煙草やグラスはなかったけど「家族の風景」が心に浮かぶ:音タイム/ハナレグミ【CD千本ノック 0025本目】


ハナレグミは、ファンクバンドSUPER BUTTER DOGのボーカルだった永積タカシによるソロユニット。元々アタクシ自身、SUPER BUTTER DOGなども知らなかったのだが、Webサービス上でソーシャル的に露出されることが多く、彼の音楽に興味を持った。

と言うのも、音楽ログのようなサービスでよくジャケットなどを見かけるようになったのが、ハナレグミを知るきっかけだ。よくある周りの友人の推薦やCD屋さんのリコメンド、プッシュなどではないのである。

たまたまのタイミングもあったのだろうが、当時アタクシが利用していた音楽ログサービスでは、やたらとハナレグミとジャック・ジョンソンを聴いている人が多かった。これだけ、音楽好きがたくさん聴いているのだから、きっとヨイ音楽なんだろうと、自分でも手に取ったわけだ(ジャック・ジョンソンを知ったのも、こうした見ず知らずの人のログのおかげ)。

デビューアルバムの『音タイム』聴いてみて、特に気に入ったのが「家族の風景」である。歌詞はとても短いのだが、その中で何度も繰り返し歌われるのが「キッチンにはハイライトとウイスキーグラス/どこにでもあるような家族の風景」というフレーズ。

自分がまだ幼かったころ、家にハイライト(煙草)はなかったし、ウイスキーグラスも見かけなかった。それなのに、ハナレグミに歌われた歌詞を聴くと、とても懐かしい気持ちになるし、アタクシが子どもだったころの家族の姿を自然と思い浮かべてしまう。

さらに少し時間が経ち、自分が妻を持ち、子どもたちが生まれ、新たな家族生活を刻み始めるようになった。そして、「家族の風景」を聴くと、今度は自分の子どもたちとの家族関係に、自然と思いを馳せてしまうのだから、歌の力は恐ろしい。

フジロックでも「家族の風景」は何度も聴いている。ああした野外、山の中で、またハナレグミの生の歌声であのフレーズを聴くと、歌詞がズドンと胸に届き、理由は不明確なまま目が潤んできてしまう。本当に歌の力は恐ろしい。

音タイム/ハナレグミ(2002)
1. 音タイム
2. 雪の中に
3. 明日天気になれ
4. 家族の風景
5. Jamaica Song
6. Wake Upしてください
7. かこめかこめ
8. ナタリー
9. 一日の終わりに

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ニュージーランドの国民的歌手が体現する「音楽の不思議」:Beautiful Collision/Bic Runga【CD千本ノック 0024本目】


ビック・ルンガと言われても、正直わからないと思う。アタクシもそんなに詳しいわけではない(スミマセン)。ありのままに話せば、CD屋さんでリコメンドされていて、「おっと、これヨイな」くらいに割と気軽な気持ちで買ったのだと思う。思うと言っている通り、目の前にCDはあるものの、買ったときの詳しいことは思い出せない。

誰もがビック・ルンガ初心者だとして、簡単にプロフィールを紹介したい。彼女は、中国人の母とニュージーランドの先住民族マオリ人の父から血を引くシンガーソングライター。ニュージーランドでも人口の少ない南島のクライストチャーチで生まれたそうだ。

19歳の時にレコーディングしたファースト・アルバム『Drive』を1997年にリリースし、ニュージーランドのヒットチャートで、1カ月間ナンバー1の座にとどまった。その後、20週間連続してトップ10入りを果たし、ニュージーランド音楽史上、最高の売上を記録したという。

さらに、この『ビューティフル・コリジョン』も前作『Drive』を上回り、再度ニュージーランドで最も売れたアルバムとなっている。日本ではあまり知られていないと思うが、自国ニュージーランドでは国民的な歌手のようである。

国民的歌手の最も売れたCDではあるが、その内容は激しさや派手さとは無縁だ。やや不適切な表現だと思うが、美しい声が淡々と続くアルバムである。「この曲がー」とか、「このサビがー」とか、言いづらい。

それでもアルバム全体としては記憶に残っているし、たまに聴きたくなって引っ張り出していた。そうやって考えると、やっぱり音楽って不思議だなと思う。自分の趣味や一定の基準だけで、好きになったり、気に入るわけではないのだから。

ビック・ルンガについては、この『ビューティフル・コリジョン』しか持っていないし、聴いたこともない。今回、少し調べてみるとその活動は地道に続いているようだ。「音楽の不思議」を改めて体感するためにも、『ビューティフル・コリジョン』後の音にも触れてみたいと感じている。

Beautiful Collision/Bic Runga(2002)
1. When I See You Smile
2. Get Some Sleep
3. Something Good
4. Precious Things
5. The Be All And End All
6. Election Night
7. Honest Goodbyes
8. She Left On A Monday
9. Beautiful Collision
10. Listening For The Weather
11. Counting The Days
12. Gravity
13. Good Morning Baby
14. A Day Like Today
15. Sway

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疾走感に魅了されつつ諸行無常感があふれる:1000のタンバリン/アウトサイダー/Rosso【CD千本ノック 0023本目】


コアファンとは言えないだろうけど、チバユウスケの活動はずっとフォローしてきた。THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、ROSSO、Midnight Bankrobbers、The Birthday、SNAKE ON THE BEACH、THE GOLDEN WET FINGERSなどなど。どのバンドやどの曲も甲乙つけがたいものばかりであるが、アタクシ自身の好みで言うと、この『1000のタンバリン/アウトサイダー』が一番お気に入りのCDだ。大判の紙ジャケットで、見た目もかっこいい。

このCDは2枚組になっており、それぞれに3曲ずつ収録されていて、ダブルシングルという扱いである。なので「1000のタンバリン」と「アウトサイダー」がシングル曲ということになるが、6曲すべて聴くとわかるが、どの曲もクオリティーは高く、通して一気に聴けば短めのアルバムを聴いたくらいの満足感があるはずだ。

音について言えば、正統派ロックンロールという感じで、前ノリできる疾走感がとにかく気持ちヨイ。こんな感触は、『1000のタンバリン/アウトサイダー』ならではと思っているので、アタクシとしてはリリースされて初めて音を聴いたときは「キター」という感じであった。

やや余談になるが、「アウトサイダー」を聴くと、何故か源平合戦を思い起こしてしまう。冒頭のギターが鐘の音のように聴こえるからだろうか。なので、アタクシにとってはこの曲を聴くたびに諸行無常感にあふれてしまうのである。

ちなみに、チバによればこのバンドは、みんながバラバラになってしまったので、活動休止にしているだけで、解散はしていないとのこと。また今後、いつかどこか再始動する可能性はゼロではないようである。そのときは改めて、疾走感あふれるロックンロールを聞かせてくれたらうれしい。あ、もちろん、諸行無常感にも期待したいところである。

1000のタンバリン/アウトサイダー(2004)
Disc1
1. 1000のタンバリン
2. さよならサリー
3. クローバ-
Disc2
1. アウトサイダー
2. Coco
3. サキソフォン・ベイビー

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陰鬱な世界に辟易し、美しさに触れたいと願うなら:Mezzanine/Massive Attack【CD千本ノック 0022本目】


マッシヴ・アタックは、イギリス西部の港湾都市であるブリストル出身の音楽ユニット。そのため、彼らの音楽はブリストル・サウンド、トリップ・ホップと呼ばれる。『メザニーン』発表当初は、ダディーG、3D、マッシュルームの3人編成であったが、音楽性の変化にマッシュルームは不満を感じ、アルバムリリース後にバンドを脱退した。

この『メザニーン』は、多くのリスナーからマッシヴ・アタック最高傑作とも言われる。もちろんアタクシもとても好きなアルバムで、本当に何度も何度も聴いた。それまでは、ダンス・ミュージックやブリストル・サウンドに縁遠かったこともあり、どうしてこんなダークで重い音にひかれるのか、最初はやや戸惑ったのが正直なところである。

ただ、自分の好みを脇に置いて、彼らが鳴らす音の暗さ、重さに、素直に向き合ってみると、1曲目から3曲目までの流れなどは圧巻である。特に「ティアドロップ」の美しさは別格ではないだろうか。ボーカルに天使の歌声とも形容されるコクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーを起用しており、神がかり的なコラボレーションになっている。

ロック好きのアタクシとしては、U2の偉大なる名盤『ヨシュア・トゥリー』の「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム(約束の地:Where the Streets Have No Name)」「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー (終りなき旅:I Still Haven’t Found What I’m Looking for)」「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー(With or Without You)」という、“史上最強のアルバム冒頭3曲”を彷彿させるほどだ(とは言え、なかなかU2を超えるのは難しい)。

ダークさ、重さと美しさを、高次元で両立した『メザニーン』。だからこそ、今聴いてもその輝きは陰ることはないはずだ。陰鬱な目の前の世界に辟易とし、美しさに包まれたいと思うのなら、一度彼らのアルバムに触れてみてはどうだろうか。

Mezzanine/Massive Attack(1998)
1. Angel
2. Risingson
3. Teardrop
4. Inertia Creeps
5. Exchange
6. Dissolved Girl
7. Man Next Door
8. Black Milk
9. Mezzanine
10. Group Four
11. (Exchange)

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名盤揃いのゼップで荒削りな初期衝動を感じる:Led Zeppelin I/Led Zeppelin【CD千本ノック 0021本目】


レッド・ツェッペリンのアルバムは、もちろん全部持っているし、それなりに聴きこんでいる。名盤、名曲が多くて、キャリアを通してこれほどクオリティーを保てたバンドは、本当に数えるほどだと思う。まさに歴史に名を残すグループである。

繰り返しになるが、どのアルバムも粒ぞろいで、どれか一枚を薦めるとなると、結構人によってバラバラになるだろう。ただ、「ロックン・ロール(Rock and Roll)」や「天国への階段(Stairway to Heaven)」という超名曲を擁する『レッド・ツェッペリン IV』(このタイトルは便宜上で、正式なタイトル名は付けられていない)を選ぶ人が多いかもしれない。セールス的にもずば抜けて売れているようだ。

しかしながら、アタクシが「レッド・ツェッペリン、この一枚」を挙げるとすると、彼らのファースト・アルバム『レッド・ツェッペリン I』になる。別にひねくれているわけでも、天邪鬼なのでもない。『レッド・ツェッペリン IV』も大好きなアルバムではあるが、自分にとっては『レッド・ツェッペリン I』の荒削りな感じが、何よりグッとくるのだ。

アタクシ自身として、初めてきちんとレッド・ツェッペリンを聴いたのは、『リマスターズ』というベストアルバムだった。最初の曲が、このアルバムで7曲目の「コミュニケーション・ブレイクダウン」で、そのときの衝撃がずっと心に残っているせいかもしれない。『レッド・ツェッペリン I』には、初期衝動が詰まっている感じがして、あっという間に気持ちを持っていかれてしまうのである。

もちろん、レッド・ツェッペリンに駄作はないと思っているので、これ一枚ではなくすべてのアルバムを聴いてもらいたいのが本音だ。Apple Musicにも『The Complete Studio Albums』といって、9枚のスタジオ・アルバムをまとめたものもあるので、Apple Musicを利用している方は、全曲制覇にチャレンジしてほしいなぁと思う。

Led Zeppelin I/Led Zeppelin(1969)
1. Good Times Bad Times
2. Babe I’m Gonna Leave You
3. You Shook Me
4. Dazed and Confused
5. Your Time Is Gonna Come
6. Black Mountain Side
7. Communication Breakdown
8. I Can’t Quit You Baby
9. How Many More Times

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インドに影響を受けたグルーブの騎士たちが鳴らすロック:K/Kula Shaker【CD千本ノック 0020本目】


当時、アタクシは仙台に住んでいて「ベストヒットUSA」ではないけれど、地元の人が最新ロックを紹介するTV番組があった。クーラ・シェイカーに出会ったのは、その番組だったと思う。新譜として「グレイトフル・ホエン・ユーアー・デッド/ジェリー・ワズ・ゼア」が流れ、これはすごい新人が現れたと感じたのだ。

なので、バイト代が出たらすぐにお金をおろして、CD屋に走った。もちろん、ほかにもお目当てのアルバムはあったが、この『K』を本当に楽しみにしていて、確か発売当日に購入したので、初回限定盤のジャケットをゲットしている。そのころバイト代は、ほぼすべてCD代になっていって、少しだけ本を買うといった感じだった。

初回盤のジャケット。今ではなかなか手に入らないと思うが、もしCDを入手するなら、こちらがおススメ

アルバムを通して曲を聴くと、インドとロックの融合という感じ。「グレイトフル・ホエン・ユーアー・デッド/ジェリー・ワズ・ゼア」を聴くだけでは、インドへの傾倒ぶりをそれほど感じなかったが、全体を通すとかなり異端のロックに聴こえる。クーラ・シェイカーらしさというか、バンドの中心人物であるクリスピアン・ミルズらしさというか。

それから、あまりフィーチャーされることがないように思うのだが、クリスピアンのギタープレイは特筆に値するのではないだろうか。これだけスピーディーで、グルービーなギターが鳴らせるギタリストは、世界にも数えるほどしかいないと思っている。もしこの『K』をはじめ、クーラ・シェイカーの曲を聴く機会があったら、彼のギターにも注目してもらえるとうれしい。

K/Kula Shaker(1996)
1. Hey Dude
2. Knight On The Town
3. Temple Of Everlasting Light
4. Govinda
5. Smart Dogs
6. Magic Theatre
7. Into The Deep
8. Sleeping Jiva
9. Tattva
10. Grateful When You’re Dead / Jerry Was There
11. 303
12. Start All Over
13. Hollow Man (Parts 1 & 2)
14. Ragey One

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今も変わらず海辺に響くあのハスキーボイス:On The Beach/Chris Rea【CD千本ノック 0019本目】


クリス・レアの特徴は、ハスキーボイスとスライドギター。まさにいぶし銀のプレイヤーだ。まだまだ音楽を聴き始めたころのアタクシではあったが、タイトル曲にもなっている「オン・ザ・ビーチ」に出会ってすぐ好きになった。今思えば、玄人好みというか、おっさん臭いというか、10代の男子が好んで聴く曲ではないのかもしれない。

とにかく「オン・ザ・ビーチ」ばかり聴く感じではあったが、彼の渋いハスキーボイスやギタープレーが気持ちよかった。なので、すっかりファンになり、その後に発表された『ダンシング・ウィズ・ストレンジャー』や『ゴッズ・グレイト・バナナ・スキン』、『エスプレッソ・ロジック』、そして『ブルー・カフェ』くらいまでは、CDが発売されると買って聴いていたと記憶している。

ただ、段々と聴く機会も少なくなり、自分が持っていたCDを半分以下に整理したときに、彼のアルバムの大半を手放してしまったようだ。なので、今アタクシの手元にあるクリス・レアのCDは、残念ながら『オン・ザ・ビーチ』のみである。逆から言えば、このアルバムには思い入れがあり、どうしても捨てることができなかった。

だからこそ、リリースから既に30年以上過ぎている今でも、時々ではあるが『オン・ザ・ビーチ』を再生して、ハスキーボイスやギターを楽しんでいる。彼の音楽はそもそも、その時のトレンドや流行を意識した曲やアルバムではないせいか、いつも変わらずアタクシたちの心をきちんと揺らしてくれる。そのときが去年であっても、今日であっても。

On The Beach/Chris Rea(1986)
1. On The Beach
2. Little Blonde Plaits
3. Giverny
4. Lucky Day
5. Just Passing Through
6. It’s All Gone
7. Hello Friend
8. Two Roads
9. Light Of Hope
10. Auf Immer Und Ewig
11. Bless Them All
12. Freeway
13. Crack That Mould

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変幻自在のエレクトロ・ビートに漂う美しきウィスパー・ボイス:LP1/FKA twigs【CD千本ノック 0018本目】


「前衛的なのに穏やかな気持ちになる」「スローで静かなのにゾクゾクする」――。そんな相反する性格を併せ持つアルバムだ。

まず目に飛び込んでくるのは、ジャケットの水色と中心が真っ赤なFKAツイッグスの顔。ややポップでチープなイメージを与えるかもしれない。だが、実際にその音を耳にすると印象は一変する。アーティスティックで美しい歌声が、宇宙のような底が抜けた空間に漂い、拡散し続けるからだ。

この『LP1』において、魅力の核となるのはFKAツイッグスの、ウィスパー・ボイスだろう。アルバムを通して静かな曲調に変化はないが、退屈に感じることも、聴き飽きることも全くない。むしろ誰もが、彼女の声にずっと浸っていたいと感じるのではないか。

そして、彼女の歌声を支えるのは、浮遊感を感じさせながらも変幻自在にリズムを刻むエレクトロ・ビート。この通底音と共鳴するように、FKAツイッグスの声はさらに響き渡るのだ。

2015年のフジロック、大トリとして彼女のライブを見ている。そのアクトでは、美しい歌声だけでなく、独創的なダンスを見せてくれた。CDを聴くだけではわからなかったが、元々ダンサーとしてのキャリアもあるそうで、その身体の躍動によって、声だけではないアートを体現していた。

2015.7.26 SUN WHITE STAGE

LP1/FKA twigs(2014)
1. Preface
2. Lights On
3. Two Weeks
4. Hours
5. Pendulum
6. Video Girl
7. Numbers
8. Closer
9. Give Up
10. Kicks

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狂気の至福を指し示す「世界の音楽」:World Music/Goat【CD千本ノック 0017本目】


これまで誰も聴いたことのない、異形のサイケデリック・ミュージックを鳴らすゴート。北欧スウェーデンはコルピロンボロ出身の3人組だという。バンドに関する情報がほとんどなく、顔は覆面に覆われている。自らの正体を明かさず、外見は怪しい連中にしか見えない。

ただし、音はホンモノだ。アタクシの好みにバッチリ合っていると言った方が、より正確な表現になるだろうか。初めて彼らの音を耳にした際は、少し聴いただけで圧倒的なグルーブに包まれ、「これはアルバムを通して聴かなければならない」と、瞬間的に熱に浮かされてしまったのである。

この『ワールド・ミュージック』が、彼らのファースト・アルバム。呪術的で不穏なリズムが打ち鳴らされ、絡みつくようなギターが響き、叫びにも似た女性ボーカルの声が、さらにその上に重なっていくのだ。

遠い北極圏から発せられたからだろうか、どのサイケデリック・ロックとも違った感触を持ったオリエンタル・サウンドは唯一無二の存在感を示す。誰もが受け入れやすい音ではないが、コアな音楽ファンには、きっと熱狂的に迎えられるはずである。

アルバム全体で曲数も9曲しかなく、時間にしてもわずか37分間。ゴートが紡ぎ出す混沌としたトリップ感に投げ込まれたら、そのアフリカンビートに切り刻まれているうちに、あっという間に最後まで駆け抜ざるをえない。しかも、この狂気の至福を一度体験してしまうと、「もっともっと」とゴート中毒症状に見舞われるだろう。

World Music/Goat(2012)
1. Diarabi
2. Goatman
3. Goathead
4. Disco Fever
5. Golden Dawn
6. Let It Bleed
7. Run To Your Mama
8. Goatlord
9. Det Som Aldrig Förändras / Diarabi

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何百回聴いても飽きない、ある晴れた日の歌声とギター:Complain Too Much/Port Of Notes【CD千本ノック 0016本目】


このアルバムと出会ったのは、渋谷のタワーレコードだった。時期は定かではないものの、タワレコに行くたびにこの紫色の印象的なジャケットが目に入り、ある意味根負けするような感じで購入したのだ。

アタクシが粘り負けしたくらいなので、かなり長い間レコメンドされ続けていたと思う。しかも、日本人アーティイストにかかわらず洋楽コーナーでプッシュされていたのではなかったか。

ポート・オブ・ノーツは、ヴォーカルの畠山美由紀とギタリストである小島大介とのユニットだ。CDを聴いてすぐに心を奪われたのは、穏やかで愁いのある畠山さんの声。これだけ潤いのある歌声はそうそう聴けないと思う。そして、その声を生かすように絡み合うギターが何とも心地よかった。

1999年のリリースということもあって、アタクシ的には、最も繰り返し聴いている日本人アーティストのアルバムになる。それこそ、何度も何度も飽きることなく聴いてきたのだが、よく晴れた休日の午後に聞くことが多かった。何とも心穏やかになるし、そよ風を感じながら散歩しているような気分になれるからだ。

そういえば、自分の結婚式の披露宴で流すBGMにも、1曲目の「ユー・ギブ・ミー・ア・ラブ」を使わせてもらった。また、3曲目の「ウィズ・ディス・アフェクション」は、2001年ころPOLAのCMに使用されていたので、この曲を聴いたことがある人は少なくないはずだ。

デュオとして解散はしていないようだが、今はそれぞれが別々に活動している。アタクシは特にヴォーカリストとしての畠山さんに注目しており、リリースされるものをずっとフォローしてきた。それはそれで、艶のある歌声を堪能して満足している。ただ、名盤である『コンプレイン・トゥー・マッチ』を目の前に差し出されると、ポート・オブ・ノーツにしか鳴らせない音楽があると思うし、新たな音も聴いてみたくなってしまうのである。

Complain Too Much/Port Of Notes(1999)
1. You Gave Me A Love
2. Like I Lay Down
3. With This Affection
4. Its Gonna Never Change
5. 僕の見た昨日
6. Hope And Falsity(Noble)
7. Unknown Language
8. エクリール
9. 風の向こう(Wicked Bass)
10. スーパーラビット
11. Complaining Too Much
12. 雨降る夜

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