スーパー早とちりで三文の徳:Volume 1/BNQT【CD千本ノック 0095本目】


実は、インディー・ロックのスーパー・グループが結成されたと聞き、焦ってCDを購入してしまったのである。

「BNQT」の読み方は「バンケット(Bansuet)」で「宴会」を意味する。ミッドレイクのエリック・プリードの呼びかけによって、フランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノス、バンド・オブ・ホーセズのベン・ブライドウェル、トラヴィスのフラン・ヒーリィ 、グランダディのジェイソン・ライトルらが集結した。

改めてメンバーを列挙すると、次の通りだ。
ミッドレイク:エリック・プリード(G&Vo)、マッケンジー・スミス(Dr)、ジョーイ・マクレラン(G)、ジェシー・チャンドラー(Key)
グランダディ:ジェイソン・ライトル(V&G&Key)
バンド・オブ・ホーセズ:ベン・ブリッドウェル(Vo&G)
フランツ・フェルディナンド:アレックス・カプラノス(Vo&G)
トラヴィス:フラン・ヒーリィ(Vo&G)

初めてこのバンドの情報を見たとき、「うわー、メンバーは自分の好きなバンドばかりだあ」と思ってCDの購入をすぐに決心した。しかし、実際にアルバムを手に取ってよく確認してみると、アタクシが知っているバンドはフランツ・フェルディナンドとトラヴィスだけだった。おかしい…。

そんな早とちりは置いておくとして、ちゃんと彼らの音楽に耳を傾けてみるとヨイ曲ぞろいのアルバムある。スケール感のある「リスタート」という曲から始まり、AOR調の曲やエリオット・スミスやドアーズを思わせる曲など、ポップさ、キャッチーさで勝負するのではなくじっくり聴かせる佳曲ばかりではないだろうか。

日本国内では、あまり話題になっていないようではあるが、スーパー・バンドのアルバムというよりも、粒ぞろいの曲をリリースしたイケてるプロジェクトと理解されたら、もう少し注目が集まるかもしれない。

ちなみに、このバンケットのメンバーは固定化されておらず、今後新メンバーが登場する可能性もあるようだ。そんなメンバー候補に、ルーファス・ウェインライトやノラ・ジョーンズの名前も挙がっている。このアルバムがきちんと評価されることもさることながら、ボリューム2、ボリューム3と続く新しい展開にも期待したいところである。

Volume 1/BNQT(2017)
1. Restart
2. Unlikely Force
3. 100 Million Miles
4. Mind Of A Man
5. Hey Banana
6. Real Love
7. Failing At Feeling
8. L.A. On My Mind
9. Tara
10. Fighting The World

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音楽を鳴らすのは人であり、形式ではない:Kitty, Daisy & Lewis The Third/Kitty, Daisy & Lewis【CD千本ノック 0094本目】


キティー・デイジー&ルイスは、イギリス・ロンドン生まれの3兄弟のロックンロールバンドだ。父親はマスタリング・エンジニアで、母親もポストパンク・バンドのメンバーと、まさに音楽一家である。

『キティー・デイジー&ルイス・ザ・サード』は、2015年にリリースされた名前通りサード・アルバム。2008年にはファースト・アルバムを出しているので、若いながらも結構なキャリアになる。

ただ、アタクシ自身はつい最近知ったバンドなので、このアルバムが彼女たちの初体験だし、正直それほど聴きこんでいるわけではない。

CDのライナーノーツなどによれば、レコーディングにあたり音楽機材は最新のものを利用せず、自分たちで探し出して結構古いアナログ機材を使っているのだとか。

それも、手法としてアナログ回帰を目指しているのではなく、自らが鳴らしたい音を求めているうちに、そうした機材に行き当たると彼女たちは話している。

10代前半から音楽活動を始めて、今でもまだ20代のようであるが、自分たちのスタイルや見え方に耽溺せず、本質的に音楽を探求しているように感じる。

実際に彼女たちの演奏は、形式としてはオールド・ファッションではあるが、その一つひとつの音や声はビビッドで、どこかで聴いたことのある懐かしさと今だから聴ける初々しさのようなものがない交ぜになっていると思う。そして、それがとても新しいものとして響いてくる。一言で表現すると、温故知新バンドなのかもしれない。

そう言えば、キティー・デイジー&ルイスはテレビ番組の『関ジャム』でも取り上げられていた。どうやらライブが圧巻らしいので、このCDだけでなく生の演奏を体感したいと思っている。

Kitty, Daisy & Lewis The Third/Kitty, Daisy & Lewis(2015)
1. Whenever you see me
2. Baby bye bye
3. Feeling of wonder(feat.Mick Jones)
4. No action
5. Good looking Woman
6. Turkish delight
7. It ain’t your business
8. Ain’t always better your way
9. Never get back
10. Bitchin’ in the kitchen
11. Whiskey
12. Developer’s disease
13. I should have known

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おパリのジャケット写真もオシャレなのでアール:Café Bleu/The Style Council【CD千本ノック 0093本目】


いつ、どんな形で聴いたのか定かではないが、ポール・ウェラー初体験はこのザ・スタイル・カウンシルの『カフェ・ブリュ』だった。

初めて聴いて、「これぞオシャレ音楽」と思った。「さすが洋楽だ」とも思った。それくらいアタクシの音楽体験は初級だったし、昔は「洋楽=カッコいい、オシャレ」というイメージが多分にあったのだ。

『カフェ・ブリュ』は確かに、ジャズっぽさもあったり、ソウルやファンクの要素もあって多様な音楽で構成されている。幅広いジャンルが詰め込まれたサウンドは、ムーディーさもあり、聴きやすくオシャレなアルバムだと思う。

実際にポール・ウェラーは、音楽のジャンルにとらわれない様々な音を鳴らしたいからと、ザ・ジャムを解散したようだし、ザ・スタイル・カウンシルというユニットを始めたみたいである。

一方でアタクシは、後々になってポール・ウェラーがザ・ジャムを結成していたと知って、かなりビックリした。パンク・ロックと、このアルバムのようなスタイリッシュな音楽が、全く結びつかなかったからだ。

ザ・ジャムの延長線上にない、ポール・ウェラーの大転換ともいえるこの新たな音楽は、多くの人から受け入れられた。その結果、『カフェ・ブリュ』は彼が発表してきたアルバムの中で最大のセールスを記録しているという(1998年6月付のライナーノーツの記述による)。

アタクシ的に、ポール・ウェラーのキャリアの頂点はザ・ジャムではなく、ザ・スタイル・カウンシルでもなく、ソロ時代だと思っている。なので、何だよ皆んなーと思わなくはないが、売れ行きは時代状況の影響も大きいので、一つの数値情報にすぎない。音楽の価値を絶対的に示すものではないことを、改めて意識したいと思う。

Café Bleu/The Style Council(1984)
1. Mick’s Blessings
2. The Whole Point Of No Return
3. Me Ship Came In!
4. Blue Café
5. The Paris Match
6. My Ever Changing Moods
7. Dropping Bombs On The Whitehouse
8. A Gospel
9. Strength Of Your Nature
10. You’re The Best Thing
11. Here’s One That Got Away
12. Headstart For Happiness
13. Council Meetin’

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ロック史上最もハイテンションのアルバム?:Kick Out The Jams/MC5【CD千本ノック 0092本目】


CDの帯に書かれた表現に従えば、「リアル・パンク・オリジネーター」ということらしい。MC5は、アメリカのデトロイトを拠点にしたロック・バンドである。

アタクシ的にこのアルバムは、誰かに薦められたとかではなく、CD屋の棚で見つけて、何かジャケットも見たことがあるし、バンド名も聞いたことがあるような…という感じで購入した。特に予備知識のないまま、本作を手に取ったのだ。

かなりフラットな気持ちのまま、このアルバムを聴いた。こういう暑苦しい感じの音楽、アタクシは大好きなのである。何でもっと早く聴いていなかったんだろうと思ったほど、すぐに気に入った。

特に、デビュー・アルバムである、この『キック・アウト・ジャムズ』はライブ盤。熱狂するステージ上の雰囲気が伝わってくるせいか、音が聴き手に飛び込んでくる感じがする。もう50年くらい前のパフォーマンスなのに、驚くほどのハイテンション。ロック史上最高かもしれない。

何だか聴いているだけで、こちらの気持ちも高揚してくる。ヤクザ映画を見終えた後、誰もが肩を張って出てくるではないが、朝の登校前、出勤前なんかに聴いて出かけたら、くそったれな世の中も一日中、テンション高く過ごせるかもしれない。

セールス的には、それほど成功したわけではなないようだ。オリジナル・アルバムは3枚しかリリースしていない。それでも、後々のバンドやアーティストに多大な影響を与えたバンドである。デトロイト出身のジャック・ホワイト(ザ・ホワイト・ストライプスなど)も「幼少の頃はMC5の音楽で育った」と語っているようだ。

Kick Out The Jams/MC5(1969)
1. Ramblin’ Rose
2. Kick Out The Jams
3. Come Together
4. Rocket Reducer No. 62 (Rama Lama Fa Fa Fa)
5. Borderline
6. Motor City Is Burning
7. I Want You Right Now
8. Starship

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今作でも天性のキャッチ―さは健在:Life Without Sound/Cloud Nothings【CD千本ノック 0091本目】


『ライフ・ウィズアウト・サウンド』は、クラウド・ナッシングスの4枚目のアルバム。現時点では、これが最新作になる。もともと3人編成のバンドだったが、今作では4人編成になったようだ。そのせいもあってか、音に厚みが増し、バンド・サウンドらしくなっている。

楽曲自体は、前作『ヒア・アンド・ノーウェア・エルス』、前々作『アタック・オン・メモリー』の流れの延長線上にある。曲作りに1年以上の時間を費やしたり、録音にも3週間かけるなど(これまでは、大体1週間で録音していたそう)、バンドとしても念入りに作成したアルバムになったようだ。

ギターとボーカルを担当し、バンドの中心人物であるディラン・バルディは割と直感的な人のようで、その音作りにおいても、あまり戦略性みたいなものは感じない。持って生まれたセンスというか、天性のソング・ライティング能力を生かして、多くの人の心を捉えるキャッチーな曲を作り出してしまうから驚きだ。

それぞれのアルバムごとに、クラウド・ナッシングスとしても結構音楽的な変化が見られるが、楽曲のキャッチーさはデビュー当時からずっと続いていると思う。

今作についても、作品として一定の水準は超えているとは思うものの、ちょっと停滞期かなと感じたのも正直なところ。これからアーティストのキャリアとして、脂が乗ってくる時期だと思うので、次回作にも期待したいところである。

Life Without Sound/Cloud Nothings(2017)
1. Up To The Surface
2. Things Are Right With You
3. Internal World
4. Darkened Rings
5. Enter Entirely
6. Modern Act
7. Sight Unseen
8. Strange Year
9. Realize My Fate
10. Enter Entirely (Acoustic)
11. Internal World (Acoustic)

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青春時代はいつか終わりを迎える:YOU MORE/チャットモンチー【CD千本ノック 0090本目】


『ユー・モア』は、チャットモンチー5枚目のアルバム。リリース当時のバンドは3人だったが、半年後にドラムの高橋久美子が脱退するので、3人編成のチャットモンチーとして最後のアルバムになる。アタクシは、チャットモンチーのバンド・サウンドが好きだったので、やはり脱退は残念だった。

ただ、チャットモンチーが鳴らす音楽の核は、橋本映莉子のボーカルだろう。他のバンドなどと比べても、彼女の歌声は圧倒的だ。そんな彼女の歌声だけを聴いていたら、『ユー・モア』はチャットモンチーらしい、これまで通りのアルバムと言えなくはない。

だがこのアルバムを繰り返し聴いていると、全体的にポップ・ソング寄りになっていて、バンド・サウンドが影を潜めていたように感じる。

「かつてのチャットモンチーではない」とは言わないが、アタクシのようなオルタナティブ・ロックが好みの人間からすると、ややパンチの足りない音になったように思う。疾走感や前のめり感が薄まった印象を持った(リリースされたばかりの頃は、そこまで意識していなかったのだけど…)。

もちろん「少年のジャンプ」のように、爽快なロックもちゃんと聴かせてくれているし、「謹賀新年」では「願い事が一つ叶うのなら/あなたを愛していますように/怪我しても病気になっても/あなたを愛していますように」と、日常の目線で大人の愛情を歌っていたりと、グッとくる曲も収録されている。

とは言え、アタクシにとっては、「チャットモンチー、すげーなー」と単純に興奮できなくなり始めた最初のアルバムだったのかもしれない。

YOU MORE/チャットモンチー(2011)
1. バースデーケーキの上を歩いて帰った
2. レディナビゲーション
3. 謹賀新年
4. 草原に立つ二本の木のように
5. 涙の行方
6. Boyfriend
7. 桜前線
8. Last Kiss
9. 少年のジャンプ
10. 拳銃
11. 余韻

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歌詞が「あ」だけだったり、数字を読み上げるばかりだったり:デザインあ/Cornelius【CD千本ノック 0089本目】


Eテレのテレビ番組『デザインあ』は、子どもがきっかけではあるが、結構楽しく視聴させてもらっていた。「こどもたちの未来をハッピーにする『デザイン的思考』をはぐくむ」をコンセプトにしているが、大人が見てもデザイン的思考が育まれると思うし、実際ハッとすることも多かった。

そのテレビ番組の中で、非常に高い存在感のあった各コーナーの音楽を、一枚のCDにまとめたものが、このアルバムだ。

アタクシは番組のファンだったので、ああコレコレという感じで、復習するように聴いているが、知らない人からするとややわかりづらい音楽になるかもしれない。歌詞が「あ」だけだったり、数字を読み上げるばかりだったり、色の名前を挙げ続けたり、音楽として考えると風変わりな曲だらけだからだ。

だがそこは、さすがのコーネリアス(小山田圭吾)。音のそこかしこで、ちゃんとエッジが立っていて、想像以上に聞き込んでしまうだろう。アタクシ家の場合でも、子どもから「ワン、トゥー、…」と数字を読み上げる「デザインかぞえうた」を見たい、聴きたいと、何度も何度もせがまれた経験がある。どうやら、テンポよく刻まれるリズムの中毒性に魅入られてしまったようだ。

もちろんこのアルバムは、万人向けのCDではないだろう。でも子育て中の家庭だったら、子どもたちに聴かせることで何かヨイ効用があるように思う。テレビ番組の反応を考えると、そんな期待には十分に応えてくれるにちがいないのだ。

デザインあ/Cornelius(2000)
1. デザインあ のテーマ(うた ショコラ)
2. デザインの観察
3. デザインかぞえうた
4. ロングクラッチA
5. 解散!
6. デッサンあ
7. まるとしかく(うた 嶺川貴子)
8. かたちの式
9. はせる
10. Sound Of Composition
11. ない世界
12. やじるしソング(うた やくしまるえつこ)
13. からだのカタチ
14. 1 DAY
15. デザインの人
16. ロングクラッチB
17. おととおんがく(うた 大野由美子)
18. あな
19. 解散!(リバース)
20. モノ目線
21. ぶぶん
22. 思ってたんとちがう
23. カラーマジック(うた salyu × salyu)
24. ロングクラッチC
25. エンディングテーマ

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※個人の感想であり効果・効能を示すものではありません。:It’s Like This/Rickie Lee Jones【CD千本ノック 0088本目】


リッキー・リー・ジョーンズは、3枚ほどアルバムを持っている。ただアタクシが彼女の音楽を、いつ、どんなきっかけで聴くようになったのかは定かではない。加齢によって、記憶力に障害が出てきのではないはずだ。自然に、そう大変自然に、アタクシの音楽生活に忍び込んできたのである…。

そんな彼女のアルバムの中でも、この『イッツ・ライク・ディス』はアタクシ的にかなりヘビー・ローテーションな一枚である。派手さはないし、どちらかと言えば自分の好みに近い音や声ではないのが正直なところだが。

それでも一度聴き始めると、何だか不思議と落ち着くというか、心地ヨイ気分になるので、事あるごとにCDラックから取り出して繰り返し聴いてきた。きっとリッキー・リー・ジョーンズの歌には、鎮静剤のような効果があるのだ。※個人の感想であり効果・効能を示すものではありません。

先に言った通り、恥ずかしながら、いつ入手したのかよく覚えてはいない。恐らく15年以上は聴き続けてきただろう。これだけ長く愛聴してきたCDではあるものの、このアルバムの魅力を言語化しようと試みても「鎮静剤みたい」くらいしか頭に浮かんで来ないのである。お恥ずかしい限りだ。

そんな言葉足らずではあるが、もしリッキー・リー・ジョーンズの鎮静効果が気になる方は、一度『イッツ・ライク・ディス』を聴いてみてはどうだろうか。※個人の感想であり効果・効能を示すものではありません。

It’s Like This/Rickie Lee Jones(2000)
1. Show Biz Kids
2. Trouble Man
3. For No One
4. Smile
5. Low Spark Of High Heeled Boys
6. On The Street Where You Live
7. I Can’t Get Started
8. Lazy River
9. Someone To Watch Over Me
10. Cycles
11. One Hand, One Heart

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全曲一発録りの奇跡的な昭和歌謡アルバム:歌で逢いましょう/畠山美由紀【CD千本ノック 0087本目】


全曲、一発録りだったと聞いてビックリした。一方で、「ああ、だからこんなアルバムになったんだ」と思った。それくらい聴き手に強い印象を与える一枚だったし、畠山美由紀の歌に鬼気迫る感じがあったのだ。

この『歌で逢いましょう』は、布施明、ちあきなおみ、テレサ・テン、八代亜紀、藤圭子、美空ひばり、森昌子、研ナオコらの昭和の曲を、畠山美由紀がカバーした「演歌、歌謡の名曲集」である。これらの名曲を、彼女の絶大な歌唱力を使って、歌いきったから完成したアルバムのように感じていた。

ただ、偶然「歌で逢いましょう」の特設サイトに掲載されていたSpecial Interviewを読んで、プロデューサーである沢田穣治が果たした役割や、それぞれの曲における演奏の影響の大きさや重要さを知った。また、彼女自身も沢田から「リスクを背負って歌っている」と評されている。

だからこそ、このアルバムもある意味で奇跡の産物(どんなモノもコトも、存在することは奇跡的であるのだが…)だったのかもしれないと思うようになった。歌が上手に歌えれば、ヨイ曲、ヨイアルバムが生まれるわけではないのだろう。アタクシは単に聴かせてもらっているだけだが、本当に音作りは奥が深い。

ちなみに、オリジナル曲と『歌で逢いましょう』バージョンを、きちんと比べたわけではないのだが、基本的にどの曲もオリジナルに勝るとも劣らないクオリティだと思っている。

「さすが、畠山美由紀さんだぜ」という感じではあるが、たまたま「おんな港町」を畠山美由紀と八代亜紀が一緒に歌っている動画(今回、その動画を探したが見つからなかった…)を見る機会があった。

その時は、八代亜紀の方がリズムがシャープで、グルーブもあって格好よかった。自身の持ち歌で、歌っている回数も雲泥の差ではあるだろうが、「八代亜紀、恐るべし」と思って後々彼女のCDも購入したのである。

歌で逢いましょ/畠山美由紀(2014)
1. シクラメンのかほり
2. それぞれのテーブル
3. 時の流れに身をまかせ
4. 花の夜舟
5. おんな港町
6. 圭子の夢は夜ひらく
7. 悲しい酒
8. 越冬つばめ
9. かもめはかもめ
10. 紅い花
11. 歌で逢いましょう

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「走り出した足がとまらない」とか言ってみたかった:告白/チャットモンチー【CD千本ノック 0086本目】


『告白』は、チャットモンチーとして4作目のアルバム。前作『生命力』で、アタクシ的には、彼女たちのオルタナティブ・ロックはやりきった感があった。そのせいかはわからないが、今作ではアルバムを通して少しポップさが強くなったと感じる。

もちろん、これまで鳴らし続けてくれていたチャットモンチーの絶妙なバンド・サウンドがなくなったわけではない。それでも、骨太だったサウンドから、一つひとつの曲が改めてシェイプされて、ややキラキラしたものに変化していると思う。

そんな中でお気に入りなのは、「SEA BREEZE」のCMソングにもなった「風吹けば恋」だ。「走り出した足がとまらない/行け! 行け! あの人のところまで/誰にも抜かれたくないんだ/風! 風! 背中を押してよ」とシャウトされた歌詞は、本当にうまく恋心をすくい取っているなーと感じた。年甲斐もなく切ない気分になる。

また、かなり余計なお世話ではあるが、ジャケット内の彼女たちの写真も、アーティストっぽく、見た目もあか抜けていた。以前の地方OL感は、完全に払しょくされたのではないだろうか。

楽曲面においても、メンバー全員がボーカルを取るなど、新しい挑戦をしている部分は買いたいところ。ただ、餅は餅屋というか、やはり橋本絵莉子の声は特別なモノであることを再認識するのだった。

告白/チャットモンチー(2009)
1. 8cmのピンヒール
2. ヒラヒラヒラク秘密ノ扉
3. 海から出た魚
4. 染まるよ
5. CAT WALK
6. 余談
7. ハイビスカスは冬に咲く
8. あいまいな感情
9. 長い目で見て
10. LOVE is SOUP
11. 風吹けば恋
12. Last Love Letter
13. やさしさ

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