『ユリシーズ』【原稿用紙一枚の教養#0002】


※『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』の各ページを400字程度で要約しています。

第1週第2日(火)
2文学
『ユリシーズ』

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』(1922年)は、20世紀に英語で書かれた中で最高峰の小説である。ホメロスの『オデュッセイア』を、アイルランドの都市ダブリンでのある一日(1904年6月16日)の出来事として作り変えたものだ。

主人公は、レオポルド・ブルームという中年の広告セールスマン。出会う人たちのほぼすべてに寛容さと度量の広さを示し、何気ない日々の雑事を通して、日常的ヒロイズムを実践している。

この作品は、「登場人物を丹念に描写している点」「他の文学作品や芸術作品に、それとなく触れている点」「言葉を斬新に使っている点」で有名だ。その中でも特によく知られているのは、意識の流れをそのまま叙述する技法だろう。

ジョイスは、登場人物が心の中で思ったことを、順序づけたり整理したりせず、そのままの形で提示した。この技法はヴァージニア・ウルフやウィリアム・フォークナーなど多数の作家たちに影響を与える。

最終章では、ブルームの妻モリーの心のうちがつづられる。あてどなく延々と続くモリーの思いは2万4000語を超え、それがわずか八つの長大な文で区切られている。

【アタクシ的ポイント】
体系立てたり、整理しないことは、現在もある意味新規性であり続けており、その端緒はほぼ100年前に始まっていたことになる。


アルファベット【原稿用紙一枚の教養#0001】


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第1週第1日(月)
1歴史
アルファベット

紀元前2000年ころ、古代エジプトのファラオたちは、奴隷たちに文書で命令を伝えることができず悩んでいた。奴隷たちは、エジプトの文字ヒエログリフ(神聖文字)が読めなかったからだ。

太古の文字体系は、どれもたいへん面倒で覚えるのが難しかった。文字が何千個もあって、覚えるのに長い時間がかかる。実際、エジプト人でもこの複雑な文字体系を読み書きできたのは、ほんの一握りしかいなかった。

そこで、ヒエログリフの簡略版を作り、これが今に伝わる多種多様なアルファベットの起源になったと考えられる。ヒエログリフの簡略版では、ひとつの文字が表すのは音だけだ。このため、文字の数は数千個から数十個にまで減り、文字を覚えて使うのが、はるかに楽になった。

アルファベットは近東に広まり、ヘブラ文字やアラビア文字など、この地域のさまざまな文字体系の基礎になった。一方、海洋交易民族フェニキア人は、地中海沿岸で出会った人々にアルファベットを伝えた。この古代フェニキア文字がギリシア文字とラテン文字になり、現在では、西洋の言語は英語も含め、ほとんどがラテン文字を使っている。

【アタクシ的ポイント】
複雑で難しいものは特権性を担保しやすいが、普遍性を獲得するにはシンプルであることが重要。