禍いに満ちていても、その運命を抱きしめる【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0067】


【短編小説】火中の蛾/トルーマン・カポーティ
とても短いストーリー。そして、やはり哀しい物語。結局、命を落としてしまうセイディは、自業自得だったのか、エムの嘘が原因だったのか。因果関係は書かれていないため、読者それぞれが、自分なりに想像するしかない。唐突で急な終わり方含め、結論を読者にねるのがカポーティ流か。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ゆずりは/河井酔茗
人類の歴史というか、人々が次世代に継承していく営みをゆずりはに例えている。自分自身も40歳をすぎたころから、生きるのは子どもたちや社会のため、と考えることが多くなっていた。だから、この詩のメッセージにとても共感できる。また、語りかける子どもたちにとって、押しつけがましくなっていない点もよかったと思う。

【論考】禍いについて/森本哲郎
なぜ人は禍いから逃れられないのか。禍いについての考察。「パンドラの箱」の話は知っているようで分かっていなかったので、改めてひも解いてもらってありがたかった。途中の論の進め方はやや強引な印象もあったが、筆者の結論である「一生がどんなに禍いに満ちていても、その運命を抱きしめるしかない」には同意。弱者の論理かもしれないが。