ベックの出世作『メロウ・ゴールド』(1994)、大ヒット・アルバム『オディレイ』(1996)の後に、『ミューテーションズ』(1998)、『ミッドナイト・ヴァルチャーズ』(1999)と続き、2002年にリリースされたのが、この『シー・チェンジ』である。
『オディレイ』後の2枚は、商業的な成功を収めたとは言えないようだが、アタクシ的にはベック・サウンドのカラフルさ、雑多感、多様性が軽やかに融合した曲調や、ブルースをベースにしながらも、彼独自の持ち味感じさせる音楽に満足していた。
だが、『シー・チェンジ』を聴いたときの第一印象は、あまりにも地味すぎるものだった。ブルースがルーツ音楽だとはいえ、そのミニマルな音はベックらしさに欠けると感じたのである。だから1~2度聴いて、「もうベックはおしまいだな」と思って、CDラックにしまって全く聴かずにいた。仮にベックを聴くとしても、それ以前に馴染んだ過去のアルバムだけだった。
そのままCDでのみ音楽を聴く環境でいたら、『シー・チェンジ』は二度と手に取らなかったかもしれない。ただ、いつしか音楽ライブラリーをすべてiPodに入れて、シャッフル再生などを楽しむようになっていた。
そのように音楽の聴き方が変わっていたため、たまたま『シー・チェンジ』の曲を聴くことがあった。シャッフル再生でたまたま流れた、まさに偶然の再会ではあるが、「あれ、このすごくヨイ曲は誰だっけ?」となった。iPodをいそいそと確認して、『シー・チェンジ』の曲であることがわかり、アタクシがこのアルバムに抱いていた誤解が突如解けたのである。
時間が経って趣味に変化があったらか、その時の気持ちに運よくフィットしたのか、印象や評価が180度変わった理由はよくわからない。それでも、華やかさとは対極にあるこの真っ直ぐなサウンドを改めて聴き、非常に心地よく響き、体に深くしみ込んできたのである。
おかげで今では、ベックの中で一番よく聴くアルバムになっている。何より最初に聴いたときと、その後に聴き直した際のギャップの大きさはとても印象的で、アタクシ的には、その落差が忘れられない一枚なのだ。
Sea Change/Beck(2002)
1. The Golden Age
2. Paper Tiger
3. Guess I’m Doing Fine
4. Lonesome Tears
5. Lost Cause
6. End Of The Day
7. It’s All In Your Mind
8. Round The Bend
9. Already Dead
10. Sunday Sun
11. Little One
12. Side Of The Road
13. Ship In The Bottle
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