【気になるマーケティング用語】キュレーション


<意味>
もともとの語源は、博物館や美術館の展示物を決定したり、展覧会の企画を立案する「キュレーター(curator:日本語訳では学芸員)」である。キュレーターの仕事から転じて、インターネット上などにあふれる膨大な情報を整理し、新たな意味づけなどを行い、多くの人と共有することをキュレーションと呼ぶようになった。

断片的な情報をある切り口で束ねたり、これまで有効活用していなかった情報を精査して、新たな意義を見出したりするため、キュレーションは「編集」と言い換えられるだろう。編集行為であることからも、人手で情報を収集、整理することが前提となっている。検索エンジンを使い、記事などを機械的に抽出して集約する場合は「アグリゲーション」と言い分けることもある。

<解説>
情報量が加速度的に増えているのはインターネットだけでなく、企業の社内データでも同様だ。最近では、企業内に保存されている大量の情報を再編集して、ビジネスにおいて新たな活用法を見いだす行為にも、この言葉が用いられるようになってきた。インターネット上の用語と区別し、「リアルキュレーション」という呼称が使われる場合もあるようだ。

具体的には、いわゆる“売れ筋”ではないロングテール商品にスポットライトを当てることで、認知度の低い商品の価値を改めて訴求するといったことや、従来は使ってこなかった既存のデータを再度整理、収集し直し、新たな営業や企画の提案に活用するといった例がある。

また、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の分野では、気に入った画像をクリップして共有する「Pinterest」がキュレーション系と位置づけられる。このサービスは、他サイトへのトラフィック誘導率が高いSNSだという調査結果もあり、ソーシャルメディアにおけるマーケティング促進の起爆剤になるかもしれないとの期待も大きい。

<課題>
昨今、ビッグデータという観点からも、マーケティング活動での情報活用が盛んに叫ばれている。そこで一番のネックになっているのが、「大量の情報を誰が分析するのか」ということ。仮に、情報処理が専門であるITベンダーにデータ分析を依頼したとしても、どのような視点で、どうやって処理するかまで、すべてを任せられるわけではない。

データ分析を最適化するうえでは、ビッグデータを分析する人、キュレーションを行う人が、データ処理に強いのはもちろん、自社の業務やビジネスモデルを深く理解している人物であることが欠かせない。つまり、IT(情報処理)とビジネスのどちらにも長けた人材だ。特にリアルキュレーションを企業が実践するには、まず人材の発掘、育成が急務と言えるだろう。