盗みの告発だけで終わるストーリー【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0064】


【短編小説】ヒルダ/トルーマン・カポーティ
どうしてヒルダは盗みをはたらいてしまうのか。理由は分からないものの、盗んだこと自体は事実のようだ。ただ、物語はその告発だけで、唐突に終わってしまう。さらに、盗難の嫌疑をかけられた場所でも、盗みを繰り返してしまっているようだ。なぜ盗むのか、盗んだものをどうしているのか、そうしたことはー切書かれていない。ましてや、この短編小説のメッセージも不明確なままであるが、それがかえって読み手の頭や心の中をかき乱し、考えさせられるのだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】祝 婚歌/吉野弘
どこかに強い言葉があるわけではなく、ある意味とても淡々としている。それでも、自分が十五年以上の結婚生活を経たうえで読むと、とても正しいことを言っていろように感じる。とは言え、やや抽象的すぎるなという印象もあった。そうした点では、やや読み手に伝わりづらいのではないだろうか。

【論考】沙漠について/森本哲郎
筆者は「沙漠は精神の原点、魂の出発でもあります」と言うが、沙漠を体験したことのない人間からすると、やや偏りのある発言に感じる。もちろん、人間の思考は環境によって大きく左右されるとは思うが、身近に沙漠はなく、日々を生活をしている自分は、精神の原点を確認したり、回帰できないことになってしまうのだろうか。