【短編小説】なぞの青年/星新一
「なぞの青年」の正体は、税務署の職員。自らの意志で、困っている人たちへお金を提供していた。「わたしが異常で、ほかの議員や公務員たちは、みな正気だとおっしゃるのですか」という発言が印象に残った。法や制度に忠実だと、正しく間違いはないが、実は誰も幸せにしない、というアイロニカルな状能を指摘しているのではないか。
【詩・俳句・短歌・歌詞】学校/辻征夫
エッセイのような詩。自分は学校がそれほど好きではなかったが、行くのが嫌になるほどでもなかった。ただ、自分の子どもが学校に行けなくなったこともあり、じんわり共感しながら読めたと思う。最後の、同じく学校をサボっている娘から、「行けば?」と勧められるコミカルさと、「うん」と行く気になるポジティブさが、何とも微笑ましい。
【論考】「自分の世界」について/森本哲郎
どんな年齢であれ、確固たる自分の世界を持っていることは重要だし、貴いとも思う。一方で、当人が持つその世界像が色眼鏡で見て、偏りでしかなかったら、どうなのだろう。「自分の」と言うくらいだから、他者とは何らか異っているはずだ。自己と違った認識を受け入れ、認めることは、そんなに簡単ではない。