中里介山【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#119】


【4月28日】中里介山:1885.4.4~1944.4.28

大菩薩峠は江戸を西に距る三十里、甲州裏街道が甲斐国東山梨郡萩原村に入って、その最も高く最も険しきところ、上下八里にまたがる難所がそれです。
標高六千四百尺、昔、貴き聖が、この嶺みねの頂に立って、東に落つる水も清かれ、西に落つる水も清かれと祈って、菩薩の像を埋めて置いた、それから東に落つる水は多摩川となり、西に流るるは笛吹川となり、いずれも流れの末永く人を湿おし田を実らすと申し伝えられてあります。(『大菩薩峠』)

『中里介山全集』第1巻、筑摩書房、1970年

【アタクシ的メモ】
中里介山の代表作『大菩薩峠』の冒頭部分を引用したようだ。単なる場所の説明だとも言えるが、視点が高いところにあるようで、趣が感じられると思った。