて、眠るのも怖くなってしまったようだ。ただ、正直な所、そんなに夢に左右されるかなあと思う。夢はあくまで夢であって、現実の見え方まで変える力はないように感じる。

【詩・俳句・短歌・歌詞】死んだ男の残したものは/谷川後太郎
一読しただけではピンとこず、何度も読んで、解説も読んで、何となく理解できた気分になっているだけのような気がする。解説によれば、ベトナム戦争に対する反戦歌だとのこと。「死んだ兵士」という言葉はあるが、戦争がテーマとは感じなかった。

【論考】人間の限界について/森本哲郎
人間を越えたものに対る畏怖が大切さいうのには、同意するものの、その超越者が絶対化されてしまうと、かえって人は硬直的になってしまうようにも思う。やや凡庸ではあるが、中庸というかバランス感が大事なのではないか。とは言え、法然の専修念仏は筋も通っているので、非常に設得力があった。


かそけき音に耳をかたむける【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0043】


【短編小説】おみやげ/星新一
原爆の実験によって、フロル星人たちが残してくれた素晴らしい知見、文明が粉々になってしまう。何と皮肉な結果だろうか。少し拡大解釈をすると、善なる方向に進もうとしなければ、善を後押しする力は得られないということではないだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】二十億光年の孤独/谷川後太郎
小学校の教科書で読んだのが最初だろうか。タイトルは覚えていたが、中身は記憶になかった。二十億光年という圧倒的な広がりと、僕のくしゃみとが、対照的すぎるし、普段はあまり置くことのない宇宙全体からの視点は、ある意味で言葉、詩だからこそ表現できると思った。

【論考】静かについて/森本哲郎
古典を題材に出されると、ちょっと苦手意識が先行してしまう。筆者は、静寂の重要性やかそけき音に反応できる日本人の豊かさを説いている。確かにと思う反面で、現在私たちを取り巻く環境は、音だけでなくあらやる刺激だらけで、いつも落ち着かない。静寂は勝ち取らなければならないのか。


美を「無常の相のなかに」ながめる【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0042】


【短編小説】特許の品/星新一
ストーリー自体は面白いと思ったものの、何だかスッキリしない感じがして、ちょっと考えてみると、快楽を受けつづけると、生物(人)は意欲が減退するという点がかもしれない。書かれた当時は、当てはまったかもしれないが、現在は快楽と意欲は相似的な関像にあると考えられているのではないだろうか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】蛙の死/萩原朔太郎
難しい言葉は使っていないが、難解な詩である。ネット検索ではあるものの、いくつか解説的な言説を読んだが、すべて理解できたという感じには至らなかった。なので、あくまで感覚的ではあるけれど、作者の描こうとしたものに共感を覚えた。幼い人間の凶暴性とか、それを振り返って見る自分自身とか。

【論考】美について/森本理郎
「日本の美とは、永遠なものではなく、移りゆく『時間』のなかで形づくられ、成長し、そして衰微してゆくもの」という筆者の主張に賛同する。ただし、今回言われて、ハッとした感じではあるが。日本人が変わりやすいのも、一神教ではないからかもしれないと思った。


月と浜べとボタン【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0041】


【短編小説】愛用の時計/星新一
ある意味では、アニミズム的なストーリー。表現がさらっとしたせいか、話の筋をつかむのに、少し苦労した。結論だけ見ると、そんなこともあるのかなというフィクションではあるが、少し夢がある感じが気持ちを幾分前向きにさせる。ただ2020年代っぱくはないとも思う。

【詩・俳句・短歌・歌詞】月夜の浜べ/中原中也
月が出る浜べでボタンを拾ったが、それを投げ捨てられなかったという詩。事象としては単純だが、作者の心持ちやなぜ詩として表現されたのかは、想像するしかない。私の解釈では、ボタンは中也自身であり、月や波は世間や社会をイメージしているのではないだろうか。捨てないという判断をしても、それは力を生み出すわけではないけれど。

【論考】渡世について/森本哲郎
一読、二読して思ったのは、ちょっと分かりづらいなぁということ。結局は、日本人の生き方がアンビヴァレンツ(両価的)であり、自由であると言いたかったのか。それ自体には異論はないが、何だかかえって分かりづらく説明されているように感じた。また、エコノミック・アニマルという言葉については、隔世の感がある。