「天神山の記憶(4)【フジロックGO #0006】」はこちら。
フー・ファイターズの次のアクトは、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンだった。雨もしたたか降っていたと思う。それでも、アタクシたちはテントを張ったスキー場の斜面を滑るように下って、ステージ前に走り込んだ。思っていた以上に地面はドロドロで、実際は走れていなかったかもしれない。そんな最前列ではないが、割と正面に陣取ったと記憶している。CDで何度も何度も聞いて、それだけで熱くなる音が、目の前で鳴っていた。
周りのキッズたちもひどく興奮していた。誰も彼もが飛び跳ねている。ザックの声に、トムのギターに突き動かされていた。気づけばあっという間に沸点に達している。カッパを着ている人は皆無。アタクシ含め、ほとんどの一年生フジロッカーはTシャツ姿でビショビショになっていた。そのTシャツから、身体から、もうもうと煙が立ち上っていた。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに煽られた熱気が、水蒸気となってステージ前を雲のように覆っていたのだ。こんな光景は、後にも先にもこれっきりである。