過去に暮らした場所が「故郷」になるまでの道のり:わが美しき故郷よ/畠山美由紀【CD千本ノック 0070本目】


畠山美由紀さんの『わが美しき故郷よ』は、2011年の12月にリリースされた5thアルバム。ソロデビュー10周年の節目でもあったが、彼女は気仙沼出身で、同年3月に起きた東日本大震災がこのアルバムを出す大きな動機付けになっている。

あの「3.11」からちょうど7年経って、改めて聴き直してみると、彼女の詩や歌声にひどく心を揺さぶられた。「わが美しき故郷よ -朗読-」は、たまたま電車に乗りながら聴いていたのだが、自然と涙が出てきて、周りの人たちに、泣き顔を見られないようにしなければならなかった。

畠山美由紀さんはとても好きなボーカリストで、ほとんどのCDを購入し、愛聴している。だからこの『わが美しき故郷よ』も、リリースされて割とすぐに手に入れていた。

ただ、その当時はしっくりこなくて、あまり好きになれなかった。1~2度聴いただけで、少し距離のあるアルバムになり、ほとんど手に取らなくなってしまったのだ。震災の傷跡が深刻で、歌が過去を懐かしむだけの絵空事のように聴こえたのかもしれない。

今回、2018年3月11日を迎えるに当たり、意を決してもう一度聴いてみると、あの時の感じ方とは随分と変化していた。

彼女が気仙沼を振り返りながら書いた詩や、故郷を強く思った歌声を、落ち着いて聴いてみると、単に畠山美由紀さんの思い出が吐露されているだけではないことに気づいた。誰しもが抱く郷愁の大切さ、ふるさとを思うことのかけがえのさなど、普遍的なメッセージが浮かび上がってきたのである。

「わが美しき故郷よ -朗読-」には、こんな一説がある。

すべての希望が断たれた人々
全身全霊で助け合わなくてはいけないのだ
そのために生かされている
この世はずっとそうだったんだ
遅い 遅い いつでも遅すぎる
こんなことになるまでそれをわからなかったわたしの愚かさを
どうかお許し下さい

「この世はずっとそうだった」のなら、アタクシ自身もわかるのに6年以上も時間がかかってしまったことになる。やはり「いつでも遅すぎる」のだ。

わが美しき故郷よ/畠山美由紀(2011)
1. その町の名前は
2. 風の吹くまま
3. What A Wonderful World
4. Moon River
5. わが美しき故郷よ -朗読-
6. わが美しき故郷よ
7. 教えて、ママ
8. Over The Rainbow
9. 浜辺の歌
10. 花の夜舟
11. Untitled
12. ふるさと

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