<意味>
「Creating Shared Value」の略。環境問題や貧富の格差といった社会問題の解決と、企業自身の事業に関する利益や競争力の向上を両立させようとする経営コンセプト。「共通価値の創造」「共益の創造」などと訳される。
企業戦略論の第一人者として知られる、米ハーバード大学教授のマイケル・E・ポーター氏が、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の2011年1月・2月合併号に共著で発表した論文『Creating Shared Value』で提唱した。同氏が2006年の論文で言及した「戦略的CSR」を、さらに発展させた考え方である。
<解説>
CSR(企業の社会的責任)との対比で語られることが大半であるが、CSRのように目的を社会貢献に絞るのではなく、CSVでは企業が行う事業にとっても価値を生み出す活動でなければならない。資本主義の内実を変化させながら、利益を生み出していく企業活動とも言える。
企業においては、社会全体の問題を解決しようと努力することで、事業継続に有効な面がある。顧客や取引先など、多くのステークホルダーから評価を受ける上、利益を出し続けることで長期的な事業に育て上げ、企業を支えることにつながるからだ。
そもそもCSRは、企業活動によって生じた社会に対するマイナスの影響を、軽減させることが狙いである。結果として、企業イメージや評判は向上するかもしれないが、必ずしも社会全体をよくするわけではない。そのため、CSRの発想を進展させ、社会貢献と利益の双方を追求する必要性が浮上していた。
厳しい財政状況や突然の大災害、政情不安などから、国家や政府の力が限定的になっている世界の現実もCSV推進の後押しになっている。そうした社会情勢からも、企業は社会問題の解決に向けて、ますます積極的に行動していくことが求められているのだ。
<展望>
特に東日本大震災では、企業が物資や義援金などを単に送るのではなく、長期間にわたる炊き出しや一手間かけた物資提供など、自らの事業に根ざし、成長を見込んだ被災地支援も行われた。これは、社会貢献という“コスト”に事業で稼いだ利益を回すといった考え方から、競争力を磨く投資の場として考えられるようになった現われの1つだろう。
また、CSVは本来企業に適用される概念ではあるが、個人の視点に置き換えた「パーソナルCSV」というコンセプトも、これから広がる可能性がある。具体的には、ニーズのある個人同士を結ぶ相互的なネット上のサービス。「お使い」のようなちょっとした用事を頼みたい人と請け負いたい人を結ぶといったものだ。
こうした動きやサービスは、ソーシャルメディアとも親近性が高く、相性がよいため、今後新たなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)として展開されることも考えられる。