今はもう店がなくなってしまったが、銀座にあったHMVによく通っていた。そこでたまたま見たHMVの冊子の中に、「注目すべき男性SSW」みたいなページがあって、ピート・ヨーン、ライアン・アダムス、デヴェンドラ・バンハート、スフィアン・スティーヴンスの4人が紹介されていた。
そもそも「SSWって何のこと?」などと、略語に戸惑いながら(シンガー・ソングライターの略だった)、4人とも全く知らないアーティストだったので、すぐに店舗で1人ひとりCDを探し始めた。しかし、どれも在庫がなく、「どんな販促冊子やねん」と思いながら、後日改めてあちらこちらに足を運んで(結局、HMVのほかの店舗にもあまり在庫がなかった…)、4人4枚のCDを探し出した。
そのうちの1枚が、この『ミュージックフォーモーニングアフター』だ。これは、ピート・ヨーンのファースト・アルバム。派手なメロディー展開などとは縁遠く、淡々と自分の声で歌い上げる正統派のアメリカン・ロックが鳴っている。ほとんど事前情報が頭に入っていなかったこともあり、一聴してベテラン・シンガーの仕事に思った。それくらい、新人とは思えない完成度の高いアルバムだった。
ライナーノーツを読むと、彼の楽曲づくりは「ドラムから始まる」とちょっと変わっている。まずはビートありきでリズムを頭に思い浮かべ、そこから曲を作り上げていくのだそうだ。それだからか、どの曲も小気味よく、前にスルスルと進んでいく感覚がある。
また、シンガー・ソングライターらしく声自体もヨイのだが、少し投げ出すような歌い方も、アタクシにとっては魅力の1つ。リズミカルなメロディーにのったピート・ヨーンのラフな歌声は、色気が漂うのである。
ちなみに、このピート・ヨーン。特にデビュー当時は「ブルース・スプリングスティーン以来の逸材」との声もあり、本国アメリカでは評価が高いようだ。一方、日本ではあまり知名度がないままで、最近のリリースは国内盤の発売もない状態である。アタクシ的には、出会ってからずっと指折りのシンガー・ソングライターなので、こうした状況が残念でならない。
musicforthemorningafter/Pete Yorn(2001)
1. Life On A Chain
2. Strange Condition
3. Just Another
4. Black
5. Lose You
6. For Nancy (‘cos It Already Is)
7. Murray
8. June
9. Sense
10. Closet
11. On Your Side
12. Sleep Better
13. Ez
14. Simonize
15. Knew Enough To Know Nothing At All*
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