生きている人たちは死を経験していない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0024】


【短編小説】雄大な計画/星新一
三郎は優秀なゆえに、スパイを目的に競合企業に入社する。結論は、最初の方を読んで想像できてしまった。遠くの親戚より近くの他人というか、入社したこともない会社のために、忠誠心を何年も継続させるのは、雄大なというより、無謀な計画。フィクションとは言え、話を持ち掛けたR産業の社長が滑稽に感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】小諸なる古城のほとり/島崎藤付
原文だけだとちょっと分からず、ネットで現代語訳を読んだ。淡々と情景を表現しており、とても潔く、それでいて美しい風景が思い浮かぶ。現代のように、オンラインがなく、余計な情報があふれる時代ではないからこその詩だと思えた。人の小さな視点から、世界をに率直に見ているのが、非常に心地よい。

【論考】死について/森本哲郎
死について、改めて考える機会をもらったという点ではよかった。だだ、内容としては、「死をいつも引きつけておき、死の準備をせよ」と主張するにとどまり、準備とは何かがやや不明である。死に方を考えるのは、まさに生き方の検討であり、死そのものを考えているわけではない。池田晶子さんの書籍が読みたくなった。


「疎外」とは「メタ認知」ではないか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0023】


【短編小説】マネー・エイジ/星新一
ワイロが当たり前で、お金のやり取りがコミュニケーションの根幹な世界。ある意味では、とてもシンプルで暮らしやすいとも思ってしまった。とは言え。すべてを貨幣に換算するのは、データ至上主義的で、行間がないにも等しいから、やはりフィクションでしか成り立たないとも思った。人はお金のみにて生きるにあらず、ではないのか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】風景/山村暮鳥
圧倒的な「いちめんのなのはな」の連続。一つひとつを読まずども一目で風景が浮かんでくるだろう。そして、その中に一行だけ違う文言が入ってくることで、ニュアンスを生み出している。それにしても、「病めるは昼の月」の不穏さが目立つ。解説でも触れているが、個人的には著者の真意は理解できなかった。

【論考】疎外について/森本哲郎
自己を認識するために、疎外が大事。また外に出すだけではなく、自分の中に改めて取り込む必要があるというのも同意する。ただ、どうやって外化するのか、どうやって自らに取りもどすのかに言及していないため、札上の空論に聞こえてしまうのではないか。


寛容とは相手の理を認めること【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0022】


【短編小説】親善キッス/星新一
地球とよく似たチル屋に訪れた地球人たち。美しい女性たちに迎えられて、口と思われる所へキスするが…。同様に見えるものは、自分と同じと考えがちだが、文化が違えば、同じとは限らず、ましてや惑星が違っているのだから、口に見えても、それは口ではないのかもしれないのだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】青い蝶/ヘルマン・ヘッセ
原文ではなく、翻訳で読んでいるが、とても美しい詩だと思った。また、とても短い言葉の連なりにすぎないが、言葉のもつカ、底力のようなものを感じた。ある一瞬を切り取っただけなのに、強く、その場を想起させ、少なくとも私の心を揺さぶった。

【論考】寛容について/森本哲郎
寛容とは許すこと、と考えていたが、ここでは相手の理を認め、受け入れることと理解した。単純に相手の理も認めると矛盾にもなるとは思うか、何かが正しく、それが絶対的であるとなれば、逆に貴容は成立しないだろう。


死者は自分の死を悲しむことができない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0021】


【短編小説】誘拐/星新一
話としてはよくできているが、オチが予想できたこともあり、ちょっと興醒めしてしまった。それにしても、最近は誘拐の話を聞かない。単に報道されていないだけるかもしれないが、刑事ドラマでは定番のネタだっただけに、隔世の感がある。時代や社会の変化にともなって、小説で扱うテーマも変わってくるのだと再認識した。

【詩・俳句・短歌・歌詞】倚りかからず/茨木のリ子
著者の主張に賛同するものの、詩というよりも、個人の宣言にすぎないように感じる。正直、詩情が足りないと思った。一方で、このように単刀直入に言わなけれなならない時代だったのかも、と想像した。特に女性だったら、はっきりと宜言しないかぎり、誰も耳を傾けてくれなかったのではないか。

【論考】悲しみについて/森本哲郎
「人間は死というものからのがれることのできない悲しい存在」に引っかかってしまった。ただよく読むと、「一瞬、一瞬を、いとしみながら生きること」が大切というメッでージがあり、それについては同意できる。死に近い人ほど、一瞬を大事にできるというのは逆説的すぎる気もする。


誰にとっても通じるもの【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0020】


【短編小説】鏡/星新一
悪魔が出てくるが、あまり存在感はなく、夫婦の悪意を受け入れるだけの存在。最格的には、悲劇的な状況になるが、それも必然的なようで、十三日の金曜日だけで説明されても納得しづらいのではないか。鏡という題名は、悪魔を呼び出す道具といるより、自身を写し出すものという意味だと思う。

【詩・俳句・短歌・歌詞】表札/石垣りん
ちょうど表札をつくらなければ、と思いっていたこともあり、ある意味でタイムリーだった。「ハタから表札をかけられてはならない」というのは、まさにその通りだと思う。それにしても、詩というよりも、独白や宣言のように聞こえた。

【論考】歴史について/森本哲郎
その人によって真理がある、ということに違和感があると言ったら言いすぎなのだろうか。歴史はさておき、真理はそれぞれと言ってしまったら、それは単なる想対主義になってしまう。文化によって大切なものが違うというのはわかるが、真理とは、誰にとってもじ通じるものでなければないたろう。


今は、二元論が成立しにくい時代【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0019】


【短編小説】デラックスな金庫/星新一本
どうして「私」は、全財産をつぎこんで、豪華きわまる大金庫をつくってたのか。すべての財産を使ってしまったら、金庫にしまう財産は無くなってしまうだろう、しかも家を手放してしまっているという。矛盾する状況。でも、最後には、大金庫の実利が明かされる。とは言え、個人的にそれほで腑に落ちたわけではなかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】永訣の朝/宮沢賢治
永訣とは、永遠に別れること、死別。この詩は、妹の死について詠んだだそうだ。解説には「不思議に透明で暗くはない」と書かれている。古い言葉使い、ひらがなばかりなど、何度も目を通して、やっと少し読めた気がした。透明で、暗くないのは、筆者に深い覚語があったからではないだろうか。

【論考】豊かさについて/森本哲郎
物質と精神の対立は、この文が書かれた時代とは達って、現代においては、それほど強力なものではなくなっているだうう。それには、社会が圧倒的に便利になって、物質的に恵まれていることが背景にあると思う。そうした意味では、「2023年の豊かさ」とは何かを考え続けたい。


最大の謎は、なぜ存在し、生成するのか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0018】


【短編小説】冬の蝶/星新一
理想的な未来の世界。人の生活をテクノロジーと電気が支えるというか、完全に依存している。そのため、停電によって、人は何もできず、ただ冬の寒さに震えるのみなのだ。人はもはやサバイブする力を持っておらず、ペットだったサルだけが、力強く生き残っていくのだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】君死にたまふことなかれ/与謝野晶子
原文を読んだだけでは、少し理解が浅く、現代語訳にも目を通した。弟の安全を思う気持ちが、本当に色濃く感じられる詩だと思う。その理由を、自分なりに考えてみると、「君死にたまふことなかれ」とくり返すことと、身近な家族の様子を直接的に表現しているからのように思えた。

【論考】目ざめについて/森本哲郎
「目ざめ」とは、人生の不条理に気づくこと。そもそも「私」が生ているのは、自らの意志ではなく、完全なる所与の産物である。だからこそ、自己や人間の存在を合理的に説明するのは困難であり、哲学的な問いになるのだと思う。そして、もう一つの謎は、時間とともになぜ存在者は変化、生成していくのか。


満されない精神が自己を束縛するのだろうか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0017】


【短編小説】ねらわれた星/星新一
地球と思われる星をやっつけようとする金属質のウロコを持つ生物。自己の視点で相手を困らせようとしたが、それはあさってな行動に過ぎなかった。やや堅苦しく言えば、普通性をどう見い出すのか。たとえ意地悪であっても、相手をよく知らなければ、すっとんきょうな行動で、結果は伴わないのである。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ココアのひと匙/石川啄木
解説を読むまで、社会主義運動に関連した詩だとは思えなかった。背景情報を確認しなければ、著者の真意も全く理解できていなかっただろう。すべての詩がとまでは言わないが、やはり時代
や社会と、作品は切り離せないのだなと思った。

【論考】快楽について/森本哲郎
快楽を一義的に求めたり、自己中心的な行動が何かと憚られる昨今、改めて快楽とは何かと考えることは重要に思う。書かれていることで言うと「足るを知る」こと。自足することで、自由になれるのだという。何か欲望にとらわれてしまうと、欲求の底なし沼に、簡単に落ち込んでしまうだろう。


人間はいつも幸福を捨てている?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0016】


【短編小説】年賀の客/星新一
生まれかわりとシンクロニシティの物語と言えるのだろか。所々で、星新ーさんにしては珍しい情緒的な表現が出てくる。それでも、何だかゴクリと飲みづらいもの(ストーリ)があるような気がしてしまった。なぜ生まれかわりが、老人の孫でなければならなかったのかが、よく理解できていないからかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】小景異情(その二)/室生犀星
少し理解が曖味だったので、あれこれ調べてみると、どんな状況で詠んだのか、著者の心情の解釈もさまざまあるようだ。その揺らぎこそ必要で、魅力であるとまで言わないが、揺らいでいるから読み手の自由が許され、そっと作品が指し出されているようにも感じる。

【論考】幸福について/森本哲郎
幸福は身近にあり、内在されているという筆者の主張にとても賛同する。個人的には、幸せな感じる機会が少ないと考えているものの、幸福は所有物や物質的な満足感ではないと思っているし、外部からもたらさせるものではないだろう。幸福を感じるのは人だから、いつも内側を見つめるしかないのだ。


「汚れつちつた悲しみ」とは【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0015】


【短編小説】悲しむべきこと/星新一
プレゼントで借金が膨らみ、強盗をするに至ったサンタクロースの話。エス氏の冷静沈着ぶりも目を見張ったが、オチの飛躍感や無我田引水の卑近さが、何だか心地よかった。タイトルの「悲しむべきこと」とは対極で、よくわからないが清々しさを感じる。

【詩・俳句・短歌・歌詞】汚れつちまつた悲しみに……/中原中也
この詩はもちろん知っている。「汚れつちまつた悲しみ」は、完全にパワーワードだと思う、ただ、「汚れちまった」ではなく、「汚れつちまつた」というのは、今回初めて気がついた。最後の行が、「なすどころもなく目は暮れる……」で終わる通り、詩の全編に前向きな言葉は全くないが、私自身はとても惹かれる。根暗がすぎるだろうか。

【論考】読書について/森本哲郎
自分にとって大切な本を見つけ、じっくりと読むべしという考にえは全くの同意。自分がやっている小説の書き写しなどは、まさにゆっくり読むことである。現なは情報が多すぎて、本の海に埋もれてしまって選べないといった件も、さとなおオープンラボで学んだことの確認になる。