二元論の終焉?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0027】


【短編小説】闇の眼/星新一
暗間の中でも、光がなくても、知覚できる新しい人間が生まれた。これまでとは、まったくの別人種とも言えるだろうが、そうなったことで、両親はとまどいばかりを覚える。進化の最先端にあるとも言えるが、喜びはなく、普通ではない坊やをもてあまし気味。もし自分も同じ状況だったら、どうなるのだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】春の朝/ロバート、ブラウニング
「すべて世は事もなし」。日々、平穏であるということ。他の読書でも同じ表現が出てきて、シンクロしていた。詩自体は、とても短く、淡々としている。ある意味で、現実を描写しているというよりも、世界はそもそも平穏である宣言のように感じた。私個人としては、願望でもある。

【論考】迷いについて/森本哲郎
人間のたましいは、情熱(パトス)と理性(ロゴス)であるというのは、感情としては受け入れられる。ただ、二元論的な2つのたましいの対立は、少し頭の中にクエスチョンが浮かぶ。現在は、あられることで対立構造が希薄だからかもしれない。思考のくせが変わったのだろうか?


人によって「ゆきとどく」も異なるなずで【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0025】


【短編小説】ゆきとどいた生活/星新一
あらゆることが自動化されており、亡くなったテール氏も、会社の前まで連れていかれることに。ゆきとどいたというよりも、過剰な手当だと思う。とても皮肉な感じがするし、哀しくもある。やはり人間の目や判断がない生活は、なかなか受け入れづらいだろう。それにしても、現在の様々な自動化と近い雰囲気があるのは、星新一さんの先見の明に少し驚いた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】山のあなた/カールブッセ
きちんと解釈、理解できているわけではないが、お馴染みの詩である。久々に読んだが、不思議と胸に迫ってくる。改めて言葉が持つ力は強く、少ない言葉のなかでも、人それぞれに行間を感じられるのではと感じた。

【論考】ふたたび人間の心について/森本哲郎
人間の心は、サットヴァ(純質)、ラジャス(激質)、タマス(陰質)という3つの成分からできていて、どれも心を束縛してしまうから、同じ距離を保つべきだそう。大きな異論があるわけではないものの、すんなりと腹落ちするわけでもない。心に関する2つの論考を読んで、あまりきちんと考えてこず、無知であることを再認識した。


心とは何で、どうやって存在しているのか?【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0025】


【短編小説】人類愛/星新一
罪を憎んで人を憎まずなのか、私憤を晴らすチャンスと見て、その機会を生かすのか、ある意味で人間性が問われる。私自身は、憤りにかられても、社会的な正しさが気になって、助けてしまうだろうと思った。それは良い人間性などではなく、規範に逆らえない、個を発動できない性質からくるだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】あどけない話/高村光太郎
「智恵子は東京に空が無いといふ」は、不思議なほど強烈に頭に刻まれているフレーズだ。当初は、都会と地方の対立と理解していたが、実際に安達太良山の空を見たこともあり、環境や風景に自己のアイデンティティーを感じられるかどうかの違いなのかもしれないと思う。単に故郷の空は澄んでいて美しいとかではなく。

【論考】人間の心をついて/森本哲郎
あまり心について考えていないことに思い当った。西洋哲学において、ほとんど議論されていないからかもしれない。とは言え、自分自身では心の存在を実感しているし、思考とはやや別の動きをしていると思う。この論考の中でも、心の定義はさておき、筆者の体験談が中心で構成されいる。心の謎が浮かんできた。


生きている人たちは死を経験していない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0024】


【短編小説】雄大な計画/星新一
三郎は優秀なゆえに、スパイを目的に競合企業に入社する。結論は、最初の方を読んで想像できてしまった。遠くの親戚より近くの他人というか、入社したこともない会社のために、忠誠心を何年も継続させるのは、雄大なというより、無謀な計画。フィクションとは言え、話を持ち掛けたR産業の社長が滑稽に感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】小諸なる古城のほとり/島崎藤付
原文だけだとちょっと分からず、ネットで現代語訳を読んだ。淡々と情景を表現しており、とても潔く、それでいて美しい風景が思い浮かぶ。現代のように、オンラインがなく、余計な情報があふれる時代ではないからこその詩だと思えた。人の小さな視点から、世界をに率直に見ているのが、非常に心地よい。

【論考】死について/森本哲郎
死について、改めて考える機会をもらったという点ではよかった。だだ、内容としては、「死をいつも引きつけておき、死の準備をせよ」と主張するにとどまり、準備とは何かがやや不明である。死に方を考えるのは、まさに生き方の検討であり、死そのものを考えているわけではない。池田晶子さんの書籍が読みたくなった。


「疎外」とは「メタ認知」ではないか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0023】


【短編小説】マネー・エイジ/星新一
ワイロが当たり前で、お金のやり取りがコミュニケーションの根幹な世界。ある意味では、とてもシンプルで暮らしやすいとも思ってしまった。とは言え。すべてを貨幣に換算するのは、データ至上主義的で、行間がないにも等しいから、やはりフィクションでしか成り立たないとも思った。人はお金のみにて生きるにあらず、ではないのか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】風景/山村暮鳥
圧倒的な「いちめんのなのはな」の連続。一つひとつを読まずども一目で風景が浮かんでくるだろう。そして、その中に一行だけ違う文言が入ってくることで、ニュアンスを生み出している。それにしても、「病めるは昼の月」の不穏さが目立つ。解説でも触れているが、個人的には著者の真意は理解できなかった。

【論考】疎外について/森本哲郎
自己を認識するために、疎外が大事。また外に出すだけではなく、自分の中に改めて取り込む必要があるというのも同意する。ただ、どうやって外化するのか、どうやって自らに取りもどすのかに言及していないため、札上の空論に聞こえてしまうのではないか。


寛容とは相手の理を認めること【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0022】


【短編小説】親善キッス/星新一
地球とよく似たチル屋に訪れた地球人たち。美しい女性たちに迎えられて、口と思われる所へキスするが…。同様に見えるものは、自分と同じと考えがちだが、文化が違えば、同じとは限らず、ましてや惑星が違っているのだから、口に見えても、それは口ではないのかもしれないのだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】青い蝶/ヘルマン・ヘッセ
原文ではなく、翻訳で読んでいるが、とても美しい詩だと思った。また、とても短い言葉の連なりにすぎないが、言葉のもつカ、底力のようなものを感じた。ある一瞬を切り取っただけなのに、強く、その場を想起させ、少なくとも私の心を揺さぶった。

【論考】寛容について/森本哲郎
寛容とは許すこと、と考えていたが、ここでは相手の理を認め、受け入れることと理解した。単純に相手の理も認めると矛盾にもなるとは思うか、何かが正しく、それが絶対的であるとなれば、逆に貴容は成立しないだろう。


死者は自分の死を悲しむことができない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0021】


【短編小説】誘拐/星新一
話としてはよくできているが、オチが予想できたこともあり、ちょっと興醒めしてしまった。それにしても、最近は誘拐の話を聞かない。単に報道されていないだけるかもしれないが、刑事ドラマでは定番のネタだっただけに、隔世の感がある。時代や社会の変化にともなって、小説で扱うテーマも変わってくるのだと再認識した。

【詩・俳句・短歌・歌詞】倚りかからず/茨木のリ子
著者の主張に賛同するものの、詩というよりも、個人の宣言にすぎないように感じる。正直、詩情が足りないと思った。一方で、このように単刀直入に言わなけれなならない時代だったのかも、と想像した。特に女性だったら、はっきりと宜言しないかぎり、誰も耳を傾けてくれなかったのではないか。

【論考】悲しみについて/森本哲郎
「人間は死というものからのがれることのできない悲しい存在」に引っかかってしまった。ただよく読むと、「一瞬、一瞬を、いとしみながら生きること」が大切というメッでージがあり、それについては同意できる。死に近い人ほど、一瞬を大事にできるというのは逆説的すぎる気もする。


誰にとっても通じるもの【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0020】


【短編小説】鏡/星新一
悪魔が出てくるが、あまり存在感はなく、夫婦の悪意を受け入れるだけの存在。最格的には、悲劇的な状況になるが、それも必然的なようで、十三日の金曜日だけで説明されても納得しづらいのではないか。鏡という題名は、悪魔を呼び出す道具といるより、自身を写し出すものという意味だと思う。

【詩・俳句・短歌・歌詞】表札/石垣りん
ちょうど表札をつくらなければ、と思いっていたこともあり、ある意味でタイムリーだった。「ハタから表札をかけられてはならない」というのは、まさにその通りだと思う。それにしても、詩というよりも、独白や宣言のように聞こえた。

【論考】歴史について/森本哲郎
その人によって真理がある、ということに違和感があると言ったら言いすぎなのだろうか。歴史はさておき、真理はそれぞれと言ってしまったら、それは単なる想対主義になってしまう。文化によって大切なものが違うというのはわかるが、真理とは、誰にとってもじ通じるものでなければないたろう。


今は、二元論が成立しにくい時代【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0019】


【短編小説】デラックスな金庫/星新一本
どうして「私」は、全財産をつぎこんで、豪華きわまる大金庫をつくってたのか。すべての財産を使ってしまったら、金庫にしまう財産は無くなってしまうだろう、しかも家を手放してしまっているという。矛盾する状況。でも、最後には、大金庫の実利が明かされる。とは言え、個人的にそれほで腑に落ちたわけではなかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】永訣の朝/宮沢賢治
永訣とは、永遠に別れること、死別。この詩は、妹の死について詠んだだそうだ。解説には「不思議に透明で暗くはない」と書かれている。古い言葉使い、ひらがなばかりなど、何度も目を通して、やっと少し読めた気がした。透明で、暗くないのは、筆者に深い覚語があったからではないだろうか。

【論考】豊かさについて/森本哲郎
物質と精神の対立は、この文が書かれた時代とは達って、現代においては、それほど強力なものではなくなっているだうう。それには、社会が圧倒的に便利になって、物質的に恵まれていることが背景にあると思う。そうした意味では、「2023年の豊かさ」とは何かを考え続けたい。


最大の謎は、なぜ存在し、生成するのか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0018】


【短編小説】冬の蝶/星新一
理想的な未来の世界。人の生活をテクノロジーと電気が支えるというか、完全に依存している。そのため、停電によって、人は何もできず、ただ冬の寒さに震えるのみなのだ。人はもはやサバイブする力を持っておらず、ペットだったサルだけが、力強く生き残っていくのだろう。

【詩・俳句・短歌・歌詞】君死にたまふことなかれ/与謝野晶子
原文を読んだだけでは、少し理解が浅く、現代語訳にも目を通した。弟の安全を思う気持ちが、本当に色濃く感じられる詩だと思う。その理由を、自分なりに考えてみると、「君死にたまふことなかれ」とくり返すことと、身近な家族の様子を直接的に表現しているからのように思えた。

【論考】目ざめについて/森本哲郎
「目ざめ」とは、人生の不条理に気づくこと。そもそも「私」が生ているのは、自らの意志ではなく、完全なる所与の産物である。だからこそ、自己や人間の存在を合理的に説明するのは困難であり、哲学的な問いになるのだと思う。そして、もう一つの謎は、時間とともになぜ存在者は変化、生成していくのか。