私も「愛こそすべて」が苦手【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0095】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ママ/ルシア・ベルリン ○
姉妹二人が、母親について回想する。その母親は、愛という言葉が嫌いだったり、一筋縄ではいかない性格だったようだ。ロ々に思い出が語られていくなかで、その存在が蘇るのだろう。妹は最後に「愛してるって伝えたい」となるが、姉はそうならない。姉妹でも母親のとらえ方はまちまちなのである。

【詩・俳句・短歌・歌詞】人間に与える詩/山村暮島 △
太い根のある樹木、大木を、人は見習えということか。ただ、そうだとしても、人間にとっての「根」とは何を指しているのだろうか。特に言及がないので、分からない。人間に与える詩と言っているので、人に対して語りかけているのだろう。しかし、その主旨が不明というのが正直な感想である。

【論考】社会/池田晶子 ◎
「社会」という確固たるものが存在するわけではない。複数の人間の集まりにつけられた呼び名にすぎない、と筆者は説明する。いやその通りだと思う。その前提から、自分はどうやって生きるのか、人間の集まり(=社会)にどう働きかけるのか。そうした自分の意志が問われている。


永井荷風【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#069】


【3月9日】永井荷風:1879.12.3~1959.4.30

余は五、六歩横町に進入りしが洋人の家の樫の木と余が庭の椎の大木炎〻として燃上り黒烟風に渦巻き吹きつけ来るに辟易し、近づきて家屋の焼け倒るるを見定ること能はず。唯火焔の更に一段烈しく空に上るを見たるのみ。これ偏奇館楼上少からぬ蔵書の一時に燃るがためと知られたり。(1945年3月9日)

『摘録 断腸亭日乗』(下)、磯田光一編、岩波文庫、1987年

【アタクシ的メモ】
断腸亭とは荷風の別号で、日乗とは日記のこと。これは戦時中で、どうやら空襲にあったようだ。


歴史に真偽を求めず、想像する【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0094】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ソー・ロング/ルシア・ベルリン ○
タイトルの「ソー・ロング」は、人生は長すぎるという意味だろうか。「わたし」が、自分の半生を回顧している。その時々の自身の心情はそれほど書かれておらず、起きたことが淡々と述べられる。多少ドラマチックな内容もあるが、人々が粛々と生き、死へ近づく姿を、冷静に起伏なく表現しようとしたのではないか。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ほほえみ/川崎洋 ○
「ビールには技豆」のように、セットになるような、対になるようなものを、いくつも並べている詩。日本的な、日本ならではのセットが多いだろうか。ただ、最後の組み合わせは、「ほほえみ には ほほえみ」と対ではなく、同じものを重ねていた。これについては、万国共通の感覚になるだろう。

【論考】歴史/池田晶子 ◎
言葉の端々で、理解できていない部分もあると思うが、「君は今の君ではなく、他の誰かでもあり得た」「だからこそ、君は、他の誰かであることができる」といった箇所がとても気になった。また、「歴史とは、真偽を求めるものではなく、想像するものだ」という文も重要だと思う。可馬遼太郎にも、つながるかもしれない。


詩経【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#068】


【3月8日】詩経

桃の夭夭たる
灼灼たり 其の華
之の子 干き帰がば
其の室家に宜しからん

桃は若やぐ。
輝くその花。
この子がお嫁に行ったなら、
そのお家にもふさわしい。

『新編 中国名詩選』(上)、川合康三編訳、岩波文庫、2015年

【アタクシ的メモ】
『詩経』とは、全305篇からなる中国最古の詩篇とのこと。ここに引用されたものも、とてもシンプルな詩だと感じた。


子が生まれたときの喜び【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0093】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】苦しみの殿堂/ルシア・ベルリン △
一回しか読まなかったせいか、固有名詞や北米文化に関する言葉が多かったせいか、状況を端的に表現する文体のせいか、内容があまり入ってこなかった。読み手である自分の状態もよくなかったのだろうけど。なので、短編小説の中身に関するコメントはあまりできない。これが彼女の文体だと理解しつつも、もう少し分かりやすく書いてくれるとうれしいのだが。

【詩・俳句・短歌・歌詞】森の若葉/金子光晴 ○
孫むすめが生まれた喜びを詠んだ詩。作者に喜びがあるから、読むだけで自然と明るい気持ちになる。自分の子供たちが生まれた時のことを思い出した。成長とともに、良いことばかりでなく悩みも出てくるが、誕生したばかりの時は、明るい未来を信じられていたと思う。

【論考】勉学/池田晶子 ◎
「考えるということは、必ず、自分のこととして考えるということだ」という文が印象に残った。勉強も、無理やり学ばされていると思うのではなく、自分に関係していることとして学べば、ヨイのだろう。そうした意味で哲学は、人間の根本、本質、普遍性について問い、思考するからこそ、自分は楽しく感じるのだと思った。


バフーチン【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#067】


【3月7日】バフーチン:1895.11.17~1975.3.7

笑いは深い世界観的な意味を持つ。笑いは統一体としての世界、歴史、人間に関する真理の本質的形式である。それは世界に対する特殊な普遍的観点である。この観点は世界を別な面から見るが、厳粛な観点よりも本質をつく度が少ないわけではない(多くはないとしても)。

『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネサンスの民衆文化』川端香男里訳、せりか書房、1973年

【アタクシ的メモ】
「深い世界観的な意味」があまりイメージできず、「誤訳?」と思ってしまった。「特殊な普遍的な観点」も、やや謎な表現ではないか。ここで言いたいことは、笑いが人間の真理、本質をつくことがあるということか。


家族に歴史アリ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0092】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】喪の仕事/ルシア・ベルリン ◎
人が亡くなり、残された家族と家、片づけをする掃除掃の物語。語り手である掃除場の「わたし」という現在の視点と、残された子供たちのこれまでの経緯が交錯する感じが、リアリティーを醸し出す。家族には、小さくでも歴史があるのだなあと改めて思い出され、切ない気持ちになった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】夕方の三十分/黒田三郎 ◎
恐らく父子家庭の夕方の一コマ。詩は夕食の用意から始まるが、段々と混乱をきたしてくる。そして、父と娘は小競り合いを起こし、食事をとることで平穏になっていく。我が家だともう少し登場人物が多くなるものの、どの家庭にも見られる風景ではないだろうか。視点が自分たらと同じ高さなのがヨイ。

【論考】意見/池田晶子 ◎
「君は、意見なんてものをもつべきではない」と筆者はいう。私たちがすべきは、誰にとっても正しい、本当の考えを自分で考えて知ることだけだとも語る。改めて言われてみると、その通りだと納得するのではあるが、日々の生活ではほとんどそうできていないことを反省する。私たちが持つべきは意見ではなく、(正しい)考えなのだ。


菊池寛【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#066】


【3月6日】菊池寛:1888.12.26~1948.3.6

芸術のみにかくれて、人生に呼びかけない作家は、象牙の塔にかくれて、銀の笛を吹いているようなものだ。それは十九世紀ころの芸術家の風俗だが、まだそんな風なポーズを欣んでいる人が多い。
文芸は経国の大事、私はそんな風に考えたい。生活第一、芸術第二。(「文芸作品の内容的価値」)

『新潮』大正11年(1922)7月

【アタクシ的メモ】
人が生きて死んでいく中で、経済活動も重要だが、文芸など文化的な活動も不可欠だと思う。また、生活第一、芸術第二にも同意である。作家は、人生に呼びかけることが大事だという考えにも共感する。


あなたとしずかにむかいあいたい【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0091】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】マカダム/ルシア・ベルリン ○
題名のマカダムは、フランス語で砕石という意味のようだ。ただ、小説を読むだけでは、全く想像もできず、検索してやっと分かった。小説自体もわずか1ぺージちょっとなので、詩に近い印象。ストーリーというよりも、砕石のイメージやそれにまつわる風景が書かれていた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】ふゆのさくら/新川和江 ○
全編、ひらがなだけで構成されているため、まずとても読みづらく、理解しづらかった。「わたくしもあなたもえいえんのわらべで」という部分を意識してのことなのだろうか。「あなたとしずかにむかいあいたい」の箇所が、個人的には好印象であった。

【論考】性別/池田晶子 ◎
男性と女性の違いは、肉体の違いにすぎないと言い切り、人間として本質的な問いの前に男か女かは全く関待ないと指摘する。そうした意味でフェニミズム的な文脈も、相対的なこととしている。「人間はみな自由だ。不自由なのは、必ず自分のせいなんだ」という文が、心に残った。


杜甫【『一日一文 英知のことば』から学ぶ#065】


【3月5日】杜甫:712~770

国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺ぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす(「春望」)

都は打ち壊されても山河は存する。城内は春になって草木が生い茂る。
時節に心は痛み、花を見ても涙がこぼれ、別離を悲しみ、鳥の囀りにも心はおののく

『新編 中国名詩選』(中)、川合康三編訳、岩波文庫、2015年

【アタクシ的メモ】
「国破れて山河在り」というフレーズは、不思議なほど、自分の中にずっと残っていて忘れない。杜甫がこの詩を詠んだときの気持ちと、全くシンクロするのかどうかは定かではないが、自分なりに新たな気持ちを呼び起こすのではないか。