ロックンロールを壊そうとして:Destroy Rock & Roll/Mylo(2004)【CD千本ノック 0121本目】


「Destroy Rock & Roll」ということだから、「ロックンロールをぶっ壊しちまえ」ということなのだろう。リリース当初は、ダンス・ミュージック革新の担い手という評価をされていたと記憶している。

このアルバムも、iMacか何かで、制作コストを10万円くらいしかかけずに作ってしまったのではなかったか。アイデア一つで、軽やかにロックンロールを解体しようとし、ヒットにもつなげたということだ。

例えば、タイトル曲の「ロックンロールを破壊せよ(Destroy Rock & Roll)」の歌詞は、マイケル・ジャクソンやマドンナなど、ロック・スターの名前を読み上げるだけなのだが、曲として聴くと、ちゃんと身体がムズムズする。ダンス・ミュージックとして、高揚感をともなったサウンドを鳴らしていたと思う。

ただ、発表から10年以上経った現時点から振り返ってみると、彼の音源はApple Musicにもないし、AmazonでもMP3は展開されていない。このアルバム以外のリリースもなかったようだ。

結果的には、一発屋だったということになるだろう。少なくともこのアルバムは、ダンス・ミュージックとして、今聴いてもそんなに悪くないと思うので残念だ。

それにしても、タイトルを考えるとたちの悪い冗談のような結末である。ロックンロールを壊そうとして、結局マイロ自身が砕かれてしまったのかもしれない。

Destroy Rock & Roll/Mylo(2004)
1. Valley Of The Dolls
2. Sunworshipper
3. Muscle Cars
4. Drop The Pressure
5. In My Arms
6. Guilty Of Love (’05 Version)
7. Paris Four Hundred
8. Destroy Rock & Roll (’05 Version)
9. Rikki
10. Otto’s Journey
11. Musclecar Reform (’05 Mixdown)
12. Zenophile (’05 Version)
13. Need You Tonite
14. Emotion 98.6
15. Soft Rock
16. Peach Melba
17. Destroy Rock & Roll (Tom Neville’s Clean Edit)

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あの場所から遠く離れて:君となら/松たか子(2009)【CD千本ノック 0113本目】


松たか子さんについて、ヨイ女優だとは思っていたものの、歌い手という印象は持っていなかった。ただ、小田和正さんが毎年年末に主催している「クリスマスの約束」というライブ・イベントをテレビ放映で見ていて、歌を歌う彼女に直面した。

正直、シンガーとして一級品のプロだとは思わない。でも、切迫感があるというか、何だか気になる歌声になっていた。どの年だったか記憶はあいまいなのだが、その「クリスマスの約束」で「500マイル」という曲をカバーしていたのも印象深い。

どうやら原曲は、ピーター・ポール&マリー(Peter, Paul and Mary)の「500miles」で、日本語への訳は、あの忌野清志郎は手がけたものらしい。

“汽車の窓に 映った夢よ
帰りたい心 抑えて
抑えて 抑えて 抑えて 抑えて
悲しくなるのを 抑えて”

こんな歌詞を聴くとと、過去に馴染みの場所を離れたときのことを思いだされる(アタクシ自身は親が転勤族だったこともあり、いわゆる地元や故郷と呼べる土地はないのだが…)。決して未来に確信があるわけではないが、新たな場所に可能性をかける、ここではない土地で再起を目指そうとしていたときのことを。

なので、この『君となら』は松たか子さんの「500マイル」を、もう一度聴きたくて買ったのである。「500マイル」については、国内でも多くのアーティストがカバーしているようなので、彼女のバージョンだけにこだわらず、一度聴いてもらいたい。

君となら/松たか子(2009)
1. 君となら
2. きっと伝えて
3. 500マイル
4. 君となら (instrumental)
5. きっと伝えて (instrumental)

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「少年A」とは私たちのことだ:Kid A/Radiohead(2000)【CD千本ノック 0001本目】


レディオヘッド(Radiohead)にとって、4枚目のオリジナルアルバム。個人的な好みではあるが、レディオヘッドで一番好きなアルバムは5枚目の「Hail to the Thief」だ。この作品が2003年に発表されたとき、彼らは「Kid A」から着実に進化し、「より優れたアルバムを世に送り出した」と感じた。

しかし、あれから10年以上経ってみると、レディオヘッドやロック全体にとっても、引き返せないような大きな転換点になったのは、「Kid A」だと思っている。このアルバムによって、すべてが変わってしまった。ロック史上、最も衝撃的で、最も大変革をもたらしたアルバムではないだろうか。

CDが発売されて初めて聴いて感じたのは、「ギターロックバンドがギターを弾くのを放棄し、全く予想だにしなかったような音楽を提示された。ただ、その電子音こそが自分たちが、たった今感じている不安や虚無を言い当てている」ということ。自分たちでは思いつかなかったものの、当時、日々生きている中で真に求めていた欲求を、レディオヘッドが音像にまとめ上げ、見事に突きつけたのだろう。

発売当時に書かれたライナーノーツによれば、「キッドA」という言葉は、「もはやどこでも生まれているはずの“世界最初のクローン人間”を示唆した」ものだそうだ。2018年時点、医学的な意味で、まだクローン人間は生まれていない。それでも、改めてアルバムを聴いていると、「君たちこそがキッドAではないのか?」と、問われているように思えてならないのである。

Kid A/Radiohead(2000)
1.Everything In Its Right Place
2.Kid A
3.The National Anthem
4.How To Disappear Completely
5.Treefingers
6.Optimistic
7.In Limbo
8.Idioteque
9.Morning Bell
10.Motion Picture Soundtrack

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