何ちゃってインストラクターによる平和のための原子力:Amok/Atoms For Peace【CD千本ノック 0037本目】


アトムス・フォー・ピースは、レディオヘッドのトム・ヨークを中心に、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシストであるフリー、レディオヘッドやU2のプロデュースで知られるナイジェル・ゴドリッチ、R.E.M.やベックなどの活動に参加してきたドラマーのジョーイ・ワロンカー、パーカッショニストのマウロ・レフォスコというメンバーで構成された5人編成のバンドだ。

2009年にトム・ヨークが発表したソロアルバム『ジ・イレイザー』のツアーで、集まったことをきっかけにして誕生したバンドだそうだ。エレクトロニクスを利用して、ほとんどトム・ヨークとナイジェル・ゴッドリッチの2人で制作された『ジ・イレイザー』の音を、生演奏でどれだけ再現できるかがプロジェクトの出発点になっているという。

この『アモック』も『ジ・イレイザー』も、不穏な電子音の上に、トム・ヨークの声が重ねられるという曲調でいえば、最近のレディオヘッドと同様のアプローチだ。ただ、『ジ・イレイザー』と『アモック』とで比べると、楽器で演奏することを意識してか、エレクトロニクスばかりが強調されず、人の温度感や肉体性を感じさせる。

バンド名は、第34代アメリカ大統領ドワイト・アイゼンハワーが1953年に演説で語った「Atoms for Peace(平和のための原子力)」から取られたようだ。実は『ジ・イレイザー』の5曲目に、このバンド名と同じ「Atoms For Peace」という曲が収録されている。

また、トム・ヨークの父親が原子物理学者だったようで、そもそも原子力を身近に感じており、意識せざるを得ない問題だったのだろう。彼のことだから、バンドの名前にシニカルな意味を込めていると想像してしている。

とは言え、フジロックで見たアトムス・フォー・ピースのトム・ヨークを思い出すと、あまり皮肉めいた感じは受けなかった。頭にカラフルなヘアバンドをして、その出で立ちは何ちゃってスポーツ・インストラクターにしか見えなかったからだ。

当然、音楽はしっかりしていたが、見た目にシリアスさは感じられず、バンド名や音楽性とギャップが大きすぎるというのが正直なところ。YouTubeのリンクを載せておくので、気になる方はチェックしてもらえたらと思う。

Amok/Atoms For Peace(2013)
1. Before Your Very Eyes…
2. Default
3. Ingenue
4. Dropped
5. Unless
6. Stuck Together Pieces
7. Judge Jury and Executioner
8. Reverse Running
9. Amok

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