DJシャドウを音楽史に刻む珠玉の名作:Endtroducing……/DJ Shadow【CD千本ノック 0014本目】


どうしてDJシャドウを手にしたのか、自分でもよく覚えていない。ジャケ買いだったのか、ロック以外の少し別のジャンルを聴いてみようとしたのか――。だからいつどこで、この「エンドトロデューシング……」に初めて触れたのか、正直に言って記憶がないのだ。

それでも、このアルバムの音を聴いたときの衝撃はよく覚えている。当時、アタクシにはギターロック至上主義の考えがあって、それほどヒップホップを聴いていたわけでもなかったはずだ。だから、ジャンルや音楽手法にやや距離感があったものの、美しい旋律、メランコリックさ、ビート感、どれもが今まで聴いたことのない、磨き抜かれた音を響かせていた。

20周年記念盤が出るほど、今ではもう「古い昔のアルバム」であるが、アタクシにとってはヒップホップだけでなく、音楽シーンに残る傑作だと思っている。これからも色あせることなく、多くの人を魅了し続けるアルバムではないだろうか。

「エンドトロデューシング……」は、DJシャドウにとってファーストアルバム。ずっと彼のリリースを追いかけた身としても、残念ながらこれを超える作品は出せていないように思う。特にインタビューなどを読んだわけではないが、ある種の十字架になってしまっていなかと感じる。それほど圧倒的な、歴史に残る音の記録なのである。

Endtroducing……/DJ Shadow(1996)
1. Best Foot Forward
2. Building Steam With A Grain Of Salt
3. The Number Song
4. Changeling **Transmission1
5. What Does Your Soul Look Like (Part 4)
6. (no title)
7. Stem / Long Stem **Transmission2
8. Mutual Slump
9. Organ Donor
10. Why Hip Hop Sucks In ’96
11. Midnight In A Perfect World
12. Napalm Brain / Scatter Brain
13. What Does Your Soul Look Like (Part 1 Blue Sky Revisit) **Transmission 3
14. Red Bus Needs To Leave
15. In/Flux


乱反射する音が私たちを照らす先:Mirrored/Battles【CD千本ノック 0013本目】


ジャケットには鏡張りの部屋に置かれたドラムなどの演奏道具。少し大げさに言ってしまえば、異様な光景とも思えなくもない。

ロッキング・オンでプッシュしていたこともあり、彼らのCDを手に取ったと記憶している。それでも、最初はその音にピンとこなかったのが正直なところだ。せっかくCDを買ったものの、1回聴いてそれでおしまいという感じになってしまっていた。

ただ、そんな感じで過ごしていたが、気づくとアタクシにとって重要なアルバムになっていた。矛盾して聞こえるかもしれないが、やはり音の力なのかもしれないなと思う。

当初ピンとこなかったバトルズであるが、今やとても注目しているアーティストである。アルバム発売の情報を聞くと、どんな音を届けてくれるのだろうと気になっている。というのも、とても身体性の高い音楽を鳴らし続けているからだ。バトルズの音を聴くと、そのままやり過ごすのは難しい。誰もが踊り出さずにはいられないのではないだろうか。

この『ミラード』というアルバムの中で、何と言っても注目すべきなのは2曲目の「アトラス」だ。各音楽メディアが髙く評価したのはもちろん、何とも心地よくのれる曲なのである。

本来なら、アルバムのすべてを聴いてもらいたいのであるが、どうしてもエッセンだけ知りたいという方は、この曲を聴いてみてほしい。YouTubeのリンクも掲載しておくので、ノリノリになっても困らない場所で聴いてみて、彼らの音の力を感じてみてもらいたい。

Mirrored/Battled(2007)
1. Race:In
2. Atlas
3. Ddiamondd
4. Tonto
5. Leyendecker
6. Rainbow
7. Bad Trails
8. Prismism
9. Snare Hangar
10. Tij
11. Race:Out
12. Katoman


今でも頭になり響くピンク色のギターノイズ:This Is Our Time/The Big Pink【CD千本ノック 0012本目】


『ディス・イズ・アワー・タイム』は、イギリスのロンドンで結成されたインディー・ロックバンド、ザ・ビッグ・ピンクの日本独自企画盤のEPである。日本限定リリースということもあってか、今では恐らくCDも中古しかなく、Apple MusicやAmazonでも配信されていないようだ。

ザ・ビッグ・ピンクというバンド名は、70年代に活躍したザ・バンドのデビューアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』から取られたという。もちろんアタクシは、このザ・バンドのアルバムも好きだし、後世に残る名盤だと思っている。

さて、肝心のザ・ビッグ・ピンクであるが、ポストロックに位置づけられるようだ。アタクシはカテゴリーを気にせず(あるいは、わからずに)聴いているので、ポストがついてもつかなくても構わない。要はノイジーなギターの旋律と耽美なメロディーがとても気に入っている。1曲目の「ベルベット」を聴いたときなどは、圧倒的な衝撃を受けて、このCDを何度も繰り返し聴いた。

自分にとってはかなり特別なバンドで、このEPだけでなく、ファーストアルバムである『ブリーフ・ヒストリー・オブ・ラブ(Brief History of Love)』なんかも、心に残って忘れられないCDになっている。どちらのCDジャケットも格好よかったりと、ビジュアル面でのインパクトもあるが、性格が根暗なためだろうか。

アタクシ個人にとって、ザ・ビッグ・ピンクはトップランクにいるバンド、アーティストなのである。だが、世間的にはそれほど売れていないし、あまり知られていないのが現実。『ブリーフ・ヒストリー・オブ・ラブ』に収録されている「ドミノス(Dominos)」がややヒットしたくらいかもしれない。「何だかもったいないな」というな思いが強く、微力ながらも強くプッシュしたいのだ。ドスコイ、ドスコイ。

This Is Our Time/The Big Pink(2009)
1.Velvet
2.Too Young To Love
3.Crystal Visions
4.Introduction To Awareness
5.Velvet(BDG Remix By Gang Gang Dance)
6.Velvet(Mount Kimbie Remix)
Video 1.Too Young To Love
Video 2.Velvet


無闇矢鱈のハイテンションサウンド:Relationship Of Command/At The Drive In【CD千本ノック 0011本目】


残念ながらアット・ザ・ドライブインのライブを生で見たことはなく、2000年のサマーソニックで大きな話題になったときに聴き始めた。ロッキング・オンが猛烈プッシュするレビューを読んで、これは音を聴かなくちゃと思い、『リレーションシップ・オブ・コマンド』を入手したのである。

カテゴリーとしては、ポスト・ハードコアに分けられるようで、激しくシャウトするボーカルや、アグレッシブすぎるロックサウンドが特徴的である。しかも、ただ耳に残るというだけでなく、「なんでキミたちはそんなに切れているんだよ」という感じなのだ。

『リレーションシップ・オブ・コマンド』でメジャーデビューしたばかりで、ある意味新人ではあったのだが、無闇矢鱈にハイテンションで、彼らならではのキレキレの音を鳴らしていたからこそ、がぜん注目が集まり、アッという間に人気バンドになったのだろう。

ただバンドとしては、リリースの翌年、2001年3月に突然の無期限活動休止を発表する。バンドの中心人物であったセドリック・ビクスラーとオマー・ロドリゲスらは、マーズ・ヴォルタを結成し、そちらの活動ばかりで、アット・ザ・ドライブインは事実上の解散状態になっていた。

しかし2017年、実に17年ぶりにアルバム『インターアリア』をリリース。マーズ・ヴォルタもそこそこフォローしていたけれど、あまりのれずに悲しい思いをしていた一人のリスナーとしては、実にうれしいサプライズだった。アット・ザ・ドライブインの切れ芸が好きだという人は、このニューアルバムも手に取ってもらえるとうれしい。

Relationship Of Command/At The Drive In(2000)
1.Arcarsenal
2.Pattern Against User
3.ne Armed Scissor
4.Sleepwalk Capsules
5.Invalid Litter Dept.
6.Mannequin Republic
7.Enfilade
8.Rolodex Propaganda
9.Quarantined
10.Cosmonaut
11.Non-Zero Possibility
12.Extracurricular
13.Catacombs


その名も知らず、ダイナミックな音像に包まれる:A Memory Stream/The American Dollar【CD千本ノック 0010本目】


多分、誰も知らないバンドだと思うのだが、実はアタクシもよく知らないのである。今はなき渋谷のHMVであれこれCDを物色していたとき、視聴コーナーに並んでいたのが、アメリカン・ダラーの『ア・メモリー・ストリーム』だ。

その当時は、今よりももっと、ギターを中心としたロックロックした音楽ばかり聴いていたと思うので、アタクシ的にはちょっとストライクゾーンから外れていたのだが、視聴して気持ちよかったので購入した。

ライナーノーツによれば、アメリカン・ダラーはニューヨーク州クイーンズ出身のリチャード・クボロとジョン・エマニュエルの2人が2005年に結成したインストゥルメンタルのユニット。この『ア・メモリー・ストリーム』は3作目に当たり、2015年までに6枚のスタジオ・アルバムをリリースしているようだ。

「ようだ」という通りで、アタクシ自身がこのバンドをほとんどフォローしておらず、持っているCDも『ア・メモリー・ストリーム』のみである。個人的にはある種匿名的なバンドではあるが、メランコリックでダイナミックな音像がとても印象に残っており、時々思い出しては音源を引っ張り出してドラマチックなメロディーに浸ったり、ちょっとマニアックなロック好きの友人に薦めたりしてきた。

もちろん万人受けするような音楽だとは思わない。それでも、既存のロックやポップスに少し飽きてきてしまった人、人の声抜きで美しいアンビエンスに包まれたいという人には、一聴の価値があるのではないだろうか。

A Memory Stream/The American Dollar(2008)
1.The Slow Wait (Part One)
2.The Slow Wait (Part Two)
3.Call
4.Bump
5.Intermission
6.Lights Dim
7.Transcendence
8.Our Hearts Are Read
9.Anything You Synthesize
10.We’re Hitting Everything
11.Starscapes


スウィートな名曲に意外なエピソード:Slowhand/Eric Clapton【CD千本ノック 0009本目】


フジテレビのドラマの主題歌になって聴いたのが、出会いだったように思う。出会いと言っても、耳にしていたのは「ワンダフル・トゥナイト」だけで、この曲が聴きたくて『スローハンド』というアルバムを知ったのだ。

実際にアルバムを通して聴いてみると、クラプトンとして既にお馴染みの曲もあるにはあったが、アタクシにとっては『スローハンド』=「ワンダフル・トゥナイト」という図式が成り立ってしまっている。特にこの曲が生まれたエピソードが面白い。

ある夜、パーティーか何かに夫婦で出かけるクラプトンが、妻の準備が手間取っているのを見ていて、「今日の君は素敵だからさぁ、もう早く行こうよ」と急かす気持ちからできた曲だという。

歌詞や曲調からすると、スウィートな妻やパートナーへの賛歌であるが、事の発端はそうではなかったようだ。アタクシたちが名曲と思う曲でも、こんな意外な背景や状況が端緒になっていたとすると、人間って多面的だなあと思ってしまう。ラジオか何かでこのエピソードを聞いたとき、エーと愕然としつつも、妙に納得してしまったのだ。

Slowhand/Eric Clapton(1977)
1. Cocaine
2. Wonderful Tonight
3. Lay Down Sally
4. Next Time You See Her
5. We’re All The Way
6. The Core
7. May You Never
8. Mean Old Frisco
9. Peaches & Diesel


30年以上経っても届くカーマの神通力:Colour By Numbers/Culture Club【CD千本ノック 0008本目】


「カーマは気まぐれ(Karma Chameleon)」や「イッツ・ア・ミラクル」を収録したカルチャー・クラブの2作目。発表当時、アタクシの母親もボーイ・ジョージを知っており、世間を席巻するほど流行っていた印象がある。

アタクシもまだ若く、それほど金銭的な余裕がなかったため、レンタルレコードをテープにダビングして聴いていたと記憶している。そのテープがどこかに行ってしまって、何となくカルチャー・クラブは流行物だからヨイかと、縁遠くなっていた。

それから何十年も経って、何だか無性に聴き直してみたくなり、CDをアマゾンやタワレコで探すも在庫がなく、やや途方に暮れていた。そんな時に期間限定で再販されたリマスター盤を入手(しかも低価格)。単純な反応だけど、やっぱり「カーマは気まぐれ」は懐かしかった。

もちろん悪いアルバムだとは思わないものの、キャッチ―な曲とそうでもない曲とが混在しており、アルバム全体を通して聴くと、流してしまう部分も正直ある。シングル級の何曲かを全体にちりばめて、CDパッケージとして買ってもらう、80年代らしいアルバム構成と感じた。

ただ、この『カラー・バイ・ナンバーズ』をiPodに入れて、車で再生していたところ、たまたま「カーマは気まぐれ」が流れた。初めて聴いたはずの息子がものすごく気に入って、「もう一回聴きたい」を連発。その後も、車に乗るたびにこの曲をせがまれ、連続で5回も10回も聴いたことが何度もあった。30年以上経っても通用するヒット曲やポップ・アーティストの神通力には、驚かずにはいられない。

Colour By Numbers/Culture Club(1983)
1. Karma Chameleon
2. It’s A Miracle
3. Black Money
4. Changing Every Day
5. That’s The Way
6. Church Of The Poison Mind
7. Miss Me Blind
8. Mister Man
9. Stormkeeper
10. Victims


ロック史だけでなく自分の人生も変えた:Nevermind/Nirvana【CD千本ノック 0007本目】


今さら語る必要もないくらい有名で、ニルヴァーナを代表する『ネバーマインド』。グランジの発信源と言われるアルバムだ。アタクシ個人として最も好きなアーティストは、ニルヴァーナである。ニルヴァーナの前にニルヴァーナなし、ニルヴァーナの後にニルヴァーナなし。

彼らを初体験したのはこのアルバムだったと思う。今でもカート・コバーンはマイヒーローであるが、初めて音を聴いたときに、もう彼は亡くなっていた。曲を聴いてスゴイと思った興奮と、もう新曲は聴けないのだという諦めがないまぜになっていたのを覚えている。

当時の若者のアンセムのようになっていた「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」は、サウンドとしてちょっとポップすぎる印象がある。それでも、やっぱり「Hello, hello, hello, how low?」という歌詞は、その時のアタクシたちの気持ちを代弁してくれたのではないだろうか。

自分自身の責任が大きかったのかもしれないが、少なくともアタクシは、未来に対して大きな希望や夢など持てない状況だった。何だか上手くポジティブになれない自分を、この曲やニルヴァーナは許してくれたように感じていたし、ともに苦しんでくれたように思ったのだ。

自分の好みだけで言ってしまえば、サードアルバムの『イン・ユーテロ』の方が好きだ。それでも、ニルヴァーナを聴くよう薦めてくれた友人やこのアルバムに出会わなければ、自分のロック生活が縮小し続けたのは間違いないだろう。そのころ、音楽に喜びを見いだせなくなっていた。

このアルバムは、音楽(特にロック)の可能性を改めて感じさせてくれたし、「ロックって気持ちヨイよね」と純粋にワクワクできた。それだからこそ、『ネバーマインド』はロック史上とても大きな影響を与えたアルバムというだけでなく、アタクシの個人史においても非常に重要で、まさに分水嶺になったアルバムなのである。

Nevermind/Nirvana(1991)
1. Smells Like Teen Spirit
2. In Bloom
3. Come As You Are
4. Breed
5. Lithium
6. Polly
7. Territorial Pissings
8. Drain You
9. Lounge Act
10. Stay Away
11. On A Plain
12. Something In The Way


シャノンの声と土臭いサウンドに酔いしれる:Soup/Blind Melon【CD千本ノック 0006本目】


ブラインド・メロンのセカンド・アルバム『スープ』を買ったのは確か、バイト先にいた1歳か2歳年下の女の子に薦められたからだったと思う。それほどロック好きな人ではなかったけど、「最近ハマってるんですよー」とか言われ、半信半疑のまま購入したのだ。

正直、それほど期待していなかった。だが聴いてみると、派手さはないけど、良質なロックを聴かせくれる。何よりボーカルのシャノン・フーンのハイトーンボイスが印象的だし、心地よかった。一発で愛聴盤になった。

ただ残念なことに、シャノン・フーンは、『スープ』を出した年に、ツアー・バスの中でコカインの過剰摂取で亡くなっている。彼の声は、デビューアルバムの『ブラインド・メロン』、未発表音源などを集めた『ニコ』(ニコはシャノン・フーンの子どもの名前)の3枚のアルバムでしか聞けない。

活動期間も短く、オリジナルアルバムも数枚しかないバンドではあるが、アタクシにとって好きなアーティストのベスト10に入るくらい気に入っている。シャノン・フーンの声はもちろん、カントリーやブールスを絶妙に感じさせる土臭いサウンドは、彼らにしか鳴らせないものだろう。

今回、あれこれ調べていたら、2006年にトラヴィス・ウォレンというボーカリストを迎えて、再始動していたようだ。2008年にはアルバム『フォー・マイ・フレンズ』をリリースしているという。シャノン・フーンの声ではないが、あのグッドサウンドが復活しているようなので、『フォー・マイ・フレンズ』を聴いてみたいと思う。

Soup/Blind Melon(1995)
1. Hello Good Bye~Galaxie
2. 2×4
3. Vernie
4. Skinned
5. Toes Across The Floor
6. Walk
7. Dumptruck
8. Car Seat(God’s Presents)
9. Wilt
10. The Duke
11. St.Andrew’a Fall
12. New Life
13. Mouthful Of Cavities
14. Lemonade
15. Soup


「選挙の日」という歌がポップスになるのか今でもわからない:So Red The Rose/Arcadia【CD千本ノック 0005本目】


1985年に発表されたアーケイディアの『情熱の赤い薔薇(So Red The Rose)』と言っても、「何だそれ?」という人がほとんどかもしれない。もう30年以上前のアルバムということもあるだろうが、アーケイディア名義はこれ一枚で、セールスも全英で30位、全米でも23位とそれほどヒットしたわけではないからだ。

それでも、アーケイディアのメンバーはデュラン・デュランのサイモン・ル・ボン、ニック・ローズ、ロジャー・テイラーの3人。同時期に、やはりデュラン・デュランのジョン・テイラーとアンディ・テイラーらが、ロバート・パーマーをボーカルに立てて、パワー・ステーションという別のバンドを結成していたと言ったら、少し昔を思い出してくれる人がいるだろうか。

当時のアタクシは、ロックを聞き始めたばかりの頃で、デュラン・デュランの『リオ』や『セヴン&ザ・ラグド・タイガー』、ライブアルバムの『アリーナ』などを気に入って聴き込んでいた。

その注目しているグループから、2つのバンドが派生したのだからもちろんチェックする。まずはパワー・ステーションが売れ出した。今になって聴くと、パワー・ステーションもいい曲をプレイしていたのだが、何故かその時はあまり好きになれず、遅れてリリースされたアーケイディアのファーストシングル「エレクション・デイ」に、「これだ!」と飛びついたのだ。

アルバムが出るとすぐに買って(LPだったかもしれない)、やたらと聴いた。ちょっと玄人っぽい感じがすることもあって、その当時一番好きなアルバムは『情熱の赤い薔薇(So Red The Rose)』であった。あまりはっきりとした記憶ではないが、結構周りの友人たちにも薦めたような気がする。

そのころの自分にとっては、パワー・ステーションのようなパワフルで割とストレートなロックサウンドよりも、アーケイディアのミステリアスで、グラマラスな音楽の方が心地よかった。そうした好みがあったから、後にニルヴァーナに代表されるようなグランジにも傾倒したのかもしれない。

やはり特に好きだった曲は、リードシングルであり、アルバムの一曲目でもあった「エレクション・デイ」。ふとタイトルの意味を調べ、日本語に訳してみると「選挙の日」ではないか。まだ若かった自分にとっては、選挙の日が曲になるなんてちょっと理解の範疇を超えていたが、タイトルや歌詞の意味よりもどんな音が鳴っているかが何より大切だったのだ。

So Red The Rose/Arcadia(1985)
1. Election Day
2. Keep Me In The Dark
3. Goodbye Is Forever
4. The Flame
5. Missing
6. Rose Arcana
7. The Promise
8. El Diablo
9. Lady Ice

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