【短編小説】知っていて知らない人/トルーマン・カポーティ ◎
うたた寝から覚めると、死をもたらす人が目の前にいる。何とも不思議な話。ただカポーティは、直接的な説明はしない。その人物は、母親など身近な誰かが亡くなる日に、姿を現すという。死のキスを受けそうになったところで、ドアの音とともにその人物はいなくなってしまう。ミス・ナニーは悪い夢を見ていたのだろうか。その真偽も、全く語られない。
【詩・俳句・短歌・歌詞】なぜ/川崎洋 ◎
詩の中で様々な「なぜ」が問われるが、世界は不思議に満ちている。そして、その問いには簡単に答えることはできない。作者は最後に、「人はなぜ、なぜを言わなくなるのだろう」と問うが、それは、世界の不思議に解答しづらいためではないか。などと問わず、当り前と受け入れた方が生きやすいだろう。
【論考】永遠について/森本哲郎 ○
題名を見て、とても期待して読んだが、日本人は世の無常を受け入れ、永遠の絶対者を求めない、ということであった。筆者は、日本とインド、あるいは西洋などと比較し、日本人のメニタリティー、無常感を説明する。それについては、異論はないが、どうして日本人は無常に安住するのかを知りたかった。