エモ界のレジェンドは穏やかな音を鳴らす:American Football/American Football(1999)【CD千本ノック 0120本目】


アメリカン・フットボールは、マイク・キンセラ(オーウェンというソロ・プロジェクトもやっているそう)率いるエモ界のレジェンドだという。この『アメリカン・フットボール』は、1999年にリリースしたファースト・アルバムだ。

その後、すぐに解散してしまったので、これが唯一の音源となっていたが、2014年に奇跡のリユニオン。2016年には17年ぶりに、新作『アメリカン・フットボール』を発表した(ファーストと同じタイトルで、かなりややこしい)。

アタクシは、それほどエモ界に詳しいわけではなく、全く知らないアーティストだったのだが、渋谷のタワーレコードでプッシュされていたため、CDを入手した。さっと視聴したような気はするが、レジェンドなどと言われると聴かないわけにはいかないだろう。iTunesの追加日を見ると2014年5月なので、再結成前だったようだ。

サウンドは淡々としていて、穏やかな感じである。伝説的なバンドという事前情報から、勝手にもっとガンガン煽ったり、泣きメロ満載なのかと思っていたら、とても繊細な音色に心洗われてしまった。

アタクシ的には、必聴の一曲だったり、ドキャッチーな曲があるわけではないが、アルバムを通して聴くと、またもう一度聞きたくなるから不思議である。そんな聴き手の気持ちにすっと入り込んで、定着してしまうからこそ、レジェンドと呼ばれるのかもしれない。

American Football/American Football(1999)
1. Never Meant
2. The Summer Ends
3. Honestly?
4. For Sure
5. You Know I Should Be Leaving
6. But The Regrets Are Killing Me
7. I’ll See You When We’re Both Not So Emotional
8. Stay Home
9. The One With The Wurlitzer

「CD千本ノック」の一覧はコチラ

Apple Musicはコチラ

CDはコチラ

MP3ダウンロードはコチラ


「富士銀行」と呼ばれるアルバム:Mogwai Young Team/Mogwai(1997)【CD千本ノック 0119本目】


今でこそモグワイは好きで、CDもシングルを含めて20枚近く持っている感じなのだが、初めて聴いた頃はとにかくインストゥルメンタル、歌声がないというのに拒否感があり、自分からは積極的に聴かず、避けていた。

でも確かフジロックでライブをたまたま見て、気に入ってしまったのだ。静と動の振幅の激しさというか、轟音カタルシスに、もう降参したのである。それ以降、3枚目の『ロック・アクション』くらいからは、アルバムが出ると買うという感じになっていたと思う。

そんな経緯もあって、このアルバムはさかのぼる格好で聴いたのだ。恥ずかしながら、『モグワイ・ヤング・チーム』がファースト・アルバムであることも、最近まで知らずにいた。

しかも、当時メンバーの平均年齢は18歳だったというから、まさに“恐るべき子どもたち”によってドロップされたサウンドだったのだ。今聴いても、古びた感じはほとんどなく、完成度の高さに驚かされる。

余談になるが、ジャケットには今はなき富士銀行の看板が写っていて、国内盤は黒く塗りつぶされている。メンバーが撮影した写真を利用したからで、富士銀行恵比寿支店(現:みずほ銀行恵比寿支店)の外観だとのこと。看板自体はもうないようなので、確認方法はジャケットと本物のビルを見比べるしかないようだ。

Mogwai Young Team/Mogwai(1997)
1. Yes! I Am A Long Way From Home
2. Like Herod
3. Katrien
4. Radar Maker
5. Tracy
6. Summer (Priority Version)
7. With Portfolio
8. R U Still In 2 It
9. A Cheery Wave From Stranded Youngsters
10. Mogwai Fear Satan

「CD千本ノック」の一覧はコチラ

Apple Musicはコチラ

CDはコチラ


「少年A」とは私たちのことだ:Kid A/Radiohead(2000)【CD千本ノック 0001本目】


レディオヘッド(Radiohead)にとって、4枚目のオリジナルアルバム。個人的な好みではあるが、レディオヘッドで一番好きなアルバムは5枚目の「Hail to the Thief」だ。この作品が2003年に発表されたとき、彼らは「Kid A」から着実に進化し、「より優れたアルバムを世に送り出した」と感じた。

しかし、あれから10年以上経ってみると、レディオヘッドやロック全体にとっても、引き返せないような大きな転換点になったのは、「Kid A」だと思っている。このアルバムによって、すべてが変わってしまった。ロック史上、最も衝撃的で、最も大変革をもたらしたアルバムではないだろうか。

CDが発売されて初めて聴いて感じたのは、「ギターロックバンドがギターを弾くのを放棄し、全く予想だにしなかったような音楽を提示された。ただ、その電子音こそが自分たちが、たった今感じている不安や虚無を言い当てている」ということ。自分たちでは思いつかなかったものの、当時、日々生きている中で真に求めていた欲求を、レディオヘッドが音像にまとめ上げ、見事に突きつけたのだろう。

発売当時に書かれたライナーノーツによれば、「キッドA」という言葉は、「もはやどこでも生まれているはずの“世界最初のクローン人間”を示唆した」ものだそうだ。2018年時点、医学的な意味で、まだクローン人間は生まれていない。それでも、改めてアルバムを聴いていると、「君たちこそがキッドAではないのか?」と、問われているように思えてならないのである。

Kid A/Radiohead(2000)
1.Everything In Its Right Place
2.Kid A
3.The National Anthem
4.How To Disappear Completely
5.Treefingers
6.Optimistic
7.In Limbo
8.Idioteque
9.Morning Bell
10.Motion Picture Soundtrack

Apple Musicはコチラ

CDはコチラ

MP3ダウンロードはコチラ