ロバート・キャパ【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#146】


【5月25日】ロバート・キャパ:1913.10.22~1954.5.25

暁闇の中、爆弾で噴火口のようにあけられた穴だらけの道にクリスが目をこらしているあいだに、私はふと先刻の写真をとりだしてみた。それらは、ちょっとピンぼけで、ちょっと露出不足で、構図は何といっても芸術作品とはいえない代物であった。けれどもそれらは、シシリヤ攻略を扱った限り、唯一の写真であり、海上部隊の写真班が、海岸からなんとか、発送の手配をつけたものよりも幾日か早いにちがいないのである。(「シシリヤの空中に浮かぶ」)

『ちょっとピンぼけ』川添浩史・井上清一訳、文春文庫、1979年

【アタクシ的メモ】
例えば写真の価値を決めるのは、ピントの合い方や露出、構図といった重要と思われる要素だけではないということか。被写体を写したものが、その写真しか存在しなければ、たとえピンぼけであっても、価値が生まれるのだろう。