思えば遠くへ来たもんだ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0130】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】新元号二年、四月/磯﨑憲一郎 △
カフカの小説の話から始まり、改元について、気づけば「私」という一人称が登場してきて、都内を移動しつつ 、北杜夫の引用で終わる。文章は淡々と進むが、読者が理解できるコンテクストは示されないので、ただただ目の前にある文字を追うだけになってしまう。シンプルに、何を言われているかも分からないため、読後感もよくなかった。やはり受け手にとって、「分かる」ということはとても大事だと思う。

【詩・俳句・短歌・歌詞】頑是ない歌/中原中也 ○
詩の冒頭に出てくる「思えば遠くへ来たもんだ」は印象的なフレーズである。海援隊の歌もあるが、もちろんこちらがオリジナルのようだ。詩にある通り、若い頃に思っていたような将来にはならないのである。少し前、中学生の頃に住んでいたつくばに行ったが、街自体も変わるし、見え方や認識が、現在とは全く別だったことを思い出した。私は、あの時の私ではいられないのだ。

【論考】垣根を越えて/外山滋比古 ○
前回の続きで、会話するにも、インブリーディング(同系繁殖)を避けようという主旨である。インターディシプリナリー(学際研究)という言葉も出てくるが、境界を越えた学問は、ある意味、今は当たり前になっているのではないか。当然になりすぎて、学問の数が増え、収拾つかなくなっているようにも思える。


三人寄れば文殊の知恵【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0129】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】AHOYH/阿部和重 △
ウェブカメラやスマホのカメラから見えることがストーリーとして語られる。その後。無名の視聴者も登場人物になっていく(急に神の視点)。児童虐待も一瞬トピックに上がるものの、物語はポケモンGOのレアキャラ、アンノーンを捕まえられないんかという突っ込みで終わる。カメラの中の人とオンラインでしかつながらない傍観者との関係性を描きたかったのかもしれないいが、自分的には完全に不発だった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】愛/谷川俊太郎 △
何度も読んだが、自分の中で意味を形成できなかった。そうした点では、評価できないでいる。ちょっとネットで調べてみると、「あい」という詩も谷川さんは書いているようだ。むしろ、この「愛」はパッと見つからない。自分の読解力や感性だけでは理解できないのだ。

【論考】談笑の間/外山滋比古 ○
一言と言えば、三人寄れば文殊の知恵という話。ただ重要なのは人数ではなく、どんな人と集まるのかということ。知的であることはもちろんだが、フラットな関係性は欠かせないだろう。一方で、今なら何でも検索エンジンや対話型AIに聞くのが主流だ。その手法を100%否定するつもりはないが、自身の知的創造性のレベルが上がらない要因だと思っている。


僕たちのくらしを生きる【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0128】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】20×20/山本文緒 ○
タイトルの「20×20」は原稿用紙のことか。読み終わって、あれこれ考えていたら気がついた。主人公は作家だけれど、ストーリーはとても小さい。というか、非常に個人的である。大きく、壮大な物語よりも、小さく、個人的なことを語る方が、現代的だろう。途中、「陰毛の生え方まで知っている」とあったが、それは相手を知るうえで、あまり知りえないことではあるが、重要な事柄ではないように感じた。

【詩・俳句・短歌・歌詞】くらし/石垣りん ◎
自分がただ生きるためにも、多くの犠牲があると改めて認識させられた。人間的、時間的、物質的に。過去、全くの無駄がなく生きられないだろうかと、思案することもあったように思うが、それはもう諦めてしまった。そもそも、自分自身が生きていることも、無用とは言わないが、大いなる無駄ではないか。

【論考】しゃべる/外山滋比古 ○
創作活動におけるしゃべることの功罪。最近はしゃべることを苦手に感じていたので、個人的にはメリットばかりだと思っていた。編集者は作家になれないという指摘は、自分自身の経験としても理解できる。やはり簡単に発散せず、内なるマグマを溜めておくべきなのだろうか。溜まったら、自分の意見として発信する(しゃべる)ことで、昇華されていくのかもしれない。


母と娘をつなぐ1本の糸【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0127】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】もうニ十代ではないことについて/山内マリコ ◎
どこかにいそうな主人公や登場人物を、軽妙な文体で描く。最初は、ちょっとわざとらしいというか、小説らしいと読んでいた。ただ、少し反発しながも、気づけは納得というか、共感してしまっていたようだ。作者が一番言いたかったのば、「探してばかりのニ十代。でもいつの間にかあたしは、見つけてしまっている」という箇所ではないのかな。

【詩・俳句・短歌・歌詞】糸まきをする母と娘/大木実 ◎
最近では、糸まきという言葉も聞かないし、もはや昔話し的な行為ではないだろうか。なので読み手としても、現実感、親近感はほとんど抱きようがない状態である。それでも母と娘が1本の糸でつながっている様を想像すると、親子の連なりや人類の歴史を意識してしまう。自分にも娘がいるから、なおさらなのである。

【論考】ホメテヤラネバ/外山滋比古 ○
端的に言ってしまえば、褒めて伸ばそうということだ。今でこそ褒めることは、常識になっているが、約40年前だと、異端の教育方針ではなかったのではないか。個人的には、しかると褒めるが半々くらいがヨイように思う。中庸である。あと、前半にあった「かならずできる」と自己暗示かけるのは重要だと感じている。


絵に描いた幸福は存在しない【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0126】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】廿世紀ホテル/森見登美彦 ○
不条理とは言わないものの、フィクションで何でもありの設定。そうした話は、ちょっと食傷気味になっている。この小説のテーマは、20世紀は理性(科学)の世紀であり、それが一見成功したように見えるが、実どうなのだろうという疑問を呈しているのか。シニカルな終わり方はしていないが、それほど20世紀への肯定感もなかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】しずかな夫婦/天野忠 ○
詩というよりも、エッセーに近い気がする。それくらい、等身大で身近な内容が、書かれていると感じた。生きていて美しく感じる時間はほとんどなかったのかもしれないが、気負わず、地道に生きている姿にホッとする。絵に描いたような幸福は、きっとどこにも存在しないのだろう。

【論考】テーマと題名/外山滋比古 ○
論文などで、どのような表題をつけるのか。筆者は題名ですべて語らないほうが、読みたくなるのではないかと述べている。ただ現在は、情報が多すぎるので、少ない文字数でできるだけ内容を盛り込む方がヨイと思っている。また情報構造として、ツリー型になるから、表題にすべてがまとめられるというのは、その通りだろう。


とにかく書いてみる【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0125】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】法則/宮内悠介 △
推理小説家、ヴァン・ダインの二十則に乗っ取った創作物。劇中劇というか、テレビの中のテレビというか。推理小説を書く上でのガイドラインに従って、 登場人物が死ななかったりする。何じゃそりゃという感じで、ストーリーの中に人々の息づかいや、人が生きていることの遠近感がないように思う。

【詩・俳句・短歌・歌詞】諸国の天女/永瀬清子 △
何度も読んだが、言葉から像を描けないまま終わってしまう。市井の女性についての詩なのだろうかと思ってはみたものの、比ゆ的な表現で、私には何もイメージが浮かばないため、自分の中を通り過ぎていってしまう。いつしか諸国の天女も老いてしまうということしか理解できなかった。

【論考】とにかく書いてみる/外山滋比古 ○
頭の中で考えていても、全くまとまらず、言葉が出てこないことがある。今はパソコンなどがあるので、書き直しも簡単だから、とにかく書いてみるということもあるだろう。しかし、手書きだとやや躊躇する。失敗すると大変だし、頭に具体的な言葉が浮かばないと、筆は遅々として進まない。それを乗り越えなければならない、と今万年筆で書いていて、心からそう思っている。


自分なりの価値のものさしを持つ【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0124】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ヴァンテアン/藤井太洋 ○
言語は明瞭であるが、科学的な知識が足りず、何がどうなっているのか、何がすごくて、すごくないのかなど、分からないまま終わってしまった。ページ数の少ない短編小説で、ノーベル賞級の発見をしてしまうのは、何だか安易な設定に思えてしまう。この辺りのギャップの作り方が、SFの難しさなのかもしれない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】レモン哀歌/高村光太郎 ○
作者、高村光太郎の妻である智恵子に、死が迫ってきた瞬間などを切り取った詩のようだ。レモンによって瀬戸ぎわから舞い戻ってくる様子が見られ、哀歌とはいうものの、悲しみだけに満ちているわけではないように感じた。人は必ず死に、自分で寿命を決められるわけではないのである。その理は、決して哀しいことではないだろう。

【論考】すてる/外山滋比古 ○
情報を整理して、捨てよと主張しているのだが、40年近く前に提言している点をよく考えてみると、その時代において卓越した見解ではなかったか。価値のものさしがはっきりしないまま整理しないよう、指摘していることにも着目したい。現在風に言えば、「ときめくか、ときめかないか」ということになるのだろうか。


いかにうまく忘れるか【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0123】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】人生リングアウト/樋口毅宏 ○
文章のテンポもよく、短編ながら登場人物のそれぞれの物語を織り交ぜ、小気味よく読ませてもらった。一方で、怪我の表現がさらっと言葉だけという印象もあり、リアリティーを感じられなかったと思う。それでも、私自身はプロレス好きなので、感情移入をしないで読むのは難しかった。

【詩・俳句・短歌・歌詞】乳母車/三好達治 ○
何度か読んで、詩の全体像がイメージできなかったというか、伝えたいメッセージが浮かび上がらなかった。ネットで調べてみると、作者の代表的な抒情詩で、幼かないころ離れて暮らした母親への慕情を詠んだと書いている人がいた。そうなのかもしれないと思いつつ、あまり納得できていない自分がいた。

【論考】時の試練/外山滋比古 ○
例えば文学作品など、その瞬間の評価だけでなく、時の試練を経ないと、本物かどうかは分からないし、古典とはなり得ないという。それはまさにその通りだと思う。逆から言うと、100年前、200年前の人の言葉や考えが、今の誰かに届き心を動かしたとしたら、それは奇跡だと言ってヨイだろう。ただ、筆者の主張は、「思者の整理とは、いかにうまく忘れるか」だそうだ。


30年間変わらないこと【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0122】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ブリオッシュのある静物/原田マハ ○
原田さんらしい作品なのかもしれない。芸術品を通じて祖母と娘、祖母の友人とのやり取りを描いている。ただ、割と簡単に医者になったりするのが、何とも安易な感じがしてしまう。自由自在に生きている人のストーリーに見えて、ちょっと共感しづらいのだ。作品も名前を出すだけの感じで、感情移入できない。

【詩・俳句・短歌・歌詞】妻/大木実 ◎
30年間暮らしてきた妻に対する愛情を伝える詩。同性としては、やや気恥ずかしさも感じるが、自分の本音をそのまま語っているようで、とても清々しい。ただ、配偶者だけでなく、家族に対して、同じ気持ちを持ち続けるのは、実際は至業の業。20年に満たぬ自分は、どうやって暮らしてきたのだろうとも思ってしまった。

【論考】忘却のさまざま/外山滋比古 ○
「ひとつことに、こだわっていると、かえってできるものまで、できなくなってしまう」ということで、様々な忘れ方や頭の切り替え方を解説している。実践的な内容ばかりであるが、忘れることは十分条件でしかなく、必要条件とは言えないのではないか。手法に乗っ取っても、上手くいかないこともあるだろう。


目に見えないことの憂鬱【ブラッドベリ1000日チャレンジ#0121】


レイ・ブラッドベリさんが、「クリエイティブになるには、三種の読書を1000日続けよ」と仰っていたということで、短い物語(短編小説)、詩・俳句・短歌・歌詞、論考と三種類のテキストを毎日読みます。そして、何を読んで何を感じたかを、備忘録的に記録しています。

【短編小説】ウエノモノ/羽田圭介 ○
結論だけ言ってしまうと、リアルなつき合いは、相性があってもあわなくても、相手の感じ方に変化を与えるということか。正直、途中のエピソードの多くに、必然性を感じなかったが、最後の結末だけは、とても納得できた。一方で、実生活で私は下の階の方から直接、騒音を指摘されているのだが、顔を見ていてもほとんど納得していないし、仲違いのまま。小説のようにはならないのだ。

【詩・俳句・短歌・歌詞】男について/滝口雅子 △
自分は自身の性である男性を誇る気持ちはないけれど、「男は」という大きな主語で表現、規定されるのは、正直とても気分が悪かった。「女が自分のものだと/なっとくしたいために」という一節もあるが、こんなことを私は考えたこともなく、濡れ衣を着せられているようにしか思えないのである。

【論考】整理/外山滋比古 ○
自分が年齢を重ねて、忘れることが恐くなった。生活が上手くいかなくなりそうだし、人に対して不義理を働きそうだからだ。しかし、筆者は「頭をよく働かせるには、この“忘れる”ことがきわめて大切である」という。忘れることで、頭が爆発せず、整理できるのだそうだ。