ボルヘス【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#115】


【4月24日】ボルヘス:1899.8.24~1986.6.14

大乗仏教の哲人たちは、宇宙の本質は空であると説いている。同じ宇宙の一小部分であるこの本に関する限り、彼らの言うところはまったく正しい。絞首台や海賊たちがこの本をにぎわわしており、標題の「汚辱」という言葉は大仰だが、無意味な空騒ぎの背後には何もない。すべて見せかけに過ぎず、影絵に等しいのである。だがほかならぬその理由が、面白さを保証するだろう。(「汚辱の世界史」1954年版、序)

『砂の本』篠田一士訳、集英社文庫、1995年

【アタクシ的メモ】
「無意味な空騒ぎの背後には何もない。すべて見せかけに過ぎず、影絵に等しいのである」というのは、この宇宙についてなのか、汚辱についてなのか。