鏑木清方【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#121】


【4月30日】鏑木清方:1878.8.31~1972.3.2

鶸色に萌えた楓の若葉に、ゆく春をおくる雨が注ぐ。あげ潮どきの川水に、その水滴は数かぎりない渦を描いて、消えては結び、結んでは消ゆるうたかたの、久しい昔の思い出が、色の褪せた版画のように、築地川の流れをめぐってあれこれと偲ばれる。(「築地川」)

『随筆集 明治の東京』山田肇編、岩波文庫、1989年

【アタクシ的メモ】
鶸色(ひわいろ)とは、明るい黄がちの黄緑色のことだそうだ。日本画家だったが、随筆もよく書いたようで、色味も繊細だし、流麗な文章だと思う。