「モノからココロへ」【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0172】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】骨/リディア・デイヴィス ○
パリに暮らしていた男女(その当時は夫婦だったよう)が、ある晩、魚の骨がのどにひっかかってしまい、医師に抜いてもらうという、これもやはり短いストーリー。あったこと(もしかすると、筆者の実話かもしれない)を、淡々と綴っているのだが、何とも言えない味、魅力のにじむ作品だと思う。ありふれた小さな物語でも、読み手の心を動かせるのかもしれないと可能性を感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】おんなのことば/茨木のり子 ○
きっと昭和の気分を色濃く描写した詩である。タイトルにある通り、女性が語る言葉について書かれているのだが、ステレオタイプの発言ではなく、本心、本音、心からの言葉を発すべきだと作者はいう。今は世の中も大きく変化し、こうした詩の出番はなくなっているだろう。だが、書かれた時にはきっと必要だったのだと思う。

【論考】新・唯心論/池田晶子 ○
筆者は、「モノよりココロ」「ココロがあるからこそ満たされる」と明言する。初出が1990年だから(しかも電通の媒体!)、その当時はきっと、かなり突飛な意見に映ったのではないだろうか。しかし、今では「モノからコト」とも言われるように、物質ではないものにこそ、価値を見い出すようになっている。池田さんが30年進んでいたというよりも、多くの日本人が本質から横に外れて暮らしていたのではないだろうか。